スタイリッシュな双子の兄貴になりました   作:クリカラ

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第5話  男の殴り合いは世界を越えて共通

 

 

 

 

 バージルは接近戦を行う際に三種類の戦闘方法をとる。

 

 一つ目は、父親である魔剣士スパーダから譲られた日本刀型の魔具【閻魔刀(ヤマト)】を用いて、近くの敵は直接斬り遠くの敵には次元斬など飛び攻撃を行う、近距離・遠距離ともに熟すスタイル。

 

 二つ目は、ルシファーも使用する己の魔力で具現化した魔剣【幻影の討魔剣(ミラージュエッジ)】を用いての手数を稼ぎつつ、決める(フィニッシュ)時に強力な一撃を叩き込む事を得意とするスタイル。

 

 三つ目は、光の力を宿した籠手と具足の魔具【閃光装具ベオウルフ】を用いた、一撃一撃が文字通りの必殺となる拳や足技を使う、肉弾戦に特化した超攻撃型スタイル。

 

 バージルが行う戦闘方法(スタイル)は一つ目の閻魔刀を使用するもので、ミラージュエッジとベオウルフは基本的に使わない。理由を述べるならば近距離・遠距離ともに熟せる閻魔刀と遠距離攻撃の不足を補える幻影剣があれば、大抵の悪魔戦は事足りるからだ。

 

 そして最大の理由が、ミラージュエッジを気に入らないヤツ(ルシファー)が使うために使用したくないのと、ベオウルフは使わざるを得ない程の悪魔に遭遇した事がないからだ。ベオウルフの一撃が閻魔刀やミラージュエッジより高くとも、それを補い後者二つの方が遥かに戦いやすい。態々、拳や足技を駆使して悪魔達を屠らなければいけない訳でもない。必然的に使用頻度は減少する。

 

―― そんな日の目をみない可哀想な子(ベオウルフ)が、その力を存分に発揮していた

 

「「ウォォォォォッ‼」」

 

 雄たけびを上げての、連打(ラッシュ)連打(ラッシュ)連打(ラッシュ)

 華麗な戦い(スタイリッシュ)とは程遠い、血生臭い勝負がそこでは繰り広げられていた。

 

 防御不要(ノーガード)正面対決(ガチンコバトル)

 ルシファーの右拳がバージルの腹部を強打すれば、代わりにバージルの右拳がルシファーの顎を強打。バージルが続けざまに放った左拳に合わせるようルシファーも左拳を放つ。両者が装着する魔具、ギルガメスとベオウルフが衝突した際に火花を散らすが、そんなモノ眼中に無い二人は更に攻撃を続ける。

 

 顔、肩、胸、腹、腕。上半身で攻撃を加えていない場所は、既に存在しない。自身の拳だけでも必殺足りえる一撃なのに、更に魔具も装着した状態で彼等はその身に何発も打撃を貰う。

 

 しかし ――

 

「「アッハハハハハハハッ‼」」

 

 ―― (わら)い合う。

 

 楽しげに、気が狂ったかのように呵う二人。呵い合う間にも、両者の拳は止まらない。

 連打(ラッシュ)だけでなく、時には足技を織り交ぜての攻防も見せる。

 

「ハァッ‼」

 

 バージルが僅かに距離を離し高速回転からのかかと落とし【月輪脚】を文字通り、ルシファーの肩に落とし大地へと叩き付ける。

 

「グッ⁈」

 

 叩き付けられた衝撃で一瞬、意識が飛ぶルシファー。その間に倒れた彼目がけて【衝撃波(ヘルオンアース)】を打ち噛ますバージル。

 

「―― 消えろォッ‼」

 

 うつ伏せの状態だったため相手を視界に収める事が出来ていなかったが、何をやろうとしているのか瞬時に理解し、両手両足を使った獣染みたジャンプ回避を行う。回避した直後に身体があった場所へ拳が叩き付けられて、そこを起点とした中規模な爆風が生じる。ジャンプ回避を行い空中に身を投げていたルシファーは爆風によって無様に吹き飛ばされていく。

 

 辺りに散った砂煙で結果は見えずともルシファーを遠くの方へ吹き飛ばした事を理解し一息つくバージル。さすがの彼もこれだけの攻防を行えば疲労の色を見せる。普段であれば勝敗がつく前にこのような隙は絶対見せないだろう。だが、疲労の所為で僅かな隙を作ってしまった。

 

 それ故に ――

 

「―― 吹っ飛べッ‼」

「ッぐ⁉」

 

 ルシファーの動きを察知する事が出来なかった。

 彼が空中から高速落下の足技【流星脚(ライダーキック)】をバージルの腹に叩き込もうとした時は、まさに直撃する寸前とでもいえる状況だった。右手の籠手部分を滑り込ませる事に成功したのは、反射の域を超えた未来予知や直感といった何かだろうか。

 

 地面をバウンドしながら吹き飛ぶバージル。幾度目かのバウンドの後に四肢をブレーキ代わりとして地面に突き立て、接触した籠手と具足が地面をガガガと削る。十数メートル程で停止した彼はすぐさま視線をルシファーへ向ける。

 

 ルシファーはバージルを蹴り飛ばした地点で息を荒くしながらも膝を突く事無く、俺は未だ健在だと主張する様にニヤリと笑みを浮かべる。しかし態度とは裏腹に身体の状態は酷いモノだった。

 

 額や口からは血を流し身体の至る所が痛みを訴える。今にも気絶してしまいたい程だが、意地で踏ん張り続ける。だが、それはバージルとて同じ事だった。寧ろ状態として彼の方が酷かったが、健在なルシファーの姿を確認した後、弾ける様に彼の元へと駆け出す。

 

「ハァァァァァァァ......!」

 

 疲弊している筈なのに速さ(スピード)が全く衰えないバージルは数十メートル離された距離をほんの数歩の足捌きで射程範囲(ゼロ距離)までもっていく。そして渾身のストレートを放つ。

 

「ハァッ‼」

「ダァッ‼」

 

 バージルのストレートに合わせるようルシファーも同じく正拳突き(ストレート)を放った。

 両者の籠手が衝突し、彼等を起点として種撃破が発生する。

 

「「グッ‼」」

 

 二人は弾かれる形で距離を離す。

 だが、この程度ではないぞと次の拳を相手に振りかぶる。

 

 そこへ ――

 

「ハイ、ストップ‼ 終わりだ、終わり‼ 戦い(けんか)終了(しまい)だ」

「「ッ⁈」」

 

 剣を両者の間へ振り下ろす事によって、二人の衝突を阻むダンテ。

 彼の行動で否応なく攻防を中断せざるルシファーとバージル。

 

 二人のボロボロの姿を視界に収めて、ダンテは呆れた表情で両者に告げる。

 

「こんな傷までつけてまだ戦うかフツー?」

 

 彼の言葉にバージルは鋭い視線を送る。

 ダンテに邪魔されたのがお気に召さなかったようだ。

 

「ダンテ、そんな理由で俺の邪魔をしたのか」

「イヤイヤ、十分過ぎる理由だろ。愚兄(コイツ)はともかく、何で兄貴(アンタ)もこんな死闘を演じてんだよ」

「オイ愚弟(ダンテ)、それはどういう意味だ」

 

 バージルを無視してダンテはルシファーへ尋ねる。

 ルシファーは彼の言葉にバツの悪そうな表情で答える。

 

「...............した」

「はっ? 何だって?」

 

 小さく呟いた言葉はダンテには聞こえなかったらしい。

 ルシファーは観念してため息交じりに告げる。

 

「......興が、乗りました」

「...............」

 

 ダンテはバカを見る様な視線を年長者(ルシファー)に向ける。

 てか、文字通りバカだなと考えていた。

 

 溜息をつく事すら面倒になったダンテは、無言で遠くなったログハウスを指さす。

 彼の言いたい事を理解したルシファーは頷いてある魔術を行使する。

 

 ルシファーの足元から出現した青紫色の魔法陣がダンテとバージルの足元まで延び、彼等を包み込むように魔法陣から光が昇る。光は一瞬で消え去り、次に彼等の視界には遠くの方に映っていたハウスが目の前に在った。

 

 その結果に驚く事無く、ダンテはハウスの中へ入っていった。彼に続いてバージルも建物へ足を進めるが、ルシファーが唐突に彼を呼び止める。

 

「バージル、ちょっと待ってくれ」

「......何だ」

 

 先程の勝負は色々有耶無耶になり自身の勝利とならなかった為、不機嫌になっているバージルは普段の数割増しにドスのきいた表情でルシファーを見返す。

 

 そんなバージルの態度には慣れている彼は、無言で自身の身体から複数体の蝙蝠を出現させる。蝙蝠達はバージルの頭上を飛び回り、光る緑色の魔力を散布する。するとバージルの身体にあった無数の傷が、瞬く間の間に消える。蝙蝠達は役目を終えたとばかりにその姿をルシファーの身体へ戻っていく。

 

 バージルの表情は先程見せたモノよりも険しく、今にも閻魔刀を引き抜かんばかりであった。

 

「施しのつもりか? 人の神経を逆なでするのが得意だな、兄上殿(ルシファー)?」

「違うは戯け。それは、一種のお礼だ」

「礼だと?」

 

 ルシファーの言葉にバージルは不審な視線を向ける。

 

「―― 色々と鬱憤が溜まってたんだよ。それをバージル(オマエ)との対決で晴らせた」

 

 だから回復(コウモリ)はその礼だと言葉を続ける。

 ルシファーの発言にバージルはフンッと鼻で笑う。

 

「―― 貴様からの施しなど要らぬが、まあ今回は貰っといてやろう」

 

 バージルは止めていた足を再び動かして建物へと進んでいく。

 彼のその背にルシファーが再度言葉を告げる。

 

―― 本当に、強くなったな【英雄の子よ(バージル)

 

 バージルは一瞬、その歩みを止める。

 

 しかし、何事もなかったかのようにハウスの中へと入っていく。

 建物へ消えていく彼を見送り、ルシファーは空へ視線を向ける。

 

―― 親父殿(スパーダ)、アンタは何処に居るんだ?

 

 

 

 

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