▼いつもの派生士郎です。呪術キャラの名字、悉く「シロウ」という響きと相性が悪くて、いっそネタにしました。五条士郎。なんか語呂が悪い。
pixivからの転載
のちに冬木大災害と呼ばれるほどの大火災は、呪術師と呼ばれる者達も呼び寄せたらしい。なんでも、こういう場所で呪いが発生することがとてもよくあるから、とか。それを聴いたのは、まだ入院していたとき。俺を「特級呪物を取り込んでいる可能性が高い」として話しかけてきた男からだった。
結果として、俺は俺を救ってくれた恩人から離れ、冬木を離れ。ある家に養子入りすることになった。養子先の家の名字は「五条」と言った。
俺を引き取った男は、今代の五条家の当主、とやらで。あれよあれよという間に屋敷の奥へと運ばれ。着せられた慣れない和服に途惑いつつ、屋敷の最奥にやって来た。
そこは、一見普通の子ども部屋に見えた。和風であること以外は、ごく普通の。ただ、至るところに得体の知れないもの――それがのちに「札」と呼ばれるものだと知る――が張り巡らされていることばかりが目についた。
その中央で、テレビゲームをしていた子どもがいた。少年とも呼べないほどの幼さだ。自分より2つか3つ幼いだろう。それを見て、ここの大人に言われたことを思い出す。
『坊ちゃまはご兄弟がいらっしゃらないので遊び相手に不満足されているようです。ですので、士郎様。あなたが遊び相手になってあげてください』
成る程、自分は遊び相手として連れてこられたらしい。そんなことを思いながら片手を上げて「あの」と声をかける寸前、子どもは振り返った。本当に声をかける前だったから驚いた。テレビの画面ではゲームオーバーを知らせている。子どもは俺を見ると、コントローラーを放ってこちらに歩み寄ってきた。そして、まじまじと俺の体を頭の先から足の爪先まで見つめる。
「ふぅん。中に入ってるね。溶け込んでる、って言い方の方がしっくりくるかな」
子どもは子ども特有の頭声で訥々と語る。動けずにいると、子どもは「それで?」とこちらに水を向けてくる。
「ウチの親戚にしても見ない顔だ。親父にどこからか拾われてきたのか?」
「まぁ、そんなところ」
「ふーん、面白いもん拾ってきたな」
そう言って、子どもは俺の手を引っ張った。
「丁度いいや。どうせ俺の遊び相手になれって言われたんだろ。ひとりでやるゲームにはもう飽きたんだ。遊ぼう」
そうして、俺の五条家での立場はこの少年――「悟坊ちゃま」の遊び相手、ということになった。
さて、それから20年以上経つ。
「士郎~~」
「……」
「士郎~~~~」
「……」
「ねぇ士郎ってば~~遊ぼう~~~~」
ぱん、と机を叩いた。パソコンに向かっていた自身に対し、その向こうで座椅子の背もたれに向かって座っていたサングラスの男――成人した五条悟は暢気そうだ。なので、なお腹立たしい。自身は彼を睨め付ける。
「俺はお前にぶん投げられた五条家の雑務で忙しいんだよ。本業の呪術師としての仕事ができないぐらいな!」
「大丈夫大丈夫、士郎がいなくても世界は廻る。僕がいないとやばいけど」
「その世界を廻す1部を担っているのが俺なんだがな……!」
さて、この五条悟という男。生まれたときからその術式(さいのう)を見出され、自身にはよくわからなかったがそれは無下限と六眼使い、とやららしい。詳しいことは調べてもよくわからなかった。一応五条家に養子入りしたときから情報は開示されているが、かなしいかな、頭の出来不出来というものがある。閑話休題、そういう天才が現れて呪術師界隈は賑わった。呪霊も活発になるし呪詛師も活発になるし呪術師も逸材が出て来た。
そんな中でふと思い出すのは、この「悟坊ちゃま」の親友だった男のことだ。自分が東京高専の4年生のときに入って来たのが悟と彼で、自分は実習などに忙しくほとんど顔を合わせることはなかった。ただ、偶に顔を合わせると「友達ができた」と嬉しそうに話していたことを自身は思い出す。
その「親友」も去った今、悟に残されたのは呪術師最強という肩書きだった。
それがどれだけの価値があるかなどと、恐らく悟自身が思っていることだろう。だから、自身はそれを指摘したことはない。指摘しない代わりに、ただ傍にいた。
傍にいすぎたかも知れない――齢20才を超えてベタベタとしてくる「坊ちゃま」に辟易しながらモニターに向かっていると、ふと、か細い声がする。
「いいじゃん、少しぐらい。僕がいなくても廻るようにする準備なら、僕だってしてる」
本当に、細い声だった。
「お前は僕のなんだろ。僕の言うこと聴けよ」
横柄な台詞の割に、あまりに弱々しい声だったので。
自身は深々と嘆息したのち、キーボードから手を離した。
「……で、何をやりたいんですか『悟坊ちゃま』」
「そうこなくっちゃ。あのね、あのね、新作の映画観よう」
「悟は映画が好きだなぁ……」
言いながら、自身も座椅子から立ち上がる。部屋のブルーレイプレイヤーに持っていたディスクを滑り込ませていく悟の後ろ姿を見ながら、自身は再び息を吐いた。
(俺……結婚できるのかな……なんか、一生こいつに振り回されている気がする)
その危機感が的中していたことを知るのはもう少しあとのことだ。
自身は知らない。特定の者と契約することで無限の反転術式を発動させる特級呪物を埋め込まれた自身が、呪術師の研究所送りにならずに済んだのは偏に五条家の力であること。
そうでなくとも反転術式の効きが、呪物の影響で異様に良いこと。
領域展開もこなせるが、限定的な領域展開をすることで様々な呪具のコピーを生み出せること。
それらの術式が、呪術師はおろか呪詛師からも狙われていること。
それらすべてすべてが、五条家の力で押さえ込まれていること。
俺の平和な日常が五条家の力で成り立っていることなど、俺は知る由もなかった。
悟が封印されるまでは。
五条士郎(2018年度で32才になる)
・名前の語呂が悪いことに定評がある
・領域展開「無限の剣製」持ち。また領域を限定的に展開することで見たことのある呪具の劣化コピーを生み出せる
・特級呪物「アヴァロン」の器。本来は呪具といった方が近いのだが、既に彼の体に溶け込んでしまっているのでどうやって取り出したものかわからず早20年。
・なお187cmあるので五条と並ぶと「お前ら邪魔」と言われる。
・六眼で士郎の中にあるモノを看取した悟は、遊び相手としての彼を気に入っており、彼を全力で庇護下に置こうとしている。呪術師としてあまり活動させたがらないのもそのため
切嗣
「ひどくない?」