この不運な俺に祝福を(切実)   作:キャド

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この不運な俺に戦力を!

「本当にいいんですか? もう土下座しなくて」

 

「だ、大丈夫だから! それに、私たち紅魔族がちょっと変わってる、ていうのは重々承知よ。だから、さっきのことはもう気にしないで」

 

 そう言って、くーたんさんが俺に笑いかける。

 

 …………なんていい人なんだ。あれだけ酷いこと言われたんだ。再起不能になるまで殴ってもおかしくないのに、何も言わないどころか俺を許してくれるという。

 

「…………?」

 

 感動している俺の横でシャーリーは不思議そうにくーたんさんを見つめている。

 

「どうかしたか、シャーリー。俺が言えたことじゃねえけど、あんま見つめるのも失礼だぞ」

 

「いえ。ただ、聞いてた話と、少々印象が違ったので」

 

「ん? くーたんさんって有名なのか?」

 

「あっ、いえ、そちらではなく紅魔族についての方です」

 

 びくりとくーたんさんが体を震わす。 

 

「その……聞いてた話では、紅魔族の人は大仰なポーズを取りながら名乗ると聞いていたので」

 

「なんだそれ? そんなわけわかんない人間の集まり、あるわけないだろ」

 

 そりゃあ独特な名前を付ける種族みたいだけど、そこまでずれることはないだろう。

 だが、改めて彼女を見ると、先程の説明とは違う点が見つかる。

 

「そういや、さっきの説明だとみんな魔法使いっていう風に聞いたけど、見た感じ魔法使いって感じでもなさそうだな」

 

 彼女が背負っているのは弓と矢筒で、魔法使いが使う杖の類は持っていないように見える。装備を見る限りでは、魔法使いではなくアーチャーといった感じだ。別にアーチャーでも特に問題ないのだが、先程の説明と違っていて疑問に思う。

 

「えっと…………実は私、いわゆる()()()なんだよね……。期待を裏切る形になるんだけど、職業もアークウィザードじゃないんだ……」

 

 アークウィザードというのは魔法使い系の上位職で、先程のシャーリーの説明だと、どうやら紅魔族はアークウィザードであるのが普通のようだ。だが、くーたんさんは違うらしい。そのことを告げる彼女の表情は気まずげで、どこか愁いを帯びている。

 

 …………シャーリーもそうだが、この人も訳ありらしい。

 

「…………まあ、アークウィザードじゃないことは気にしなくていいですよ。正直、どんな人でも入ってくれるだけで十分ですから」

 

「大丈夫ですよ、絶対私のほうが問題児なので」

 

 今言ったことも別に嘘ではない。この際、多少の欠点も気にしないし、シャーリーが言ったのもその通りだ。こんな地雷人間、そうそういてたまるか。

 

「それに、アーチャーだって十分戦力になる職業だって聞いてます。聞いた話だと、狙撃だけでなく偵察もできるとか」

 

 このパーティー、形だけ見れば前衛職2人という構成だったんだ。後衛職の冒険者が入ってくれるならバランスも良くなる。さらに偵察も可能となれば安全にクエストを進められるし、いざという時、弓矢による援護があると考えれば頼もしい。

 

「あっ、職業なんですけど、アーチャーじゃなくてスナイパーです」

 

「えぇ!?」

 

 シャーリーから驚きの声が上がる。より正確に言えば、ただ驚いているというより信じられないという様子だ。

 

「なあ、シャーリー。スナイパーってどういう職業なんだ?」

 

 冒険者になるうえで、ある程度の職業は受付の人に聞いていたのだが、スナイパーという職業は聞いたことがなかった。

 

「ス、スナイパーはアーチャーの上位職なんです! しかも、他の上位職と違い、スナイパーになれる人はほんの一握りです! まだ具体的な条件がはっきりとしていないんですが、単純にステータスが高ければいいという訳ではなく、そもそもの適性がなければなれない、珍しい職業なんです! 習得できるスキルもかなり強力らしく、即戦力間違いなしです!」

 

 シャーリーは興奮した様子で説明をする。どうやらかなりレアな職業らしい。その上、非常に強いときた。

 もしシャーリーの言っていることが本当なら、ありがたい話だ。俺が望んでいた強いパーティメンバーが入るわけだからな。

 

 …………だがなぜだろう? なぜか不安を感じている自分がいる。

 

「あ、あの! 念のため冒険者カードの確認をしてもいいですか?」

 

「え、えぇ。もちろんよ」

 

 カードがシャーリーに渡されたので、俺も確認をしてみる。どうやら嘘はついていないようで、職業の欄にスナイパーと記載されてある。

 

 ………………あれだ。シャーリーという前例があるもんだから不安になるだけだ。こんな問題抱えてる奴が何人もいるわけない。大丈夫、ただの杞憂だ。

 

「あの、なぜくーたんさんは、私たちのパーティーに入りたいと思ったんですか!?」

 

 シャーリーが詰め寄って質問する。そりゃそうだ。さっき説明的にも、彼女なら引く手数多のはずだ。

 

 ……………………正直、いやな予感しかしないのだが、まだ決まったわけじゃない。きっと大丈夫だ。

 

 

 

「え!? えっと……あの…………その、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ………………………………。

 

 

 

「お、おお! まさかそこまでの熱意をお持ちとは! これはもう、我々のパーティーに加入ということ「ちょっと待て」で、って、どうしたんです、ジョウジさん?」

 

 シャーリーが不思議そうこちらを見てくる。シャーリーとしては、彼女のパーティー加入に一切のためらいはないようだ。

 

 だが、くーたんさんの視線は先程から泳ぎっぱなしだ。

 

「なあ、くーたんさん」

 

「な、何かな? あ、別に敬語じゃなくていいよ。私のほうがお姉さんだけど、気にする必要なんてないからね」

 

「じゃあお言葉に甘えて。なあ、くーたん」

 

 別に何もないならそれでいい。だが、確認だけはしておかなくてはならない。

 

「なんか()()()()()()とか持ってたりしないよな」

 

「うぅっ!?」

 

 身を縮こまらせて下を向く。……この反応、まさか本当に何かあるのか? 

 

「ちょっとジョウジさん、失礼ですよ。言っておきますけど、上位職で問題抱えてる人なんて、私ぐらいのものです」

 

「おい、そんなこと胸張って言うな。というか、お前みたいなやつがいるから疑うんだろうが」

 

「大丈夫ですよ、そもそもスナイパーだって適性がないとなれない職業なんですよ。スナイパーになれている、それだけでエリートの証なんです。問題なんてあるわけないですよ。ですよね、くーたんさん」

 

 くーたんの方に視線をやると、いまだにうつむいたまま体を震わせている。

 

「あ、あれ? くーたんさん、どうしました?」

 

 

 

 

 

 

「当たらないです……」

 

 

「ん? 何ですか?」

 

 くーたんが何か言ったが、えらくか細い声で聴きとれず、シャーリーが聞き返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ…………()()()()()()()()……です………………」

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

「………………………………えっと、狙撃スキルのような攻撃系のスキルは取ってますよね?」

 

「はい……取ってるけど当たらないです」

 

「えぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………………………よし。

 

「さようなら、またどこかで会いましょう」

 

「ちょっと待って! 最初に言わなかったのは謝るから、お願い! どうか話だけでも聞いて!」

 

 席から離れ立ち去ろうとしたが、腰に手を回ししがみついて止めにきた。

 

「おい、やめろ! 離せ! これ以上悩みの種を増やしてたまるか! だいたいお前が入ろうもんなら、いよいようちのパーティー冒険者もどき集団だろうが!」

 

「お願い! お姉さんを見捨てないで! なんでもするから! このままじゃ、実家への仕送りもまともにできないの!」

 

「ジョウジさん! 話だけでも聞いてあげましょうよ! それに、さっき言ってたじゃないですか! どんな人でも入ってくれるだけで十分だって!」

 

「うるさいうるさいうるさい! 仮にこいつ入ろうもんなら一体どうなる! 方や攻撃できない前衛! 「うぅっ!」 方や攻撃当たらねえ後衛! 「ひぐぅっ!」 なんだお前ら! まともなのは俺だけか!」

 

「うわあああん! スキル! スキルだけはちゃんとしたのあるから! お願いだから話だけでも聞いてえ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 くーたんが言うには、攻撃できなくても役立つスキルがあるという。

 

「で? 要はその『万里眼』と『行動予測』のスキルがあれば、偵察なら完璧と」

 

「そお! だからお願い! 役に立って見せるから!」

 

 万里眼は、アーチャーが習得できる『千里眼』の上位スキルで、千里眼よりもさらに遠方の視認が可能らしい。さらに暗視も可能になり、薄い壁であれば透視も可能になるというスキルらしい。

 行動予測は、敵が次にどのように行動するかわかるスキルだと言う。あくまでもある程度というだけで、一挙手一投足完璧にというのは無理らしい。

 

 確かにこれだけ聞けば、非常に優秀なスキルがそろっている。

 

「もちろん報酬も少額でいいの。メンバーなんて思わず、便利な望遠鏡ぐらいに思ってくれていいから。だからお願い! どうかこの通り!」

 

 そう言って深々と頭を下げるくーたん。

 

 ……実際のところどうなんだろう? シャーリーと違い、まだ彼女が戦っている姿を見ていないため、正確な評価ができない。

 というか、いろいろと疑問が残る。

 

「なあ、なんでスキル取ってるのに攻撃当たらないんだ? はっきり言って信じられないんだが」

 

「私も、なぜスナイパーになれたのかが気になります。そもそも、スナイパーという職業は、適性があって初めてなれる職業だと聞いています。スキルなんて関係なしに、弓矢の扱いにおいて類稀なる才能を持っているはずです。そんな人がどうして」

 

 俺とシャーリーが疑問を口にする。さっきのシャーリーの説明とくーたんの言っていることがあまりにも違いすぎるのだ。

 

「え、えっと…………実をいうと、私が弓矢の才能もないのにスナイパーになれている理由には心当たりはあるの。でも……ごめんなさい。

 

 そのことについては、絶対に言えないし、言いたくありません」

 

 そう言って、くーたんは再度頭を下げた。

 

「大事なこと秘密にして、パーティーに入れてほしいなんて、虫のいいお願いなのはわかってる。でもまさか……私もこんな風になるなんて……思ってなくて…………」

 

 …………結局理由はわからなかったが、少なくともくーたんがこの状況に不本意なのはわかった。さらに言えば彼女が何かしらの苦悩を抱えているのも察することができた。

 

 なぜそんなになってまで冒険者を続けているのか? 言えないし、言いたくない、どちらか一方だけでもいいはずなのに、この二つを同時に出した理由は何なのか? こんな風になるなんてと言ったが、一体彼女はこれまで何をしていたのか? いろいろと聞きたいことはあったが、彼女が話す時に見せた、あの辛そうな表情を見ると追及できずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まっ、だからといって彼女をパーティーに入れるかどうかは、また別の話だ。スキルが優秀なのは理解した。彼女が何も好き好んで問題を抱えているわけではないというのも分かった。

 

 だけど、攻撃が当たらないってのはどうよ。そんな奴は一人で十分だろ。できれば一人もいない方がいいけど。

 

 それに、もうしばらくしたら冬が来るらしい。馬小屋で寝泊まりしている駆け出し冒険者も、さすがに冬の間は宿に泊まるらしい。そのためにも金をためておく必要がある。いくら偵察できるからといって、攻撃できないやつを入れるのは無理だ。このままじゃ、俺の負担はそのままに取り分だけ減っちまう。そんなの絶対に許せない。

 

 だいたい、彼女がどれだけ苦しもうが俺には関係ないしな。うん、そうだよ、最初っから突っ撥ねてればよかったんだ。別に誰かのために自分を犠牲にする必要ないしな。

 

 

 

 

 そう、俺は自分のためなら鬼畜にも外道にもなれる。そういうやつだ。やっぱりここは諦めてもら 「ひっく…………」 ……………………え? 

 

 

 

「うぅ……わたしは……なんであのときあんな……ひっく…………うえぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………………………………………………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あークソ。わかった、わかったよ」

 

「ぐすっ……え?」

 

 マジで女ってずるいと思う。

 

「明日、ジャイアントトードの討伐クエスト、10時にここ集合な」

 

「え? ……えっ、えぇ!? いいの!?」

 

 くーたんが立ち上がって俺に詰め寄ってくる。

 

「勘違いすんなよ。明日、試しでクエストやってから判断するってだけだ。もし使えねえ奴って判断したら、パーティーに入れないからな」

 

 そう、別に焦る必要だってない。こいつのスキルがどれだけ優秀なのか判断してからでも遅くない。そう、ただそれだけ。俺ってマジ合理的。

 

「うん、うん! わかった! 本当にありがと! お姉さんの力、見せてあげるから明日はよろしくね! またね、シャーリーちゃん、ジョウジ君!」

 

 そういって、さっきの沈み具合は何だったのか、嬉しそうに走り去っていった。

 

「……あいつ、ちょいちょい年上ぶりやがって」

 

 やけにお姉さんアピールするもんだから、めんどくさいったらありゃしない。

 

「あっ、一人で勝手に決めて悪かったな。そういうわけだから明日はあいつと、って何だよその顔」

 

 途中から、シャーリーの意向も聞かずに勝手に決めたことを謝ろうと振り向いたら、気色悪ぐらいニコニコしてこっちを見ていた。

 

「いえ、やっぱり優しいなと」

 

 ……こいつ、まだ言ってやがる。

 

「あのなー、何回も言うが俺は優しくねえ。今回のパーティーだって一時的なものだし、そもそもお前がいたら、まともに人が集まらないと思ったんだ。だったらたとえどんな奴だろうと、頭数増やそうって判断だ。はぁーあ、なんでこんないろいろ考えなくちゃいけないのかね。あーあ、ポンコツがいるでせいでマジで疲れるわー」

 

 …………しまった、ちょっと言いすぎちゃったかな? 

 そう思ったが、シャーリーはいまだニコニコしたままだ。

 

「……なに笑ってんだよ。人の話聞いてたか?」

 

「はい、そんなポンコツを見捨てようとせず、面倒を見ようとする優しいリーダーの話。ちゃんと聞いてましたよ」

 

「…………クソが」

 

 




読んでいただき、本当にありがとうございます!
話の進みが悪く大変申し訳ありません!

作品の悪い点については、可能な限り改善していきます!
まだまだ稚拙な作品ではありますが、よろしくお願いします!
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