シャンフロ妄想集   作:TY

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1/24 時系列順に並べ替えました。内容に変更はありません。
旧2番目

前話の楽郎×永遠の続きです。
どうしてあんな展開になったのかを書くはずだったのになんか違うのが出来上がる不思議。
もう一話ぐらい続きそう。


人生の決断は割と勢いが重要

「よし、メンタルリセット完了!」

 

「随分と大規模なリセット作業だったな....」

 

「それだけ受けた衝撃は大きかったってことなんですよ」

 

「ふーん」

何がとは敢えて問わない。

どのことを指しているかはわからないけど、やぶ蛇にしかならないのは火を見るより明らかだしそこから飛び出してくるであろう炎蛇を捌ける自信がない。

 

それよりも本人の言葉通りにメンタルリセットできたのなら喜ばしいことこの上ない。

ぶっちゃけ今までの永遠は贔屓目(惚れた弱み)で見ても扱いに困る状態だったし。

 

 

あの後、数分としないで再起動した永遠はさっきまでのテンパり具合が嘘のようにてきぱきと身仕度を整えると、既に諸々を終えていた俺の腕を掴み無言のままにホテルを出た。

 

鞄から取り出したキャップをその長い髪をしまいこむように被り、だて眼鏡も昨晩つけていた細身の洒落たものから野暮ったい黒縁のにかえている。

一目どころかしっかり対面しても直ぐに天音 永遠だと察することができるのは生粋のファン(熟練の邪教徒)くらいであろうと思われる変貌っぷりだ。

着ている服は昨晩のと一緒なのに帽子とメイク、メガネでここまで変わるものかと感心している間にも進む足は止まらない。

 

「あの、天音さん?どちらに向かうので?」

 

流石にそろそろコミュニケーションをとろうと対話を試みたが、一切合切反応は返ってこない。

黙々と、しかし、いつものペースよりも足早に駅の方に向かって進んでいく。

 

「もしもーし?いや、永遠?」

 

「....」

 

うーむ、名字呼びやさん付けが気にくわなかったわけではないのか。

これならまだ幕末の連中の方がコミュ力高いぞ。

ただ、あそこは第一言語が刃と鉛玉で第二言語となると花火やら団子の串の変わり種もふえるがやってること(天誅)一緒(天誅)

つまりコミュニケーションは完璧。

ただ、割りとコミュ力=殺意な部分もあるけど。

そう考えると初めからコミュは無く、力しか使ってないじゃねーか。

というか、今、俺の腕を掴んでいる力もそこそこ強くね?

逃がさないという意思を感じる。

いや、まさかこのまま駅のホームで無理心中式天誅....ならまだマシだがいつものこいつなら、事故を装って俺だけを亡き者にしてこの一件をなかったことにするのでは?

と、思考にクソゲーが混ざり始めた頃にはたと周りの風景が様変わりしていることに気がつく。

 

考えが遊んで歩いているうちにもリアルの足も歩き続け駅前の百貨店に入っていたようだ。

そして今いるのは女性向けファッションのエリア。

 

そんな中から、永遠は迷いなく1つの店に入っていく。

もちろん腕は掴まれたままなので俺も後ろをついていことになる。

 

目的地に着いたのか、あっさりと俺の腕を解放すると迷いなく2着の洋服を手にとりこちらによく見えるように拡げ、無言のままこちらに突きつけてくる。

 

あー....まさかこれは

「俺に選べと?」

 

こくり、と首肯を返してくる永遠に内心頭を抱え

お前、俺のファッションセンス微妙って毎回言ってるじゃねーか!

とツッコミたくなるが、堪える。

堪えて、ため息をひとつ。

 

「そう言うならそうするが....」

ワケはわからんが、多少は付き合ってやるか。

顔隠しとして芸能方面で出なきゃならない時に着てくもののアドバイスもらってる借りもあるし。

 

自分にセンスやら着こなしなんかの知識を求められても困るので、似合う似合わないとは別の方向からさくっと判断を下し、そちらを指し示す。

二択の時点で事故はおこらないだろ。

 

永遠はそれを見て選ばれなかった方を迷うこと無く売り場に戻し、空いた左手を今度はこちらに差し出してくる。

 

金の無心....ではないよな。

こちらも左手を差し出しての握手....

いや、ここでしてどうするよ。

 

なら思い付く選択肢でまともなものとして右手で相手の左手をつかみ、肩を並べてレジの方へ向かう。

有り体に言ってしまえばお手てを繋いで横並び。

 

わりと恥ずかしいが多分、正解を選べたのだろう。

未だに会話は成立していないが、少しだけ相手の頬がゆるんだような気がした。

 

レジのお姉さんからの微笑ましいものを見るような、恋愛狂者(バカップル)を見るような視線が向いてる気がしたのは自意識過剰なのだろう。

 

「お支払方法は現金でよろしいでしょうか?」

ブランドのロゴが印刷された紙袋に商品をなれた手つきで入れながら会計を進める店員さん。

 

そこではたと今の永遠の状態を思い出し、とりあえず会計を済ませようと財布を取り出そうとする。

この週末(土日)は元から一緒に出かける予定であったので、ある程度の額は入れてある。

それに、ここであたふたするのは格好がつかないんじゃないかという小さな見栄もあったが。

 

「あ、こっちでお願いします」

それよりもはやくポケットから携帯端末をとりだし電子マネー決済を願い出る永遠。

 

いや、店員さんとは普通に話すのかよ。

 

その後も洋服屋を何件かはしごした。

永遠が迷うことなく何点か服を提示し、俺が選ぶ。

相手がそうありたいのならこちらもそれに応えようと、会話はなくそれを繰り返す。

店を出る毎にシャツにパンツ、ジャケット、スカートとどんどん荷物が増えていき、そのつど手を繋ぎ直す。

 

はじめのうちは普通に手を繋いでいたが、気がついたら指を絡める恋人繋ぎに変わり、二人歩く姿もより密着するかたちになっていた。

服越しに感じる体温と柔らかさに煩悩が刺激されたのか、昨夜の情事と自分の腕の中で乱れる彼女の艶姿が脳裏を掠める。

煩悩を振り払おうとして少しだけ視線を落とし息を落ち着ける。

 

やらかしたことも含めて色々と覚悟を決めなくてはならないだろうがそれはそれ。

今は黙って永遠の買い物に付き合うのみか。

と、脇道にそれた思考と落としていた視線を戻していく。

 

目の前には下着姿の女性の身体を模したマネキンがあった。

いや、正しくはランジェリーショップの前だったというだけなのだが。

 

情欲を追いやったタイミングでこれかよ。

いや、まさか、これは....

ちらりと隣の人物に視線をやれば満面の笑みを浮かべてこちらを見ていた。

まさか、狙ってやがった?狙ってやりやがったのか。

口を開かずとも俺を落とし入れるのはわけないとでもいいたいのか!

 

ぎゅっと俺の手を握る力が強まる。

それはまるで獲物を捕らえた蛇が締め付けていく様を連想させる。

これだと捕らえられた獲物側じゃねーか!

 

流石に羞恥が勝り、離れようと....する前に永遠が一歩を踏み出す。

密着している分、わりと強い力で引かれてしまう。

 

色々と覚悟を決めなくてとか思ってたけどこれはちょっと想定外というか、方向性の違いというか

 

「え?マジで行くの?」

 

この問いかけにも当然、返答はなく抵抗する間もなく敵地へと引きずり込まれてしまった。

 

他の店と違い何故か丁寧に商品を見定め、時折、こちらにそれを見せて俺の反応を伺う。

今までと同じ流れなら無心で対応できていただろうになんでここにきてパターンを変えてくるのか、これがわからない。

 

見せてくる下着を身に付けた姿を想像しては無理矢理忘却するというルーチンを繰り返していく。

その度にメンタルがゴリゴリ削られ、何点か永遠自身が見繕ったものをレジに持っていく頃にはもう精神的に瀕死だった。

 

なので店員さんや周囲にいたお客さんからの視線は実質ノーダメージなのだ。

そのはずなのに、黒とか赤の派手目なのやら濡れたティッシュより透けてそうなネグリジェ、白系のベビードールと多種多様な肌着類が全て俺の趣味で選んだように見られてると思うと少しだけ死んだはずの心が痛んだ。

 

終始手を繋いだままにランジェリーショップを出た後は、雑貨屋で安っぽいスウェットの上下セットやらを、ドラッグストアで何故かシャンプーやボディソープ、歯ブラシなどの生活用品を買った後は電車に乗り、俺の住んでいるアパートへ直行。

 

改札やら邪魔になりそうな場所以外では大概手を繋いでいた気がするが気にしない。

 

そうして持っていた荷物を床に置いて、ソファに並んで腰をおろし一息ついたところでメンタルリセット発言に繋がるわけだが....

 

 

「それにしても我がことながら結構買ったねぇ」

 

リビングの一角に積まれた買い物袋を見やりながらしみじみと呟く。

よかった。

あの量が普通だと言われたら価値観に着いていけなくなるところだった。

 

「今週末会おうって言ってきたのは荷物持ち欲しさだったのか?」

 

「いや、そういうつもりは全くなかったんだけどね。ちょっと想定外というかやった....いや、この場合はヤられた?ことがちょっとキャパ超えて暴走しちゃった」

 

「それは」

軽い雑談のつもりでは会話を拾ったらわりと本命が返ってきて答えに窮してしまう。

覚悟はしていたつもりだったのにいざとなると怖じけている自分がいた。

 

「いや、責めてるわけじゃないよ?少なくとも昨日の記憶はしっかりあるから大丈夫」

 

いつもの口調、もうゲームだけでなくリアルでも見慣れた笑顔。

 

「だから、その、ちゃんと言って欲しい」

 

だが、その瞳の中には隠しきれないほどの不安が見てとれた。

 

ああ....お前は何をしている、陽務 楽郎。

パニック映画で自分は身体が反射的に動く人間だとかのたまっていた癖になんて様をさらしている。

演技だったとしても知ったことか。

目の前の事(惚れた女の涙)よりも、優先するべきものなんて今の自分にあるのかよ。

 

頑張ってくれ、未来の俺。

今の将来設計に一足草鞋が増えるだろうがなんとかしろ。

強いて言うなら武田氏に相談だ!!

 

「あとね、今ならまだお酒の勢いだったって言われても....」

 

「永遠、好きだ。結婚を前提に付き合って欲しい」

 

流石に看過できない言葉の流れを断つように、告白をする。

 

「まだ学生の身分だからすぐにとは言えない。ただ、覚悟は決めた。だから、近くで見てて欲しい。ちゃんとお前に釣り合う収入()社会的地位(名声)を得るから」

 

言いたいことを一方的に言いきり、相手の返答を

 

「なんでそうなるかなぁっ!?」

 

待とうと思ったがちょっと想定外のリアクションをされた。

あれ?なんかトチった?

 

「とりあえず付き合うのはよろしくお願いします!!」

 

「あ、はい。こちらこそ」

よくわからないテンションのままに頭を下げてくるので、こちらもそれに応える。

とりあえず告白にはOKをもらえたようだか、じゃあなにが気にくわなかったんだ?

 

「それよりも、どうしてそこで、金と名声がでてくるのかな?結婚を前提にとかも驚いたけど問題はそっちよ」

 

「だって、お前、飲んで荒れてるときに『私に告白とかプロポーズが許可されるのは私以上に富と名声を持つものだけだっての』とか真顔で言ってたじゃん」

 

「え?そんなこと言って....たわ。いや、でも、あれはさぁ?ほら、その前後の会話も思い出してみて?」

 

そう言われしかたなく、記憶を掘り返してみる。

あれは確か、呼び出されるにしても遅い時間帯で、しかも合流した時点で結構ストレスケージが溜まってそうな状態で....

 

「ああ、共演した俳優だかがしつこいって話だったか」

 

「そうそう。一緒にお食事をーとか言いながら下心丸見えのがしつこくて、この後用事があるって断って1人飯もあれだから楽郎くんを呼び出した日ね?だから、あれは本心と言えば本心だけどそれだけではないというか....あーもう!!」

 

しどろもどろに言葉を並べていた永遠ががしがしと頭をかく。

なんとなくだが、言いたいことは伝わってきた。

 

「うん。金も地位も名誉も欲しいってことだろ?」

 

「....わかってていってるだろー!」

 

端的に纏めてやったら永遠が襲いかかってきた。

確かに意図的に言葉を省いたが、まさか直接的な手に出るとは思っていなかったので抵抗する間もなくソファに押し倒され、そのまま唇を重ねられる。

 

数秒程度、触れるだけの軽いキス。

 

口づけを終えてもなお、俺を押し倒したままの状態ではにかみながら笑っている彼女は

「結構前から好きだったんだよ、楽郎くん?」

少し恥ずかしそうに、それでも喜色を隠しきれていない声色で語りかけてくる。

 

顔が熱くなり赤面しているのがわかる。

 

自分からしたり、ねだられた覚えはあるが、それら(キスと告白)を相手からされるのは始めてで....

ああ、これは

「....わりと恥ずかしいな、これ」

 

「それ、昨日から今朝にかけて私にしてきたことを思い返しても同じこと言える?」

 

「....わりと恥ずかしいな」

 

「いい度胸してんじゃん?」

くすくすと笑い合っていると、ぐぅ、と何かが鳴る音がした。

何か、というか俺の腹の虫が鳴いた。

 

それもそのはず。

ホテルを出た時には正午を既に回っていた。

そこから今に至るのだから起きてから水分以外はなにも口にしていないことになる。

色々とあったが、今になって安心からか体が正直に欲求を訴えだしたのだ。

 

「え、私、食べられちゃう?」

永遠は笑いながら自身の身体を隠す様に離れる。

 

流石に性欲で食欲は賄えないんじゃないか?

よっこらせ、と上体を起こしてテーブルの上に置いてた携帯端末に手を伸ばす。

 

「デザートは後だろ。うーん....今から出かけるのもあれだし宅配でもとるか?」

 

デ、デザート扱い!?とか思ってた以上に反応してる永遠を尻目に出前のメニューを表示する。

うーん、かなりがっつりいきたい気分だから丼ものに小うどんでもつけるかな。

 

「そっちは昼飯どうする?というかこの後の予定は?」

 

「あ、うん。メニュー見して。予定は特にないかな。後、今日は泊まってくから」

メニュー画面を表示していた端末をわたすと代わりに、割と爆弾発言が返ってきた。

 

「は?」

 

泊まる?いや、着替えとか諸々どうするんだよ、と聞こうとして部屋に鎮座している買い物袋が視界に入る。

あー、そういえば色々買ってましたねぇ。おしゃれな服以外にも部屋着になりそうなのもシャンプーやらも。

てことはこの展開を既に想定していた?

 

「うーん、今はちらし寿司とかの気分かなぁ....あ、晩御飯は楽郎くんの手作りでよろしくー」

 

答える前に次の要望をぶん投げてくるな。

お赤飯でも炊いてやろうか、この野郎。

 

「わかったよ。あと、うちでの晩御飯は魚がメインになるから二食連続で魚が嫌ならちらし寿司はやめとけ」

 

ビックリしたような表情でこちらを見てくる。

そちらから言っておいてそのリアクションはなんだ。

というか、素の時とかは割と素直に表情に出るよなこいつ。

自分もそうらしいが気にしない気にしない。

 

そんなことを考えてるのを知ってか知らずか、ニヤリと口角を釣り上げ

「自信ありってところなのかな?言っておくけどおねーさん、味にはうるさいよ?あ、でも出来がよかったらご褒美としてSNSにアップしてあげるね」

ようやく普段(外道)の側面が顔を出してきたか....

そしてそれはご褒美なのか?

 

「おう、覚悟しとけや。涙ながさしてやるよ」

まあいい、リアクションに困る程度のワサビを食らうがいいわ。

 

とりあえず宅配頼んで、買ってきたのも整理してから買い出しかな。

流石に人様に出せる程度の料理にするなら色々と足りないし。

 

多分、こんな風に互いを振り回して振り回されての関係が続いていくのであれば退屈はしないだろうさ。




誤字報告、お気に入り登録等ありがとうございます。
色々とかたちにしたい妄想はまだあるので遅筆ですが、楽しんでいただければ幸いです。

以下、蛇足

蛇足その1
「因みにあの時に酒の勢いだったって言ってたら?」

「私は優しいから、瑠美ちゃんにありのままを伝えるだけで許してあげたよ」

「死刑宣告よりも恐ろしい....!」

蛇足その2
「ナチュラルに告白からのお泊まり想定で買い物してたけど、保留とか振られたりしたらどうしてたんだよ」

「泣き落としなりなんなりでとりあえず泊めてもらって....」

「泊めてもらって?」

「散弾銃って怖いよねぇ」
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