スタイリッシュな双子の兄貴になりました   作:クリカラ

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本編
第1話  スタイリッシュな双子の兄貴になりました


 

 

 

 

「――――――」

 

―― 男が、無言で空を見上げていた

 

 男の名は、ルシファー

 

 紫を基調としたロングコートを身に纏い、銀髪をオールバックにした姿。高身長で衣服に隠れて分かりづらいが程よく鍛え上げた筋肉質な身体。戦い方を心得ていない者でも彼が発する雰囲気で只者ではないと感じるだろう。

 

 そんな人物が黙ってずっと空を見上げていれば、周囲の人間から奇異の目で見られるのは想像に難くない。だが、予想に反し彼を見つめる視線は一つも無かった。元よりルシファー以外の人間が周囲に存在していなかった。しかし、その結果は必然でもある。

 

 ルシファーが立つ大地の名は、魔界。絶対的な力が理の世界。人間達が知恵という力で人間界を支配するならば、魔界は文字通りの力で悪魔達が支配する地獄。彼が一人で突っ立って空を眺めていようとも、誰も注目などしない。

 

「――――――」

 

 彼が立ち尽くして、どの程度の時が経っていたのだろう。何も言わず微動だにしない姿を格好の獲物だと判断した下級の悪魔達が彼を囲い込む様に出現する。巨大な鎌を持ち死神のような風貌の狩鎌の尖兵(ヘルカイナ)、魔界製コウモリの奇襲の翼(ピロバット)、同じく魔界製トカゲの凶襲の爪(ライアット)。更にそれらの亜種たる上位種まで次々と姿を露わにしていく。だがそんな状況下においても彼は悪魔達に一瞥すら視線を寄越さず、ただ黙って空を見やる。

 

 その姿が癪に障ったか、はたまた本能的に狩りを楽しみたかったのか定かではないが、悪魔達は示し合わせたかのように一斉に攻撃を繰り出す。ヘルカイナが首級を挙げようと鎌を一閃させるが首筋と鎌の間に割り込むかのように魔力で生成した剣がその一太刀を受け止める。

 

 話は逸れるがこの魔力で生成した剣【幻影剣】は本来、別の人物が編み出した技であり、刀身の色合いも群青色といったものである。だがルシファーが生成した幻影剣は青紫色に近く、本来より若干の禍々しさを発する代物へと変わっていた。

 

―― 閑話休題

 

 相手の一撃を防いだ幻影剣は、役目を終えたとばかりに早々に消滅。しかし、息をつく暇もなく複数のヘルカイナが胴体めがけ攻撃を放つ。ここで彼は初めて敵に視線を向ける。敵の刃が身体に突き刺さるまであと数ミリといった所を視界に収めた彼だが特に慌てる様な事もなく静かだった。正確には慌てる要素が皆無な為に静かなのである。だがそれも状況を鑑みれば納得するだろう。

 

 無表情を貫くルシファーの視界に、彼を囲っていたヘルカイナに何本もの幻影剣が突き刺さり、悪魔の動きを封じ込める場面が出来上がっていた。この状況を作り出した技【五月雨幻影剣】は、対象の頭上に幻影剣を出現させ落下させる技だが、決まれば相手を地面に縫い付けてその場に固定させることが可能。現状、迎撃しなくとも特に問題は無かった。

 

 簡易的だが盾みたいなモノがルシファーを中心に出来上がる。だがそれを物ともせず、寧ろ盾になっている悪魔達(オブジェ)と彼を粉砕しようとライアットの亜種、轢断の背びれ(ケイオス)が車輪形態に変形し突進。空中からはピロバット及び強化種の狂炎の羽(ヘルバット)が、火炎弾や火炎放射の一斉放火を浴びせる。

 

 流石に悪魔の攻勢が鬱陶しくなったルシファーは、背中に魔力で編んだ大剣【幻影の討魔剣(ミラージュエッジ)】を出現させ、右手に掴んだ剣をその場で一回転しながら振り抜く。魔力を込めて振り抜いたそれは、強力な技【衝撃波(ドライブ)】となり周囲一帯に出現していたあらゆる悪魔達を一掃してしまう。

 

 悪魔達が現れる前の静寂さを取り戻した彼は、手に持っていた剣を消滅させ冒頭部分の再現するかの様に無言で空を見上げた。

 

―― 彼が一体何を考え、空を眺めるのか

―― それは決して、余人には計り知れない事なのだろう

 

 やがて用事は果たしたとばかりに彼はその場を後にする。去り際に思わず漏れ出たとばかりに、今まで一言も発しなかった唇が、重く閉ざされたモノが開いた。

 

「―― ストロベリーサンデー、食いてぇなぁ......」

 

 その場を去る彼の後姿には哀愁が漂い、まるで仕事に疲れた日本の企業戦士(サラリーマン)を連想された。

 

―― それは決して、余人には計り知れない事なのだろう(震え声)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 転生したら、Devil May Cry(デビルメイクライ)製の悪魔に転生していた件について

 

 イカれた連中達のド派手な戦闘対戦(スタイリッシュアクションゲーム)

 

 デビルメイクライ(以下DMC)はそんな素人(ライト)より玄人(ヘビー)なユーザー向けの極めれば極める程、凄い(キモイ)プレイングが可能になる人気タイトルの一つで、俺も楽しくやらせていただいたユーザーの一人。まあ、お世辞にもプレイングは上手な方じゃなかったが。

 

 とにかく、何の因果かそんな世界に転生してきた訳だが......バカじゃないの? 好きなゲームの世界に転生できるやったー、じゃねぇんだよ! こちとら自分が死んだ原因も訳分かんないのに、人間も悪魔も簡単に死んでいく世界で生きてってください(難易度はベリーハード固定)とかさ、ふざけてんの? いいの? 泣くよ? 悪魔が泣いちゃうよ? 秒でタイトル回収するよ?

 

 等々、最初の頃は思ってた訳ですよ、皆さん。えっ? 今は大丈夫なのかって? まあ一応は、大丈夫なのかなぁ? やっぱり大丈夫じゃねえ。大問題があるんだわ、コレが。それは俺の両親の話になるんだが、コレがDMCを知っているプレイヤーからしたら驚きもんの筈。

 

 父親が伝説の魔剣士【スパーダ】で、母親が電撃と蝙蝠を操る女悪魔【ネヴァン】なのだから。

 

 そう、DMC3で登場した、あのネヴァン(・・・・)が、俺の母親なのである。

 父親のネームバリューも相当だが、DMCの一ファンからしてみればネヴァンが俺の母親って方が色々と考えさせられる。主に馴れ初めについて。まあ、母であるネヴァンに話を聞いてみた限り、甘いラブストーリー的なモノは無かったようだ。

 

 当然といえば当然かもしれない。スパーダは人間達の救いの声に応え、魔界の軍勢と戦い勝利し人間界を救った英雄だ。以前に交流があったとはいえ悪魔と愛し合うだなんてあり得ないだろう。現に親父殿(スパーダ)は俺が産まれたのを随分と後になって知ったのだから。

 

 母は俺を出産した事を親父に対し、別に隠していた訳じゃないと言っていた。ただ、俺を産んだ後に親父との交流が無かった為、こちらから報告しなかったのだとか。その辺りの話はぶっちゃけ俺にとってはどうでもいい話だった。親父とお袋の関係は二人が決めればいいし、俺が口を出す事でもないと思ったからだ。

 

 DMC3で登場した彼女だが、テメンニグルと共にスパーダに封印された筈だった。如何やらこの世界線ではその運命を免れたらしい。寧ろ、スパーダの実子を出産する偉業をやり遂げた。

 

 ともかく、これで実子(オレ)の出生について理解して貰えたかな? なら、俺が問題点にしている事も自ずと分かってくれた筈だ。

 

―― そう、悪魔達(ファン)襲撃フラグ(ストーカー)が発生するのだ

 

 アイツ等、マジでしつこ過ぎる。

 道を歩けば、襲撃。家で寛いでいても、襲撃。食事を取る時でも、襲撃。流石にクソしてる時に襲撃された際は、年甲斐もなくガチギレした。ブラック企業も真っ青の働きっぷり。クソがッ!

 

 なので、親父殿と対面した時に俺が怒りに任せて斬りかかったのは仕方ないと思う。その際に、フォースエッジ(ミラージュエッジ)を見せ動揺した隙に一撃を見舞いしたり、本気になった親父殿が【リベリオン】でこちらの胸を串刺しにしたり、リベリオンの能力で一段階上【真魔人】の力を手に入れたり、解放された俺の魔力を感じ取って親父殿が更に動揺したりと、色々ごたごたしたが全て些細なことだ。

 

―― 大事なのはただ一つ

―― 悪魔達(ファン)の相手は本人がやってください

 

 俺はそれをただ伝えたかった。死活問題だからね、仕方ないね。まあ、親父殿には無下にもなく断られたが......ファックッ!

 

 その後、俺達は数日にも及ぶ、親子喧嘩(バトル)もとい話し合いを繰り広げる羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何処とも知れぬ場所で剣戟が響き合う。

 

 赤い男と青い男。赤は大剣、青は刀を振るい火花を散らす。

 相手を打倒しようと互いに全力で剣をぶつけ合う二人。ハイレベルな戦いを繰り広げるそれは、まるで舞をするかのような、或いは猛獣同士がじゃれつくかのような印象を受け取る戦いだった。

 

 赤が強力な突きをお見舞いし、青はそれを刀の腹で受け止め大きく後方に吹っ飛ばされる。彼はその手応えに表情をにんまりとさせる。

 

「ダンテ選手、1点リード!」

 

 赤いロングコートを纏った男【ダンテ】は誇るように宣言する。

 だが、ダンテの言葉に異議を唱える青い男。

 

「算数からやり直せ、同点だ!」

 

 ダンテとは対照的に青いコートを着こむ男【バージル】は仏頂面を更に歪めて言い放つ。

 彼の文句に苦笑い浮かべながら疲れたと言わんばかり地面に寝転がるダンテ。その姿を目にしたバージルもドカッと地面に座り込む。

 

 ダンテが疲れた口調でバージルに話し始める。

 

「なあ、何時になったらこの戦いに決着がつくんだ?」

「お前が参りましたと宣言すれば終わるが?」

 

 バージルの言葉にムッとなりながらダンテは反論する。

 

「冗談抜かせ。俺が勝ってるのに譲ってやる訳ねぇだろ」

「お前こそ、ふざけるな。さっきから同点だと言ってるだろう」

 

 二人の話はどこまでも平行線だった。

 競う相手(ライバル)である以上、互いに負けたくないという意地で反射的に言葉をぶつけ合う。だがそんな関係も悪くないと不敵に笑い合い、互いに武器を構え直す。

 

 また始まる剣戟は数々。しかし無粋にも彼等の邪魔をしようと、二人の間に悪魔達が強襲染みた攻勢を仕掛ける。外敵(じゃま)が現れたのなら潰す。言葉にしなくとも彼等の行動は速かった。

 

―― だが、二人よりも速く行動に移した人物が居た

 

 空から降り注ぐ幻影剣がダンテとバージルを避け、悪魔達だけを串刺していく。断末魔を上げる暇もなく絶命していく悪魔の群れ。この光景に既視感を覚えた二人は同時に、強力な魔力を発する方角に顔を向ける。

 

 二人とはまた違う色合いのコート羽織った男がゆっくりと二人に向かって歩いていく。ダンテはその姿に懐かしさを感じ、バージルは仏頂面のまま腕を組んで男を見やる。やがて、二人の前までやって来た【ルシファー】は、懐かし気に話し始める。

 

「お前等、汗臭いからまずはシャワー浴びてこい。話はそれからだ」

 

―― これは、スタイリッシュな双子の兄貴になった、悪魔(オレ)の物語である

 

 

 

 

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