なら次はお分かりですよね…?
では続きをどうぞ。
その1
「どうしよう、これ…」
そう言って手に持ってる紙切れに目を落とす。
それはスイーツビュッフェの無料チケットで取引先の仲が良い人に貰ったものだ。
貰い物だったらしいのだが甘いのがダメみたいで、そういう事ならと貰い受けた。
俺は特段甘いのが好きな訳ではないが別に嫌いな訳でもない。普通に食べる。
だからといって一人で来るメリットもないし来る勇気もない。男一人で来ようものなら変な視線を浴びせられる事間違いなしだ。
そもそも、このチケットの使用条件は女性か男女ペアとなっている為にその選択肢は外れる。
だからこそ、日陽川と来ようと思ったのだが…。
「まあ、家の用事だと仕方ないよなぁ…」
そう、件の日陽川は家の用事が出来て来れなくなってしまったのだ。
「ゴメン、今度埋め合わせするから」と電話が来た時にもう俺は駅前の待ち合わせ場所に着いていてどうしようもなくなっていた。
「帰るか…?でもなあ…これ今日までだろ…?んー」
期限が今日までのチケット。捨てるのも勿体ない、だが今から誘っていける人もいない。今の現状では帰るしか選択肢はないのだが…。
「帰るしかないか…。ま、仕方ないなこれは」
「あれ?お兄さんですか?」
帰ろうと踵を返すと背後から可愛らしい声が聞こえた。
振り向くとそこには前に会った少女がそこに居た。
「えっと、確か君は…」
「はい、前に助けてもらった者です!あの時は本当にありがとうございました」
「あの時は偶然だったけど助けられて良かったよ。あの後は大丈夫だった?」
彼女は綺麗にお辞儀をしてからニコッとはにかんだ。
その笑顔に内心ドキッとしたがなんとか平静を保って返す事が出来た。
本当に笑顔に弱いなぁ、俺は。
「はい。あの後バイト先の人に相談して然るべき対応をしてもらうつもりです」
「そうなんだ。頼れる人がいて良かったよ」
「はい!皆頼れる人達ばかりでいつも助けられてます」
彼女が浮かべてる笑顔はとても眩しくてだけど暖かい気持ちになるものだった。
「ところで君はどうしてここに?」
「それはお兄さんにも言えますよ?お兄さんは何で駅前で…って持ってるそれなんですか?」
そう言って彼女が指を指すのは先ほど使い道を失ったスイーツビュッフェの無料チケットだった。
そうだ、折角だし…。
「これか?取引先の人に貰ったんだがついさっき使えなくなってな。君がいいならあげるけどどう?」
「使えなくなった…ですか?それはどういう…?ちょっと見せてもらいますね」
彼女は俺が差し出したチケットを受け取り、まじまじとチケットを見る。
「なるほど…条件があるんですね。えーとなになに…。女性か男女…ペア…ですか。つまりあれですか?お兄さんがお姉さんな訳ないですから、彼女さんと一緒に行くつもりだったんですか?」
「彼女じゃないけどな。女の子の友達と行くつもりだったんだが、向こうが家の都合で来れなくなったんだ。だから俺は行けないから、君にあげるよ」
俺がそう言うと彼女は考えて込む様な仕草をしだした。
ん、どうしたんだろう?
もしかして甘いものがダメだったのか、と考えてると彼女はバッと顔を上げて俺の目を見据え…。
「私と行きましょう、お兄さん!」
そういう彼女の目には強い意志があるように思えた。
××××××××××××××
「本当にいいのか?確かに次に会ったらお茶をするとか言ってたけどこれは完全に…」
「いい加減うるさいですよ、お兄さん。私が良いって言ってるんですから良いんです。私みたいな美少女とデート出来るなんて、逆に胸を張ってもらわないと困ります」
「自分で美少女って言っちゃうのね…」
そう俺は彼女を助けたお礼として今日は彼女とデートをする事になった。
何故こうなったか俺にも分からない。
一緒にスイーツビュッフェに行くのはまだ良い。チケットが無駄にならなくて良かったし彼女との約束も守れそうだったから。
「折角なのでデートしましょう。予定が無くなったんなら暇でしょ、お兄さん」と半ば強引に話が進められて今に至る。
確かに予定が無いが…まあいい。本人の言う通り、こんな可愛い子とデート出来るんだから男冥利に尽きるもんだ。
今日は存分に楽しませてもらおう。
「ちなみになんだが、場所って分かる?待ってる間に調べようと思ってたんだけど調べる前に連絡きちゃってさ、調べてないんだよね」
「そうだったんですか?道が有ってたのでてっきり知ってるものだと…。はぁー…仕方ないですね。私が案内してあげますよ!」
彼女は少し驚いた顔で振り向いた。
その後、大袈裟に溜め息をついたと思いきやドヤ顔をしてそう言った。
適当にブラブラしてたけど有ってたのか…。
ってかドヤ顔かわいいな。
「さて、時間も勿体ないのでさっさと行きますよ!」
「お、おい。そこまで急がなくてもいいんじゃ?」
「時間は有限なんです。少しでも無駄にしたくないですからね!」
彼女は戸惑ってる俺の手を引いて歩きだした。
彼女はニコニコして俺を引っ張っていく。彼女の心境は分からないがここまで笑ってくれるのだ、まだ短い間しか会話を重ねてないが楽しくいてられる間柄だったら良いなと歩きながらそう思った。
「因みになんだが良いか?」
「改まってどうしたんですか、お兄さん」
「えーとだな…今の状況を理解している?」
「今の…状況…………!?」
俺の言葉で立ち止まって振り向いた彼女は視線を俺の顔から徐々に下にしていって手のところまでくると次第に顔が赤くなり始めて最終的にゆでダコの様になっていた。
その間もずっと手を繋いだままだった。
流石に付き合ってもない男女が手を繋いだままなのはどうなのだろうか?
俺は役得だが、これを黙って続けるのもなんだか悪い気がする。
「はぅ……。あの…その…ご迷惑でしたか…?」
彼女が上気した顔で尚且つ上目遣いでこちらを見てくる。
上目遣いは反則だろ…。
ってかこのままで良いのか…?
「迷惑じゃないが…なんというか、君は良いのかい?」
「私は良いですよ、お兄さんなら」
!?
そんな言い方されると変な妄想してしまう…。
相手は未成年(多分)だろ…。手を出したら警察のお世話になっちまう…。
というか会って間もないのにここまで好意的になるものなのか…?
「じ、じゃあこのまま行くか。案内してくれる?」
「はい!おまかせ下さい」
彼女は頬を赤く染めながら快活に笑みを浮かべた。
×××××××××××××××
「さて着きましたよ!」
「ほえー。なんというかこれはいけたとしても男一人じゃ入るのを躊躇う店内だな…」
彼女の案内で目的の店に着いてからの感想がこれだ。
でもそう思いたくもなる。
清潔感のある店内にファンシーな内装が施されていて中々に入りずらい雰囲気が漂ってる。
「いらっしゃいませ、お二人様でよろしいでしょうか?」
「はい。あ、これ使います」
朗らかな店員さんが対応してくれ、そこで貰ったチケットを渡す。
「お預かりしますね。ふふっアツアツでいらっしゃいますね」
ん?アツアツ…?
あれ…そういえば…。
「「ふぁっ!?」」
同時に気づいたのか咄嗟にお互いに手を離す。
恥ずかしさのあまり顔が熱くなるのが分かる。
「初々しいですね、ふふっ。ではお好きな席へどうぞ」
微笑ましいものを見るような感じで店員さんはにこやかにしていた。
は、恥ずかしい…。
「い、行くか…」
「はい…」
店員さんに言われて動きだして適当な席へ向かい合わせに座った。
「さ、さて!気持ちを切り替えていきましょう!そういえば自己紹介もまだでしたね。私は
「立華っていうんだな、よろしく。俺は○○っていうんだ、よろしく」
「○○さんですか、よろしくお願いしますね。でももう慣れちゃったのでこれからもお兄さんって呼ばせてもらいますね」
「ああ、好きに呼んでくれ」
それから他愛もない話をした。
こういうのも中々に悪くない。
「そろそろ取りに行こうか、時間が勿体ない」
「そうですね、無料とはいえ時間一杯食べないと!」
よし!と意気こんで席を立ってお互いに目についたものからとっていく。
さぁてどれから取ろうかな…。
「まずは定番の苺のショートケーキだな。それにモンブランに…お、このフルーツタルトも美味しそうだな」
こんなもんかなと満足して席に戻るとまだ立華は戻っていなかったが少しすると戻ってきた。
その手には片手にトレイを1つづつもっており、それぞれに色々なスイーツが敷き詰められていた。
「た、立華…その量は…?」
「沢山食べなきゃ勿体ないですからね!一杯持ってきてやりました!」
ゆっくりゆっくりと口に出しながらそーっとテーブルにトレイを置いて座る立華。
この量食べきれるのか…?
「何ですかその目は…ちゃんと食べれますよ。私を舐めないで欲しいですね!」
そう言ってドヤ顔する立華。
まあ一杯持ってきたくなる気持ちも分からなくないが、食べきれなかったらそれこそ勿体ないし、無くなったならまた取りに行けば良いだけでは…?と思う。
なんだか、元を取ろうと必死になってる人みたいで言い方が悪いが少し貧乏くs…。
「お兄さん、何か失礼な事考えてません…?」
「イエ、ナニモカンガエテマセンヨ」
「怪しいですね…。ま、いいです。とにかく食べちゃいましょう!」
ふぅ、危なかった…。
なんでこう、女の子ってやつは勘が鋭いんだ…。
とりあえず回避出来たことだし俺も食べ始めよう。
「おお、美味しいな」
「ですね!お菓子は美味しいんですよ」
「道を知っているからやっぱりと思ったが、来た事あったのか」
「はい。何回かバイト先の友達と来た事があります」
「そんなのか。あの前に電話で呼び出されたところの?」
「そうです。人手が少ないのであの時みたいに急に呼び出されたり、上司にコキ使われたりしますけど楽しい場所なんですよ」
「ほうー。差し支えなければどんな事してるのか教えてくれる?」
「すみません、お店の事は話せないんです…」
バイト先の事を話せないと目に見えて落ち込む立華。
店の事が話せないってなんだか日陽川のバイト先と同じだな。
ま、本当に同じだとしても店のアレコレで言えないだろうけど。
「そこまで気にしないでいいよ。話せないなら話せないで構わないから」
「そうですか?良かったです。お店のルールなんで破っちゃうと大変なので」
「罰則とかあるのか?」
「そういうのではないんですけど、お店の仕様上話してしまうとややこしくというか面倒な人が増えると困りますので…」
「あー…。あの時のおっさんみたいや奴とか?」
「まあ、そんな感じですね。私達がアレコレ言ってしまうとお店の特殊性が無くなってしまうので…」
「なるほどなぁ。お店の売りがなくなるのは避けたいよな…」
「はい…。お店の事を他の皆さんに知ってもらいたいんですけど、自分の口からは言えず…。自ら調べてもらってホームページとか口コミを見て来てもらうしか出来ないんです…」
「うーん、難しいところだ。そうだ折角だし一緒に考えてみよう」
「良いんですか?ありがとうございます」
「いいよいいよ。こういうのは一人で考えても埒が明かないあかないし」
俺達はスイーツを肴に議論し合った。
色々な情報が伏せられてる中で頑張った方であるが、結局いい結論が出ずに小一時間が経過して議論は終わった。
だが…。
「す゛み゛ま゛せ゛ん゛…。た゛へ゛て゛く゛た゛さ゛い゛…」
あの時のドヤ顔はどこへ行ったやら…。
あれだけの量のスイーツは食べきれず残したまま制限時間が来ようとしている。
涙は流していないが、机に突っ伏してダウンした立華がいた。
どこか声は藤原○也の様な声をしていた。
×××××××××××××××
「すみません…もう余計に取りません…」
「学んだならよし!でも何回か来てるならその時に学んでもいいはずじゃ…。っていうか地べたは汚いぞ…」
入った時とは逆に物凄く落ち込んだ立華。
店から出て三角座りをして足の間に顔を埋めている。
因みに、彼女はジーンズなのでこの状態でも下着は見えない。
……誰に説明してるんだ。
「そうですね、いい加減立ちます。それなんですけど、いつも一緒来るメンバーの一人が結構食べる人で知らない間に無くなってるので何も気にしなかったんですよね…」
「そうなのか…ま、さっきも言ったが学べて良かったじゃないか。どうせ無料なんだしな」
「ですね!さて次はどこに行きます?」
「えっ?まだここからどこかに行くのか?」
「そうですよ、何言ってるんですか!今日はデートなんだから1日中付き合ってもらいます!ほら、行きますよ!」
そう言って彼女は手を差し出す。
えっ?これはまさか…。
「一回繋いだら何回も同じですからね。それに知らない間に居なくなられても困りますから」
「そんな子どもみたいな事しないよ…。仕方ない、君がしたいなら」
俺は差し出された手を握る。そうすると彼女も握り返してくる。
なんだかそれが暖かく感じた。
「今はお兄さんの行きたい所だったので次は私の行きたい所に行きますよ!」
「立華の行きたい所?」
「ふふっ、秘密です!」
彼女は満面の笑顔で微笑んだ。
それはどこか天使の様であった気がした。
いかがだったでしょうか?
なのちゃんらしさは出てましたでしょうか?
もうちょっと書きたかったんですが長くなりそうなのでここで一旦切ります。
長くなりそうだったら3話構成になるかも?
出来れば2話構成にしたいところ。
では次でお会いしましょう。