フューチャーダンガンロンパ   作:~時雨~

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(非)日常編②

***

 

 

 

 暗堂(あんどう)くんとの探索を終え、終わったら集まろうと言っていた食堂に来た。寄宿舎側はあまりしっかり見れなかったけど、多分みんなで報告し合うから大丈夫だよね。

 食堂の中には17人では余りすぎるくらいのテーブルと椅子があり、普通の学食のようだった。あと、食券機のようなものが置いてあるけど、私たちは今貴重品を持っていない。どうしたらいいんだろう?

 

「これ、日本円を使う機械じゃないのかもな」

「え?」

「どの料理も1桁、2桁の表示だ。おかしいだろ?」

「確かに……」

 

 探索中も思ったけど、暗堂くんはかなり頭が切れる。やっぱり、ハッカーって頭が良くないとなれないのかな。私なんか抽選で選ばれただけの一般人だから、全然役にたててないや……。

 そうこうしていると、段々とみんなが集まり、揃った。この場は“超高校級のサッカー部長”である柏木(かしわぎ)くんがまとめるようだ。探索の前も色々決めてくれたし、適任だよね。

 

「よし、みんな揃ったな。じゃあさっそく──」

「ちょうどみんないるみたいだし、ボクから先に説明をします!」

 

 話始めようとした柏木くんを遮ったのは、なんとモノクマだった。

 

「ま、またいきなり現れた……」

「みんな、なかなか食堂に来ないと思ったら、集合場所だったんだね! おかげで、ボクは待ちぼうけ……」

「いや、監視カメラで知ってんだろ?」

 

 と、暗堂くんがツッコミを入れた。

 暗堂くんは、モノクマが怖くないのかな? どうしてあんなに余裕そうに話しかけられるんだろう……。

 

「もう! 邪魔するのやめてくれないかな、暗堂クン!? ゴホン。この食堂の説明をする前に、とあるシステムの紹介をします。その名も……アルバイトシステム!!!」

「ア、アルバイト……?」

 

 どうして、コロシアイとアルバイトが関係してくるんだろう? 学園から出ることを卒業って言ってたし、その辺をなぞってるのかな。

 そして、モノクマは説明を続けた。

 

「午後2時~5時をアルバイト時間とし、何種類かの作業を選んでアルバイトをすることが出来ます! そして、仕事の種類に応じてモノクマメダルが給料として渡されるのです! あ、これは強制じゃないから、ニートで居たければそれでいいからね!」

「モノクマメダルって、これのことか?さっき拾ったんだけど……」

 

 平川(ひらかわ)くんがポケットからメダルゲームで使うくらいのメダルを取り出した。

 

「あぁ、アルバイト以外でも、学園内の何処かで拾う事も出来るよ! そして、食堂の1部以外のメニューや、1部施設の使用にはメダルが必要なので、いい暮らしがしたければ頑張ってメダルを手に入れてね!」

「いい暮らしって……私たちはここに長居するつもりはないわよ!」

「うぷぷぷぷ……市井(いちい)さんは、まだそんなことを言ってるんだね……? まぁいいや!」

 

 と、モノクマは一度市井さんを煽ってから何処かへと去って行った。

 突然のモノクマ登場に驚き、いきなりされた説明を飲み込むのにみんなの間にしばらくの静寂が流れると、篠永(しのなが)さんが口を開いた。

 

「へぇー。この何個かの無料の食券があるから、バイトしなくても大丈夫ってことなんだ……。でも、結構質素だなぁ」

「あと、倉庫にも缶詰とかの食料があったわよ。あそこのものも、確か勝手に持って行って良いのよね?」

 

 そこに、和夏園(わかぞの)さんが付け足した。2人とも、適応力が高いなぁ……。

 

「……よし。モノクマに邪魔されたけど、気を取り直して話をしよう。まずは、見つけたものとか、気がついたことを順番に教えてくれ」

 

 そして、私たちは探索の成果を話し合い始めた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 一通り話し合った後、食堂の空気は沈んでいた。何故なら、探索して見つけたものはほとんど、脱出の手掛かりになる様なものではなく、むしろここで生活する上で使うものだったから。かく言う私も、もうここで生活するしかないのかな……と、どうしても考えてしまう。

 すると、見かねた何人かの人が顔を上げた。

 

「……脱出出来そうな場所は玄関ホールの厳重な扉だけ、だよね」

「そうだな。……あ、壁とか壊したらどうだ? 誰か出来るやついねぇのか?」

 

 笹薊(ささざみ)くんの確認に答えた三日月(みかづき)くんは、そう言いながら運動系の才能を持った人を見た。

 

「いやー、俺たちがやってるのはサッカーだしな……。流石に無理だわ」

「他に力がありそうなのは……サバイバル能力の高い箭倉井(さくらい)か? いや、悪い。無理だよな」

「うん」

 

 そもそも壁を壊すなんて、三日月くんは割とクレイジーな事考えるな……。でも、カジノディーラーって頭良さそうだし、今はわざと頭使ってないだけとかなのかな?

 

「それだったら今は行けない2階とかに可能性を見出した方がいいんじゃないですか? 少なくとも、校舎と寄宿舎のどちらにも階段はありましたしね」

「そうだな。じゃあ、今からシャッターを開けるための方法探しか? それなら──」

 

 と、その時、壁に掛かっていた画面の光がついた。そこには、モノクマの姿があった。

 

「えー、校内放送です。午後10時になりました。ただいまより“夜時間”となります。“夜時間”には食堂などのドアがロックされるので、立ち入り禁止となりま~す。ではではいい夢を。おやすみなさい……」

 

 何時の間にか、もう10時になっていたらしい。すると、(たちばな)さんが慌てた様子で言った。

 

「え、ここ、ロックされちゃうんだ! どうする?」

「じゃあ、今日は一旦お開きにしようか」

「みんな、さっき言った通り、寄宿舎にはそれぞれの個室があったから、そこで睡眠をとろう」

 

 みんなが席を立ち始めた。それでも、揃って一斉に移動する雰囲気では無いところに、“超高校級”たちの集まり、という感じが出ている気がする。

 個室まで歩いていて気になったのは、加藤(かとう)さんの様子だった。視聴覚室の探索中に会った時もかなり不安がっていたし、心配になる。

 

「加藤さんっ!」

「え? あ、榎木(えのき)さん……」

「大丈夫? やっぱり、怖いよね、こんなことになって……」

「はい……」

 

 すると、後ろからやってきた橘さんも参加して来た。

 

花乃(はなの)ちゃん、眠れなかったら私の部屋に来ていいからね! あ、起きれるかは、分かんないけど……」

「えぇ!? もしそうなったらちょっと悲しいですね……。でも、ありがとうございます」

「あはは、もし橘さんが起きなかったら、私の所に来てもいいよ~」

 

 良かった。少し表情も和らいでいるし、落ち着けたかな?

 そして、私たちはそれぞれの個室で眠りについた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 「オマエラ、おはようございます! 朝です、7時になりました。起床時間ですよ~! さぁて、今日も張り切っていきましょう~!」

 

 スピーカーから、そんな声が聞こえてきた。そっか、寄宿舎に止まったんだった……。いつもと違う場所で寝ると、起きた時ここどこ? ってなることあるよね。

 

「……よし、今日こそ脱出出来るように、頑張ろう!」

 

 昨日の内に倉庫から持ってきて置いた道具を使って身支度をして、朝食の為に食堂へ向かった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 食堂に入ると、柏木くん、平川くん、前広(まえひろ)くん、りょうくん、橘さん、加藤さん、笹薊くんが居た。

 

「あ、灯鞠(ひまり)ちゃん。おはよー!」

「橘さん。おはよう!」

「おはようございます!」

 

 橘さんと加藤さんが挨拶をしながらこっちに来てくれた。加藤さんの顔色はそこまで悪くなさそうで、ちゃんと寝れたみたい。

 

「なー、他のやつら遅くね?」

 

 と、平川くんが言った。確かに、朝のアナウンスがあってから何だかんだ30分くらい経っている。

 

「みんな寝坊してるのかなー?」

「じゃあ、起こしに行こうぜ」

 

 というノリになり、個室の方まで戻ることに。

 取り敢えず私は、自分の部屋の隣の暗堂くんを起こすことにした。

 

「暗堂くーん! 起きてるー?」

「…………」

「もう7時半だよー?」

 

 と、声をかけたが、そう言えば個室は防音だったから、外から何か言っても聞こえないんだっけ……。ということで、今度はドアの横にある呼び鈴を押した。

 少し待ってみると、ドアが開いた。

 

「おはよう、暗堂くん」

「……どうしたんだ?」

「え? どうしたって?」

「用があって呼んだんじゃないのか……?」

「違うよ? 食堂に来るのが遅いから、呼びに来たの」

 

 すると暗堂くんは、「早いだろ……」と呟いて、部屋に戻って行った。2度寝するのかと思ったけど、少し開いたドアの隙間からガサゴソと音が聞こえてきてるから、準備してるみたい。もしかして、暗堂くんは朝弱い系だったのかな? ハッカーって徹夜してそうな感じあるし。

 そして、身なりを整えて出て来た。

 

「7時半って早くないか?」

「そう? むしろ、学校行く時とかはもっと早くない?」

「あぁ……俺の高校は8割オンラインだから、いつも始業10分前に起きてる」

「おぉー、最先端の学校だね! ……でも、そんなすぐに頭回る?」

 

 などと話しながら食堂へと戻ると、大体の人が揃っていた。

 

「あれ、でもまだ何人か居ない……」

「三日月くんと幽塚さんは来ないって言ってたよ」

 

 後ろから、声が聞こえ、鼓動が速まった。でもそれはびっくりしたからじゃなくて、その声がとても大好きな声だったから。

 

「りょっ、りょうさん!」

「2人ともマイペースな所が昨日だけでも結構あったしね、しょうがないかな……」

「そ、そうですね……。でも、朝ごはんはみんなで食べた方が絆も深まると思います。やっぱり」

「そうだね。状況も状況だし、朝はこうやって集まることにした方がいいかも……」

 

 と、りょうくんは朝からしっかり考えを巡らせていた。そして、その後朝食を食べている時に、朝はアナウンスの後食堂に集まろう、ということになったのだった。

 

 

 

***

 

 

 

 榎木に叩き起されて朝食を食べた後、他の奴らは各々散らばっていったみたいだった。だが、俺はまだ眠気があったので、倉庫から持ってきた常温の缶コーヒーを飲みながら食堂に残っていた。

 ここにはパソコンも無いし、スマホも奪われたみたいだし、物凄く暇だ……。

 しばらくそうしていると、食堂に誰かが1人で入ってきた。

 

「やあ。今ちょっと大丈夫?」

 

 それは、例の榎木が好きな配信者だった。

 

「えっと……椎柴、だったか?」

「そうだよ。あれ、昨日は名前覚えてなかったっけ?」

「悪い。一晩寝たら忘れたんだよ」

「そ、そっか……」

 

 元々、名前覚えるの得意じゃ無いから、一度に16人の名前を覚えるのは少し難しかった。

 

「まぁ、しばらくしたら定着するだろ。……で、あのMIX師は一緒じゃないのか?」

「しゅりなさん……市井 このはさんね」

「あぁ、そうだ、市井だったな。昨日はお前と一緒にいたよな?」

「さっき、もう1回隅々まで探索してくるって言ってたよ。それに、常に一緒にいる訳じゃないよ」

「そりゃそうか」

 

 もう既に見た場所での見落とし、もしくは現状でも行く事が出来る場所そのものの見落とし。確かに、もう一度見直すのはいいかもしれない。

 だが、この事態を作り出した黒幕が俺たちにさせたいのは殺し合い。なら、大事な手がかりになる物は無いという可能性もある。俺の知っているデスゲームものの作品では、殺し合いの会場と黒幕の部屋ってのは全く別の場所という展開もあった。

 

「そういえば、呼び方が変わってるね」

 

 突然、椎柴がそう言った。その通り俺は、昨日は女子の事を○○さんと呼んでいた。

 

「昔、女子と面倒くさいことになった時があって、女子の前では気をつけてるんだよ。正直、こうするのも面倒だけどな……」

「面倒くさいことになった……?」

「俺は性格が良くは無いからな、あんまり好かれないんだよ」

 

 そして、少しの間沈黙が流れてしまった。

 

「……おい、何か話すんじゃなかったのか?」

「あ、そうだったね。でも、内容は特にないんだよ。話すことそのものが目的というか……」

「は?」

 

 話すことそのものが目的……? そんなことあるか?

 

「まぁ、適当に世間話でもしようよ」

「世間話……。あんまり得意じゃないんだが……」

「そっか。じゃあ……僕への質問とかは?」

 

 “超高校級の配信者”である椎柴への質問か……。

 

「……そうだ。お前の配信者になってすぐの話とか? 確か小5で始めたんだよな。その頃はその辺の界隈は全然確認してなかったから、真実が知りたい」

「なるほど……」

 

 俺が小学生の頃は、自分の好きなものにしか触れてなかった。だから、配信者りょうまの事は、その後に幅広く調べていた時に知ったのだった。

 SNSなどを過去に遡って調べることも出来たが、そこまでするほど興味もなかったからまとめサイトを覗くだけで済ませてしまったが、せっかく聞けるのなら聞いておこう。

 

「……実は僕、小学生の頃はあんまり仲が良い子が居なくてさ」

「意外だな」

「精神年齢……って言うのかな。周りより大人びていたらしくて、馴染めなかったんだよね。今思い返すと、確かにそうだなっていう出来事もあるよ。そんな時に、インターネットで配信して、素性を隠しながらも色々な人と繋がることが出来るっていうのを見つけたんだ」

 

 そうか……。友達がいない上、歳が近い周りの奴らとは仲良くなれなかったからこそ、ネットに来たってことなのか。

 

「でも、まだその頃はトーク力が未熟でさ。その時は自分の年齢とかは隠してたんだけど、話の内容からバレちゃって」

「あぁ、それは知ってるな。こんな子供がインターネットで活動するなんてって炎上すると同時に、そうとは到底思えない受け答えが話題になった……だったか?」

「うん、そうだね。でもそれは一時的なもので、少し経ったらみんな認めてくれたんだ」

 

 ……そこが、こいつの1番非凡な所だよな。批判されていたところから短期間で認めさせる、なんて芸当は、なかなか出来ないだろう。

 

 

 

***

 

 

 

 少し話がしたくて暗堂くんに声を掛けたが、雑談のようなものは苦手だったらしく、暗堂くんの質問に僕が答える、という形を数回続けた。

 

「……悪い、なんかインタビューみたいになってしまった」

「気にしてないよ」

 

 そして、僕は今話していて感じた暗堂くんの印象を頭の中でまとめた。

 実は、僕が暗堂くんと話をしに来たのは、この人がこの状況において危険かそうでないかを判断するためだった。“超高校級のハッカー”という肩書きに、モノクマを平然と揶揄う(からかう)態度。このコロシアイに乗り気なのかと危惧していたのだ。しかし、どうやらそれは杞憂だったようだ。

 

「……うん。君は、思ったより大丈夫そうな人間だ」

 

 『こっちの話だけど』と付け足そうとしたが、先に暗堂くんが口を開いた。

 

「大丈夫そうな人間? …………ははっ。なるほど、そういう事か」

「……え?」

「俺の人間性を確かめるために話しかけたって感じだろ?」

 

 どうやら、勘も鋭いようだ。

 

「バレちゃったか。……失礼だったよね、謝ります。君はもしかしたら脱出に協力的では無いのかな、と思ってしまって。でも、話してみて悪い人じゃないって分かったよ」

「悪い人じゃない? それは間違ってるよ。思いやりなんかも無いしな」

「いや……。少し思ったんだけど、君は性格が悪いから嫌われるんじゃなくて、理解されなくて人を遠ざけてるんじゃないかな」

 

 悪人では無いが、変人。それが、今話していて何となく分かったことだった。質問の内容や、食いつく場所が予想と外れることが少しあり、感覚がズレていることは確かだろう。もしかしたら、そのせいで周りから変な目で見られているのかもしれない。

 そして、それは僕にも……いや、“超高校級”と呼ばれる、何かにおいて普通より優れている者には、少なからず共通する性質だろう。だからこそ、希望ヶ峰学園という天才たちが集まる場があることによって、その緩和が期待出来るのではないかと僕は前々から思っていた。だったのに……

 

「おい、どうした? 急に黙り込んで」

「あぁ、ごめんね。考え事をしてしまって……」

「そうか。……話は終わりでいいんだよな? 俺は一旦部屋に戻る。じゃあな」

 

 と言って、空き缶を持って食堂を出ていった。そして、僕も探索に戻ることにした。




食堂に最初に集まった組、陽キャ感上手く出せましたかね……? 平川くん、前広くん、橘ちゃんは特に「うぇーい」って感じをイメージしてます。


あと、一応初の親密イベント……のつもりで暗堂くんと椎柴くんの会話を書きました。実力の高い2人のやり取りってめっちゃいいですよね(作者の性癖)。V3の百田くんと王馬くんみたいな……。
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