笑ってはいけない「旅狼」24時   作:斯波涼佑

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※この作品は「シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜」の二次創作「笑ってはいけない『旅狼』24時」であってます。 そんな前書きを書いたので初投稿です。


笑ってはいけない『旅狼』24時 その4 晩餐会開始

 ある日突然、あなたの家に12匹のリュカオーンがきたらどうしますか?

 

 それも……とびっきり獰猛で

 とびっきりギラギラで

 とびっきり賢くて

 とびっきりの、犬。

 しかも、そのうえ……

 リュカオーンはみんなみんな、とびっきり!

 100お姉ちゃんの(コト)が大好きなんです……

 でも、残念なことに100お姉ちゃんとリュカオーンは

 現在離れ離れに暮らしていて……

 実際に会うことができるのは、

 ランダムに決められた“マーキングされた地点”だけ。

 大好きな100お姉ちゃんと自由に会えないリュカオーンは……

 さみしくて、いつも100お姉ちゃんのことばかり想ってしまいます。

「グルルル」(ご主人様……どうか、早く100お姉ちゃんに会えますように

 私の大事な大事な100お姉ちゃん……会えないでいると……

 お腹の中Animaliaでいっぱいになっちゃうよ……)(意訳)

 

 だから、ようやく1ヵ月に1度の

「100お姉ちゃんの日」がめぐってきて……

 2人が会えたときには、

 リュカオーンは世界中の幸せを独り占めしたみたいに、

 とってもとっても……幸せ

 もちろん今でも100お姉ちゃんはただのザコキャラなんだけど、気分はまるで楽しいデート!

 そしてリュカオーンは、100お姉ちゃんのそばにぴったりくっついて……

 心配そうに100お姉ちゃんの顔をのぞき込み、 こう……言うのです。

「100お姉ちゃんは……リュカオーンのコト、好き?」(グルゥア、の意訳)

 

 リュカオーン達は100お姉ちゃんをパクっといった頃からずっとずっと

 ただ純粋に100お姉ちゃんのコトが大好きでした。

 やさしくってステキで世界にただ1人、

 自分だけの大切な100お姉ちゃん……。

 だから、いつもいつも100お姉ちゃんと一緒にいたくて、

 いつもいつも100お姉ちゃんにかまってほしくて……。

 ここに登場するのはそんな野性味あふれた黒き夜達……。

 外見も性格もほぼってか完全に同じ12匹のリュカオーン達ですが、

 想いもみんな同じ……そう

「……100お姉ちゃん、大好き!(餌として)」

 

 ◇◆

 

『はい、よーいスタート。……ゲームを開始する際の作法だとトワが言っていたが、なんだこのゲームは。いやいや、知っている。知ってはいるぞ、元ネタは。前世紀の育成・恋愛ゲームで、十二人の妹とかかわりながら生活するのだろう? シャンフロやるためのゲームの勉強で見たぞ』

 ごくごく一般的な家屋のドアに手をかけ、

『つまりはリュカオーンと絆を深めてエンディングにッ』

 ごわばぐぅぐしゃあ、と猟奇的というには大音量な咀嚼音とともに出てくる黒地に白の簡素なゲームオーバーの文字。

 

「───ナニコレ」

「リュカオーン・プリンセス……え、要するにリュカオーンとの育成恋愛ゲームってこと?」

 なにそのクソゲー。なつき度も何もない、ただの蹂躙がそこにはあった。

 いや無理だろドアノブに手をかけた時点で捕食攻撃とか。というかどうやってリュカオーンをあの核家族御用達で「狭いながらも楽しい我が家」ってかんじの家に押し込めたの……? しかもあんなのが十二匹も?

「あぁ、姉さんがダルマに……」

「あ、すごい4回目で回避できてる、って二段目!?」

「嘘だろスゲーなサイガ姉、一片の躊躇もなく隣に住んでたAnimariaとリベンジャーズと草餅を囮にして土間初見突破したぞ!!」

 俺とオイカッツォの目がちょっとキラキラし始める。

 や、やってみてぇ~~~~~~~~~~~~~~~。

 

 ──話は少し前にさかのぼる。

 

 いやひどい目に遭った。

 ジークヴルム(偽)の大放言、『鉛筆姫を助ける勇者サンラク』とかフェアクソ以上にナンセンスな話だ。ほっとけばどうせ姫の方が魔王城を掌握して勇者に追手を放つようになるので、魔王陛下におかれましては安心して引退していただきたい。そのうち魔王城爆発するから田舎にでも引っ込んでて。

 俺たちはあのスチール(っぽい何かでできた)机のある待機室に戻ってきていた。

「──」

 そして机の上にはそれぞれに対するプレゼント箱。

 繰り返す。プレゼント箱である。

 ファンシーな柄の包装を施された、誕生日かクリスマスにしか見ないであろうあの箱が、机の上にでん、だったりちょこん、だったり各々乗っかっていた。

「……なにこれ」

「なんでしょうこれ! わぁ、メダルです!!」

 思考即行動か秋津茜ェ、そういうところだぞ秋津茜ェ。いやどういうところか俺もわからんけどなんか楽しくなってきたぞ秋津茜ェ。

 なんにしても切り込み隊長(トッコー)かましてくれたことに感謝しつつみんなで覗き見る。

「メダル、というか、折り紙の手作り勲章?」

「……なんというか、下手?」

「うん、折るまではすごく丁寧なんだけど、その後が下手っていうか、力加減がめちゃくちゃな感じがするね」

 黄色でできた丸い形のメダルに、黒い帯がつけられている。ぐちゃぐちゃになってはいるが、それは持ち運びの不備や癇癪ではなく、ほんとうに「そう折られた」もののようだ。

「あ、なんか下にまた映像ディスクがありました! 見てみましょう」

 はいデッキはい入れたはい再生!

 

 すごく優しいベルの音とともに映し出されたのは、

『今日の、ノワリン』

 

 デデーン 全員 OUT

 

「おいちょっと待てなんでノワルリンドが中の枠から舌を出して現れるんだよビギィ!」

「優しいバックととげとげの竜がミスマッチすぎドゥワッチ!」

「え、映像が、止まってなぷぷぴょい!」

「ぴゃん! え、笑みリアさん周りで黒竜忍軍の人たち踊ってるのに笑顔が崩れてないですね」

「アイッタァ!! え、なんか僕だけ叩く力強くない……? あとで名前教えて、天誅するから」

 映像の中で、周りをウンババ(原始人が狩りを成功させた後に踊りそうなアレ)している蜥蜴人に囲まれながらも笑顔を崩さない笑みリアには、なにかこう、「凄味」がある。

「……どうみても、黒魔術」

「ぼぶっふぅ!!」

 

 デデーン モルド OUT

 

「こ、黒竜で、黒魔術……マジで(こく)、ぷぷ」

 

 デデーン モルド OUT

 

(モルド以外)全員スルー。

 

『こんにちは。『新大陸建設』の笑みリアと』

『五体投地で崇め、我が声を拝聴することを許す。真にして世に覇する竜王ノワルリンドだ』

『はい、今日は二人で、いつも頑張ってる秋津茜さんに贈るメダルを作りたいと思います』

『は? 下僕が主に奉仕するのはとうぜ』

『──作ります』

『……う、うむ。下僕が奉仕するは当然の務め、なれどそれに対し干天の慈雨のごとき憐れみを降らすのも強者の特権よな』

 笑みリアが軽く折り目を付け、それをノワルリンドが前脚を使って折っていきます。

 力みすぎてよれたりやぶけたり、それでもノワルリンドは諦めません。

 まぁニコニコしている笑みリアさんが怖いのもありますが。いやこれを言うと「怖くないぞ!」とキレるのが目に見えているので言いませんが。

 ところでこういう動物のほのぼの番組でいきなり血の滴る骨肉を齧るシーンあるといいよね。

「ナレーション鉛筆、ステイ。いま俺たち光に身を浸し癒されてる真っ最中だから」

「やっぱ闇属性だよねペンシルゴン。これもカレイのせい、か」

「そうだね華麗だね私」

 強いなこの女。ところでその手の中のボタンはまさか。

 

 デデーン オイカッツォ タイキック

 

「ノワルリンドさんが作ってくれたんですね、大切にします!」

「あうっふぅ!」

 すごく楽しそうにケツを蹴るアージェンアウルとすごく痛そうにケツを蹴られて吹き飛んでいくカッツォを尻目にキラキラしている秋津茜に、ちょっとだけ恐ろしさを感じた。秋津茜、恐ろしい子ッ!!

 

 ところで俺たちへのプレゼントはなんじゃらほい。

「秋津茜開けちゃったし、じゃあさっきと逆順でいいか」

「そうなると僕だね……うわぁ」

「……モルド、モルド。着けて」

「はいはい……どうみんな?」

 

 ※このモルドはweb版なので筋肉もりもりマッチョマンの性格モヤシ男がはにかみながら猫耳をつけています。

 

 デデーン サンラク オイカッツォ サイガ-0 京極 モルド OUT

 

「オゥコラモルドてめぇふざけんなよ」

「後で覚えておきなよモルドくぅん」

「い、意外とかわいらしいので、いいのではないか……と」

「ねこちゃんです! かわいい!」

「ちょっとモルドそこで『え? かわいい? えへへ、そうかなぁ』って顔で頭掻かないで腹筋が死ぬ」

 デデーン サンラク 京極 モルド OUT

 筋肉もりもりマッチョマンがネコミミモードしてても虐殺(キリング)モードにしか見えねぇんだよなぁ。

 

 次のルストへのプレゼントはサングラスだった。モルドにプレゼントして猫耳絶滅者(ターミネーター)」が誕生でデデーン 全員OUT したところでレイ氏。

「勲章、ですね。『龍撃退特別勲章』、と書かれています。効果は、え、ステータスこんなに上がるの……!?」

 レイ氏が驚くほどの神アクセサリのようだ。いいなぁ、俺だとバフはじくだろうからいらないけど。

 視界の端で、オイカッツォがそっとプレゼント箱をごみ箱に捨てていた。

「なぁに捨ててんだぁいカッツォくぅん」

「いや、みないほうがいいよ……」

 魔境のにおいがする。世に平穏のあらんことを。

「さて、俺は……、ふむ」

 頭装備変更。

 まさか鳥、魚ときて、

「──エムルですわ!!(エムルボイス) うぇあっ!? ですわ」

 

 兎とはな。 ってか語尾が強制されるぅ!?

 デデーン オイカッツォ サイガ-0 京極 秋津茜 ルスト モルド OUT

 

「いやそれどういうこと!?」

「わかんないですわ。いやほんとですわ。俺自身は普通に話そうとしているのになんでか『ですわ』がつくんですわ」

 ですわがですわでですですわ、ですわがゲシュタルト崩壊をはじめようとしているが、装備を変更したら普通に戻った。よかった呪いの装備じゃなくて。これは切り札にしておこう。

 で、トリである京極が開けてみるとなんとレイ氏のものと同等クラスのユニークアクセサリだった。いいなー。なんでお前がそんなもの貰えるんだ。運営っていつもそうですよね! 泣いてるカッツォくんもいるんですよ!

 そんなこんなをしている間に、また休憩が入り、その後サイガ姉の謎ゲー攻略動画が流れたりしていた。

 少し心が落ち着いたあたりで、

「さて、お待たせしたね。晩餐会の時間だ。移動するよ」

 さぁ、いよいよ本番だ。

 

 ◆

 

 廊下を移動していると、もはや当たり前のようにエタゼロ(5歳)とキョージュとマッシブダイナマイトがいた。

『えたーなるぜろ(5)』と書かれた名札を付けた、妙に豪華な服を着て、

 

 デデーン サンラク オイカッツォ サイガ−0 京極 モルド OUT

 

「擬似ショタ人生がこの上なくバブリーしてんなエタゼロ……ぴょっ」

「──まだ緊張してるの? エタゼロちゃん」

「うんママ。こんな大きな式、チャンピオンシップ以来だ……」

「記憶は据え置きなのな」

「くほふ、ちょ、サンラクツッコミ入れないでよ! ツッコミ不在だから耐えられてるのに!!」

 

 デデーン オイカッツォ OUT

 

 何か大きな式典でもあるのか緊張するエタゼロを励ますマッシブダイナマイト、そこへ、彼女の旦那、そして今はエタゼロの父であるキョージュが歩み寄る。

「──『手に人と書いて飲む』、まじないごとというのは案外馬鹿にならないよ。やってみるといい」

「……ちょっとおさまったかもしれねぇ。パパ、ありがとう」

「君は私たちの自慢の子供だ。胸を張っていきなさい」

 暖かな言葉、それでいて我が子を誇る強い自信。

 欲しかったのは母の愛、そして父の背中を押してくれる力強さだったのかもしれない。

「パパ、──ッ、ありがとう!!」

「貴方──、素敵よ!!」

 子と妻、二人のSTR化け物に抱きしめられたキョージュ(12サンラク程度)は、

「また死んだーーーーーーーーー!!!!!」

 

 デデーン 全員 OUT

 

 ◇

 

 晩餐会の会場は、豪奢と言って過言ではなかった。蝋燭の火はまっすぐに立ち上り、質の良い蜜蝋なのか匂いまで芳しい。無数の円卓テーブル(高級テーブルクロス付き)に所狭しと並べられたアツアツの料理の香りと相まって晩餐会場は、これがゲームであると分かっていても異空間味が激しかった。

 要するに俺たちはすごく浮いていた。

 参加しているのは名前の表示がある者たち……つまりプレイヤーばかりだ。だが、見回してみてもあまり俺の知ってるプレイヤーはいないな。

『長らくお待たせいたしました。それでは只今より、サードレマ城晩餐会を開催いたします』

 征服人形が用意したマイクを持ち、壇上に立ったペンシルゴンが司会を始める。なお俺たちはなんの障害もなくそれが見えるかぶりつきの位置に陣取らされていた。最前線かよ。しかしこの位置関係、ふと思い出すのは、

「なんかあいつが司会してるとJGEを思い出すな」

「そ、そでしゅねっ! た、楽しかったです、ね?」

 まぁ最後にケチがついたりしたが総合して言えば楽しかった。その意を込めて頷くとレイ氏はパァッと顔を輝かせる。いやのっぺらぼうだけどなんかもう付き合い長いからわかっちゃうんだ。

 そうかレイ氏……分かるよ。あのジェネリック鯖癌がそんなに楽しかったんだね……。

 隣で話を聞いていたオイカッツォが首を突っ込んでくる。

「え、サンラクとサイガ−0さんJGEにいたの? そう言やメグには悪いことしたなぁ」

「『逃げずに答えます』は面白かったよ」

 スンッ、と表情が死ぬ鰹。夏目氏、仇はとったよ……。

 そんな心温まるやりとりをしているうちに、晩餐会の挨拶が始まる。

『ではまずはじめに、本城城主にしてサードレマ領主かつ王の同盟者、惑星随一の弓取、始源眷属および眷族討伐大将軍、そして駄洒落名人3級たる『墓守のウェザエモン』からのご挨拶です』

 

 ネジ状の足がレッドカーペットを踏み締める。

 そこに出てきた男は────。

 その体は貧弱で。

 その足取りはフラフラし。

 差した刀で腰砕け。

 兜は余り、少しズレて顔が見えている。

「あー、俺、いや我がサードレマ城主、ウェザエモン・アマツキです……だ」

 

 その場にいた全員が思った。

(((((((知らない人だーーーーーーーーーー!?)))))))

 知らない人だった。

 

 デデーン 全員 OUT

 

「え、あれほんと誰!? 誰なの!? 怖いよぉ!?」

「……モルド、五月蝿い。うん、まぁ確かに、知らない人」

 いやほんとに知らない人だ。だが、なんだろうこの感覚。俺はいつかこの知らない人にフルコースを奢ってもらうような気がする……確信みたいなものがある。

「えー御紹介に預かりましたウェザエモンですー。……チッ、なんだよこの役、俺さっさと後輩ちゃんの淹れた水道水飲みに戻りてーんだけど」

 なぜか確実に言える。脈ないよ? 多分今頃その後輩の人、年下上司にはコーヒー2杯(ひとつは自分用)出してコーヒーブレイクしてるよ?

「あーまぁ適当に挨拶しろってことなんでとりあえず旅狼の皆様には情報ゲロってもら」

 

 パリン、とガラスが小さく割れる音がして、知らない人の頭が吹っ飛んだ。

「し、」

 息を呑む。どさりと体が崩れ落ちる。皆が凍りついたように動かない。

 狙撃。

 

「「「「「「「知らない人ーーーーーーーーーー!!!!!」」」」」」」

「知らない人が死んだ!」

「この人でなし!」

「一体誰が、いや、この超長距離狙撃、こんなことができるのはこの(ゲーム)にただ一人……!」

 

 そして始まる強制認識ジャック。

 そこに現れたタイトルは、

 

『ヤシロ13(サーティーン)

 

 サーティード13番地にてスナイパーライフル13丁売ります。ご連絡は13時まで。

 その文言を掲示板に書き込むと、指定した場所にある男が現れる。

 そんな噂が、王国の貴族の間でまことしやかに語られていた。

「しかし、本当によろしいのですか? 何も貴方様自ら動かなくとも」

 アーサー・ペンシルゴンが主人に問う。主人を心底心配する(フリをしている)従者に、主人は重く頷いた。

「彼奴は、依頼を本当に望むものとしか会わぬと聞く。ならば何を迷おうか」

「……わかりました。ですが私も同行します」

 

 サーティード。

 オープンテラスのカフェで新聞を読みながら、デキる女秘書のようなスーツ姿をしたペンシルゴンは13時を待つ。

 やがて時計の針が13時を差し、そして、ペンシルゴンの前には誰も現れなかった。

「やはりガセだった……かな?」

「──依頼の話を聞こうか」

 いつのまにか、ペンシルゴンの背後の席に男が座っていた。地球のカウボーイのような格好をした、テンガロンハットの伊達男。その顔は若く、端正で、そして──、のり弁のような眉だった。

 

 デデーン サンラク 京極 ルスト モルド OUT

 

 どうやらOUT中だけは認識が戻るらしい。

 俺たちはケツを突き出して並んでいた。尻並べ、尻並べだよサンラクくぅん! と脳内ディープスローターがニチャア、とした笑みと共に現れたが焼却! 滅却! 波動砲!

「なんだあの糊ではっつけたような海苔眉毛はットゥ!?」

「いやあれ前世紀の有名漫画に出てくる暗殺者の真似だよ! いやでも雑痛ぁ!」

「ヤシロバード……あれだけ仲間だと思ったのに……リヴァイアサンであんなに私とモルドがロボについてアドバイスしてあげたのに」

「裏切ったの……? 僕らの気持ちを裏切ったの……?」

 

 テメェモルドそれ天丼ーー!

 

 デデーン サンラク OUT

 

「あふっ! クソがモルドぅ、認識ジャック終わったら覚悟しておけよてめぇ! とっておきのすべらない話パート2、『浮気した外洞パパンシルゴンとお隣の大学生に惹かれる外洞ツバメイーターガツオママに挟まれる外洞楽羽ちゃん5歳』の物語でお前を笑いの海に沈めてやる!!」

 

 デデーン モルド OUT

 

 軽率に昼ドラ展開どころか劇場版クラスのドラマができるって意味では神ゲーである「超リアルおままごと デラックス版」は面白かった。どうしてその事前設定から楽羽ちゃん5歳がアマゾン奥地に隠された王国の宝の封印を解く鍵になったのかよくわからないが最終的には「外洞さん一家ファイヤー!!!」の掛け声で全ては解決した。

 

「……」

 のり眉の男……ヤシロ13は無口というキャラ設定なのか、ペンシルゴンの言葉を待つ。

「やぁやぁ、噂はかねがね聞いているよヤシロ13。『密林抜き』『ジークヴルムの角折バリスタ』『4kmピンホールショット』『グレネードを迫撃砲運用するやべーやつ』『スロット狂い』……」

「最後のは忘れて。しかし、依頼する気がないならこれで帰らせてもらおうか……依頼したい本人がいないのは信用に値し──」

「だろうと思い、すでに参上している」

 ヤシロバードの席の真向かいに、ウェザエモンが座っていた。緑茶を啜り桜餅を食べている。いやどうやって!? 驚いた様子も見せず、ヤシロバードはもうウェザエモンしか見ていない。

「大公ウェザエモン、噂どおりの真面目カタブツのようだね。では依頼の話を」

「消してもらいたいのは、この男だ」

 机に置かれる写真。

 知らない人の写真だった。

 笑いそうになったが必死で堪える。なんで夕日をバックに砂浜を駆けてるんだ知らない人……!

「こ奴は明確な佞臣よ。我の影武者である立場を悪用し、悪逆のかぎりを尽くしている」

 サードレマ大通りで老婆の荷物を取り上げて向かい側まで持って行く窃盗未遂。

 それお年寄り助けてるだけじゃねぇ?

 民である子どもたちを誘導し、薄暗い一室で馬車の危険性を教え込む思想教育を施す未成年者略取。

 それ交通安全活動っていわねぇ?

 ある一般人女性を職場で付け回し、用件もないのに話しかけるなどの気色の悪い行為。

 それ……ごめん知らない人、擁護できねぇや。

「また、どうやら市井の開拓者と繋がり、危険な取引をしているとも聞く。なんでもモンスターの幼生を奪い、奴らを操ろうとしているとか」

 それ……おっと?

 回想のように、知らない人が誰かと金とキラキラ光る小さいのの取引をしている。

 あの顔、どこかで見たような……?

「この男を来週の晩餐会の挨拶の際、衆目の集まるなかで暗殺して欲しい。方法は一任する」

「当方はこの件に関して一切のサポート、補助はできないよ。侵入、撤退、全て君の判断で行って欲しい。またこの件に関して君が捕縛されても我々は一切関知しないのでそのつもりで」

「……やってみよう。報酬は『黄金の天秤』に物品で5億マーニ、天秤使用料はそちら持ちで」

 依頼は成った。

 ウェザエモンと鉛筆が立ち去り、ヤシロ13は時間差をつけて店を出る。

 その目はすでに狩人のそれ。スナイパーとして獲物を見る男の目だった。

 超一流スナイパー、ヤシロ13は準備を怠らない。

 大公城を遠景から眺め、晩餐会の会場を視察し、市井の高級レストランで『恋人』と昼食を摂る。そして、銃刀法違反で逮捕された。

 

 デデーン サンラク モルド OUT

 

「アホかぁ!!! なんで食事中向かいの席に銃置いて銃と会話してんだアホかぁ!!!」

「なんでスナイパーライフルにエリザベートって名前つけてるのあの人!!」

 

 釈放されたヤシロ13は、刑務所の守衛に一礼して歩き出す。その顔は、娑婆の空気を堪能する晴れ晴れとしたものだった。

 超ウルトラスーパースナイパー、ヤシロ13は鍛錬を怠らない。

 野山を駆け、谷を飛び越え、銃を構え、いかなる状況にも対応できるよう、滝から飛び降り2点ショット、目標を破砕する。そして下で待ち構えていたジークヴルムにパックリいただかれた。

 デデーン 全員 OUT

「あれ、草餅さんがクリアした勇者武器獲得ユニークシナリオですね……ぴちゅっ」

「ふぎっ、草餅め……」

 草餅めカウンターが回る。いやあんま話した記憶ないけど。

 

 アジトにてリスポーンしたスーパーハイパーアルティメットスナイパー、ヤシロ13は相棒への愛を忘れない。

「あぁ、綺麗だよエリザベート……。その銃口は僕の目を離さない……口づけは甘く、コーヒーよりも熱く、ライオットブラッドよりも僕をたぎらせる……」

 その銃口に口づけを。

 その銃身に手を這わせ。

 その引鉄に足の指をかけた。

「さぁ、恥ずかしがらずに……」

 カチン。

 頭が吹っ飛んだ。

「死んだーーーーーーーー!!!!」

 デデーン 全員 OUT

 

 超ウルトラスーパーマイルドハードボイルド777スナイパーヤシロ13は依頼成功率100%の超スナイパー。サードレマ大公城に難なく侵入するが、その目の前に、水晶群蠍が現れた。

「くっ、これが大公の言っていた、操られたモンスターかっ!」

 スナイパーライフルを背負い直しショットガンを装備、至近距離に迫る死神の鋏を散弾で逸らし掻い潜る。

「──あの幼女ほどじゃあないが、僕も孤島からのサバイバーだ」

 それすなわち、巨大なモンスターの行動に精通しているということ。

 鋏を避け、横へ跳ぶ。蠍の挙動は多脚によるステップ、つまりは足踏みでの回転だ。一本一本が巨大なそれは、逆に言えば隙間が大きい。スラリと水晶群蠍の背に乗ったヤシロ13が敵の頭部にショットガンを突きつける。

 蠍の尾が、背後から速度をつけて迫る。だが最強の銃手・ヤシロ13は避けもしない。

地獄で会おうぜ、ベイビー(アスタ・ラ・ビスタ)

 銃声が響く。

 

 大公城の尖塔の上。パーフェクトスナイパー・ヤシロ13は愛銃を構える。

 狙うは獲物。大公の影武者。

 撃つ。ガラスは破れない。

 撃つ。ガラスに当たった弾に当たる。

 撃つ。ひび割れが広がり、そこに別角度からの弾丸が通り抜けていく。

 一瞬での四連射。裏切者に死を。

 そして、ヤシロ13は落ちていく。

 最後の一射は、落ちながら。己の命を捧げた、最高最期のワンホールショット。

「安いもんだ、開拓者の命なんて。とくに僕のはな」

 満足げなその顔に、ふと影が差した。

 頭部の大半を失い、それでもなお獲物を狙う水晶群蠍。

 ライフルに残った弾丸はあと一発。

「僕は……」

 落ちていく。

 尖塔の屋根を滑り落ち、それを追う蠍の巨体も落ちていく。

 大地に背を向けながら、その瞳は天を射抜く。

「僕は……!」

 鋏が振り下ろされる、その刹那。

「僕は死なないっ!!」

 銃口からのマズルフラッシュ。

 ポリゴンとなって消えていく水晶群蠍、その向こうにある満月に優しい瞳を向けて、スナイパー・ヤシロ13は小さくつぶやく。

「任務……完了……!」

 そして地面に落ちて虫ケラのように死んだ。

「あぷっ」

 

 デデーン 全員 OUT

 

「はーいそれではあのガンマニアに余計なアニメ知識を仕込んだ元凶(モルド)くんの処刑を始めます」

「弁護士! 弁護士を呼んで!!! 僕が教えたのラストのオチくらいしか影響ないじゃないか!!」

「検察オイカッツォ!」

「死刑が妥当かと」

「弁護人ルスト!」

「……切腹って初めて見る。興味深い」

「陪審員レイ氏と秋津茜!」

「え、ええっと」

「うまく切ってもらえたら怖くないですよモルドさん!」

「怖いよ!! その発言が怖いよぉ!!」

「裁判長ペンシルゴン!」

「主文後回し即刻死刑!」

「介錯人京極!」

「介錯つかまつる」

 俺たちは粛々とモルドを処刑した。

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