フューチャーダンガンロンパ   作:~時雨~

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しばらく書いて無くてすみませんでした。

メインタイトル『木鐸のギャロップ』は、体育祭っぽい曲である『道化師のギャロップ』(カバレフスキー)からです。


Chapter1  木鐸のギャロップ~勝利を掴め!臥悪嘗胆~
(非)日常編①


 笹薊(ささざみ)の指摘により、しばらく全員が行動を決めかねていたが、少しすると柏木(かしわぎ)が口を開いた。

 

「……これからどう行動するにしろ、やっぱり探索は必要だ。取りあえず今は協力しよう」

「それなら、誰か信じられそうな人と動くか、信用できないなら1人で動こう。分担もした方が効率が良いよ」

 

 キャプテンを務める才能を持っているだけあって、柏木は場をまとめるのが得意らしい。椎柴(しいしば)も、持ち前の求心力を発揮して柏木の補助をするような発言をした。そして、一旦場を収めた彼らは素早く分担を決め、俺たちは各教室に散らばることになった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 俺は榎木(えのき)と探索することになった。

 

暗堂(あんどう)くん、よろしくー!」

「よろしく。……今更だけど、君は俺のこと信用できるのか?」

「えっと、完全に信頼してるわけじゃないけど、信用するって決めたよ。その……あなたに殺されるって疑っても居ない。そういうことをする人じゃないなって感じてるしね」

「……そう思うのは自由だけど、一応俺クラッカーだぞ?」

「ん? クラッカーって?」

「俗にいうハッカーだ。情報の授業なんかで習わなかったか?」

 

 よくハッキングの名で知られているようなものは、本当の意味ではクラッキングと言い、ハッカーと呼ばれるべき技術者は、必ずしもクラッキングをやっているわけではないのである。

 とにかく、俺はクラッキングをしている、いわゆる悪人なのだが、何故かこいつには信用されているらしい。

 

「いいんだよ! 取りあえず、行こう!」

 

 そう言って榎木は体育館の出口に向かって行き、俺は後に続いた。

 まず最初に、体育館から出てすぐの、保健室だ。中には笹薊と、前広(まえひろ)が居た。前広は、教室の左側に並んだ保健室らしい白一色のベッドを調べている。

 

「前広、何かあったか?」

「うーん、特に何もないな……普通のベッドだ。でも、校則では個室以外の就寝が禁止されてるんだよな。ここ、使えねぇじゃねえか」

「体調が悪い時だけ使用が許されるのかもしれないな。もっとも、治療が許されるのかは分からないが」

 

 もしかしたら、放っておかれて見殺しにされるかもしれない。ともかく、これはただのベッドらしい。

 教室の右側には、棚や机が置かれていた。

 

「笹薊くん、調査進んでる?」

「……榎木さん。ここの机には、ざっと見た限り重要そうな物は無かったよ」

「そっか……。そっちの棚は、簡単な治療用具とか、薬とかが置いてあるんだね」

「……全部、市販レベルのものだったよ」

 

 机に大切な書類が隠されていたりしない限り、ここは特に重要な場所ではないようだ。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 廊下に出ると、春添(はるぞえ)が辺りを捜索していた。あいつは常に話しかけにくい雰囲気を纏っているが、榎木は気にしていなそうに声をかけた。

 

「あれ? 階段にはシャッターが付いてるんだね」

「開けるための装置も見当たらないし、多分立ち入り禁止。あと、廊下に窓は一つも見当たらなかった」

 

 ということは、今のところ行ける場所は1階だけなのか。窓も無いみたいだし、唯一外に出られそうな出入り口も分厚そうな金属製で、やはりあのモノクマを操作している人物に接触せずに脱出するのは難しいかもしれない。

 

「じゃあ、私は別のところに行くから」

 

 と、春添は歩き去った。

 

「凛さん、クールだね」

「……随分オブラートに包んだな」

 

 あれはクールというより……暗いと言った方が的確だと思うんだが。

 

「えー、かっこいいと思うんだけどなぁ」

 

 ……こいつはあれだな。どんな人種とも積極的に仲良くなってしまうタイプの人間だ。でも、そういう奴も少しはいた方が、事態が悪い方向に進むのを防げる事もあるし、悪いことではない。

 そうやって話をしながら次に入った教室は、購買部だった。中では、三日月(みかづき)が探索している。

 全体の雰囲気は昔の駄菓子屋を彷彿とさせるような、古い作りになっているが、品揃えは実用性のある物から玩具と、幅広い。

 三日月は俺たちが入って来た時にこちらを一瞥したが、向こうから話しかけてくる気は無さそうだったので、俺たちが声をかける羽目になった。

 

「三日月。ここで分かったことを教えてくれ」

「見た通りだよ。特に言う事は……あ、1つあったな」

「何があったの?」

「この小さいロボットだよ。他と違って値段も書いてないし、なんの為なのかもよく分からねぇ」

 

 そう言って指をさした場所には、いかにもそれらしい見た目の、小さなロボットが置いてあった。

 

「えっと……これなんだろう?」

「それは、万引防止くんだよ!」

 

 突然後ろからそんな声が聞こえ、俺たちは振り向いた。すると、そこにはモノクマが立っていた。

 

「えっ、モノクマ!? 何でいるの!?」

「モノクマは、どこにでも現れるのです! 神出鬼没なのです!」

 

 つまり、どこかで何かがあったとしても、すぐに駆けつけられてしまう、ということか。監視カメラもそこら中に設置してあるし、なかなか出し抜くのは難しそうだ。

 

「それで、このロボットは何なんだ?」

「それはね、万引防止くん! この教室を見張ってるんだ! もしオマエラが万引をしようとしたら……ここの穴から、致死性の毒矢が発射されるのです!」

「……は?」

「だから、万引は絶対にだめだからね!! 校則にも追加しておきます! じゃあね!」

 

 そうしてモノクマは勝手にどこかに行った。同時に電子生徒手帳から通知音が鳴り、確認すると、最後から2番目に校則が追加されていた。

 

 

 

10. モノクマメダルを使わずに不当に施設を利用することや、万引きを禁止します。

 

 

 

「要するに、万引きしたらこれで処刑されるってことか」

「そうだな。……ちっ、外より厳しいな」

「えっ。三日月くん、万引きするつもりだったの!?」

「いや別に、そういうわけじゃねぇけど……」

 

 じゃあどういうわけなんだよ、とつっこみたくなるような言い方だが、なんとなく何が言いたいか察した。少しでも何かすればペナルティは死。ここは、そういう狂った場所なんだ。おそらく、こいつもそういうことが言いたいんだろう。

 もしかしたら、これを計画した黒幕は、そのような死に結びつくルールを用いて俺たちを間接的に殺したいのかもしれない。こうして後付けも可能な以上、警戒を完全に解くことは出来なさそうだ。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 視聴覚室には、(たちばな)加藤(かとう)が居た。教室正面には巨大なスクリーンがあるが、その前には小さな画面と機械が備わった個人視聴ブースもあり、意外と便利そうだ。

 

「ここってちょっと古い感じの作りだけど、スクリーンは結構新しいね。なんか、こういうところには古臭いプロジェクタースクリーンしかないイメージだったんだけど、見直したな」

「確かに、そういうイメージあるよねぇ。……でもそういえば、ここの施設って一見古そうだけど、汚れてはいないんだよね。むしろ綺麗なくらい……」

「うーん、私たちが入学するから掃除したのかな……?」

 

 掃除しただけでここまで綺麗になるものなのか?……取りあえず、他のところも見るか。

 壁際の棚には、教材用のものから娯楽用の映画までたくさんの種類が揃えてあった。

 

「結構いろんな映画があるみたいですね。私の好きなシリーズも全部揃ってました……!」

「そうみたいだな。でも……ここで一生を過ごせという割には、少ない」

「そ、そういう不安なことを思い出させるようなことは言わないでくださいよ……」

 

 加藤は、少し目に涙を浮かべながらそう言った。そして、それに気が付いた榎木がすかさず近寄って来て、女の子は泣かせたらダメだとか、もっと気を使えとか、色々なことを言われてしまったのだった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 視聴覚室を出て少し歩くと、奥まった場所に他とはデザインの違う扉を見つけた。しかし、榎木がドアノブに手を掛けて開こうとしても、扉は動かなかった。

 

「あれ? 鍵がかかってる……。何処かに落ちてる鍵を見つけてこなきゃいけないのかな?」

「いや、そんな脱出ゲームみたいには行かないだろ」

 

 中を探索出来ない以上、ここで考えていても仕方が無い。ここは諦めて次の場所に行く事にした。しかしどうやら、後は最初に榎木と会った教室しか残っておらず、未探索の場所は寄宿舎へと続くと書いてある、長めの廊下の先しか無さそうだ。

 

 

 

***

 

 

 

 希望ヶ峰学園長 モノクマと名乗る謎のヌイグルミが、外に出たければ人を殺せ、と言った。何のためにこんな大規模な犯罪行為をしているのか全く検討がつかないが、とにかく行動を起こさない限りは何も変わらない。

 モノクマが去った後、僕が体育館で提案した通り、みんな1人か2人で探索をするために散らばって行った。前に配信でリスナーの子に言われたけど、僕は説得とか提案などの話が上手いらしい。しようと思ってやっていることでは無いけど、それを役立てられるならいい事だよね。話を戻すと、僕は前からの知り合いである市井(いちい) このはさんと行動することにして、少し長い廊下を進んだ先の寄宿舎を探索していた。

 ちなみに、僕たちは初め、インターネットの活動者同士として知り合ったので、お互い活動名である“りょうま”もとい“りょう”と、“しゅりな”で呼びあっている。

 

「あーあ。MIXの作業がストップしちゃうよ……。早くこんな所脱出しようね、りょうくん!」

「そうだね……。リスナーの子たちに心配かけちゃうな……」

「まずはえっと……浴場か食堂ね。どっちにする?」

「一通り探索したら食堂に集まることになってるから、後回しにしようか」

 

 “ゆ”と書かれた暖簾をくぐり中に入ると、今では絶滅危惧種である昔ながらの銭湯のような脱衣場があった。

 

「なんだか昔っぽいデザインね。もうちょっと清潔感を出して欲しかったなぁ」

 

 と、しゅりなさんが呟くと、突然浴場の方から篠永(しのなが)さんが出てきて、話しかけてきた。

 

「昔っぽいから汚いってわけじゃないよね? ……それでさ、ここって一部屋しかないけど、もしかして混浴なのかな? あとさ……」

「ちょ、ちょっと、一度に沢山喋っても分からないわよ!」

「篠永さん、何か見つけたこととか、ひとつずつ教えてくれるかな?」

「あっごめん。話したいことが溜まってたんだよね。咲羅(さら)ちゃん、ぜんっぜん喋らないの」

 

 と言われて気が付いたが、ここには幽塚(ゆうづか)さんも居たようだ。脱衣場の端の椅子に座り、微動だにせずに無表情で座っている。取り敢えず声をかけようかな……。

 

「幽塚さん……?」

「……あ、頭動いた。私には何の反応も無かったのに……」

「ねぇ、あなた、何か見つけたりした?」

「…………」

「はぁ、だめね。無反応すぎよ」

 

 話さないのにはなにか理由があるのだろうか。申し訳ないけど、今は時間が無いから、先に探索をするしかないかな……。

 

「あ、篠永さん。さっきの話だけど、ここは時間で男女交代制なんじゃない? ほら、あの看板」

「ん? あ、本当だ」

 

 僕も改めて周りを見回すと、あることに気がついた。

 

「あれ、ここは監視カメラが無いんだね」

「えっ、本当? まぁ、犯人の性別は分からないけど、着替えとか入浴まで見られるのは嫌だし、よかったのかな……? ……って、違うわよ! こんな所、直ぐに出るんだから必要ないわよね」

 

 でも、ここから出るために何かの方法で犯人を出し抜くとしたら、こういった犯人から感知されない場所というのは重要だ。覚えておこう。

 浴場の方を覗くと、大きな浴槽と水風呂、シャワースペース、サウナがあるだけの単純な構造になっていた。

 

「これでここは全部見たわね」

「そうだね。僕たちはこのまま他の場所も見に行くけど……篠永さんは一緒に行く?」

「んー、いいや。ちょっと飽きちゃった」

 

 と言う、随分自由人な篠永さんと、幽塚さんを置いて、廊下へ出た。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 次に入った場所は、ランドリーのようだった。そして、乃木(のぎ)くんが探索中だった。

 奥の壁に沿ってドラム式洗濯機がいくつか並んでいて、天井には洗濯ロープがかかっている。

 

「せ、洗濯ロープって……。浴場の内装といい、なんでこんなに古臭いの!?」

「確かに……。あ、市井さん、そこの廊下を行くと全員分の個室があったんですけど、その中にも服を干せそうな場所がちゃんとあったから、ここに無造作に干す必要は無さそうですよ」

「そう。それはよかった」

「……あれ、もしかして、市井さんは僕の事嫌いですか?」

「なんか、人に好かれようとしてる感じがするのよね」

 

 この2人は、なんだか相性が悪そうだ……。

 

「2人とも。仲良くしてとは言わないけど、今は非常事態だから、あまりヒートアップはしない様に……」

「あっ。ご、ごめんね。りょうくん……」

「……ごめんなさい、椎柴くん。市井さんも、ごめんなさい。僕としてはそんなつもりは無かったんですけど……」

 

 ひとまずの和解をし、ランドリーを後にした。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 角を曲がると、階段があった。しかし、シャッターが降りていて、開けることも出来ない。

 

「立ち入り禁止ってこと……?」

「校舎の方の階段にも、同じようにシャッターが降りていたし、入るなって事だろうね……」

 

 仕方が無いので2階に行くのは諦めて、その横の部屋に入った。中は倉庫になっていて、箭倉井(さくらい)さんが居た。倉庫と言っても結構狭く、雰囲気も店舗裏のようだった。

 

「箭倉井さん、ここには何があった?」

「調理の要らない食品とか、衣服とか、道具とか色んな物が置いてあるみたい。さっきモノクマが来て、購買部とかと違って、ここのものは好きに持って言って良いみたい」

「え、購買部なんてのもあるの?」

「校舎の方にあるらしいよ」

 

 と、言うことだけ言うと、箭倉井さんは倉庫を出ていってしまった。

 

「何も言わずに行っちゃったね……」

「まぁ、倉庫なんて特別探索するような所では無いけど……せめて一言くらい無いのかしらね」

 

 しゅりなさんの言う通り、もうここには何もなさそうなので、廊下に出た。そのまま進むと、扉の代わりに柵が降りた、部屋というより何かのスペースのような場所があった。ここを探索していたらしい和夏園(わかぞの)さんは、柵のすぐ前に立って、その奥を眺めている。

 

「あら、椎柴くんと市井さんね」

「和夏園さん。ここには何があった?」

「ここはトラッシュルームらしいわ。おそらく、ここにゴミを溜めておいて、向こうの焼却炉で処理するのでしょうけど……」

 

 そう言って、柵の手前の大きなゴミ箱と、焼却炉を指差した。

 

「けど?」

「何か気づかない?」

「えっと……ゴミ箱には何も入っていないから、ここは前から誰かが使っていたような場所ではない、ってことかな?」

「え? でも、単に処分した後って可能性はないの?」

「これは明らかに、新品のゴミ箱よ。それに、奥の焼却炉も綺麗すぎる」

 

 和夏園さんは記憶力だけでなく、視力も良いようだ。

 僕の元に希望ヶ峰学園からのスカウトマンが来たのは、ちょうど夏休み前で、今は9月。つまり、まだスカウトからは少ししか経っていない。そのため、学園についての詳しい説明などはまだ知らない。それでも、こんな、歴史あるような内装と真新しい雰囲気という矛盾した景観にはかなり違和感がある。少なくとも、本当の希望ヶ峰学園に閉じ込められているという可能性は低そうだ。

 

「なるほどね……。流石りょうくん!」

「私も意見を言ったと思うのだけれど……まぁいいわ」

 

 そして、僕達はトラッシュルームを後にした。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 廊下を進んでいくと、両側に扉がたくさん並んでいる所に辿り着いた。ここが、乃木くんの言っていた個室かな? 扉にはそれぞれのフルネームが書かれたプレートが嵌まっていて、数えると17人分の個室があった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 すると、ある個室から柏木くんと平川(ひらかわ)くんの2人が出てきた。個室なのに一緒に探索していたんだね……。

 

「よう! ここは個室だってよ。さっきモノクマが来て説明して行ったんだ」

「2人共、自分の部屋を見てきたらどうだ?」

「そうだね。じゃあ、しゅりなさん、一旦別れようか」

「わかった。……あ、でも私たちの部屋、隣同士だね!」

 

 そう言われて見てみると、両隣はしゅりなさんと暗堂くん。向かいは笹薊くんとなっていた。これはどういう並び順なんだろう……? と思いながら、僕は自分の名前が書かれた部屋へと入った。

 中には、ベッド、机、棚があり、単純な内装となっていた。そしてもう1つ部屋があり、トイレ、洗面台、シャワーがあった。

 

「なるほど、浴場まで行かなくても、ここでシャワーは浴びられるんだ」

 

 机や棚に物は何も無く、おそらく必要なものは購買部や倉庫から各自持って来い、ということなのだろう。

 さて、これで寄宿舎側は全部探索し終わったし、後回しにしていた食堂へ行こう。




この作品の設定考えたときは、まだV3もアニメ3も見てなかったんですよ(しばらく書いて無い間に全部履修してきました)。それで、新生希望ヶ峰学園の学園長が苗木君なこと知らなかったので、自分で考えた設定なのにセルフ解釈違い(?)を起こしてます(笑)。苗木君は、今までの、超高校級だけを集めて才能を絶対優遇!みたいな事はしないんだろうなぁと。

あと、V3とかアニメ3と似ちゃってる所もあるんですよねぇ……。全部知ってから書き始めればよかった……(そりゃそう)
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