機動戦士フラッグIS   作:農家の山南坊

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今回はあまりグラハムさんが出てきません。


#9 パーティー

「というわけでっ! 織斑くんクラス代表決定おめでとうですぅ!」

『おめでと~!』

 

 食堂にクラッカーの音が鳴る。

 夕食後、一組は食堂に集まり一夏のクラス代表就任パーティーが催されていた。

 女子達が盛り上がる中、沈痛な面持ちが一人。

 主賓の一夏は壁に貼られた横断幕を見て場に合わぬため息を一つ。

 横断幕には『織斑一夏クラス代表就任パーティー』と大きく書かれている。

 ――本人がめでたく思ってないのにな。……はぁ。

 

「これでクラス対抗戦も盛り上がるねぇ」

「ほんとほんと」

「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて」

「ほんとほんと」

 

 あのさっきから相槌打ってる子って二組だったような気がするんだけど……?

 そう思い一夏は周りを見渡す。

 軽く見ただけで四十人以上はこの場にいる。

 ちなみにだが一年一組は男子二人合わせて三十一人である。

 

「人気者だな、一夏。楽しいだろう?」

 

 左から箒の尖った声がする。

 

「……本当にそう思うか?」

「ふん」

 

 鼻を鳴らしてお茶を飲む箒。

 かなり虫の居所が悪いようだ。

 

(……俺、なんかした?)

 

「はいはーい、新聞部でーす。今日は学園で話題の、織斑一夏君とグラハム・エーカー君に特別インタビューをしにきました~!」

 

 女子達の山をかき分けて女子生徒一人が宴の中心までやってきた。

 ボールペンとメモ帳を持ち腕に新聞部と書かれた輪をつけた姿はまさにジャーナリストといった風貌だ。

 インタビュアーの登場にさらに女子達が盛り上がる。

 

「あ、私は黛薫子。よろしくね。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺」

 

 差し出された名刺を一夏とグラハムは受け取る。

 画数の多い漢字だ。書く本人は大変に違いない。

 名刺に書かれた名前にそんなことを一夏は思う。

 右を見ると、グラハムが難しい顔をして携帯を取り出し名刺と画面を見比べている。

 その横からセシリアが覗き込んで話しかけている。

 あの試合以来、一夏とグラハムはセシリアとの仲は良好状態にある。

 特にグラハムとの仲がかなりよいらしく、練習以外でもこの組み合わせは一夏と比べるとかなり多い。

 

「まずはずばり織斑君! クラス代表になった感想を、どうぞ!」

 

 薫子はボイスレコーダーを一夏に向ける。

 その瞳はまるで無邪気な子供のように輝いている。

 

「えーと、まあその、がんばります」

「えー。もっといいコメントちょうだいよ~。俺に触るとヤケドするぜ、とか!」

「自分、不器用ですから」

「うわ、前時代的! ……しょうがないから適当に捏造しよっと」

 

 ジャーナリズムとはなんなのか。

 そんなことを一夏は思うが薫子は気づかない。

 気づいたとしても気にしないだろう。

 

「じゃあ、グラハム君。男性操縦者としてクラス代表の織斑君に一言!」

「ならばあえて言おう。一夏、ISの性能差が勝敗を分かつ絶対条件ではない。だからこそまだ見ぬ高みを目指すのだ! そうとも、そこは我々の場所だ!! それを誰よりも可能とするクラス代表(場所)にいる君を私は敬服する!」

「お、おお」

「いいねいいね、熱血漢って感じがするよ。あ、セシリアちゃんもコメントちょうだい」

「わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが、仕方ないですわね」

 

 そんなことを言いつつもセシリアは満更でもなさそう、というよりも自分もインタビューされることを見越していたのだろうか。

 グラハムがインタビューを受けている間もそばにぴったりとくっついていた。

 

「コホン。ではまず、どうしてわたくしがクラス代表を辞退したかというと、それはつまり――」

「ああ、長そうだからいいや」

「さ、最後まで聞きなさい!」

「いいよ適当に捏造するから。じゃあ最後にルフィナちゃん。織斑君たちに一言」

「え? え、ええっと」

 

 予想していなかったのかルフィナはしどろもどろだ。

 流れ的に来るとは思わなかったのかと思った一夏だがルフィナのそのしぐさに思わず。

 ――ちょっと萌えるなぁ。

 突如、ガツンという衝撃が一夏の後頭部に炸裂した。

 

「……一夏」

 

 箒だった。

 

「ちょ、なんで殴んだよ!」

「………………」

 

 睨むなよ、怖い。

 そんな一夏たちをしり目に薫子はズイッとルフィナにボイスレコーダーを突き出す。

 

「なんでもいいからちょうだい」

「じゃ、じゃあ。……みんな注目してくるけど気負いすぎず自然体でやっていくといいと思う……よ?」

「……まぁ、その可愛さに免じて改変はなしにしておくよ」

 

 んじゃ、とカメラを取り出す薫子。

 

「とりあえず四人ならんでね。写真撮るから」

「えっ?」

 

 気落ちしていたセシリアが声を上げる。

 だがそれは驚きというよりは喜色が強いように聞こえる。

 

「注目の専用機持ちだからねー。これはいい絵になるよ」

「そ、そうですか……。あの、撮った写真は当然いただけますわよね?」

「そりゃもちろん」

「でしたら今すぐ着替えて――」

「時間かかるからダメ。はい、さっさと並ぶ」

 

 中心に一夏とグラハムが立ち、その脇をルフィナとセシリアが並ぶ。

 どことなくセシリアの表情に喜色が浮かんでいる。

 

「それじゃあ撮るよー。35×51÷24は~?」

「え? えっと……」

「あえて言わせてもらおう、答えは74.375であると!」

「おお、正解!」

「すげえなグラハム!」

 

 思わず三人がグラハムの方を見る。

 その瞬間にシャッターが切られる。

 ……だが。

 

「……なんで全員入ってるの?」

 

 そう、その場にいた全員が撮影のまさにその瞬間に四人の周りに集結していたのだ。

 結果としては完全に集合写真状態である。

 

「あ、あなたたちねえっ!」

「まーまー」

「セシリアさんとルフィナさんだけ抜け駆けはずるいですぅ」

「クラスの思い出ってことでいいじゃん」

「ねー」

 

 丸め込まれたセシリアは苦虫をかみつぶしたような顔をしている。

 もっとも不服なのはセシリアだけで他の三人は特に気にしていないようだ。

 ……人数的にクラスの思い出になるのかというのは野暮というものである。

 その後もパーティーは十時過ぎまで続いていった。




 一応は原作に沿っているのでグラハムさんがほとんど出てこないという場合はこの先もちょくちょくでてきます。
 その辺りはご容赦のほどを。

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