フューチャーダンガンロンパ   作:~時雨~

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(非)日常編③

***

 

 

 

 朝食を食べた後、みんなはそれぞれに動き出した。部屋に戻る人とか、すぐに探索を始める人もいたけど、私はどうしようかなぁ……。

 そう考えながら歩いていると、体育館に入っていく市井(いちい)さん、笹薊(ささざみ)くん、和夏園(わかぞの)さんを見かけ、気になったので行ってみることにした。

 

「市井さん、何してるの?」

「何って、探索よ。まさか、昨日の探索だけで諦めたの?」

「え、そういう訳じゃないよ!」

 

 やっぱり、市井さんはちょっと当たりが強いな……。

 

「市井さんが積極的に動こうとしてたから、私が体育館は広いから、まだ何かあるかもしれないって言ったの」

「そっかー。確かに、舞台裏のごちゃごちゃした所とか気になるね」

 

 そして、私たちは体育館の奥へと進んだ。

 ここに来ると、何となく思い出してしまう。昨日ここでモノクマに告げられた、“コロシアイ”。でも、みんな仲良く出来てるし、大丈夫だよね……?

 さっきも言った通り、私は舞台裏が気になってやって来た。学校行事や部活など、特別な時にしか用事の無いこの場所はやっぱり雰囲気が違う。少し不思議な感覚になるなぁ。あれ? でも──

 

「あんまり物が無いね? 普通舞台裏って、結構色々置いてあると思うんだけど……」

「……そうなの? 僕はあんまり知らないから……」

「あ、そうだったんだ。えっと、作りかけの模造紙とか、使ってないカーテンとか、転がってきちゃったボールとかがあるイメージかな」

「……じゃあそれなら、確かに整理されすぎてるかもね」

 

 奥に床下収納の蓋らしき物を見つけ、開けてみると数枚のモノクマメダルを見つけた。そういえば、学園内のどこかに落ちてることもあるって言ってたっけ。

 

「……綺麗だね、中」

「え? あ、本当だ」

 

 中にメダル以外の物は他に入っていなくて、かなりピカピカだった。

 

「あんまり使われてなかったのかな」

「……どうだろうね……」

 

 そして、引き続き色々なところを見て回ったのだった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 体育館の探索をしばらくしたけど、あまり成果が無く、切り上げられた。市井さんはがっかりしていたけど、すぐに気を持ち直して、別の所へと移動して行った。

 私は少し疲れたので、息抜きに購買部に行ってみることにした。体育館で見つけたモノクマメダルは、笹薊くんが要らないと言って私が全部貰ってしまうことになったから、ここで使うことも出来る。

 

「うーん、何か買おうかな……?」

 

 何となくここに来たけど、食堂で使う為に取っておいた方がいいのかな。

 と、色々見ていると、端の方にガチャガチャを見つけた。一般的に、ラインナップの写真がある所には、『モノモノマシーン 学園内ではここでしか手に入らないスペシャルな物がたくさん!』という文字だけが書いてある。

 回そうか考えていると、後ろから声が聞こえた。

 

榎木(えのき) 、それ回すのか?」

 

 振り返った所に居たのは、柏木(かしわぎ)くんだった。

 

「えっと……うん。回そうかな」

「やめろとは言わないが、 ちょっと勿体なくないか?」

「私、一応“超高校級の幸運”だからね。こういうのの運は昔からいいから大丈夫!」

 

 メダルを1枚入れてハンドルを回す。出てきたのは、お菓子の“パイの果実”だった。

 あれ? 別に嫌いじゃないけど、好きでもないお菓子だな……。

 

「あっ、パイの果実……」

「どうしたの? あ、もしかして、このお菓子好き? じゃあ、あげるよ」

「えっ、いや、好きだけど譲ってもらう程じゃないぞ」

「大丈夫! 私の運って、こういう明確に確率が絡むようなことでしか良くないんだけど、それでこういう結果になったってことは、柏木くんにあげるのが正解ってことだよ」

 

 昔から、ガチャガチャとか福引きとか、そういうのだけはずっと良い物を引き寄せて来たし、私もそこはもう疑っていない。

 

「……そうだ。じゃあ、これ一緒に食べながら休憩しよう」

「え、それでいいの?」

「もちろんだ。それに、仲間と積極的にコミュニケーションをとるのも大事なことなんだぞ」

 

 ということで、柏木くんとパイの果実を食べながら休憩することになった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「これ、最近食べてなかったけど、美味しいね」

「俺は、甘い系のスナック菓子だと、これが一番好きだな」

「そうなんだ! 私は、甘い系だったらクッキーとかかな~」

 

 そうしてしばらく雑談しながら過ごして、私はふと思った事を聞いてみた。

 

「そういえばさ、“超高校級のサッカー部長”はキャプテンで、“超高校級のサッカー部員”はエースって聞いた事があるんだけど、正直その2つの違いってあんまり分かんないんだよね」

「キャプテンとエースの違いか……。そうだな、龍也(りゅうや)はうちの部活で1番の腕前があって、俺よりもずっと上手いんだ。だから、エースはチームの中で1番強い人を指すってことだな」

「ほうほう」

「それでキャプテンっていうのは、チーム全体を引っ張ったり、一人一人に声をかけてフォローしたり、作戦を立てる時に主となったり、実際にグラウンドを走る場面以外での活躍も多い……と言えるかもな」

 

 つまり、エースは切り込み隊長で、キャプテンは凄腕指揮官……って感じ? ……なんか違うかな。

 

「……最初、俺がそういう事を始めたのは、龍也がいるチームを勝たせたかったからなんだよ」

「平川くんをサポートしたくてやってたら、キャプテンの才能が開花したってこと? それで今では2人で“超高校級”なんて、すごく良い友情物語って感じだね!」

 

 それに、柏木くんはサッカーそのものの方だって上手いはずだよね。同じチームで全国大会優勝してるんだし……。

 

「じゃあ、サッカーを始めたきっかけも平川くんなの?」

「始めたきっかけか……。龍也もそうだけど、1番最初は父親、かな」

「お父さんがサッカーやってたってことか~」

「ああ。小さい頃は一緒にボールで遊んだり、試合を見に行ったりしてたな。はっきりとは覚えてないけど、多分そこから興味を持ったんだろうな」

 

 やっぱり、天才には、才能が開花する瞬間とか、そのきっかけっていうのがあるんだなぁ。私は気がついたら運が良かったってだけだし、それが“超高校級の幸運”っていう才能だよって言われてもあんまり実感がないというか……。

 

「……と、結構時間が経ったな。そろそろ行くか?」

「そうだね。じゃあ、引き続き頑張ろう」

 

 そして、私は一度部屋に戻る事にした。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 部屋に居ると、夜時間を知らせるモノクマアナウンスが流れた。

 柏木くんと話して別れた後、引き続き学園内を色々と見て回った。夕食はみんな一緒ではなかったけど、(たちばな)さんたちと食べて、仲を深められたかな。

 明日の朝食会で聞いてみないと分からないけど、今日も大きな手がかりとかを見つけた人はいなかった。私たち、どうなっちゃうのかな……。

 

 

 

***

 

 

 

「オマエラ、おはようございます! 朝です、7時になりました。起床時間ですよ~! さぁて、今日も張り切っていきましょう~!」

 

 今日は、モノクマアナウンスで目が覚めた。榎木に、明日はちゃんと朝食会に来いと釘を刺されてしまったし、俺は仕方なく早起きして食堂へ行こうとした。

 だがその時、終わったと思っていたアナウンスの続きが流れ出した。

 

「いやぁ、やっぱり、何も無いと殺人は怒りませんねぇ~。なので、オマエラには“動機”を用意しました! あ、見ないとオシオキだよ? うぷぷぷぷぷ……」

 

 殺人のための動機が配られたのか……。現状、全員がモノクマの言った卒業ルールとは別の方法での脱出を目標として動いている以上、黒幕が手を打ってくるのは当たり前と言えるだろう。

 拒否もできないので、俺はいつの間にか部屋の机に置かれていたタブレットを手に取った。電源を押すと画面が着き、映像の再生画面が表示された。一応探してみたが、再生以外の機能は付いていないようだ。

 そして、俺は再生ボタンに手を触れた。

 

『“超高校級のハッカー”である暗堂(あんどう) 紫綺(しき)クン。友達0人の彼ですが、1人、彼を気にかけている少女、三桜(みざくら) 八千恵(やちえ)さん』

「……」

 

 画面に、俺のよく知った三桜の姿が映し出された。

 

『彼女は彼女で暗堂クン同様、変わっていたので、お互いにどう思っていたのかは知りませんが……彼女に何かあったようですね!』

 

 場面が切り替わり、誰かがカメラを持って動いている様なアングルになった。周りは少し荒れていて、座り込んで脅えている様子の三桜がいる。しかし、映像に音は無く、映像の三桜は口を動かしているが、何を言っているかは分からない。

 一瞬ノイズが走ると、また場面が変わっていて、三桜は結構な量の血を流していた。

 

『彼女がどうなってしまったのか……。正解発表は、“卒業”の後で!』

 

 そして、映像は三桜の決定的な姿は映さずに終わった。

 

「これが、動機……」

 

 身近な奴の危険を仄めかして、“卒業”を焦らせるのが目的か。おそらく、他の奴らの映像も同じ様になっているだろう。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 食堂に行くと、既に椎柴(しいしば)乃木(のぎ)、和夏園、榎木がいた。

 

「少ないな」

「動機映像を見て、みんな混乱してるのかもしれないですね」

 

 だから、比較的冷静な奴らが先に集まったということか。しかし、榎木は冷静とは言えないと思うが、大丈夫なのだろうか。そう思って俺は声をかけた。

 

「えっと、混乱はしてるけど、それで挫けてたらダメだと思って勢いで来ちゃった。……暗堂くんは大丈夫?」

「俺は大丈夫だ。それに、人質に取られてそこまで焦るぐらい身近な存在でも無いしな……」

「そうなの? でも……なんか少し様子変だよ?」

 

 と言われて、少し驚いた。自分では特に揺さぶられてはいないと思っていたが、何かしらの影響はあったようだ。そして、榎木がそういうことに鋭いのも意外だった。

 しばらくすると、他の何人かもやって来た。

 

「市井さん、橘さん、加藤さん、柏木くん、前広くんがまだ来ていないけど、もう時間はそれなりに経っているし、もう始めてもいいんじゃないかしら?」

「……でも、柏木くんの代わりに話をまとめる人が必要だよね」

「あぁ、そうか。よし、(そう)と俺は2人で1人だからな、俺がまとめるよ!」

 

 と、平川が立ち上がった。絶対出来ない気がするが、そうなったら椎柴辺りが何とかするだろう。

 そういえば、昨日は朝食会に参加していなかった2人は、やはり動機の事もあってか今日は来ているようだ。

 

「っつーことで、えーと……何話せばいいんだ?」

「今朝配られた動機だろ? 俺はその話の為にわざわざ朝食会とやらに来たんだ」

「あ、そうだな。あの動機だな。てか、三日月もそんなピリピリすんなよ」

「うるせえ」

「……あの動機、みんなも、大切な人が傷付けられる様な内容だった? 私の映像には家族が出てきたわ」

 

 案の定いきなり話がそれ始めたが、和夏園が方向を戻すために言った。

 

「私もそんな感じだったよ」

「……僕は、恩師だった」

「そう。それで、私思ったのだけれど……どうやってあんな映像を用意したのかしら」

 

 用意した方法? それは、黒幕とその仲間が俺たちの周りの人間を調べた上で、襲っている所を撮った、という感じだろう。……いや、そういうことを聞いているんじゃないのか。

 

「ここはどこなのかは分からないが、どこかに17人を誘拐・軟禁するのと、その関係者を襲うのとでは黒幕の負うリスクに大きな差がある、という事だな」

「確かに、普通の住宅地で……あんなことをしたら、一瞬で騒ぎになる」

「そうね。つまり、このコロシアイの黒幕は、思っていたより大規模なことが出来るんじゃないかしら」

 

 和夏園がそう言ったことで、全員が少なからず表情を暗くした。突然学園に閉じ込められ、3日経っても脱出出来ず、動機と題した映像を見せられる。やはり、段々と追い詰められて来ているのだろう。

 しかし、榎木が立ち上がった。

 

「和夏園さんも、暗堂くんも、りょうさんも! 推理して真実を求めるのもいいけど、それだけだと辛くなっちゃうよ……! みんなで励ましあって、協力して頑張ろうよ」

「ごめんなさい、私が変に探ったりしたから……」

「あ、別に、それが悪いっていいたいんじゃなくて──」

「よし、取り敢えず今はみんな協力して、持ちこたえよう。脱出してしまえば、後からだって知ることは出来るしね」

 

 と、最後には椎柴がそう言って、ひとまずは場が落ち着き、後回しにされていた朝食を食べることにしたのだった。

 ……何故、椎柴は柏木の代わりに仕切ろうとしなかったのだろうか。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 朝食を食べ終えたあと、一同は昨日より静かにはけて行った。あいつらが励ましたといっても、やはり不安は拭えないのだろう。それに、おそらくは、“コロシアイ”が起きる事を怖がっている奴もいるはずだ。

 

「りょうさん、さっきはフォローしてくださってありがとうございました」

「お礼を言うのは僕の方だよ。本当は、最初からあの方向に持って行ける様にするべきだった……。先頭に立って動くことに、迷いがあったんだよ。それで──」

「あ、あの!」

 

 榎木が椎柴の前に来て言った。

 

「こんな変なことになっちゃいましたけど、元々りょうさんはその才能を認められて、他の“超高校級”の人たちと一緒に成長していくこの場所に来たんですよね! だから、その……りょうさんの素敵な才能を発揮して、いいんだと思います!」

「…………ありがとう、榎木さん。頑張ってみるよ」

 

 さっきもそうだったが、こいつは人を元気付けるのが上手いのか? ただ、楽観的なだけなのか?

 

「じゃあ、僕は柏木くんたちの様子を見てくるよ」

「朝食会に来なかった人たちですよね。心配です……」

「あ、それと……」

「どうしたんですか?」

「そんなに堅苦しくしなくてもいいんだよ? 歳も同じだよね。それに、普段僕のことは“りょうくん”って読んでるんだよね?」

 

 榎木はそう指摘されて、とても焦っている。1番最初の時にそう言いかけていたのを覚えてたのか。

 そして、椎柴は寄宿舎の個室へと向かった。

 

「あ、あんなふうに言われても、無理だよ……」

「そんなに好きなのか?」

「うん……。とりあえず、呼び方だけでも頑張ってみようかな」

 

 歳も同じで、同じ学校に通う生徒同士になる予定だったというのに、それだけ遠い存在として見るなんて……いや、そういえばこいつは抽選で選ばれたんだから、むしろ偶然遠い存在が近くにやってきたような感覚なのかもしれないな。

 

「話は変わるが、榎木さんの動機映像は、どういう感じだったんだ? 場所とか、周りの雰囲気とか」

「え? えっと……普通に、私たち家族の住んでる家だったよ。外は……夜だったかな。どうしたの?」

「いや、全員の詳細を聞いていなかったから、何か違いがあるかと思ったんだが……」

「そっか。暗堂くんのも自分の家だった?」

「俺のは家族じゃなかったが、俺の家ではあったな」

「……え? ど、どういうこと?」

 

 そこで、そういえば俺とあいつの関係は傍から見たらおかしいものだったことに気が付いた。

 俺の人間関係の中ではそれなりに付き合いがあると言える、三桜 八千恵。あいつとは小・中学校が同じで、何故か学校の活動での関わりが多かった。俺の方は特に興味も無かったのだが、あいつは俺とは違う理由で、周りと馴染めていなかったため、向こうはよく絡んできたような気がする。

 その後、別々の高校に上がってしばらくした後、あいつは突然俺の家にやってきた。『高校でいじめられて、学校に行きたくないけど、家には親がいるからサボれない。だから、お邪魔させて欲しい』と言って。その関係で、あいつも俺の家に入れるようにしてあったのだ。

 ということを掻い摘んで榎木に言うと、少し間を置いて微妙な表情をした。

 

「え、えっと……暗堂くん基準では友達でも無い子を、家に自由に出入りできるようにしてたの……? ちなみに家族はなんて?」

「あぁ、家族とは一緒に住んでないから、特に言ってない」

「そ、そうなんだ……。まぁ、でもきっと暗堂くんはその子のこと大切なんじゃないのかな?」

「自分では、そう言われても的確でないような気がするんだけどな。……人間の内面に関することは苦手なんだ」

 

 そもそも、”暖かい家庭”とは言えないような家で育ち、自分自身も人間関係に興味が無いとなると、そのような感覚が分からなくて当然かもしれない。

 

「そろそろ私たちも行こうか。動機の人たちの無事を確かめるためにも、頑張ろう!」

「そうだな」

 

 そして、俺たちも食堂を後にした。




 平凡な主人公が個性強いキャラとの親密イベントで戸惑ってるのって面白いですよね……




 原作のダンガンロンパについて語りたいので、後書きでちょいちょいやってみようと思います。

 無印のダンガンロンパで好きなキャラは、霧切さん、セレスちゃん、ジェノサイダー、むくろちゃんです。CPだと、苗霧、ジェノ十かな……。第一印象では十神くん推しだったのですが、その後のシリーズの強烈なトリスタ達に上書きされてしまいました(笑)
 ストーリー・トリックだと、3章と5章、おしおきは、霧切さんのifルート(?)のやつが好きです。
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