笑ってはいけない『旅狼』 小ネタ集その1「サンラクの父です」
それは時系列からも離れた、本編に入れるまでもない小ネタたち。
◆
乗合馬車はまだ揺れる。サードレマの城下町は上中下層の多層構造だ。つまり移動には坂を必ず経由しなければならない。要するに、よく揺れる。
その揺れが止まった。
「──来るよ」
訳知り顔で京極が告げる。もう何度目だ。さっきはレイジ氏とミーアとかいうリアルで知り合いっぽい二人の甘酢っぺぇトークが展開されて急にブチギレた謎の錬金術師が連装バズーカを持ち出して二人にぶちかましていた。誰だったんだペッパー・カルダモン。夏目氏っぽい声だったけど誰だったんだ本当。
そんな俺たちのぐったり具合を知らぬげに、三人組の二号人類が乗り込んできた。
「……」(ビチャビチャと水を滴らせながら乗ってきて俺たちの向こう側に座る
「……」(カシャカシャ口吻を動かしながら乗ってきて魚人族の隣に座る
「……」(さらにその隣にちょこんと座った、すごく着飾ってる
乗ってきたのは一見して一切の共通点を感じない三人組。
そして三人とも俺を見てくる。
じっと見てくる。
「……なんです?」
思わず問うた。すると代表するかのように魚人族がスッと立ち上がり、──いや待て、あの死んでるけどかっ開いた眼。肩にかけた竿。魚のくせに魚釣ろうとするような逝っちゃってる思考の男を俺は知っている……!! ついでに言うなら蟲のくせに虫を追いかけるバイタリティ無限女性も、美しい服とそれに調和するために種族ごと変えてくるバイトウォーリアーも知っている……!!
「サンラクの父です。うちの息子がお世話になっております」
「サンラクの母です」
「サンラクの妹です。お兄ちゃーん」
え? 本当に? という旅狼のみんなの視線が痛い。ただ、これだけは言わせてほしい。
「──どちら様ですか?」
声が違う。全く知らない人だった。
デデーン 全員 OUT
「え、本当のサンラクのご家族じゃないの?」
「家族構成とやりそうな行動(種族変更)のロールプレイは完コピしてるけど声がちげぇよ。つうかウチの家族はゲームに特に興味ないよ」
「趣味人一家だっけ。え、それは完コピって」
そうだよ情報を漏らした妹がいるんだろうなー、案内役
俺が妹に対する親に報告されない程度の報復案を考えている間に、父さん(偽)が旅狼メンバーに挨拶を始める。本物の父さんじゃないけど本当やめてほしい。
「いやぁどうも息子がお世話になっております。オイカッツォさん、これ、つまらないものですが」
「はぁ」
オイカッツォに渡される新大陸産ナガレ本ガツオ。
デデーン 全員 OUT
父さんエミュうめーじゃねーか。
「よければこちらも」
母さん、京極に千紫万紅の樹海窟産ジャイアントハングリーイナゴの佃煮をプレゼントするとか、解像度たけーなおい。
デデーン 全員 OUT
妹は特に渡すものはないらしい。いや良いんだけどね黄金の天秤商会謹製の水晶ドレス渡されても「もう持ってる」としか返せないから。
「ところで……」
そこで妹(偽)が、
「──誰がお兄ちゃんの彼女なの?」
爆弾をぶっ込んだ。
その結果は語ることも恐ろしい。とりあえず言えることは、馬車の替えが必要だったと言うことだけだ。
最終的に家族(偽)はモルドが俺の彼女と言うことで納得して帰っていった。
いや帰るな!! お兄ちゃんそんな趣味してないから!!