魔界は人間界と違い劣悪極まる土地が無数に存在し、住む場所を探すだけでも大変だ。悪魔達の中には、自身の特性と合致し寧ろ心地よい環境だと評する者もいる。マグマの海と称せる炎獄海、絶対零度の極寒氷山、進行不可の濃霧樹海。過酷じゃない環境を探し出すのが困難な程だ。
ルシファーが拠点としている場所は、劣悪な魔界の土地一角を彼自身が結界で覆った絶対領域であり、安全が確保された異空間だった。その空間には人間界と同じ様に青空が広がり、辺り一帯に程よく生い茂る草木の数々。少し歩を進めれば海が見渡せる美しい海岸。木々と海岸の境目辺りに建てられた二階建てのログハウス。魔界とは思えない光景が広がる。
彼が手間を掛けてこの異空間を作り上げた。色々と頑張ったら意外に創れたらしい。今の魔界において、悪魔の襲撃を気にせず安全に暮らせる場所なぞここ以外に存在しなかった。
ルシファーの拠点に招かれたダンテとバージルの二人。双子がこの場所を訪れたのはもう随分と昔の話。彼等は眼前に広がる光景に、初めて訪れた時の事を思い出す。
「初めてこの場所を見た時、俺はどこのバカンスに連れてこられたかと思ったぜ」
「そうだな。鍛えてやるなどと抜かし連れられたのが最初だったか」
「そうそう、ガキ相手に殺気を放ちながら剣を教えるかフツー?」
「幼い身で悪魔の軍勢に放り出された時は、死を幾度となく覚悟したモノだ」
言葉だけ聞くと嫌味に聞こえるが二人の口調は意外にも穏やかだった。ダンテは海を眺めながら懐かし気に話し、バージルもダンテ程ではないが表情が柔らかくなる。二人が昔話に花を咲かせていると、先にログハウスへ到着したルシファーが彼等を呼びつける。
「オイ、いつまで喋ってる。さっさとシャワー浴びてこい」
そう言ってルシファーはログハウスの中へ消えていく。
ダンテは、出会った頃から変わらない彼を見て苦笑いを浮かべる。
「ルシの兄貴は相変わらずみたいだな」
「不遜な態度も健在のようだ」
バージルの返答にダンテは冗談だろ?という顔で彼を見つめる。
「バージル、ソレをお前が言うのか?」
「ダンテ、それはどういう意味だ?」
ダンテの言葉にバージルは【
この後どちらが先にシャワーを浴びるかで双子が軽い喧嘩を起こす。それにキレたルシファーが双子を纏めて風呂へ叩き入れようとするが、それは何としても避けたかった二人がタッグを組んでまで争うという珍騒動が勃発するが、その話は割愛するとしよう。
◇
自我の目覚めは生まれた時から存在していた。
コレって流行りを通り越して最早味がしない転生なのかなーとか。俺はやっぱり死んじゃったのかなーとか。母ちゃんメッチャ綺麗だなーとか。父はいないのかなーとか。最初は考えた訳だよ。でも一週間もすればそんな考え忘却の彼方に行っちまったな。
だって一週間そこらで俺の姿は、人間の成人男性と同じ体格まで成長を遂げていたんだからな。悪魔の身体ってスゲーなと感心した。
本来なら人間の子供と同じよう成長する筈だったらしいが、俺がどれ程スパーダ似のイケメンに成長するのかすぐに確かめたかったらしく、彼女が男達から集めた精気を利用して俺の成長過程に手を加えたらしい。人権侵害かな? 悪魔だから人権なんて無いんだけどね。
俺自身も今更、赤ちゃん時代からやり直したいなど思ってなかったので有難かった。成長させた後で人間の母親と同じ様に赤子を育ててみたい等と抜かし、俺を赤子まで後退させようとした時は流石に焦った。見た目が綺麗でも中身は人間じゃなく悪魔なんだなと認識させられた。
でも、それは俺に対して情が無い訳ではない。寧ろ悪魔の中では情深い存在だと認識している。ただ、顔を会わせる度に息子の俺から精気を取ろうとするのはどうかと思うが。
人間界で生まれた俺は出生の問題もあって同じ場所へ長く滞在することは無かった。長く留まり続けると悪魔達に襲撃を受けるし、人間達にも不審な目で見られる可能性を考慮して、世界各地を練り歩いた。最初は
しかし悪魔の襲撃があまりにもウザ過ぎた為、本人に文句を言うべく10年かそこらで旅を辞めて自分からスパーダに会いに行く事にした。前回でも少し触れたが、散々な結果に終わった。
Q .
A . とりあえず斬れ。頑張って斬れ。斬れば何とかなる
発狂しかけたね。てか、発狂したね。
でも腐っても英雄だね。隙をついて放った全力の一撃が全く効かなくて、唖然としたのを今でも覚えている。お返しにリベリオンで貫かれた時は
そんなこんなで親子で感動の再開を果たした訳だが、俺の地獄はここからが始まりだった。
なんと英雄スパーダが直々に俺を鍛えてくれるというではないか! ファックッだよ!
悪魔達をウザく感じるのは俺が未だ未熟で脆弱だからだそうです。なのでスパーダが自ら稽古をつけるという話らしいが、最初聞いた時は『ハァ?(#^ω^)ピキピキ』ですよ、皆さん。
己の所為でこんな目に遭ってるのにこっちの所為にすんの?的な感じで当初は怒ってたかな? 今となっては良い思い出......いや、やっぱ普通に嫌な記憶として残ってるわ。
―― ここから【
◇
「いや~シャワー後に食べるストロベリーサンデーは最高だぜ!」
「おい、お代わりはないのか?」
「できれば、ピザも宜しく!」
上半身裸、髪の毛は首に掛けてあるタオルで適当に拭いただけのダンテは、だらしなくソファに座る。対しバージルはキッチリ服を着込み、髪もドライヤーで乾かしいつものオールバック状態に整えている。二人の共通点は手に持ったパフェの御椀とスプーンだろう。
そんな彼等を呆れた眼差しで観ていたルシファーは溜息交じりに応える。
「ハァ、少し待ってろ。すぐに用意してやる」
彼はそう言ってキッチンの方へ歩いて行く。
双子は我が物顔で寛いでいた。
「やっぱ、ここに来たら兄貴が用意するストロベリーサンデーを食わねぇ事には始まんねぇな」
「アイツは色々とやっているが
幼少期からルシファーが用意するパフェを食べ続けている二人は、感慨深げに頷く。
ダンテは彼が用意してくれるピザの評価も次いでとばかりに話し出す。
「ピザも人間界のその辺で売ってるモノよりも普通に美味いし」
「前々から気になっていたが、何故アイツは料理に凝っているんだ?」
「―― お前等が美味しいモノがでなきゃ、修業なんてやってられないと言ったからだろうが」
右手にピザ、左手にパフェのお代わりを持ったルシファーがバージルの疑問に応える。
ダンテにピザ、バージルにはパフェのお代わりを渡し彼は近くの椅子にドガッと座り込む。
「ここに連れて来た当初、お前等が駄々をこねて修業をサボっただろ? あの後にパフェやピザをチラつかせてやる気にさせてたのを忘れたのか?」
彼の言葉にそんな事もあったなと二人は記憶を掘り起こす。
「あん時は、知らないヤツに教わる事なんて無いって突っぱねてたっけ?」
「俺もダンテと似たような心境だったのを覚えている」
双子の言葉に溜息を吐いて、ルシファーが話し出す。
「まあ、そんな感じでお前達に毎度の如く用意してたら癖になっちまってな。今じゃ俺のライフワークになりつつある訳だ」
そこまで話して当初の予定と全然関係ない事を喋っているのに気付いた彼は話を戻す。
「そんな事より、いい加減お前等が何で魔界に居るのか話をしてくれないか?」
彼のそんな提案を聞いて双子は、
「バージル、お兄ちゃんなら少し分けてくれても良いだろ?」
「ふざけるな。寧ろ弟のお前が俺に配慮し
全く聞いていなかった。
ルシファーが用意した食べ物には興味を示しても、肝心の彼自身には興味を示さないのが何とも双子らしかった。
―― そんな愚弟共を【
筆者は投稿した文章を頻繁に増減させたりするので、お読みになる際はご注意ください。(読者に配慮しない