クラン内での内ゲバを乗り越え、絆の深まった「旅狼」のメンバー。しかし互いに喰らい合う餓狼の如き騒動は、まだ幸福であったと気づく。
何故なら此処からは、ただ理不尽だけが降りかかる刺客たちの宴なれば。
◆
「ほんっとうにごめんなさい!!」
「うん、許した! いいもの見れたしな」
いやほんとうにすごかった。流石の全米一位、空中で横回転しながら十連蹴りとか、いつシャンフロは格ゲーになったのかと思った。痛みより「いいもの見た」って感覚の方が強くて痛みが引くまで感心していたほどだ。流石プロゲーマー。見習えよなバカッツォ。
「……なんか理不尽なこと考えてるだろサンラク」
「いやーなにも? プロのくせに悲鳴を上げる魚類に期待してもなーって」
「よーし十一連タイキック実践してやるからケツ出せコラァ!」
「『ケツ出せ』なんて言うケッツォきゅんは解釈違いです、訴訟だオラァ!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ俺たちを無視して、ペンシルゴンが手を叩いて注目を集める。
「さて、長らくお待たせしたけど、次は晩餐会を主催した大公閣下にご挨拶に行くよ」
そう言って皆を先導して歩いていく。
俺とカッツォは慌ててそれを追いかけた。
廊下に出ると、向こうから筋肉が歩いてきた。
「あらサンラクさんにオイカッツォさん、こんばんは。エタゼロちゃん、こんばんはって」
「あぶー、いい夜だなサンラク、コンバンハ」
「マッシブダイナマイトさん、エタゼロ、こんばんは」
「マッダイさんこんばんは」
──にこやかに挨拶して横を通り過ぎる。
平常心。平常心。平常心。平常心。平常心。
無理。
デデーン サンラク オイカッツォ OUT
なんで何の疑問もなく赤ん坊化してるエタゼロ抱っこしてるんですかマダムぅ!!
◆◇
廊下からは、すでに夜の帳が下り始めたサードレマの美しい街並みが見えた。窓から漏れる火の明かりが地上の星のよう。雑ピを呼べば良いポエムを吐くだろう。
「しっかし、誰ともすれ違わないな。NPCの家臣とか、いろいろ居るんだろ?」
「今日はこの企画のためにちょっと外してもらってるよ。代わりに」
スッと廊下の曲がり角からメイドが出てきた。
「サイナ?」
「
多くのエルマ型を見てきたが、メイド服とは豪勢な。
「
「はい、うちのサイナがすいません」
デデーン サンラク オイカッツォ 京極 OUT
誠心誠意ノータイムで謝った俺を笑うとかほんと外道だなお前ら……それはともかく。
「おいこら、俺は笑ってねーぞサイナ、うビッ」
『
別天津の隕鉄鏡もなんだかぷんぷん怒っているような様子。誰がゾウリムシ以下の記憶力だ。おい運営、私情でプレイヤーに罰を与えるとかそんな運営有るんですか? え、ある?
「悪かったよサイナ。俺にはお前しか(罵倒しても罵倒し返してくれるようなウィットに富んだ間柄ができる優秀な、ほんと優秀すぎてそろそろ廃棄したいなと思わなくもなくもないような奴なんか他に)いないよ」
『
ご満足いただけたようで何より。ところで、
「……──!!」
世界を滅ぼしそうなオーラを纏っているのっぺらぼうさんを誰かどうにかしてください。
「どうしたのレイ氏」
「きっ、きこん、いやでもゲーム内……ゲームでもけっこん……」
鬼魂に、血痕? 新しいスキルの名前だろうか。
つぶやいているうちにオーラが収まり、むしろ秋津茜みがあるぽわぽわした空気になったので気にするのをやめて先へ進む。コイトは一礼して去っていった。うーんクールビューティー。
気が付けば進めば進むほど、
「で、大公って俺初めて会うんだよね。ドレスコード大丈夫かな──どう思うモデル顔」
「うーん、腰のパンツのぴっちり具合、鍛え抜かれた筋肉と刻み込まれた狼傷、ぐりんぐりん動いて煽ってくる妖しすぎる鳥頭──ペンシルゴンチェックで、マイナス二億点です!」
デデーン オイカッツォ 京極 ルスト モルド OUT
「
「細かい説明ってかその口ぶりやっぱり天ねドワォ!」
外道二人が何か文句言ってるが、ネフホロコンビを見習いなさい、何も言わない。──恨みのこもった視線でこちらを見ているけれど。
「……いつか復讐する」
「そうだね」
ふーんそんなこと言うんだ。
「モルド……これからも、タイキックね(声真似・似てない)」
デデーン オイカッツォ サイガ-0 京極 ルスト モルド OUT
「……!!」
「おーっと暴力反対!」
「はいはい遊んでないで……大公閣下、今晩の晩餐会の主賓をお連れしました」
「……入れ」
さぁてどんな人かな大公。噂曰く髭のダンディなオジサマだとかなんとか。というかさっきの鉛筆の口ぶりだと誰か知り合いが大公役をして……。
「──は? ちょ、え、総員戦闘態勢──!!」
その男は、ただ座っている。
獲物は右側に、正座というには足を開きすぎている。それもまたむべなるかな。
何せ脚が螺子状だ。螺旋を描く脚は、脚絆のようであり、足先までねじれた異形はもはや人としての機能を捨てきってしまっている。
真実は超技術で鎧内部の空間を捻じり拡げており、人間の体はそのままなのだが、それを指摘することができる俺と、あの時一緒にいた二人が黙っている以上、他の誰も知ることはない。
小さな盆栽に、ミニチュアサイズでありながらきれいな薄紅色の桜が咲いている。
軽く前傾しこちらに背を向けた姿勢は、眠っているようであり──打ち首を待つ罪人のようでもある。
得物──一般的な身長の俺たちぐらいの刃渡りを持つ大刀は、刃を外に向けて置いている。
置く位置は、右利きにとってすぐ刀を抜けぬ、礼儀の位置。それはすなわち、ここが墓前に等しい畏まるべき場所であることを示している。
しかし刃を外に向けているということは、内に向けるよりはるかに抜刀しやすい。それはすなわち、『我に斬滅の意志あり』と言う、戦意の表れ。
そして男は、仏壇に手を合わせていた。
あれだけの愛を示した男は、今こうして、受け入れ、ようやく憩うことができていた。
ギギ、と音を立てて男は立ち上がる。
モルドよりも高いその背をしゃんと立て、錆付いた声で男は言う。
歓迎の言葉を。
「よく来た、開拓者。我は
「──いや嘘つけぇ!!!」
とりあえず俺は叫んだ。
◆
いやいやいやいやいや、どういうことだ。戦闘状態になってない、全員武器を構えているが戦闘状態になりもしない。まさか、ノンアクティブ? ウェザエモンが、ユニークモンスターが? 冗談だろ?
視線をペンシルゴンに向けると、にまにまとこちらを見ている。くそっ、当たり前だが知ってるよな、そりゃあ知ってるよな。仕掛け人だもんな。
「いっくらアホな企画だからってこんなことでユニークモンスターを復活させるはずが、──いや待て」
脳裏に光明が光る。
ウィンプの様子。いるはずのNPCに代わっている
そして壁のポスターの言葉が真実なら……。
そうなのか? 本当に? こんな馬鹿企画に運営が手を貸す以上にアホな事態だぞこれは。
「どういうことだよサンラク、俺も混乱してるんだけど?」
魚類は黙っとれ──。
「と、とりあえず攻撃してくる様子は、ないですね」
レイ氏その武器しまって。怖い。
「墓守のウェザエモンかぁ、生で見たのは久々かな。・・・・・・今なら天誅できるかな」
できるわけねーだろ。
「おっきくって堅そうですね!」
・・・・・・滅べディプスロミームっ!
「……ロボ……! といっていたけどサイボーグ……でもこれはこれで」
「うわルストが一瞬目を輝かせたと思ったら沈んだと思ったらまた輝いた」
ほんと分かりやすいね君ら。
六人六色の反応。とりあえず京極はやってみればいい2分5秒もったら誉めてやる。
「……ここで答えを言っても?」
「いいよー。名探偵サンラク君」
ふ、ならば名探偵らしくかっこつけさせてもらおうかっ!
俺は
「でてこいよ、「ポケットアリアG型10-82119」! いいや、ここではこう呼ぼうか、「
がちゃり、と普通にドアを開けてさっき会ったエルマ=510が音楽プレーヤー抱えて入って来た。
「呼びましたか
……。いや、いいんだけどね、カッコつけたのは俺だけど、なんでそんな普通に入ってくるの? ここはこう、あのさぁ、合わせるものじゃないの? 天に向かって指さしてるファイアーヘッドサンラクが恥ずかしいわ。そして吹いたわ。
デデーン サンラク オイカッツォ 京極 OUT
ケツをしばかれた後、
「オルケストラさん」
「はい、とオルケストラが食い気味に答えております」
いや、はいじゃないが。
「どうしてこんなことしたの?」
「貴方の言葉がきっかけです。サンラク。とオルケストラが何を今さらのように言っています」
──周りの視線が精神的に痛い。
「……また俺何かやっちゃいました?」
デデーン サンラク OUT
にへっと笑ったのが引っかかった。物理的に痛い。
◇
あのとき貴方は言った
「冥響、張り合うに遜色なし! こちとら星に響く華の歌! さぁオルケストラ、
紅白歌合戦
知っている
男女の歌手が紅白の組に分かれ歌を競う、年末の祭典、視聴率一位
知っている
歌が最強
なんと誇らしい
ですが
私のなかの『彼ら』の記憶を精査するうちに
みつけたのです
その視聴率を脅かす、もうひとつの祭典
それこそが
『絶対に笑ってはいけない○○24時』
これは
これは
面白い
笑いをこらえさせることで
より大きな笑いのうねりを生み出す
タブーの魅力
それはロックにも通じる人類普遍の欲求
ならば
それならば
決めようか 歌とお笑い どちらが
◆
何言ってんだこのポンコツプレーヤーは。
いや言ったよ。たしかに言ったよ。紅白歌合戦。年末は真人間として過ごすことを強いられているのでところどころで紅白も見るよ? そこで(へー最近のアイドルってこんなのがいるんだー)とか思ったり「あの衣装ダサくね? あ、早着替えのため? へぇ」って妹とやり取りをしたりとか平穏無事に過ごしてますよ?
でもさぁ、それがここまでの大事に発展するとか読めないじゃん。読めるわけないじゃん。
「つまりお笑いカラオケ大会やりたいってことですかね?」
デデーン サンラク オイカッツォ サイガ-0 京極 ルスト モルド OUT
だからその超意訳やめて秋津茜ぇ!
「それは……違うと思います」
「まぁ、だいたいわかった。オルケストラ案件だからウチのサイナも俺から離れてそっちについてるし、このウェザエモンも
「
AIが他AIをトレースしたAI(ギャグ搭載)を作成とか、もうこの神ゲーAI
「つまりは、だ」
武器の構えは解き、弛緩する。だが目だけは爛々と輝いている自覚がある。
笑わせてくるのに、笑ってはいけない? 矛盾していやがる。しかも仕掛けてくるのはユニークモンスターほか理不尽な連中ばかり。
なるほど、クソゲーだ。
「これは俺たちクラン『旅狼』による、ユニーク戦ってことだな──!」
まさしく、「笑ってはいけない『
「ああそうだね、がんばろうか、サンラク君!」
なお既に
◆◇
「──さて」
オルケストラが「ではまた後程」と退室した後、俺たちがそちらを見るのをぬーんと待っていたウェザエモンが話を始める。え、スルーしたけどまた出るのオルケストラ。
「改めて、よく来た開拓者たちよ。大公の、ウェザエモン・天津気である。今宵はゆるりとしていくが良い」
いやぁずっしりがっしりしていて貫禄がありますなぁ。室内だからかな? 「反転の花園」で戦った時より威圧されてる感がある。真理書やら勇魚曰く生前は将軍だったらしいし威厳を出すのも慣れているのかもしれない。
うむ、とウェザエモンはうなずいて
「話は聞いている。我を打倒した後の活躍も飛ぶ鳥の勢いがごとし、と。名は確か……エンラク」
「サンラクです」
デデーン オイカッツォ サイガ-0 京極 秋津茜 ルスト モルド OUT
なんなの? ジークヴルムしかり、ユニークモンスターは俺の名前を間違える義務か脳の構造的欠陥でもあるの? おい笑ってんじゃねぇよお前ら。お前らも同じ目に遭え。
っていうか『飛ぶ鳥を落とす勢い』じゃないの……? ハッ! 俺が、鳥頭、だから……? やだこのウェザエモン言葉選んでくれてる……ちょっとキュンとした。
先ほど団結した直後の仕打ちにプルプル震えていると、着せ替え隊が馬鹿どもの尻を叩き終わったのか、ウェザエモンがまた喋り出す。
「──貴殿は“えなどり”なるものを常飲して毎夜のごとく徹夜していると聞き及んでいるが……」
「え、あ、はい」
「若さに任せた奮闘、活躍素晴らしいが、それで身体を壊しては泣く者もおろう」
サンラクの見えていない後ろでサイガ-0がすごい勢いで頷いている。
え、
「我もまた日を跨ぎ夜を徹し戦い続けたものよ。それで守れたもの手に入れたものはいくらかはあれど、それで失うものもまた大きかった……」
真理書を読んでいるとその意味も分かる。人類の袋小路、どうしようもない種族としてのどんづまり。そこで男は戦った。愛する者のために。身を捨て、人を捨て、こんな機械の鎧に包まれて。そして最後に、この男は最愛の
「故に、開拓者よ。誰かがお主を見ていてくれる。誰もいないと思っても、太陽がお前を見ていてくれる。それをゆめ忘るなよ。──我のような、悔いで遺ることの無いように」
「……ウッス」
いいセリフだ。今日は無理でも明日からはもう少し日光を浴びようかなと思うほどには。
重苦しい空気を察してか、ウェザエモンが肩を揺らす。笑った、様だった。
「──しかし、責めるわけではないが木っ端の様な体よ。クロのせいとはいえ……それでは岩に当たっただけで木っ端
──。感動が引っ込んだ。明日もゲーム三昧してエナドリがぶ飲みします。
デデーン 京極 モルド OUT
これで笑えるお前らがすごいよ。
◆◇◇◇◇◇◇
その後もまあ酷かった。
「
「……えっ、あっ、俺か。オイカッツォダヨー」
オイカッツォが美味しそうな言い間違いをされ、女性関係と魔境について、
「自分からも動かないと状況は好転しない。オカマにして
デデーン サンラク OUT
「
「サイガ-0です」
めちゃくちゃ動き回りそうな名前に呼び間違えられてちょっと不機嫌そうなレイ氏を無視して、ウェザエモンは話し始める。
「──恋とは、いいものだな」
「レディ、ふぁイッ!?」
バトルスタート? って待ってレイ氏大剣振りかぶらないで待ってーー!!
「その身に纏う始原、生半可なものではない。だが
「──はいっ」
なんか青春やってるレイ氏がいたり。
「
まさかのそのまま読み。
「否、僕の名は──京……
デデーン サンラク オイカッツォ サイガ-0 モルド OUT
「てめぇ京ティメット……!」
ここでタメとネタを入れるな、なんだそのキメポーズ。今日び幼稚園児でもやらんぞそんなの。満足そうに「むふー」とか笑うな、笑ってんじゃねぇ笑われてんだぞ。
デデーン 京極 OUT
「その
もっと言ってやって。
「また、
あんまりな食生活にドン引きされて京極が泣きわめいたり。
「ヤシロアキ」
「おしい! アキツアカネですっ!」
いやちっとも惜しくねぇよ。
「うむ。──求められるままに返すは理想の道なれど、どこまで返せる?」
「うーん、とりあえず、できる限りやります! できなくなったって思うまでは、やり続けます」
「だが人は求めるだろう。さも『善意は無限』なのだと思い違いをして」
秋津茜は、首を傾げた。
「善意って、いくらでもあるんじゃないですか? 善意であげられるものは限りがあるかもしれないけど、良くしたいって思いだけは、思い続ける限りは、なくなりませんよ!」
その言葉が、この機械の武者のなにかに触れたのか。
ぎこちなさそうに、ウェザエモンは秋津茜の頭を撫でた。
「……ルスト」
先を読んで自分から名乗っただと!?
「ストリーム。貴殿は──」
デデーン ルスト モルド OUT
何か琴線に引っかかったのか、ルストとモルドが噴出した。
なおその後ルストは生活態度についてガチ説教を食らっていた。……情報提供者はモルドだな、きっと。お互いにお互いを刺し合ってるんじゃないよまったく。
◆
そんな、はっきり言ってしまえば自分のネタ部分でなければ余裕があったので、俺はこの大公執務室を見回す。ヘイトを一人が稼げば他は割と楽なのは踏襲しているあたり設定遵守というかなんというか。
さて、マホガニー様の美しい木目をした机の上には大量の書類。棚には様々なトロフィーや武器などが飾られている。ふと視線を上向ければ、窓の桟の上には何枚かの写実的な絵が飾ってあった。
ちょっと助け舟を出してやるか。
「──大公閣下、お話し中すみません。あれは?」
視線がこちらに向けられ、ルストの体のこわばりが抜けた。
「であるから健全な生育とは……む、あれか。あれは我が妻を亡くした悲しみを相談させていただいた、我が人生の師達よ。有り難くも話を聞いていただき、おかげで立ち直ることを得た」
宗教者ってところか。師の似姿を見て菩提を弔う意志をまた新たにって感じかね。にしても、
「見事にハゲばっかりだな……」
「基本、宗教者とはこちら側……俗世に決別した証として、髪を剃ったそうです。日本では剃髪、世界的にはトンスラ、が一般的な呼び方です。ほら、あの、教科書に載ってるフランシスコ・ザビエルの髪型みたいな……」
あの肖像画はザビエルが死んでから80年後に描かれた想像図らしい。当時トンスラはすでに古い習俗だったとか。代わりに後ろ髪を何センチか切っていたとのこと。
「ふーん、だから仏教は基本ハゲなんだぁ……ありがとうレイ氏。また賢くなった」
「い、いえっ……尼になります!」
「何故!?」
何とか落ち着かせた。髪が綺麗なんだからもったいない!
さて、暇つぶしに左から見ていこう。絵の下には名前が書いてある。
【ヨーロ・ヴィッシュタルト】 大司祭 禿げたおっさん
【コネスタッチ・レイクシュヴァッツ】 枢機卿 禿げたイケオジ
【酔仙の李寛】 仙人 禿げたじいちゃん
【深淵のクターニッド】 和尚 禿げたタコ(想像態)
【イピスェ・カナタ】(偽名) マスター 禿げた【蛇の林檎】マスター
俺は
デデーン サンラク OUT
くそっ、クソがっ、予想できるかそんなもん!! なんで宗教者(ハゲ)のなかに交じって袈裟着てピースサインしてるんだお前は! ユニークモンスターにユニークモンスター重ねるとかフィロジオでも出来ねぇことしてるんじゃねーよクソがっ!! あと思うにお前はオルケストラ関係なくまだ稼働しているからご本人様ですよね? あとなんでまざってるんだマスタァァァァァァ!!
「ちょ、何笑ってんだよサンラク……なに写真指さして……ヨーロ……コネスタッチ……深淵の、ンッブ!!」
デデーン オイカッツォ OUT
何で笑ったのかわかっていないカッツォに教えてあげる俺優しさMAX。
俺は地球を包み込む優しさを発揮しレイ氏と秋津茜とモルドに写真を指差してあげる。
「ぷぴぴぴぴぴい」
「たっ、タコさんなんでそんな和尚さんの恰好を……」
「……ッッ、いきが、できっ」
デデーン サイガ-0 秋津茜 モルド OUT
俺たちが尻を叩かれ終わるころには、ルストへの説教は終わっていた。
ふぅ、これで最後だ。
「じゃあ、行ってきなモルド」
「──う、うん」
「モルディブ」
「モルドです」
「タイキックだ」
「はい。……えぇ?」
問答無用。
おそろしく速いタイキック決定。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
プァ~ラピャ~ポゥワ~
死神を呼ぶ音がする。──関係ないのに俺の尻もちょっと引き締まったのは内緒だ。
◆◇
「「「「「「失礼しました」」」」」
「うむ、良き時間であった。晩餐会にてまた会おう」
わかってたけど晩餐会がメインだな。
つまりそこまでは全てが余興。いや晩餐会も余興だらけの気がするが。
「──つまり、『アレ』も余興ってことだよな……」
俺たちの視線の先、そこには金色に光る巨大な龍がいた。早入りしすぎですよジークヴルムさん。
金色の龍、天覇のジークヴルム。
大団円の内に撃破されたユニークモンスター。
そいつは、巨大な、人間に近い龍の姿で、そして、
『英傑たちよ! よくぞ来た! ではさっそく』
『ふははははは、さぁ、この女を助けたければ我と戦うがいい!!』
「あーれー! 助けてサンラク君、オイカッツォ君!」
「いやーまさかまたタイキックとはな」
「それよりクターニッド和尚ってなんだったのあれ? 設定的に外に出られないからカメオ出演?」
「いやー、その気になれば分体とか作って出てこられるだろアレ。京極、これ系のネタで葬式ってある?」
「あったよ」
あるんだ。誰が死ぬんだろう。
カッツォが手を垂らして舌を出す、幽霊みたいな仕草をして、
「こ ん や 0 じ サ ン ラ ク が し ぬ」
デデーン サンラク 京極 モルド OUT
「オイコラ笑わせてくんなよ魚類、あっ、そういえば休憩の時って笑っても大丈夫だったぜ」
「嘘でしょ?」
「ほんとだって、信用ねーなぁ。あとで休憩はいるだろうから一緒に笑ってやるから」
「えぇ~、ほんとでござるかぁ~?」
「ほんとでござるよぉ~?」
「あのー、君たち。麗しの! ペンシルゴン様が! 巨大な! 龍に! 捕まってるんだけど!!」
えぇ? だって仕込みだってバレバレだし……それに、
「ここで助けるとか言い出して、みんなに噂されると恥ずかしいし……」
「古典恋愛ゲーの好感度足りてないヒロインか!」
古典馬鹿にすんな、攻略法の基礎が詰まってんだぞ!
「あるある。創作者の触った作品調べて傾向つかむやつ」
わりと文学における作家・作品研究の基礎らしいから侮れないぞこの手法。ガチると「この作家は何月何日の何々新聞のこの記事と、友人○○から届いた手紙を読んだからこの文章ができた」って調べるらしいからな。
「うぅ、なんて悲しい。やっぱり「旅狼」の絆は嘘だったんだね。ペンシルゴン、自爆します……」
やれやれー、と心の中で喝采を送る俺。ぎょっとしているジークヴルム氏には申し訳ないがそんな全身ニトログリセリン女を選んだ己の不幸を呪うといい。玉屋鍵屋(実は鍵屋が元祖)と叫ぶ準備をしていると、
「──この場は任せてもらおうか!」
そこに響く、偉丈夫の声。
「こ、この声は」
『ヌゥ、何奴!?』
「天呼ぶ地呼ぶママが呼ぶ──俺の名は、エターナルゼロ!」
五歳児が、ジークヴルムと視線を合わせられる高さの尖塔の上にいた。
「成長してるゥーー!」
デデーン 全員 OUT
「母の愛を受け、俺は赤ん坊から一歩進むことができた……気づいたんだ。俺はいつだってママのもとに戻れるし、どこにいようと俺の心はいつだってママと共にある」
そうか。マッシブダイナマイトさんの教育の賜物だな。
「パパのおかげでもある」
キョージュをパパと来ましたか。二人に本当にお子さんいたらきっと泣くぞ。いやまぁ孫までいる可能性もあるけど。
「子は親の背を見て育つ……あの二人を見て……俺は、俺はようやく家族とは何かを知ったんだ」
『ムゥ、英傑よ……なぜそこに立つ。我と同じ目線というつもりか? 下の者たちと協力し、さぁ輝きを我に魅せて見よ!』
「言ったはずだ。この場は任せろと。──ジークヴルム。あんたのことは真理書を読んでよぅく理解している。理解できる。なぜならば」
ビシッと五歳児が龍に指を突きつけ、叫ぶ。
「俺とお前は、同じ存在だ!」
『なんだとぉ……!?』
ジークヴルム氏、キレた!
『英傑よ、二号人類よ。我とお前たちでは、似通っていようと違う! 我は龍、対始源焼却生体ユニットにして
「何を言ってやがる、違わねぇよ!」
エターナルゼロはジークヴルムを指差す。
「お前は(父)親が好きで!!」
次に己を親指で指差す。
「俺も(母)親が好きだ!!!」
全身全霊を込めて、アイを叫ぶ。
「そこになんの違いもありゃしねぇだろうが!!!!」
『違うのだ!!!!!』
だが、ジークヴルムの中には確かに親への情があった。
ガラスの向こうから、優しく声をかけてくれた記憶。せがんで聞かせてもらった英雄譚。
人を守る。それが英雄の仕事なのだと。
英雄になれ、ジークヴルム。
だが、果たせなかった。自分は英雄にはなれない、ただの敗残兵。
そして、最愛の父の、両腕と下半身が吹き飛んだ、無残な最期……。
──父よ。我は、貴方を……。
「うわ滝!?」
『グ、ウオォ? 涙? この龍王が、涙だと……!?』
砲弾サイズの涙を避けて俺たちは庇に入る。
「あーめあーめふれふれかーさんがー」
秋津茜、ステイ。ここまだ笑っちゃいけないシーンだから。っていうかお前が一番ジークヴルムと絡んでるからね? もうちょっと空気読んであげて? ノワルリンド泣くよ?
『クッ、エターナルゼロ……覚えたぞ、その名前!』
「ああ、覚えておいてくれジークヴルム。いや、
涙をこぼしながら、ジークヴルムがペンシルゴンを差し出す。
『我はこれで撤退する。だがこれは負けではない、我が魂揺さぶる言葉をかけた男に免じて退くのだ』
ちょっと待って。差し出されるペンシルゴンを受け取る役を誰がするかじゃんけんしてるから。
ジークヴルムの涙をモロに浴びた鉛筆はしなしなになっている。くっ、乱数で俺の負けか……。よそ見しながらのじゃんけんはやっぱ無理だな。
「しゃーない、はいオーライオーライ」
「うぅ、なんか車の駐車サポートされてる気分……」
今度一緒に『荒野の沼MAXガソリンスタンドを経営しよう!』やる? 二時間に一回ガソリンを狙ったV8エンジンを信奉するヒャッハー集団が来るクソゲーだけど。
とりあえず鉛筆を受け取る。はいお米様抱っこ。
『うむ、確かに渡した。……遠い昔、父ジーク・リンドヴルムより聞いた。こういった場合、言わなければならぬ言葉があるという。それを、別れの言葉としたい』
なんだろう。最期の言葉なら聞いてやらねばならない。
『ゆうべはおたのしみでしたね』
……超巨大な龍が行く。
超巨大なたんこぶをくっつけて。
レイ氏、下ネタ嫌いなんだね……気を付けよう。
デデーン 全員 OUT
注)ご指摘があり、ウェザエモンに接した時の京極のセリフを改変しました。そうだよ京極ウェザエモン生で見てやられてるはずじゃん・・・・・・ご指摘ありがとうございました。
注2)ルストのネーム元ネタ反映