思ってたよりもたくさんの人に読んでもらい、作者大喜びです!
「ありがとうございます! ありがとうございます!
あぁ、そんなにたくさん!
皆さん無理をなさらないでください! お気持ちだけで結構です!」
現在、俺は町の一画でパフォーマンスを終えたところだ。この世界に転生して2週間、最初はなかなか声も出せなかったが、今となってはこうしておひねりをもらえるくらいには上達した。
クヌム神を使った芸はかなり好評で、外見のリクエストなんかも受けるようになった。
中でも人気だったのは、ドワーフとエルフを交互に演じながらやった、落語。今寝泊りしている馬小屋の中でこのネタを思いついた時には自分の才能に恐怖したほどだ。
(もう一度やるのも手か? いや、まだだ、もうちょっと新規の人が増えてからやるべきだ)
おひねりを回収しながら帰り支度をする。
こうして稼いだあとは、街の大衆浴場にむかう。日本人としては一日働いた後は熱い風呂に入ってゆっくり体を癒したい。
幸いこの世界の風呂は、元の世界と比べると少々割高という程度で、全く稼げなかった日はあきらめるが基本的に毎日通っている。
さっぱりしたあとは、適当に夕食を済ませる。モンスターの肉を扱っている店は多く、最初は抵抗があったが今となっては、元の世界の肉料理と同じ感覚で食べている。夕食を済ませたらそのまままっすぐ馬小屋へ向かう。
「おっ、ラッキー」
馬糞がついていないわらを発見したので、シーツを敷いて寝床を作る。あとは、明日のネタを考えて寝るだけ……。
「おい、ちょっと待て」
ふと冷静になって独りごちる。
「あれ? 俺、なに当たり前みたいに芸人やってるんだ」
この世界には冒険者になって、魔王を倒すために転生したのだ。それなのに、なぜこんなことを……。
この世界は確かにゲームのような世界ではあった。レベルやらステータスとかが存在し、ギルドでクエストを受けてそれを達成してお金をもらう。
その辺は確かにゲームなのだが、そこに行きつく手前で躓いているのが現状だ。
ゲームでよくある初期装備だとか、初心者用のチュートリアルなんてものはない。さらにはモンスターと戦闘しなくてもクリアできるような、薬草の採取クエストなんてのも存在しなかった。
…………よくよく考えてみたら、そんなことで日銭を稼ぐなんて甘い話、あるわけがないのだがそんな現実知りたくなかった。
…………いや、違う。《クヌム神》以外のもっと強力なスタンドが出てくれたら、こんなことする必要がなかったのだ。
《クヌム神》
ジョジョの第三部に出てくるスタンドだ。
その能力は顔の造形はもちろん身長、体重、果てはにおいまでも自由に変えることができる。以上。
…………いや、別に弱いとは思わない。実際に漫画のほうでもギャグテイストだったものの、承太郎たちを毒殺の一歩手前まで追い込んでいたり、偶然に偶然が重ねりうまくいかなかったが、承太郎が爆死する可能性もあったわけで、使いようによっては強力であることも理解できる。こと対人戦に関しては暗殺の可能性を考えれば多分こいつはアタリだ。
だがこの世界では強みがマジでない。
モンスターが相手となるとパワー不足だ。
もしかしたら、山賊討伐とかで活躍できるかもと思い、クエストがないか聞いたがどうやらないらしい。
これも考えてみたら当然だった。そんなことしてたら当然町に入れない。そうなると、モンスターが蔓延るこの世界で、わざわざ常に命の危険をさらしながら生活することになる。だから山賊なんて存在はまずいないらしい。
おまけにこの《スタンド使い》という職業もハズレだった。どうやらこの職業、習得できるスキルがマジでスタンドしかない。
例えば、片手剣というスキルを習得すれば、今まで剣を持ったことすらない人でも片手剣の扱いがわかるらしい。冒険者になる人は、そうやって攻撃に使えるスキルを習得して、モンスターを倒し、レベルを上げていく。これが基本だ。
だが俺の場合、攻撃のためのスキルというものが現状ない。一応、食事でもレベルを上げることができるようだが、それじゃあまともなスタンドが出るまで何年経つかわからない。
このままじゃあ、モンスター討伐なんてきっと無理だ。
いや、本当にそれでいいのか?
俺は、一体何のためにこの世界に来たのだ。魔王を倒すためだ。
こうして第2の人生を歩んでいるのも、女神様がチャンスをくれたおかげ。ここでうじうじしてても何も始まらない。
今こそ思い出せ、ツェペリのおっさんの言葉を!
人間讃歌は勇気の讃歌!!
人間のすばらしさは勇気のすばらしさ!!
「よし! 明日からやってやる!」
「おい、うるせーぞ! 静かに寝ろ!」
「あっ、すんません!」
馬小屋でクエストを受ける決心をした次の日、俺はロングソードを購入して、クエストを受けた。
受けたクエストは、ジャイアントトードと呼ばれるモンスターの討伐で、危険なモンスターではあるが、比較的初心者向けらしい。
見た目は、一言で言えば巨大なカエル。金属を嫌うらしく装備の整った冒険者は好んでこいつを狩るらしい。
「おいっ! おい! やめろ! 危ねえだろ! おいっ、ちょっとま、危ね! やめろつってんだろ!」
現在、逃げ回っている。
昨日は、何が相手でもなんとかなる気がしたが、そんなことはなかった。だいたい、巨大と言っても大型犬ぐらいだろうと思ってたのだ。牛よりでかいとか聞いてない。
しかし、俺が捕まることはないだろ。
この2週間、四六時中クヌム神を使ったおかげで、スタンドのシステムはある程度だが理解した。
まず、スタンドを使うためには、魔力が必要だった。クヌム神の場合、変身中に魔力を消費した。
しかし、消費した魔力は微々たるものだ。おそらくだが必要な魔力の量は、スタンドの持続力と関係があるのだろう。クヌム神の持続力はAだ。もし持続力がDやEのスタンドなら使えたとしても一瞬、下手したら使えなかったかもしれない。そういった意味では、最初から使えるスタンドが出たのは幸運だったのかもしれない。
そしてクヌム神に意外な活用方法があった。このスタンド、脂肪量、筋肉量も思いのままだった。運動神経は変わらないし、元の体と違いすぎると動かしかたがわからなかったりと、劇的な変化は望めなかったが、このカエルが相手だったら逃げるのに苦労することはないだろう。
…………逃げるだけなら、だが。
(ちっくしょう! こんなん無理ゲーだろ!)
そもそも、人間は素手の状態だと中型犬にすら勝てないらしい。扱ったこともない剣を持ったところで、こんなモンスター相手じゃ意味がない。
ツェペリのおっさんも言ってただろ。強大な敵に立ち向かうことは勇気とは言えない。こんなの相手に挑もうとするやつはノミと同類だ。
ん? じゃあこいつに一度でも挑もうとした俺はノミと同類ってことか?
逃げるために必死に動かしてた足を止める。
は?
振り返る。
「誰がノミだゴラァァァァ!!」
「はぁっ…………はぁっ…………」
目の前には、息絶えたカエルが倒れている。
なんか頭真っ白になって、はっきりと覚えてないが討伐に成功した。
自分の姿を見てみるとめちゃくちゃボロボロだった。
だが、討伐には成功した。
カエルの舌が触れたところに粘液が付いていたり、返り血でベトベトだが一匹の討伐に成功した。
クエスト内容、三日の間にカエルの五匹討伐のうち、一匹の討伐に成功した。
…………残り四匹……。
「はぁっ…………うっ、ゔぇっ……」
返り血で気持ち悪くなって吐いてしまった。
「うっ……ぐすっ………………帰りたい……」
この世界に来て初めて泣いた。
………冒険者やめて芸人になろうかな……。
《鈴木丈士》 16歳
性格は、知人からはお人好しだと言われるが本人いわく違う。
目の前で困っている人がいて、それをスルーしたら罪悪感を感じるのが嫌で、助けることが多い。
基本的に温厚だが、ふとした瞬間(なんか自分一人で勝手に)キレる。
キレると後先考えずに行動するようになり、そのせいで地域のDQNから(頭のイカレタやべーやつと)恐れられる存在になった過去あり。