今回は原作でもおなじみのアイツが出ます。
ジャイアントトードを一匹討伐した俺は、一度、大衆浴場に寄った後ギルドに向かった。
今回俺が討伐したジャイアントトードは、肉の買取を行っていて移送サービスを使って、5千エリス手に入った。
…………正直、芸やってたときのが稼いでいるが、あまり考えないようにしている。
今はギルドで夕食をとっている。
「はあ……」
ため息が漏れる。すると、急に俺の肩に腕が回される。
「よう! ジョウジ、何しけた面してんだ!」
「…………何だ、ダストか」
俺に話しかけてきたこいつはダスト。
ドブに落ちて何年も放置された硬貨みたいに薄汚れた性根の持ち主だが、クエストについて教えてもらったし装備の選び方もこいつから教わった。
「何だとは何だ。ほれ、言いたいことがあったら言っとけ。今ならたった一杯で聞いてやる」
「……いや、そこは先輩としてただで聞いてくれよ」
「いやいや、たかれる機会があるんならそれ見逃すわけねえだろ?」
「その言い方やめろ、せめて相手を気遣う風だけでいいから。すみませーん、ビール大ジョッキ一つ」
「かしこまりましたー」
とりあえず注文だけして話を聞いてもらう。
「ま、どんなふうに戦ったか知んねえけどよ、初心者のうちはそううまくいかねえもんだぞ」
「でも、ジャイアントトードって初心者向けのモンスターなんだろ。俺めちゃくちゃ苦戦したぞ」
「そりゃあ、鉄製の防具をちゃんと用意できてればの話だ。ジャイアントトード相手に苦戦するのは、何もお前だけじゃないぞ」
「ふーん、そうなるとしばらく苦戦することになりそうだなー……」
「お待たせしましたー」
酒がテーブルに運ばれたので、ジョッキをダストに渡す。
「ほらよ」
「お、サンキュー。てか、自分で言うのもなんだけどよく俺におごる気になるよな」
そういってジョッキに口をつける。人の金で飲む酒はさぞうまいのだろう。ごくごくと飲んでいる。いい飲みっぷりだ。
「ま、お前のおかげで能力の活用方法に気づけたからな。そのお礼みたいなもんだ」
「いや、あれマジで怖かったからな。お礼ってか、どっちかっつったら罪滅ぼしだろ」
そう、こいつと出会ったのは冒険者になった日の翌日……。
あの日、俺は冒険者ギルドで朝食をとっていた。
「おいおい、お前か? 昨日冒険者になったばっかの初心者ってのは?」
「そうだが、何だよ?」
今思い返すと随分失礼な態度だった。
朝から機嫌が悪かったのだ。スキルでハズレを引いたのと、馬小屋で寝るのに慣れていなかったから寝不足になっていたのが原因だ。
あとは、あれだ。めちゃくちゃ見下されているように感じたからだ。これに関しては、ある程度ダストのことについて知った後ならわかる。絶対見下してた。
「おいおい! お前、職員の話じゃ新種の職業になったらしいじゃねえか。言っとくが、あんま調子に乗るんじゃねえぞ!」
絵にかいたようなチンピラだった。すごいな異世界、まさかこんなこてこてのチンピラが本当にいるとは。
「んで、てめえいったい何が出来んだよ? もし使えそうなやつだったら、特別にこのダスト様と一緒にクエストを受けてやってもいいぞ」
もはや笑えるレベルの小物だった。出会えてラッキーと思えるほどの。
しかし困った。もう自分のスキルについて話さないといけないのか。ましなスタンドが出てから他の冒険者と交流を持とうと思ってたのだが。
俺としては、能力についてはあんま話したくなかったが、まあでも、いつか周りにも認知されるんだからと話すことにした。
まあ、すぐに後悔したわけだが……。
「……見た目を自由に変更できる」
「は?」
何か強力なスキルを持っていると思っていたんだろうか。
クヌム神の能力を簡潔に説明してやったら、ぽかんと口を開けてフリーズした。
「ぷっ、ぎゃはははははは! おいおい何だよそれ! そんなんでどうやってクエストクリアすんだよ!」
だが、それも一瞬のことで今度はこちらを指さして笑い始めた。
「あーあ、どんな職業なのかと気になってたが、まさかこんな使えねーやつだったとは」
ひとしきり笑い、こちらを馬鹿にするような言葉を浴びせてくる。
(……我慢だ。冒険者になって早々、問題を起こしたら絶対やりずらくなる)
本当だったら一言ぐらい言ってやりたかったが、そこはぐっと耐えた。
「あー笑った笑った。まあでも、ここは優しい先輩である俺からアドバイスをくれてやろう。そのスキルの活用方法だ」
「……アドバイス?」
自分でもわかっていない、この能力について助言してくれるということで、この人への認識を改める。
(……なんだ、ただのチンピラかと思ったら普通にいい人じゃねえか。最初にいろいろ言ってたのも、初心者で何もわかってない俺をクエストに誘おうとしてたってことなのか?)
だがこいつは、俺の期待を平気で裏切る。
「美女になってそこらのおっさんの相手でもすれば、いい金になるだろうよ!」
さすがにこの言葉にはプッツンした。
第5部に登場したポルポが言っていた、この世で最も忌むべき行為は『侮辱』することだと!
『侮辱する』という行為に対しては、殺人すらも神は許してくれるそうだ。
思い知らせてやろう。
「なるほどな、ならさっそく試してみるわ」
「は?」
何か言い返してくると思っていたのだろうが、あっさり引き下がる。挙句、侮辱としかとらえるしかないアドバイスを、実行すると言い出し、訝しんでこちらを見る。
だが、そんなのお構いなしに《クヌム神》を使う。どんな姿に変身したいか、明確なイメージを持って顔をこねくり回す。
イメージするのは妖艶な女性だ。出るところは出て、引っ込むところは引っこんでいる。誘っているのではと思わせるように美しく。肌の色は病的なまでに白く、うるんだ瞳で見つめる。すらりと伸びた、今にも折れてしまいそう腕を使い、長く伸びた黒髪を口元に持っていき、口を隠してミステリアスな雰囲気を醸し出す。
変身能力を目の当たりにしたダストは、呆然と俺を見ている。
「ねえ……どお……?」
今にも消えてしまいそうな、しかしどこか耳に残る儚く美しい声で問いかける。
「え?! あ、いや……その……」
顔を真っ赤にして、こちらの問に答える余裕はなさそうだ。
どうやらこいつのストライクゾーンを、うまい具合につけたらしい。
「私、綺麗?」
改めて問いかけると、鼻の下を伸ばして答えてくる。
「お、おう。すげえ綺麗……です……って、いやいやいやいやいや! 何だよお前! 俺のことおちょくってんのか!」
口では随分と強気だが、どこか緊張している様子だ。
俺は席を立ってダストに近づく。何も言わずに近づく俺に見惚れてか、何も言わなくなってしまった。
ただし、視線はしっかりと胸元を見ている。
……男子の視線は女子にバレバレというのは本当のようだ。俺も気を付けよう。
「な、なあ。いつまで口隠してんだよ、さっさと顔見せろって」
どうやらダストは、ずっと髪で隠している口元が気になるようだ。
────―なら好きなだけ見せてやろう。
ゆっくりと腕を下す。すると重力に従って黒髪がするりと下りる。
さぞかし気になっていたんだろうな。ダストは口のあたりをじっと見つめている。
口がみえるようになりダストは──────────
「へ?」
──────────
「これでも綺麗?」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「いやー、思い返してみればいい思い出だな」
あの時の驚きようは、思い出すだけで笑えてくる。
「おい! お前本気で言ってんのか! 俺あのあと黒髪のネーチャンがトラウマになったんだぞ!」
ダストがなんか言ってるが、あれのおかげで《クヌム神》を使った談話を思いついたんだ。もしさっきのクエストだって芸で《クヌム神》を使うことに慣れていなかったら、今頃カエルの腹の中かもしれない。
「はあ、まいいや。んで、どうしたんだ? まあ、おごってもらったからな、話聞くぜ」
そういって俺に話すよう促す。
「いや話すけど、たぶん話してどうにかなるもんじゃないぞ」
そして、ダストに今回のことを話す。この職業が取得できるスキルについてだったり、そのせいで苦戦したことなんかだ。
「なるほどな。いや、でもそりゃそうなるだろ」
「いやでもよう、俺まだこの変身のスキルしか持ってないんだって」
そりゃあ俺だって、好きで剣を扱うスキルもなしに戦ってるわけじゃあない。だが、スタンド使いはスタンドしか習得できないし、レベルアップして新しいスタンドを出さないと、いつまでたっても変わらない。そのためにもあんな風に無茶しなきゃならん。どうしろってんだ……。
「だったらよー、パーティーメンバーを募集するのはどうだ?」
「……あー、なるほど」
ふむ、確かに仲間がいればこんな無茶をする必要もないかもしれない。単純に数の力というのも偉大だし、もし仲間が了承してくれたら、最後のとどめを俺に譲ってもらって効率よくレベルアップできるかもしれない。
「ちなみに、パーティーの人数は4人ぐらいがおすすめだぜ。それ以上増やすとなると、報酬の取り分がだいぶ少なくなるからな」
「ふむ……よし、さっそく仲間募集の張り紙を出してくるわ。話聞いてくれてありがとな」
テーブルの上に、自分の飯とダストの酒の代金を置いて席を立つ。
「おーう。こっちも、奢ってくれてサンキューな」
募集の張り紙を張った後は、もう夜遅かったから馬小屋に向かった。結果が出るのは明日、果たしてちゃんと人は来るのだろうか。
どうしよう、結局、話進んでない(泣)
次回こそ!次回こそ、進めていきます!