機動戦士フラッグIS   作:農家の山南坊

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オリキャラ出します。
嫌な人はここでバックを。


#5 転入生

 一日が経ち、グラハムがIS学園に通う第一日目を迎えた。

 白い制服をきっちりと着込んだ彼は所属するクラスの担任である千冬の後に続いて廊下を進む。

 先行している千冬が教室の前で止まる。

「待機していろ」

 それだけを告げ、彼女は教室に入っていく。

 入室と同時になる歓声と何かを強くたたく音が響く。

 その時間に改めて室名札を眺める。

 一年一組。

 IS初心者であるグラハムは、一年生として学ぶこととなった。

 グラハム自身、この待遇は感謝していた。

 いくらかつてワンマンアーミーを気取っていたとはいえ、男女比1:30は厳しいと彼は思っていた。

 しかし、これから出向く戦場でも2:30という戦力差が存在する。

 それでも友軍一人がここまでありがたく思う日が来るとは思わなかったな。

 

「エーカー、入ってこい」

 

 千冬の呼ぶ声にグラハムはドアに手をかける。

 

「失礼する」

 

 教室のドアをくぐる。

 

「グラハム・エーカーだ。国籍は日本。好物はマッシュポテト。以後、よろしく頼む」

 

 反応がない。

 

「私はすでに挨拶をした。反応の一つや――」

『きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』

 

(なんと!)

 

 まさに音の爆弾といえる大音量に内心わずかにたじろぐグラハム。

 反応しろとは思ったが、ここまでとは予想外というもの……!

 だが、武士たるものこれに耐えてこそとういものだろう。

 

「男子! 二人目の男子!!」 

「しかも金髪のイケメン!」

「織斑君もいるしもうサイコ―!!」

 

 ……あえて言おう、なんだこれは。

 よもや、こちらが反応に困ることになろうとは……!

 

「毎度毎度……なんでこう騒がしいんだ。静かにしろ!」

 

 おお、とグラハムは感心した。

 千冬女史の一括に教室が静まり返るとは。

 『ブリュンヒルデ』の名は伊達ではないとグラハムは実感した。

 

 

 

 自分の席へ向かうグラハムに一人の少年が手を差し伸べてきた。

 

「俺、織斑一夏。よろしくな」

「初めましてだな、一夏。グラハム・エーカーだ」

 

 グラハムも手を差し出し握手をする。

 

「男子が俺だけで知り合いが箒だけだったから助かったぜ」

「私もだ。まさか、ここまで視線を集めることになろうとはな」

 

 彼らは今教室内外からの視線に晒されていた。

 

「ほら、彼が」

「くせっ毛の童顔と傷跡のギャップって萌えるよね」

「どっちが攻めでどっちが受けかな」

 

 一部危険な会話もなされているがともかく彼らは注目の的となっていた。

 そして次の休み時間。

 席で一夏とグラハムが談笑していると

 

「ちょっとよろしくて?」

「へ?」

「なにかね」

 

 一夏の背後から降ってくる声に二人は顔をあげると一人の女子生徒が居た。

 ロールのかかった腰までのびる長い金髪。

 頭頂部でそれを抑える青のカチューシャ。

 碧眼をもつ顔は高慢な表情をしている。

 

「まあ!何ですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

「……」

 

 一夏はポカンとしている。

 対してグラハムは、

 

「失礼。では名前を聞かせてもらいたい。私か一夏に用があるのだろう?」

「わたくしはその態度のことを言っているんですの!」

「失礼だと言った。君は何者だ。答えてもらわなければ話にならんだろう」

「わ、私を知らない!? このイギリス代表候補のセシリア・オルコットを!?」

「ほう、代表候補生だったのか」

「あら、代表候補生については知っていらっしゃるのね。褒めて差し上げますわ」

 

 一応は会話になっているようだ。

 だが、一夏の質問がそれを断った。

 

「代表候補生って、何?」

 

 その言葉にクラス全員がずっこける。

 もちろんセシリアも。

 

「国家体表IS操縦者の候補生として選出されたパイロット達を指す言葉だ」

 

 その中で平然としているグラハムは一夏に説明する。

 

「詳しいなグラハム」

「一応参考書の類は読んだのでね」

「そう! エリートなのですわ!」

 

 ビシッと二人を指さしてセシリアが会話に割り込む。

 

「本来ならエリートたるわたくしの様な人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡・・・幸運なのよ。その現実をもう少し理解して頂ける?」

「……」

「まぁでも?わたくしは優秀ですから、あなた方のような人間にも優しくしてあげますわよ」

 

 二人の反応を見ることなくセシリアは続ける。

 

「ISの事で分からないことがあれば、まあ、泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。なんせ私は入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

 『唯一』という部分だけを強調して言うセシリア。

 

(まさか、自分でここまで言うとはな)

 

 いくら気位の高いヨーロッパ人でも滅多にはいまい。

 『スペシャル』を強調する男なら一人知っているがね。

 グラハムは内心苦笑する。

 と、何かを思い出したように一夏は言う。

 

「入試ってあれか? ISを動かして戦うってやつ?」

「それ以外に入試などありませんわ。」

「あれ? 俺も倒したぞ、教官。」

「は………?」

「グラハムは?」

「残念ながら相打ちでね」

「一応倒したんだな」

「倒したという意味は肯定しよう」

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

「女子だけっていうオチじゃないのか?」

「そういうことになるな」

「そ、そんなことあるわ――」

 

 セシリアに割って入るように授業開始を告げるチャイムが鳴る。

 

「っ……! また後で来ますわ! 逃げないことね! よくって!?」

 

 セシリアが去ると同時に千冬と副担任の山田が入ってくる。

 

「では、授業を始める……。だが、その前に決めることがある」

 

 最初に千冬はそう言った。

 

「再来週あるクラス対抗戦に向けてクラス代表を決めなければならない。誰かを推薦するものはいるか。自薦でも構わんが」

 

 ざわつく教室が色めき立つ。

 

「はい! 織斑君を推薦します!」

「お、俺!?」

「私はエーカー君を!」

「なんと!?」

 

 と、次々と女子生徒がグラハムと一夏を推薦した。

 

「織斑とエーカーか……。他には」

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

 すると、机を叩いてセシリアが立ち上がった。

 

「そのような選出は認められませんわ!大体、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!このセシリア・オルコットにそんな屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

 と、セシリアは言い放つ。

 

「実力からすればこのわたくしがなるのが必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

 言いながらセシリアはヒートアップしていく。

 そんな中、冷静に事態を見つめるグラハム。

 

「大体!文化として後進的な国で暮らさなければ行けないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で――――」

「イギリスだってたいした自慢なんかねぇだろ!世界一まずい料理で何年覇者だよ!」

 

 そして一夏は机をバンッと強く叩いて立ち上がると言い放った。

 

「なっ!?」

 

 それを聞いてセシリアは顔を真っ赤にしていく。

 

「あ、あなた…わたくしの国を侮辱すると言うのですか!?」

「先に侮辱をしたのはお前のほうだろ。イギリスも日本と同じ島国だろ」

「…うっ……」

 

 その事を言われてセシリアは言葉が詰まる。

 千冬が目を閉じて鼻で笑っているのがグラハムは見えた。

 どうやら弟を誇っているようだ。

 ふっ、とグラハムも口端がわずかに緩む。

 

「あ、あなた、わたくしを侮辱なさいましたね!?」

 

 と、セシリアが今度はグラハムにかみつく。

 どうやら彼がセシリアを嘲笑したように見えたようだ。

 

「座っているだけの道化にわたくしを笑う資格はありませんわ!」

「……」

「やめておけ」

 

 今にも怒り出しそうな一夏に、グラハムは立ち上がりなら左手で制する。

 

「グラハム」

 

 だがグラハムは一夏を見ず、セシリアと向き合った。

 

「君が何を思おうとも構わん。だがその汚名、戦場で晴らして見せよう」

 

 まっすぐと目を見てくるグラハムにわずかにセシリアはたじろいだが、

 

「……いいでしょう。お二方共、そこまで言うのでしたら……決闘ですわ!!」

 

 二人を指さし、言い放った。

 

「ああ、別にいいぜ」

「私もそれで構わない」

「勝手に話を進めるなといいたいが、まぁいい。他にはいないか」

 

 千冬の声に一人手を挙げた。

 

「……あの、私もいいですか?」

「スレーチャーもか」

 

 その苗字にグラハムがわずかに動揺するが誰も気づかない。

 

「なら、来週の月曜日に第三アリーナで総当たり戦を行い、その結果で決める。構わないな」

「は、はい」

「了解した」

「わたくしもそれでいいですわ」

「はい」

 

 よし、と千冬は応答を受けると、

 

「では、授業を始める」

 

 

 

「まさかな」

 

 放課後の教室でグラハムは呟いていた。

 よもや、クラス代表に名乗り上げることになろうとは。

 本来ならばセンチメンタリズムものだが。

 ……正直、私はクラス代表には興味がない。

 私の興味はあくまでIS。

 実際に操縦してみると、やはりISの性能には驚かされる。

 MSとは違い直感的な操作を要求される機体だが、その性能はまさにMSのそれだ。

 楯無の専用機はまさにガンダムと戦っているかのような気分だった。

 そして代表候補生を鼻にかけるセシリアが専用機でないはずがない。

 フッ、私も大概だな。

 パイロットとしての血が騒ぐ。

 

「織斑、エーカー」

 

 すでに授業が終わっている。

 女子生徒達が教室を出ていく中、こちらに来る千冬に呼ばれたグラハムは思考を止める。

 

「千冬姉―」

 

 バシン、という音とともに一夏に出席簿がさく裂した。

 グラハムが見ているだけでもこれで三回目。

 懲りないものだな。

 

「織斑先生だ。二人に話がある」

 

 よく聞け、と彼女は前置きをする。

 

「お前たちのISだが、予備機がない。そこで、学園で専用機を準備することになった」

 

 あらかじめ聞いていたグラハムは今さら驚かなかった。

 

「?」

 

 事情が読み込めていないらしい一夏に千冬はため息をつく。

 

「教科書を読め」

「ハ、ハイ」

 

 簡単にまとめよう。

 ISのコアは世界に467機分しかない。

 コアはプロフェッサー篠ノ之にしか作れないうえにプロフェッサーはもうコアを作っていない。

 コアは基本的に国家機関と企業、研究機関にしか与えらず、コアに関してはアラスカ条約で厳しく管理されている。

 

「つまりそういうことだ。本来なら専用機は国家代表、もしくは企業の所属の者。そして一定の実力を持つ代表候補生にしか与えられない。が、お前たちは事情が事情だ。データ収集が目的で専用機が与えられることとなった。分かったか」

「な、なんとなく」

 

 よし、と頷くと女史は私を見た。

 

「エーカー、お前の部屋のキーを渡すから職員室まで来い」

「了解した」

 

 グラハムと千冬は職員室に入った。

 千冬はデスクからルームキーを取り出した。

 

「一応言っておくが二人部屋で、更級がルームメイトだ」

「了解した。ところで私のISは?」

 

 鍵を受け取りながら気になっていたことをグラハムは尋ねた。

 

「あまりに独創的だったから馬鹿にいろいろ聞かれる羽目になったがおそらくもう制作に入っているだろう」

「馬鹿?」

「いやなんでもない。それよりも仮に設計図通りに作らせたら、搭乗者への負担は現行のISをはるかに超えるぞ」

「無視していただいて結構。それに前にも言った通り、多少は強引でなければガンダムは口説けんよ」

「……わかった。だが、後で音を上げても聞かんからな」

「望むところだと言わせてもらおう」

 

 ああ、とグラハムは付け加える。

 

「ただし、期限は月曜日までにしてもらいたい」

「そればかりは作る連中の腕次第だな」

「そうだったな」

 

 フッと二人は笑った。

 

 

 

 

「ちょっといいかな?」

 

 職員室を出てすぐにグラハムは呼び止められた。

 見るとクラス代表に最後に名乗り出た女子が立っていた。

 薄い金髪をショートカットで整え、淡い水色の瞳をしていた。

 短めのスカートではあったが制服を堅実に着込んでおり背はグラハムよりも幾分か小さかった。

 どこか気弱そうな表情の中に不釣り合いなほど強い意志を宿した瞳が印象的だとグラハムは思った。

 

「グラハム・エーカー君、だよね?」

「そうだ。君は確かスレーチャーだったか」

「ルフィナ・スレーチャー。ルフィナでいいよ。一応アメリカの代表候補生をしてるの」

「……」

 

 アメリカ。スレーチャー。

 これらがグラハムにある人物を彷彿させる。

 

「えっと……名前、変かな?」

 

 困った表情をするルフィナ。

 

「……失礼。気にしないでくれ」

 

 冷静を装って答えるグラハム。

 

「用件を聞いても構わないだろうか」

「さっき、セシリアさんと話していたよね」

「ああ」

「あの人男性に対して高圧的だったけど、私はそういうのが好きじゃないんだ」

「なぜそれを私に?」

「一夏にも話したんだけどね、学園のみんながああいう人だとは思わないでほしいなって」

 

 その言葉にフッとグラハムは笑みをたたえた。

 

「おそらく一夏も言っただろうが、私も皆がそうだとは思っていないさ」

「うん。……良かった」

 

 安堵するルフィナ。

 その様子に()()()()が重なる。

 いつも話をするたびに安堵を見せた女性に……。

 それを隠すようにグラハムは尋ねた。

 

「だが不思議だな。今の情勢は男卑女尊だというのに」

「それはそうなんだけど……今まで社会の中心を担ってきた男性に対してISが使えるだけで下に見るのは失礼だと私は思うの」

「ほう」

「だから、男性も尊重するべきじゃないかなって」

「……」

「……変、かな? そういうの」

 

 また不安げな顔をするルフィナ。

 

「いや。私は君の考えを支持するよ」

「……ありがとう」

 

 ルフィナは微笑む。

 グラハムも応じるように笑うがその内心はやはりある人物の影が付きまとっていた。

 

 スレーチャー、か……。




すいませんね。
いろいろ意味わからないと思いますが、これは作者の文才のなさに起因するものです。

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