改めて、この神霊廟と云うところを観察して感じたが、此処によく似た世界を私は知っている気がする。
・・・そうだ。
この幻想郷も私が生み出したモノの一部であるのなら、あり得なくはない話である。
恐らく、此処は原初の破壊神と対をなる護御魂カゲネコのいた世界線に近い筈だ。
つまり、東方秘神遊戯と呼ばれる作品の世界観に酷似した幻想郷なのだろう。
だが、異なる点もある。
この神霊廟に護御魂カゲネコがいない事、布都ちゃんの性格が違う事などがある。
元々、護御魂カゲネコのいる幻想郷も紅魔館で短期バイトをした私と云う世界を軸にしているから、それがない世界線がこの幻想郷なのだろう。
ーーなんて事を、ふと、思ってしまった。
まあ、隠岐奈の課題はあくまでも護御魂カゲネコではなく、陰猫(改)と呼ばれる人間が如何にして神霊廟で過ごせるかなのだろうから、彼女は今回、関係ない筈だろう。
彼女が出てきたら出てきたで面白いかも知れないが、私のやる事はこの世界線でも陰猫(改)と呼ばれる人間が普通に過ごせる事を実証する事だけだ。
改めて、ただ、それだけの話なのだと自分を戒めておく。
もっとも、それが難しいのであるのだが・・・。
「ふむ。成る程ね?」
そんな事を考えていると不意に煤だらけの太子様が屠自古さんと現れる。
「先程はすまなかったね?
まあ、ちょっとした聖徳ジョークだと思ってくれないか?」
「・・・はあ」
私は太子様に生返事をして相槌を打つと屠自古さんが太子様の脇腹を肘でつつく。
「いや、本当にすまなかった。私もどうかしていたよ。
だから、許して貰えると嬉しいなと・・・」
「ああ。まあ、大丈夫ですよ」
「そうか!そう言ってくれると助かるよ!」
どうやら、太子様は屠自古さんに叱られて謝るように言われたのだろう。
太子様はコホンと一つ咳払いしてから改めて、真剣な表情になると私をじっと見据える。
「それよりも君は興味深い考察をしているようだね?・・・私達の在り方も君の創造した幻想郷と云う存在の中の一つに過ぎないと云う事か」
「あくまでも仮説ですが、隠岐奈が語った事も考えるとそうなのかなと」
「ふむ。成る程ね」
太子様は何事か考え、唯一、話に置いてきぼりにされている屠自古さんが首を捻る。
「あっと、どう云う事ですか、太子様?」
「レミリア嬢の言葉を借りるのなら、この世界の運命は彼が創造した世界だと云えるって事だね。
いや、正確には彼が模倣した世界と呼ぶべきかな?」
流石は太子様だ。私の思考を読んで理解しているのだろうが、的確な発言をしてくれる。
「それで次はどうするんだい、仮初めの創造主殿?」
どうやら、思考が読まれた事で私は太子様にも試されているらしい。
さて、私はなんと答えるべきかな?