機動戦士フラッグIS   作:農家の山南坊

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今回も原作メインなのでグラハムさん成分は少なめです。


#27 目覚めるモノ

 グラハムとルフィナはピットから試合を眺めていた。

 一夏たちの次に試合のある彼らはすでにピットに入るようすでに指示がなされていた。

 

「……やっぱり、箒はすぐに負けちゃったね」

 

「早いうちに彼女を倒さなければならない以上、こればかりはしかたあるまい」

 

「でも、やっぱり後が怖いね……」

 

「ああ……」

 

 一夏は勝っても負けてもひどい目に合うだろう。

 そのことをグラハムは口にしようとしたが試合の展開に再び目を奪われる。

 一夏の動きが変わった。

 ラウラのAICによる拘束攻撃を急停止・転身・急加速でかわし、少しずつ確実に距離を詰めている。

 

「グラハム程じゃないけど随分うまく避けてるよね」

 

 感心するようにルフィナが言う。

 

「……気づいたのだろう。違和感に」

 

 数日前。グラハムはAICを回避した時のことを尋ねられた際、

 

「違和感を感じたから避けた」

 

 と一夏に答えた。

 ISは身に纏うため、体の動きが機体に表れる。

 剣を振るう。銃を撃つ。

 戦闘スタイルが個人によるとはいえ、武器の扱いは基本、手の動きがある程度共通する。

 生成する前でも指の動きから何をするか読むことができる。

 だがラウラの手の動きはそれらと違う。

 殴る動きでもない。

 それをグラハムは違和感として初動で感知し、回避行動をとっていた。

 だがそれはグラハムの長い戦いの経験によるものだ。

 一夏は初動では完全には反応しきれず、発動ぎりぎりでの回避となる。

 それでも段々と回避方法が様になってきている。

 そんな一夏に焦れてきたのか、ラウラがワイヤーブレードも攻撃に加えた。

 ここまでくると一夏一人では無理だろう。

 そう、一人なら。

 

「……括目させてもらおう」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「一夏、二時!」

 

「わかった!」

 

 シャルルの指示に従い、一夏はワイヤーブレードの猛攻を潜り抜ける。

 彼女は射撃武器でのラウラの牽制、一夏への防御を抜かりなくこなしている。

 一夏はラウラを射程距離に捉えた。

 

「ちっ……小癪な!」

 

 一夏は刀を構えた。

 その刃をエネルギーが纏われる。

 

「無駄だ。お前の攻撃は読めている」

 

「普通に斬りかかれば、な」

 

 一夏は雪片弐式の切っ先を上げる。

 正眼の構えだ。

 彼は突きを放つ。

 

「無駄なことを!」

 

 ラウラのAICの網が完全に一夏を絡め取る。

 動きを封じこめる。

 

「剣にこだわる必要はない。ようはお前の動きを止められれば――」

 

 ――待て。

 違和感をラウラは覚えた。

 以前零落白夜を止めた際、エネルギーはゆっくりと消えて行った。

 だが今回は、AICが動きを止めた瞬間には刃に纏われていた光が失われていた。

 止められることを見越していたのか?

 ――まさか。

 慌てて視線を動かす。

 そこにはほぼ零距離まで接近していたシャルルの姿があった。

 

「俺たちは二人組なんだぜ?」

 

「くっ……!」

 

 後退しようとしたがもう遅い。

 シャルルがショットガンの連射を叩き込んだ。

 轟音と共に大型レールカノンが爆散する。

 それと同時に一夏のAICが解除された。

 

(予想通りだ)

 

 グラハムは一度完全に捉えられたにもかかわらずすぐに動きを取り戻していた。

 彼によればソニックブレイドを脚部に受けたことでラウラは動きを乱したと言っていた。

 それに疲労やダメージによって動きに精細さが欠けていたとも。

 そのことから一夏が考えたAICの弱点。

 それは停止させる対象物に意識を集中させていないと効果を十分には発動できないことだ。

 現にラウラはレールカノンを破壊された動揺で一夏への拘束を解除している。

 ――もっとも、そうそう使える手段じゃないけど。

 一夏はラウラを飛びざまに蹴る。

 その勢いにのって一夏は距離をとり、ラウラは体勢を崩す。

 シャルルはすでにショットガンを捨て、離脱している。

 

「一夏!」

 

「おう!」

 

 すぐに一夏は雪片弐式を再度構える。

 ここからなら確実に当てられる。

 そう確信していた。

 だが――

 

「くっ! ここにきてエネルギー切れかよ!」

 

 幾度が放った零落白夜、さらには今までのダメージが響いたのだろう。

 その刀に纏われる途中でエネルギー刃が消失した。

 

「残念だったな」

 

 ラウラが一夏の懐に飛び込んできた。

 その両手にはプラズマ手刀を展開している。

 咄嗟にブレードで弾く。

 そこからさらに続く猛攻をブレードでひたすら凌ぐ。

 一夏のシールドエネルギーの残量はほぼ0に近く、一撃でも喰らえばエネルギーを失うだろう。

 だが精度の高さにスピードの伴った攻撃は一撃一撃を防ぐので精いっぱいだ。

 長くはもたないだろう。

 だが一夏の目はあきらめていない。

 視界の端に超高速の影を確認する。

 

「まだ終わってないよ」

 

 瞬時加速により一瞬で超高速を得たシャルルだ。

 

「な……! 瞬時加速だと!?」

 

 ラウラが初めて狼狽の表情を見せる。

 無理もないだろう。

 彼女の閲覧したデータにはシャルルが瞬時加速を使えるとは書かれていない。

 それもそのはず。

 

「今初めて使ったからね」

 

「な、なに……? まさか、この戦いで覚えたというのか!?」

 

 シャルルの器用さにラウラも驚きを隠せないようだ。

 

「だが、私の停止結界の前では無力!」

 

 ラウラが右手を突き出す。

 AICの発動体勢だ。

 だが動きを止めたのはラウラの方だった。

 機体に衝撃を受け、集中力を削がれる。

 いきなりあらぬ方向からの射撃。

 ラウラはその射線上へ視線を走らせた。

 そして射手と目があった。

 一夏だ。

 シャルルが投げ捨てた火器のうち、残弾の残っていたショットガンを構えていた。

 二人は幾度か訓練を行った際に一夏にその特性を覚えさせるため、幾つかの火器に使用許可を下ろしていた。

 そして二人はこの作戦を思いついた。

 零落白夜を打ち損ねてたときの二段構えの作戦を。

 シャルルが使い終わるたびに武器を捨てていたのはこのための布石。

 切り替えのたびに銃を捨てればラウラは気にも留めないだろう。

 その中に残弾ありのものを紛れ込ませれば下準備は終わる。

 あとはそのときがきたら使用するだけだ。

 

「これならAICは使えまい!」

 

「貴様……!」

 

 だがラウラは一夏ではなくシャルルへ攻撃の矛先を向ける。

 一夏は近接格闘がメインだ。

 そこまで射撃の命中精度は高くない。

 それならば一旦一夏を無視してシャルルに集中してしまおうというのだ。

 

「間合いに入ることが出来た」

 

「それがどうした! 第二世代型の攻撃力ではこのシュヴァルツェア・レーゲンを墜とすことなど――」

 

 そこまで言って、ラウラはハッとする。

 存在するのだ。

 それを可能とするだけの威力を誇る武装が。

 

「この距離なら外さない」

 

 シャルルの盾の装甲が弾け飛び、中からリボルバーと杭が融合した装備が露出する。

 六十九口径パイルバンカー『灰色の鱗殻』。

 『盾殺し』の異名をとる第二世代型最強と謳われる武装だ。

 それはまさにラウラの想像した武装だった。

 それを目にした瞬間、表情に焦りが見えた。

 文字通り必死の形相。

 

『おおおおっ!』

 

 二人の声が重なる。

 シャルロットは左拳を強く握りしめ、叩き込むように突き出す。

 その動きは線ではなく点。

 腕の動きを読むことは困難を極める。

 さらには瞬時加速による接近。

 全身停止をかける余裕などない。

 ピンポイントでパイルバンカーを狙わなければ間に合わない。

 ラウラはその一点に狙いを澄まそうとする。

 だが、度重なる相手の意表を突く動きと焦りにわずかに意識が乱れる。

 

 AICは標的を外した。

 

 直後、ラウラの腹部に大型の杭が叩き込まれる。

 シールドエネルギーが集中、絶対防御を発動する。

 だがその分エネルギー残量を大きく奪われる。

 相殺し切れなかった衝撃が、深く体を貫いたのだろう、ラウラの表情は少し苦悶に歪んだ。

 しかし、これだけで終わりではなかった。

 『灰色の鱗殻』はリボルバー機構を持っている。

 そう、連射が可能なのだ。

 赤い火花を散らして連続して三発分の轟音が響く。

 四発も直撃をゆるし、ラウラの機体が大きく傾く。

 その機体にIS強制解除の兆候が見えたそのとき。

 異変が起きた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ……負けるのか?

 私が……?

 こんなところで?

 相手の力量を見誤ったのは間違えようもないミスだ。

 しかし、それでも負けられない。

 負けることは許されない。

 まだ、『奴ら』を倒していないのだから。

 『奴ら』を屠る力を欲した。

 それが強さだと信じて。

 その力をISに求め、

 その為に適性を上げる『越界の瞳』――疑似ハイパーセンサーを目に施すことも決めた。

 だが理論上、危険性のなかったはずの処置は失敗し、後遺症を残した。

 その後遺症により訓練で後れを取り、落ちこぼれの烙印を押された。

 仇敵とも呼べる存在を討つ力を得られず、私は深い闇へと突き落とされた。

 そんなとき、教官に出会った。

 教官に師事を受けて力を得た。

 IS部隊においても最強の地位を得た。

 私は憧れた。

 教官の強さに。

 その凛々しく、堂々たる姿に。

 だがその教官に優しい笑みをさせる男がいる。

 私の憧れた教官を変えてしまう存在。

 だから――許せない。

 『奴ら』を倒す力、それを見せてくれた教官の姿を別のものにする男が。

 私が必ず敗北させると。

 そう決めたのだ。

 それなのに……。

 私は負けるのか?

 

 ヴンッ

 

『弱い者いじめは私のするところではない』

 

 違う。

 私は弱くなどない。

 私は負けない。

 私は教官以外から恐怖など受けない。 

 それを、見せつけなくてはならない。

 こんなところで負けてなどいられない。

 

 そのためにも――力が、欲しい。

 

 あの光を打ち砕く力を!

 教官を変えるものを叩きのめす力を!

 『奴ら』を壊滅させるだけの力を!

 

『――願うか……? 汝、自らの変革を望むか……? より強い力を欲するか……?』

 

 言うまでもない。

 私は『奴ら』を、そして私を阻むすべてを敗北させる。

 だから、力を、その極みにある絶対的な力を――私によこせ!

 

 Damage Level……D.

 Mind Condition……Uplift.

 Certification……Clear.

 

 ――《Valkyrie Trace System》……boot.




今作ではラウラはあることに固執しています。
そういう意味ではキャラ改変なのでしょうか?
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