「いやー、ここの空気も変わらないねぇ」
「未だに城の復興が終わらない時点でわかりきったことじゃねーか」
つい先程にNPCのショップ前で楽しく遊んでる窃盗団と強盗団にわけいって仲良く
約束よりはやくログインした時間潰しとしては悪くない実入りだったので足取りは軽い。
「ここも寂れていくのかと思ったけどまだプレイヤーが残ってるみたいで安心したよ」
「ここまで好き勝手やれるゲームも少ないからな。そもそも、この環境が量産されてたまるかって話だが」
「それもそうか」
「つーか、そんなゲーム見つけたら絶対に同じ事を始めるだろ」
「今度はもっと上手くやるよ。NPCの質が上がればやれることも増えるしね」
外向き様のいい笑顔で宣う鉛筆戦士に嘆息しながら奇襲を仕掛けてきたプレイヤーを返り討ちにする。
逆袈裟で斬りかかってくるのを最小の動作で避けて、手にしていたダガーで喉を掻き切る。
念のためにと、振り切ったダガーを手早く逆手に持ち変え鎧の隙間に刺し込む。
「んー....サンラク君、プレイスタイル変わった?さっきから妙に丁寧に殺してる気がするけど」
「色々試してる途中って感じ」
しけたもんしか持ってねぇなとぼやきながらも、戦利品を漁りつつ答えていく。
「本腰いれてやりはじめてから足りない部分とかが見えてきたからな。それを補う手段を模索中なんだよ」
「成績はいい感じじゃない」
「今のところはな。これから解析されて手札がバレてくと辛くなりそうだから先んじておかないと」
どこで誰の耳に入るかわかったものではないから
鉛筆戦士が番兵のNPCと二、三言葉をかわすと警戒が解かれ応接間に通される。
そのまま適当に腰掛けてダベっていると、そう時間が経たないうちにカッツォタタキも入ってきた。
「あれ、サンラクが先に来てるとは思わなかったな」
「今はわりと自由がきく時期だからな」
「朝早くからゲーム内で会いたいとは珍しいね。しかも場所まで準備して欲しいときたもんだ」
「
「失礼な。二代で許してあげるよ」
「その『私、優しいでしょ?』みたいな顔やめて?強請ろうとしてる時点でアウトだし、中身知ってるから手遅れだよ」
二人の言葉を雑にあしらいながら、カッツォも椅子に腰掛ける。
「とりあえず、呼び出して悪いね」
「初手謝罪とか、本当にカッツォ?」
「うーん、最近は騙し討ちされるような事をした覚えはないんだけど....」
「君らは本当に口が減らないねぇ!」
カッツォはため息を一つついて、テーブルに頬杖をついて言葉を続ける。
「リアルで会ってもよかったんだけど、妙に活動がアクティブになってる覆面カフェインのお陰で周辺が騒がしいからさ」
「ほーん、大変だね」
「本当だよ。
「えー、この流れで
「俺とその中身が一緒にいて、そこにもう一人いたらそいつが
「よし、ナツメグちゃん連れて三人で歩いてみようか」
「マジかよ....
「サンラク、冗談抜きでメグに感謝しなよ?顔も名前も知ってるのに黙っててくれてるんだから」
「してるしてる」
じゃなきゃチャンスをつくるために、温泉旅館で二人きりにしてあげようとかしない。
直接は口にしないけどちゃんと感謝してる分のフォローはしてるさ。
結果?そちらは保証範囲外です。
「で、本題の前にサンラクに確認したいことがあるんだよね」
「ん?改まってなんだよ」
「君、本気でプロゲーマー目指してるというかやるつもりだね」
「まあ、そうだな」
確かに直接明言したのは今回が初めてかもしれない。
「その上で、
「バレた?」
「やっぱりか」
特に悪怯れることなく答えるサンラクに対して呆れ気味にカッツォは肩を落とす。
「正直言って他所に所属されると厄介だから引き込めればと思ってたけど....バックに誰かついたでしょ」
「なんの話?」
「違うの?最悪、ペンシルゴンも絡んでる読みだったんだけど....」
「え?」
三人仲良く頭の上に疑問符を浮かべ、互いに首を傾げる。
サンラクはどう話が広がっているのか把握しきれてない故に。
カッツォとしては読みが外れて。
鉛筆戦士からしたら身に覚えのない内容に困惑を。
「とりあえず、私はノータッチだよ。なんならその辺の話も初耳だし」
「うーん、マジっぽいね。サンラクを
「流石に銃弾だけで魔境に挑む勇気はないかな。リアルだともろとも吹き飛ばしてリセットとかできないし」
「リアルでも爆発オチ企てるのかよ....他人を巻き込まないようにな」
「弾に人権はないからセーフ」
「人を弾丸扱いしないで貰えますぅ?」
「安心して。最後の一発は自決用って言うでしょ?」
「自爆するのに自決用の弾はいらないでしょ....サンラクの方は?」
鉛筆戦士の言動に少し引っ掛かるものを感じたカッツォだったが話の筋を戻す。
「俺もバックがついたとかどっかに所属したとかはないぞ。ちょっと相談にのってもらってる人はいるけど」
「えー....本当?」
「どんだけ疑ってんだよ」
「いや、上がいきなり君のことなんも言わなくなったんだよ?最後まで黙らなかったのなんて会議室に引っ立てられて、出てきた時は顔面蒼白だったし」
「サンラク君、どんなコネつかったのかお姉さんに言ってごらん?」
「仮にあったとしても今のお前には言わないだろうな。つっても
にっこり笑顔で追及する側に回った鉛筆戦士を一言で斬り捨て、該当する人物を指折り数えてる内にとあることに気付く。
「お、なんか思い出したな。よし吐け」
「いや、相談のってくれてる人から今後のために何人かにこの話をしたいけどいいかって聞かれてOKしたのを思い出しただけだぞ」
「それ大丈夫なの?」
「お前らよりかは信頼が置ける人だよ」
「あー、手が滑ってSNSにサンラク君の素顔が写ってる画像をあげちゃいそう」
「俺も温泉行った時に四人で撮ったやつをアメリカの友人に間違って流しちゃうかも」
「そういうところなんだよなぁ」
ここで侮れないのがやるといったらやりかねない奴らという点。
ガソリンの貯まった墓穴の底で黄リンを弄ってるカッツォは兎も角、ペンシルゴンに関しては確実に諸とも炎上できる火種どころかニトログリセリンももっているのを知っているから笑えない。
「
「マジで所属についてるのはないのね?主にスターレインとか」
「ないない。スターレインもダイナスカルもない」
「ならいいか」
「ちなみに、それがサンラク君のバックにいたら?」
「情報全部会社に開示して本気で引き込む」
「えっ、普通に怖いんですけど」
「スレに今の発言流したら楽しそう」
トーンから感じる気迫に片方はドン引きし、もう片方は内容の過激さから笑いだす。
そんな二人をスルーしてカッツォは話を切り出した。
「本題に入ると、二人に依頼がきてるんだよね....断れないレベルの人から」
「
「うん。それこそ断れたのシルヴィアぐらいなもんだよ」
「弾除けとしての仕事を果たせよ。魔境に放流するぞ」
「ちゃんとやってるだろ!今回のは例外も例外だよ!」
「で?その例外さんはどちら様なの?」
「ここではちょっと....とりあえず正規のルートで話をしたいんだよ」
「正規ってと....え?事務所通してってこと?」
「ペンシルゴンに関してはそうなる。で、住所不定の奴もそうしなきゃならないんだけど」
「住民登録ちゃんとしてるっつーの。そこでバックとか所属とかの話になるってわけか」
「そういうこと。
「所属もなんもないからなぁ....確定申告とかクッソ面倒だったし」
「今回のはそれですまなさそうなレベルなんだよね」
「なにさせられるんだよ」
「今の私、結構高いよー?」
「金払うの俺じゃないからノーダメだし。とりあえず聞きたいことは聞けたからいいや」
「よくねーよ。こっちはなんも情報得てないんだが?」
「この後、メールで概要だけ送るからそれ見てよ。リアルで説明する日取りはペンシルゴンのスケジュール次第かな」
「ええ....本当にそれだけの確認のために呼んだの?」
「だからちゃんと悪いねっていったじゃん。俺も先方から『なるはやで!』とか言われてせっつかれてるんだから」
呆れの中に少しだけ不機嫌を混ぜた口調の鉛筆戦士にカッツォは悪びれることなく答える。
「そもそも、サンラクがどっかに所属してくれてればこんな手間はかからなかったんだよ?いまからでもウチにする?」
「嫌でーす」
「じゃあ、うちの事務所にする?」
「あー....遠慮しておきます」
「断るにしてもその差はいったい」
「
その後は三人で益体もない雑談をして過ごし、カッツォがそろそろ用事だから抜けると言うと二人もそれならとそれぞれログアウトしてお開きとなった。
ログアウトして業務用VRシステムから腰を上げた。
長時間プレイしていたわけではないが体は凝るもので、伸びをする。
「あの野郎、結局なんも情報よこさないでログアウトしやがった」
雑談の合間に仕事のことを聞いてものらりくらりと逃げられ、そのまま逃げられてしまった。
伸びだけでは足りずに軽くストレッチをしていくと、ベッドの上に何者かが横になっているのが視界に入る。
何者かもなにも、市販のVRシステムを装着している天音 永遠なのだが。
付き合いだしてから以前に比べて休みの予定が合う機会は減ったが、そのかわりに永遠がお泊まりにくるようになった。
減った理由がプロゲーマーとして活動を始めたからというのもあるのは申し訳なくも感じるが、都合が合う度に泊まりに来て問題ないなのかと心配にはなる。
二人で歩いてる時に声を
泊まりに来るのは休みが合う前日、つまり昨日から泊まっていたのである。
「おーい、永遠?」
ほとんど同じようなタイミングでログアウトしたにも関わらず起き上がってくる気配はないのでベットにに近づき、顔を覗き込む。
目元をVRシステムが覆っているので表情はわからないが、規則正しい息遣いだけが聞こえる。
まるで眠っているようだが....
「ログアウト終ってるだろ、お前」
「バレたか」
「わからいでか」
横になったままVRシステムをずらして悪戯げな笑みを向けてくる永遠に嘆息しているとサイドテーブルに置いていた携帯端末が通知を知らせてくる。
先程まで話していた
「んん?」
書いている内容に思わず唸ってしまった。
件名:次のお仕事について
差出人:モドルカッツォ
宛先:サンラク
本文:
とりあえず必要なのと大雑把に期間ね。
用意するもの
・パスポート
・イミグレ抜けれる外面
期間:1週間~3ヶ月
ちゃんとした説明をする日は有名モデルさん次第で、最悪平日もありうるからよろしく。
「カッツォくんから?」
「そうだけど....」
上体を起こして手櫛で軽く髪型を整えている永遠に携帯端末を手渡しメール画面を見せる。
「どれどれ....国外の大会とか?なら私まで呼ぶ必要ないよね」
「どんだけ長丁場の大会だよ。なんだよ3ヶ月って春休みも余裕でオーバーしてんじゃん」
いくら自由な大学生とは言え、そんなに休みも長くないんだが。
本当になにをさせるつもりなのか。
「さて、ゲームでもデートしたことだし、次はリアルでのデートといきますか」
「あれをデートとよんでいいのか?」
「一緒に出歩いてたしデートでしょ」
「....幕末よりかはマシか」
「比較対象にそれを出されると途端に自分が間違ってる気がしてくるからやめて?」
携帯端末を自分に押し渡して、動きだした彼女の背中を追い思考打ち切る。
悩んでも仕方ないし、今から出掛けるのに余計なことを考えているとへそを曲げられるかもしれない。
「今日の目的はARだっけ?」
「そうそう。こんど企画でやることになったから感覚を掴んでおきたくってね。場所によってはプレイしてる時の動画とってくれるとこもあるらしいから」
「初回の時にしか使われなさそうなサービスだな....あとは?」
「それが終わったら服をみたいな。あ、ちゃんと男物も置いてるとこもいかなきゃね。
「お前と並んで歩くようになってからは気にするようになってるっつーの」
「じゃあ、今日はコーディネートをお願いしちゃおっかな」
「ごめんなさい」
二人で連れ立って外へ出る。
関係がかわって、目指すものがかわって、生活がかわって。
色々なものが目まぐるしく変わっていっている。
「なんか笑ってるけど、どうしたの?」
「そうか?」
「うん。でも、よく見たらこんな美人の彼女と一緒で嬉しいって書いてるわ」
「あー、一緒で嬉しいというかなんというか」
「なによ」
少し不満げな表情で顔を覗き込んでくる彼女。
一緒に遊んで、一緒に歩いて。
きっとこれからも色々と一緒に。
そんなことを考えて、今度は少しだけ笑みがこぼれるのを自覚する。
「幸せってこういうもんなのかなって」
「....っ!?」
「?なんだよ」
「なんでもないですぅ」
いきなり腕に抱きつかれ、肩にぐりぐりと頭を押し付けてくる。
普段なら髪型が崩れるとかメイクがどうとか不機嫌になるくせにこういうところは未だに読めん。
位置関係から、相手のつむじくらいしか見えないから対応にも困る。
「歩きづらいんだが」
「幸せならいいでしょ」
「いや、その返しはおかしい」
それもそうか、とけらけら笑いながらあっさりと離れて軽やかに前にでてこちらに手を差し出してくる。
「じゃあ、これならいいよね」
その笑顔は本やテレビで見るような気取ったものではなくて。
無邪気なそれに数瞬見惚れる。
悟られるのが少し癪なので、相手の手をとり肩を並べて歩き出す。
きっと、それも
閲覧、感想等ありがとうございます。
複数の話を平行して書こうとすると滅茶苦茶筆が重くなり、更新が遅くなりました。
現在、百ちゃんの方が進捗4割ほどなので次はそちらの更新になるかと思いますが気長に待っていただけると。
以下、蛇足というか被弾して吹き飛ばされた
はたして気がついているのだろうか。
付き合いだして私から誘って出歩いている場所がとある大学付近なのが多い事に。
そして、街中で腕を絡めたり肩を寄せたりのアプローチをしているのは女性からの視線が彼に向かっているタイミングであることに。
彼の隣はもう私のものだ。
奪えると思うのならかかってこい。
この場所を巡ってだけは正々堂々と相手になってやろうじゃないか。
上記の文章はTwitterでペンシルゴンルートの追加情報が呟かれる前に今回の締めとして書いてたんです。本当なんです。
ただ、ネタ被りぎみだから引っこ抜いて、生じた隙間を砂糖蜂蜜和三盆のペーストで修復してたらさらに遅くなるという悪循環。
でも、そのまま消すのもあれなので供養として、ここに。
呼称変更イベントはうちのルートの予定だとちょっと時系列が違うといいますか、表だって付き合ってるアピールするのはまだ先といいますか....