仲間募集の張り紙を出して次の日、朝一番から、もうすぐお昼時というこの時間まで、張り紙で指定した席に座っているが、一向に希望者は現れない。
別に厳しい条件を書いたわけではない。おそらくだが、俺が今まで見たことのない、スタンド使いという職業なのが問題なのだろう。一応、スタンド使いという職業の説明も記載しておいたが、果たして意味はあったのだろうか。
(やっぱ、その辺もゲームと違うんだな)
あくまでも冒険者という
(やっぱ自分からいかないとダメか)
募集はあきらめてどこか他のパーティーに自分を売り込みに行こうとしたとき、
「失礼します。あの、スズキジョウジさんは貴方ですか?」
「えっ……あ、はい!」
後ろから声をかけられたので振り向くと、そこには気品あふれる少女が立っていた。
俺よりも1つか2つ年下だろうか。
キラキラとした金髪をボブカットで整え、うつくしい碧眼。
身につけている防具は、ほとんどが革製の軽装であるが、武器の方は立派なものを装備していた。腰に下げている剣は少々大きく、一見少女には似合わないものだが、彼女の気品がそうさせているのだろうか。格式ある女剣士を彷彿とさせる。
「あの……?」
「あっ、はいそうです。俺がスズキジョウジです」
年下なのだろうが、つい見惚れてしまい反応が遅れた。
「よかった。では、失礼しますね」
そういって彼女は、申し訳なさそうに頭を下げて、俺の向かいの席に座る。正直、ここまでの美少女と出会ったことがないので緊張してしまう。
…………一応、死んだ後に出会った女神様も美人ではあったが、あの人はノーカンでいいだろ。最後のほうは威厳も気品も偉大さもなかったからな。
しかし、このまましばらく無言というのも、彼女が機嫌を損ねるかもしれない。必死すぎるかもしれないが、こちらとしても早く強くなりたいのだ。
「いやぁ、助かります。もう誰も来ないんじゃないかと不安になっていたので」
「でしたら、もう少し早く来るべきでしたね。あ、敬語じゃなくて結構ですよ、おそらく私のほうが年下ですし」
「そうか? だったら、そうさせてもらうわ。なら、そっちもため口でいいぜ」
「いえ、私はこのしゃべり方が染みついているだけですので」
随分としっかりした人だ。正直、冒険者に似つかわしくない。どっかの国のナイトとかのほうがよっぽど彼女に似合うだろう。
なぜ冒険者になったのだろう?
「では、自己紹介から。私はシャーリーと申します。職業はソードマスターです」
「はあ!?」
驚きの声を上げる。少し大きな声を上げてしまい、彼女はそんな俺を見て不思議そうに首をかしげる。
「? どうかしましたか?」
なぜ驚いているのかわからない、という顔をしている。しかし、どちらかというと、俺のリアクションのほうが正しいはずだ。
ソードマスターは上級職だ。上級職になるには必要なステータスが非常に高く、上級職になるころにはかなり高レベルになっているはずだ。もちろんそんな人は、固定のパーティーを組み優遇されていのが基本だ。
「あの、悪いんだが冒険者カードを見てもいいか?」
「あ、はい。どうぞ」
案外素直に渡してくれた。このカード、スキル取得を本人じゃなくても、このカードがあればできるため、普通なら不用意に渡したりしない。
信用されているのか? いや、彼女とは初対面なはずだ。きっと人を疑うこと知らないのだろう。
カードを確認してみると、確かにソードマスターだった。しかもまだレベル3。つまり、最初からソードマスターの適性を持っていた、いわゆる天才ということになる。
そんな人とパーティーを組めるかもしれないというのは、大変うれしいのだがこうなってくると疑問しか浮かばない。
「なあ、なんで俺のところに来たんだ? 正直、俺と組んでもだいぶ不釣り合いな気がするが」
「えっ!? えっとそれは……」
彼女が困ったように視線を動かす。
「えっと、その……何というか…………もう、
驚いた。なんかすごい熱意を持ってくれていた。なぜだろう? 彼女とはこれが初対面のはずだが。
新種の職業として書いた、スタンド使いに引かれたんだろうか? いろいろと疑問は残る。
(でも、このチャンスを不意にするのはもったいない)
ここまで強い人が入ってくれるなんて、思ってもみなかった。パーティーを組んだとしても、地道にやっていくしかないと思っていたが、彼女の力があれば楽にレベルアップできるかもしれない。
「まあ、とにかくよろしくな。知ってるだろうが、俺はスズキジョウジだ。早速で悪いんだが、これからジャイアントトードの討伐クエストを手伝ってもらってもいいか?」
「え!?」
彼女から驚きの声が上がる。
「もしかして、この後すぐは都合悪いか? 一応、期間は明日まで大丈夫だから、無理しなくていいぞ」
「あっ、いえ大丈夫です! はい、あの……大丈夫です! やってみせます!」
彼女はそう言って、覚悟を決めたかのような表情をして立ち上がる。
? まあ、やる気があるのいい事か。
昨日と同様、ジャイアントトードのいる平原に来た。すでにジャイアントトードは発見しているし、あっちは俺たちに気づいていない。少々距離はあるが絶好のチャンスだ。
「じゃあせっかくだし、あの一匹を任せてもいいか?」
先陣を女の子に任せるのは、情けないが上級職がどれくらい強いのか気になった。
「は、はい! やってみせます!」
そういって彼女は剣を抜き、構えをとる。
やけに緊張しているようだがどうしたんだろう? 彼女の力をもってすればカエルなんて容易いはずだ。
いや、よくよく考えてみれば、彼女も経験の数で言えば、俺とそう大差ないのだろう。レベル的にもモンスターを討伐しことは1回か2回のはずだ。
(やっぱ強くても緊張とかすんだな)
一人で勝手に納得していると、彼女が地面を蹴って走り出す。
剣を持った状態での走りだというのに、ぐんぐんとカエルとの距離を縮める。
(速っ!!)
驚いた。上級職の動きは、常人と比べると雲泥の差だというのは聞いていたが、まさか走るだけでもここまで違うとは思わなかった。何も持たずに全力疾走したら、ボルトより早い。たぶん。
一瞬でカエルの背後にまで迫った彼女は、大上段の構えをとる。
この状況になってもなお、カエルは彼女に気がつかないでいる。
俺があんなにも必死になって倒したカエルを、彼女はこうもあっさり倒せてしまう。もはや嫉妬や妬みすら感じず、尊敬してしまう。
そして、今俺の心を満たしているのは希望だけだ。昨日まで感じていた不安なんてものは、彼女が一瞬で取り払ってくれた。
(いける! いけるぞ! 彼女の力があれば俺のレベルアップなんてすぐだろうし、魔王討伐だって夢じゃない!
きっと、これから始まっていくんだ! 夢に満ち溢れた冒険者生活が!)
彼女は剣を振り下ろし、カエルを切る──────
────────ことなく、彼女の剣はカエルにあたる直前でピタリと止まる。
「は?」
彼女は振り下ろす姿勢をとったまま全身を細かく震わせ、一歩も動かない。
カエルはようやく気付いたのか、ゆっくりと向きを変えて彼女と向かい合う。
「やっ……」
それでもなお動かない彼女目掛け、カエルはくち開いて近づく。
「やっっぱりむりぃぃぃ……ふみゅ…………!?」
そういって、すすり泣きながら、カエルの腹へと消えていった……。
「ちょっと待てええええええ!」
俺はロングソードを持って駆け出した。
「やっぱり、今回もだめでした……」
俺の目の前には、カエルの粘液でねちょねちょになって、いわゆるorzのポーズをとっている彼女の姿。
その隣には、息絶えたカエルが横たわっている。
カエルが捕食中は、動かないことが大きかった。
でなければ前回のように、倒すのに相当手間取ったはずだ。
「な、なあ。なんで切らなかったんだ? あそこまでいったら、もう振り落とすだけだろ?」
俺が質問すると、彼女がビクリと体を揺らす。
「えっ…………えっと……その、実はこれ……だいぶ昔からなんですけど……その……」
かなり言うことをためらっている。もしかしたら、深い事情があるのかもしれない。
「……生き物を殺すの……可愛そうで無理なんです…………」
「おいちょっと待て」
……は? おい冗談だろ…………。
「おまえ、冒険者だよな?」
「はい……」
「バリバリの戦闘職だよな?」
「はい……」
「なんで冒険者やってんの?」
「ふぐぅ……!」
俺の言葉を聞いて縮こまった。
「あっ、あのー……それにはちょっと事情がありまして……って、それはあなたには関係ないですね……。
ごめんなさい…………パーティーの件も忘れてください」
そう言って頭を下げる。
「お役に立てず、ごめんなさい……」
そのままの姿勢、ずっと彼女は辛そうに頭を下げている。
そうしている彼女の姿を見ていると非常に胸がいたんだ。
いやいやいやいやいやいや、落ち着け。
うん、無理だ。いくらなんでも、パーティーなんて絶っっ対に無理だ。
何やらワケアリっぽいし、優しいだけの彼女がこうやって苦しんでるのは、たしかに気の毒だが、こっちにだって生活がある。
冷たい言い方をしてしまえば、もし仮にパーティーを組んだら、彼女にだって報酬を渡さなきゃならん。そんなの我慢ならない。
きっと他のパーティーにも断り続けられたんだろう。
何度も何度も、勇気を振り絞ってクエストについていって、そしてきっと、毎回こうやって、申し訳なさそうに頭を下げて…………。
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、無理無理無理無理。
なんとかしてあげたい気持ちもそりゃあるけど、うん、無理d「ぐすっ……」
……………………。
「ひっく…………うぅ……」
………………………………………………。
…………………………………………………………………………。
「あああああああああああああ、クソっ!!!!!」
「ひぃ!」
大声を出した俺にシャーリーが驚く。
「おい! いいか! まずはっきりさせときたいことがあるからこれだけは言っとくぞ!」
「ご、ごめんなさい! もう二度とあなたの前に姿を見せないので、どうか」
「俺は面倒な金銭トラブルが嫌いだ! クエストの報酬はメンバー全員に均等に分配! これについて文句はあるか!」
「どうか許してくだ、……へ?」
不思議そうにこちらを見てくる。何を言ってるのかわからない、という表情だ。
「おい、どうなんだ?」
「あっ……えっと、文句……ない……です」
随分と答えるのに時間を使っているが、この際いいだろう。
「よし、ならそこは問題ないな。だがなあ! 俺は金銭トラブルは嫌いだが、給料泥棒はもっと嫌いだ! 囮、荷物持ち、道具の整備! 報酬分の仕事はちゃんとやってもらうからな! 覚悟しとけ!」
俺の言葉を聞くと、目を見開いてこちらを見てくる。
「あっ、あの! てことは私、パーティーのメンバーに……」
「サボってると判断したら即解散だからな」
別に同情して入れるわけじゃない。次の希望者がやってくるか、わからないから、ひとまず組むだけだ。
「はっ、……はい! どうかよろしくお願いします!」
そう言って、満面の笑みを浮かべた。
……まあ、この顔が見れたんだ。今回はラッキーとしておこう。
全身ぬちょぬちょだけど。
第5話、読んで下さりありがとうございます。
そして、すいませんでした!書き始めた頃と色々と考えが変わり、タグに無いのにも関わらず、オリジナルヒロインが登場してしまいました!
オリジナルヒロインが苦手という方に、大変失礼な形となってしまいました。
途中でタグを増やすことになってしまい申し訳ありません。今後は、こういったことのないようしていきますので、どうかこれからもよろしくお願いします!