スタイリッシュな双子の兄貴になりました   作:クリカラ

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第7話  悪魔の誓いは一種の呪い

 

 

 

 

「―― なるほど、クリフォトの根を断つために魔界まで出向いてきたのか」

 

 双子が何故魔界に足を運んだのか、大まかな状況を聞いたルシファーは合点がいったと頷く。

 

 そんな彼に対し、ダンテは疲れたとばかりにソファーへ寝ころび欠伸を漏らす。バージルはまたシャワーを浴びて汚れを落とし、一旦気持ちをさっぱりにするとテーブルに座りパフェを食べる。

 

 ルシファーとバージルの戦闘が終了し、ハウスへと帰還した三人は最初に訪れた時の様に寛ぐ。しかし先程とは違い、何故二人が魔界に居るのかをルシファーへ説明していた。

 

 主に会話はダンテが行い、バージルは我関せずのスタイルでパフェを食べ進める。そんな二人を視界に収めながらルシファーは、自身の記憶(ぜんせ)との違いについて考える。

 

 それは自分が知る記憶(ぜんせ)と違っていれば違う程、後に起こる既定路線の外れ(バタフライエフェクト)を予想できるからだ。ルシファーは知識の擦り合わせをする様に話を続ける。

 

「クリフォトは人間達の莫大な血を集め頂上(ちか)に果実を実らせる。確かムンドゥスの野郎もその実を喰らって強大な力を得たんだっけかな?」

その話は初耳(・・・・・・)だが、俺達が対処したクリフォトってのはその(・・)クリフォトだろうな」

 

 ルシファーの言葉にダンテは相槌をうつ。

 しかし彼は、ダンテの言葉に少しばかり戸惑いを覚える。

 

「何? お前達はクリフォトが何なのかも知らないで戦っていたのか?」

「仕方ねーだろ。突然出現したクリフォトを俺らが急遽対応する事になっただけなんだからよ」

 

 ダンテは面倒くさげに告げる。

 ルシファーは少々複雑そうに表情を歪めつつ、質問を足す。

 

「......V(ブイ)、という名の男を知っているか?」

「あぁ? V(ブイ)? 随分と安易な名前だな。聞いた事あるか、バージル」

「知らん」

「だとよ。俺もそんな名前のヤツ知らねぇぞ」

「そうか......」

 

 彼は双子の反応に言葉少なめに返事を返し、考えに耽った。

 

 ダンテ達との会話で得た考えを纏めると、このような結果になる。

 まず、DMC5の要とも呼べる【V(ブイ)】と【魔王ユリゼン】が存在していなかった(・・・・・・・・・・)

 

 V(ブイ)に該当する存在はいなかったがユリゼンはそれに近い存在がいた、という表現の方が正しい。その近しい存在の正体が、以前ムンドゥスに持っていかれた俺の右腕(・・・・)を基に作成したユリゼン擬きらしい。ムンドゥスの信奉者が手掛けた一品だとか。

 

 いや、俺がヤツに敗北した訳じゃないからね? 例の影響(ノイズ)で隙が出来た際、不意を打たれただけだから。実際、ムンドゥスの野郎もその一撃をお見舞いした後に撤退したからお互いに痛み分けの五分(ごぶ)引き分け(ノーカン)だよ。この話はまた今度にしよう。

 

 次にクリフォトの事についてだが......コレの説明役であったV(ブイ)が居なくなった為にダンテ達は、クリフォトの知識が殆ど無かった。今回の事件についても別口の依頼で頼まれたらしい。

 

 逆にバージルはその辺りの事情を殆ど理解してらしいが、それについては納得出来ている。V(ブイ)が聞き及んでいた事を本元のバージルが知らない方がおかしいからな。

 

 とにかく色々と乱れが生じたが、大まかには原作(DMC5)の通りに事が進んだらしい。

 まあ細かい部分も変わってるみたいだが、今の所は大丈夫だろう。

 

 ルシファーはそう結論付けて考えを一旦打ち切る。

 そして二人に今後についての話題を問い掛ける。

 

「で、お前等はこれからどうするんだ。すぐ人間界に帰るのか」

 

 ルシファーの問いにダンテは怪訝な顔をする。

 そんな表情をするのも無理はない。何故なら帰る手段が無かった為に一ヶ月の時を、バージルと勝負し(あそび)ながら過ごしたのだ。帰還できるならば、とっくの昔に人間界へとおさらばしている。

 

「すぐに帰れるのか?」

 

 ダンテの問いに今度はルシファーの方が怪訝な顔を見せる。

 お前は何を言ってるんだとばかりに彼へ告げる。

 

「バージルの閻魔刀があれば、何時でも帰れるだろうが」

 

 そう言ってバージルの傍らに置かれている閻魔刀に視線を向けるルシファー。

 彼の言葉にダンテも納得の顔付きに変化する。二人のやり取りの間、バージルは先程と同じ様に我関せずといった感じで、何処から出したのか表紙にVと書かれた本を手に読書に耽る。

 

 バージルの閻魔刀には【人と魔を別つ】性質が存在し、それは世界に対しても同様の結果を齎すことが出来る代物。つまり、人間界と魔界の境界を断ち切る力があるのだ。

 

 簡単に考えれば分かる事なのにダンテは閻魔刀の事を、すっかり頭の中から消していたらしい。

 だがそこで、彼はある事実に辿り着く。

 

 それは ――

 

「―― バージル。お前、まさか、帰還手段(そのコト)を……?」

「―― 閻魔刀の担い手である俺が、知らない訳がないだろう」

 

 双子の兄が自身の事を嵌めたのだと、気付いた瞬間だった。

 

 事も無げに告げるバージルに衝撃を受けるダンテ。

 ダンテは一瞬、呆気に取られるもすぐさま我に返りバージルへ詰め寄る。そんな彼を鬱陶し気に眺めるバージル。

 

「お前ェふざけんなよッ⁉ 何ですぐに帰れるって教えねぇんだよッ‼」

「聞かれなかったからな」

「フツー分かるだろ、そんぐらい‼」

「貴様の常識でモノを言うな」

「んだとォ⁉」

 

 感情的になっているダンテを素気無くあしらうバージル。

 寧ろ彼からしてみれば、ダンテの言い分は言い掛かりも甚だしいと感じていた。

 

「大体、少し考えを巡らせば分かる事だろう。魔界の門を閉じれるという事は、同時に開けられる事を意味する。開閉は常に両立しているとな」

「そりゃあ......まあ、考えてみれば、そうだわなぁ......」

 

 バージルの尤もらしい説明を聞いてダンテは頷く他なかった。

 しかし、なら何故この双子の兄(バージル)は何時までも、魔界に居座っているのだろうと疑問を生じさせるダンテ。だがその疑問はすぐに解消される。

 

「どうせいい機会だとか考えて、ダンテと戦いたかっただけだろ、バージル(おまえ)

「............ふんっ、兄として弟の力量を計ってやったまでだ」

「嘘つけ。だったら最初の間は何だよ」

 

 ルシファーがバージルに大よその辺りを付けて問い詰めた結果、しょうもない真実が発覚。

 これにはダンテも頭を抱える始末。

 

「......この一か月間、マジでしょうもなかった」

「まっ、ドンマイ」

「ノリが軽いな、オイ」

「他人事だからしょうがない」

「..................」

 

 ルシファーの返しにげんなりするダンテ。

 不満顔で厭味ったらしくダンテはルシファーに愚痴も漏らす。

 

「そもそも、兄貴が魔界から手伝ってくれりゃあ、わざわざ来る必要もなかったんだがな」

 

 ダンテはこの数ヶ月何をしていたんだとルシファーに問う。

 ルシファーは苦笑気味で彼の疑問に答える。

 

「ここ数ヶ月で悪魔の数が増えていたんだ。だから色んな場所に行って悪魔狩りを行っていたが、今にして思えばクリフォトの影響が出ていた所為なのかもしれないな」

「なら、仕方ねぇか......」

 

 ダンテはそれで納得、

 

「じゃねぇだろ、バージル‼ 元はといえば、お前が黙ってたのが元凶だぞ‼」

 

 出来ずにバージルに不満をぶつける。

 そんなダンテをまあまあと宥めるルシファー。

 

「まあ待て、ダンテ。バージルの我儘でこうして兄弟で再会できた訳だ。そう言ってやるな」

 

 彼の仲裁に双子が不思議そうな顔付きに変わる。

 

「誰が我儘だ。大体、貴様などと会って何になる」

「兄貴に会ったって仕方ねぇだろ」

 

 兄弟で顔を合わせても特に何とも思わないらしい。

 多少の懐かしさを感じる程度は、二人にとって大した事ではないのだ。

 

 兄弟愛がない二人に、流石に悲しくなるルシファー。

 

「流石にお前等酷くない?」

「「―― 別に普通だろ?」」

「こんな時だけ、同調(シンクロ)すんな」

 

 ルシファーの対応がめんどくさくなったダンテは彼に提案する。

 

「そんなに寂しいんだったら兄貴も人間界で暮らせばいいだろ」

 

 ダンテの提案に情けない姿を見せていたルシファーは、顔を真剣な表情へ変える。

 

「―― それは、無理(ダメ)だろ」

 

 先程までと、全く異なる雰囲気を醸し出しながらルシファーは断言する。

 感情が抜け落ちたかのように無表情となった彼は、無機質な瞳でダンテを見つめる。

 

 彼の変わり様にダンテはやれやれと首を振る。

 

「なぁ、ルシの兄貴......もう良いだろ。お袋だって許してくれるって、だから......」

「止めろ、ダンテ。コレ(・・)は俺の問題(ちかい)だ。お前が口を出す様な事じゃない」

「......はぁ、難儀な性格をしてるモンだねぇ」

 

 頑なな彼の姿に説得は不可能と断じてダンテは黙る。

 両者の間に微妙な空気が流れ始めるが、今まで静観を決め込んでいたバージルが口を開く。

 

「―― ダンテ、そろそろ人間界へ帰るぞ」

「あっ? 今すぐにか?」

「そうだ。俺の用事も済んだ(・・・・・・・・)事だしな」

 

 そう告げたバージルは彼を置いてスタスタと玄関口まで歩を進める。ダンテはそんなバージルを慌てて追いかける。

 

「ちょ、待てよ⁉ 俺を置いてくな‼」

「なら早くしろ」

 

 既に鞘から閻魔刀を抜いていたバージルは眼前の空中を軽く十字型に切り裂く。すると閻魔刀を振るった空中に線が走り、次の瞬間にはガバッと別次元へ繋がる道が開かれる。

 

 キンッと心地よく閻魔刀を収めたバージルは振り返らずにその道へ足を踏み入れる。しかし数歩進んだ所で足を止め、背を向けたままルシファーへ一言告げる。

 

「―― そんな腑抜けた在り方(すがた)、母さんは望んでいなかったぞ」

 

 ルシファーの返事を期待していなかったか、端から聞くつもりが無いのかバージルは止めていた歩みを再開させて次元へ繋がる道奥へと姿を消していった。

 

 バージルが消えた後に続く様にダンテも足を歩めながらルシファーへ語り掛ける。

 

「―― 俺達(・・)は、もう選んだんだ。だから今度は、兄貴が決断する時だぜ」

 

 ダンテもバージルと同じ様に道奥へ姿を消すと、彼等を迎え入れた裂け目は綺麗に消滅する。

 

 双子が姿を消していった空中を眺めていたルシファーは、はぁと溜息を吐きながら近くにあった椅子へ重く腰掛ける。彼等の言葉に色々と考えさせられた彼は天井に視線を向け言葉を蒸らす。

 

「―― そろそろ、俺も腹を括るしかないのか......」

 

 

 

 

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