フューチャーダンガンロンパ   作:~時雨~

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(非)日常編④

***

 

 

 

 暗堂(あんどう)くんと榎木さんと別れた後、僕は部屋から出てこなかった人たちの様子を見に行った。しゅりなさんと前広くん、(たちばな)さんは、少し無理していそうな感じはあったが、一応大丈夫そうだった。そして、今から加藤さんを訪ねるところだ。

 ベルを押して少し待つと、ゆっくりとドアが開いた。

 

「あ、椎柴(しいしば)さん……。おはようございます」

「おはよう。朝は食堂に来なかったけど、大丈夫?」

「すみません……。その、ビデオを見て怖くなってしまって……」

「そうだったんだね。加藤さん以外にも来ていなかった人はいたし、気にしなくても大丈夫だよ」

「ありがとうございます。明日はちゃんと行くので……」

「無理はしなくて大丈夫だからね」

 

 そう言うと、加藤さんは一礼して部屋に戻って行った。1番この状況を怖がっているように見えていたけど、とりあえずパニックになったりはしていなくて安心かな……。

 次に、柏木くんの部屋へ行くと、柏木くんはすぐに出てきた。

 

「椎柴か。……俺が言い出した朝食会なのに、今朝は行かなくて悪かったな……」

「動機なんてものが配られたんだから、仕方ないよ」

 

 そして、朝食会であった事などを伝える。

 

「……そっか、わざわざありがとな。もう少ししたら俺も行くよ」

 

 受け答えはいつも通りだったし、一応大丈夫そうだ。しかし、欠席したことをかなり気にしていたのか、本当に申し訳なさそうにしていた。普段からそういう立場なだけあって、責任などは重視しているのかもしれないな……。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 廊下を歩いていると視聴覚室から音が聞こえ、覗いてみると篠永(しのなが)さんが居た。どうやら有名な国民的アニメ映画を見ているようだが、本人はとても暇そうにしている。

 集中していなかったからか、こちらにすぐに気付いて声をかけられた。

 

「あ、椎柴くん。どーしたの?」

「音が聞こえてきたから、誰が使ってるのか気になって見に来たんだよ」

「ふーん。……暇だったからアニメを探しに来たんだけどさ、よく見たら有料のばっかりだったんだよね。仕方なくこれ見てたんだけど、やっぱりこういうのは好みじゃなくて……。それに、どちらかと言うと今はゲームがやりたい気分だし」

 

 ゲームか……。この学園内にゲーム機があるとしたら、あの購買部にあるモノモノマシーンくらいだろうし、少し挑戦してみてもいいかもしれない。幸い、探索の空き時間にアルバイトシステムを試して、モノクマメダルも少しある。

 

「ちょっと待っててね」

「うん?」

 

 視聴覚室からすぐの所にある購買部へ移動し、モノモノマシーンを回すと、少し古めの携帯ゲーム機を当てることが出来た。確認してみると、いくつかのゲームが既に内蔵されているらしい。

 視聴覚室へ戻り、篠永さんがゲーム機を見ると、目を輝かせて近寄って来た。

 

「ゲーム機……!」

「少し古いけど、これでも良ければ──」

「くれるの!?」

「う、うん……」

 

 よっぽどゲームがしたかったのか、凄い勢いで食い付いた。そして、見ていた映画を片付け始めたので、合間に雑談を振ってみることにした。

 

「そういえばさ、僕も活動柄よくゲームするんだけど、得意なゲームとかあるの?」

「えーっと、対戦アクションとかFPSとか、動きの多いやつが好き」

「そうなんだ。……僕は、色々な人が楽しめるように広く浅くって感じでしか手を付けられないんだけど、篠永さんは上手そうだね」

 

 僕がそう言うと、篠永さんは手を止めてこちらを向き直り、少し不満げに呟いた。

 

「翻訳の才能があるのに勿体ないっていう人がいっぱいいるけど、私はそんなに上手くなくても好きなことをやってる時間が大切なの。アニメ見たりゲームしたり、好きなものを大事にしたいの……」

 

 その言葉は普段の話し方とは違い、不服を唱える様な雰囲気が混ざっていた。もしかしたら、普段から気にしていたことだったのかもしれない。

 

「あ……ごめんね。軽率に『得意なの?』とか聞いちゃって」

「気にしてないよー。と言うより、私の方が喋りすぎた……。あ、ゲームありがとうね」

 

 そして、ゲーム機を持って教室から出て行った。

 会話の終わりが唐突だったけど、思ったより邪険にはされなかったな。ちゃんと頼めば、いざと言う時は協力してくれそうだし、意外に気が向いたら誰かと仲良くなったりもするのかもしれない。

 

 

 

***

 

 

 

 廊下を歩いていると玄関ホールの方が騒がしく、気になったので見に行ってみることにした。

 

「おい、お前らさっき食堂に居なかったよな。動機を見て部屋に篭もるなんて、犯行計画でもしてたんじゃないのか?」

「なっ……そんなわけないでしょ!」

 

 あいつの名前は……確か、三日月だったか? そいつが、朝来なかった奴らを責めているようだ。

 

「そもそも、三日月くんだって昨日は朝食会断ってたじゃん! ねぇ、前広くん?」

「……え? お、おう」

「昨日と今日じゃ話が違うだろ」

 

 実際、三日月の言ってる事の方が理にかなってはいる。しかし、朝食会の時には既に椎柴たちが団結して協力しようという結論を出していたのだから、その時に反論でもすれば良かったのではないだろうか?

 と、少し遠くから眺めていると後ろから足音が聞こえ、立ち止まった。振り返ると、そこに居たのは春添(はるぞえ)だった。

 

「何?」

「いや、後ろで急に止まったから何かと思って」

「あっちを見てたの」

「……君はああいうの素通りするタイプかと思ってた」

「それはあなたもじゃないの?」

 

 まぁ確かに、丁度春添が来なかったらこのまま立ち去っていただろう。

 

「……そうじゃなくて、ほら、あの人」

「あの人? 前広がどうしたんだ?」

「見て分からない? 顔色悪いでしょ」

「顔色……。それは、お前が医者だから分かるんじゃないか? 俺にはよく分からない」

「そう」

 

 それだけ言うと、春添は前広たちに声をかけるでもなく、そのまま寄宿舎の方に歩いて行ってしまった。本人に体調を聞いたりはしないんだな……。

 俺ももう行くか、と歩き出そうとした時、突然前広が叫んだ。

 

「わ、分かったよ! じゃあ、今夜体育館に集合な!」

「はぁ?」

「お前が言い出したんだから、ちゃんと来いよ!」

 

 と、よく分からないことを言いながら廊下へ走って来たため、俺が影から見ていたこともバレてしまった。

 

「お、暗堂も居たのか。ちょうどいいからお前も体育館来いよな!」

 

 何を考えているのかは分からないが、後々聞いてみたら榎木たちも誘われたらしい。一体何をしようとしているのか……。

 

 

 

***

 

 

 

 前広くんに言われていた時間になり部屋から出ると、丁度暗堂くんが自分の部屋に入ろうとしている所だった。

 

「あれ、暗堂くん? そろそろ時間だけど体育館行かないの?」

「いや……面倒だしいいかと思って」

「えー、せっかく誘われてるんだから行こうよ」

 

 前広くんは、楽しいことをすると言って詳しくは教えてくれなかったけど、何かを企画してたりするのかな……?

 体育館に入ると、橘さん、加藤さん、柏木くん、平川くんが先に集まっていて、前広くんが舞台の上で準備をしていた。スタンドには彼が普段ケースに入れて背負っていたベースが立て掛けられていて、そこから繋がっているコード類をガチャガチャと触っているみたいだ。

 

「おっ? 前広がギター弾くのか?」

「……龍也、あれはギターじゃなくてベースだぞ」

「そうか、前広は“超高校級のベーシスト”だったな! ……でも、ギターとベースって何が違うんだ?」

 

 ギターとベースの違いか……。多分、出る音の高さとかが違うんだったかな? ギターとベースって形似てるし、素人だと見分けられないなぁ。

 

「確かあいつは、最近人気のバンドのメンバーだったか? たまにネットとかでも特集されてるのを見たことがある」

「そうなんですね。私、あんまり音楽を聞きに行く機会ってないので楽しみです!」

 

 すると、りょうくん、市井さん、三日月くんもやって来た。やっぱり、りょうくんと市井さんは一緒にいるんだな……。

 SNSでも、りょうくんのお知らせとかにお祝いの返信を送ったりして仲良さそうにしてるのを見たことがあるし、もしかして付き合ってたり、するのかな。そう考えるとちょっと複雑だけど……そんなこと考えてても仕方ないか。それに、せっかく前広くんが準備してくれてるんだし、集中しよう。

 

「あっ、三日月くん。ちゃんと来たんだね!」

 

 加藤さんと話していた橘さんが気が付いて、三日月くんに話しかけた。

 

「何をするのかと思えば、あいつがベースを弾くのかよ。……俺は音楽が嫌いなんだ」

「えっ、ちょっと!」

「三日月くん、待ってよ。“超高校級のベーシスト”の演奏なんだし、きっと楽しいんじゃない? 音楽っていうのは、聞いてるといつの間にかノリノリになっちゃうものだしさ!」

 

 帰ろうとした三日月くんに思わず声をかけてしまったけど、音楽が嫌いなんだったら引き止めない方が良かったかな……。しかし、橘さんが少し強引にとどまらせて、三日月くんは渋々体育館に残った。

 準備を終わらせた前広くんが楽器を構え、マイクの前に立つ。

 

「時間になったし、始めるぜ! これから、俺のバンドの曲を何曲か演奏する。ミニライブみたいな感じで楽しんでいってくれ! ちなみに、今日のこれは俺が全部演奏したやつだ!」

 

 そう言って、横に置いてある機械を操作すると、音源が流れ出した。その曲はよく聞くと全ての音がベースによって演奏されていて、それなのに物足りなさを感じないという不思議な構成になっている。これって、前広くんのベース愛ゆえ……なのかなぁ。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 あれから何曲か演奏を続け、最後にベースソロがとてもかっこいい曲を弾いて、前広くんは楽器をスタンドに戻した。どうやら、予め準備していた曲はもう全部終わってしまったらしい。

 拍手が収まると、橘さんが舞台に近付いて行った。

 

「前広くん、凄く楽しい演奏だったよ! 私も参加したくなっちゃった」

「おー、いいな! 一緒にやろうぜ。あ、でもお前……ユーフォー? 持ってないよな」

「ユーフォね。ユーフォニアム! ……そうじゃなくて、私ピアノも出来るから」

 

 と、舞台の端に寄せられていたピアノを指さした。橘さんはピアノも弾けるんだ……。流石だなぁ。

 そうして橘さんがピアノの準備をしていると、今度は市井さんも舞台に上がって行き、言った。

 

「なら、私も参加しようかな。一応歌い手もやってたのよ」

 

 歌い手とはインターネットでカバー曲を歌って活動している人のことで、市井さんもといしゅりなさんは凄腕MIX師として有名になる前はそっちの活動をメインにしていたから、多分歌もそこそこ自信があるのだろう。

 

「でも、お前って編集技術が高いから分からないだけで実は歌は上手くないって話じゃなかったか?」

「それは噂よ! デマ! “とても上手い”とは自分では言えないけど、そう言われるほど下手でもないの」

「そうか。じゃあ、3人でやろう!」

 

 その後、前広くんのベース、橘さんのピアノ、市井さんの歌によって最近流行りの曲の即興演奏が行われた。いきなりでも直ぐに演奏出来る所は、流石という感じで、聞いていた皆も楽しめたみたいだった。

 これで、明日からも頑張るぞ!




後半の方の体育館での一幕は、ゲームではスチルが出るようなプチイベント(?)みたいなイメージです。(それにしてはちょっと長かった……?)
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