口悪召喚術士の異世界冒険譚   作:millseross

10 / 17
記念すべき第10話でございっ!

お気に入りが〜♪
200に到達しちゃいました〜♪
ほんとに嬉しいっ!!

皆様の応援のお陰でございます。
今後とも宜しくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

ぜひぜひ、ご感想とお気に入り登録、そして評価を!!
僕のモチベーションアップのために...!
オラに元気を分けてくれっ!


白銀の好々爺

しんとした荘厳な廊下で、軽やかに駆ける子気味良い足音と小さな息遣いがメロディを奏でている。そんなもの知ったことかとばかりに、小走りで移動する影がひとつ。

 

此処は"エターナルアイスの古宮廷"。ミルの目的地は、現在舞踏会が開かれているであろうダンスホールだった。

 

タッタッタッと三拍子のリズムで走る、走る、走る。

 

ここはどこだ、本当にこっちで合っているのか。全くもう、先に行けとは言ったものの、誰かひとりくらい待っていてくれたって良いではないか。些か薄情がすぎるだろう、こんちくしょうっ。慣れない、この身体...何回こけたと思ってるんだっ。僕は結構な方向音痴なんだぞ!

 

小言を呟きながら目尻に溜まる涙を無視し、顔の左半分を隠すように半面を付けたミルは、巨大な廊下を突き進む。ちらり、とミルは自分の身体に視線を向ける。焦っているにもかかわらず、思わず笑みがこぼれてしまう。憧れの高身長だ。

 

今のミルは、普段の子供のような小さく幼い姿ではなかった。色素が薄い雪のような肌に、光が当たると碧色に輝く白い髪。目を縁どる長い睫毛も、猫のような丸い瞳も、その全てが白であることに変わりない。だが、明らかに身長が高くなっている。線は相変わらず細いために、一見女性のように見えるかもしれない。しかしよく見ると実用的且つ滑らかな筋肉が全身についており、その姿は万人を虜にするような、神聖な魅力を放っていた。

 

円卓会議代表としての紺色のタキシードを身に纏い、先端でひとつにくくった髪をなびかせながら、急いで目的地へ向かわねばと必死に足を前に出す。

 

そして遂に、前方に人影が見えた。

 

「やっと、追いついたっ。ちょっとまって!」

 

嬉しさのあまり、ミルは普段では考えられないほど大きな声を出す。後にして思えば、これはとんだ恥ずかしい行為であった。どうせ誰にも会わないだろうと宮廷の廊下をひた走り、あまつさえ見つけた人物を大きな声で呼び止めるなど。この時は前を歩いていた人影を円卓の誰かだとばかり思っていたために、そこまで考えが及ばなかったのだ。

 

「む...アキバの街からの御客人かな?美しいご麗人。」

 

ミルを振り返った壮年の男性。その頭には冠がのっていた。

 

「...あ、すみません。ヒトチガイデシタ。」

 

ありとあらゆる未来を予測するミルの脳内が凍結(フリーズ)した瞬間だった。

 

 

&&&

 

 

円卓会議より選出された一行がエターナルアイスの古宮廷へ到着したのは今朝の事だった。なぜ、突然"自由都市同盟イースタル"の管理する宮廷へ向かうことになったのか。

 

鳴り止まぬ生産ラッシュと蝉の声。そして夏の偉大さを知らしめるような陽の光がアキバの街へ降り注いでいたある時、円卓会議宛に一通の書状が届いた。その書状は、自由都市同盟イースタルの領主連名から送られてきたものであった。筆頭領主 セルジアッド=コーウェンの直筆で書かれたその手紙には、自由都市同盟イースタルへの参加要請と同時に、エターナルアイスの古宮廷で催される会議と舞踏会への招待を兼ねていた。つまりは、招待状であったのだ。

 

自由都市同盟イースタルは、旧世界における東日本地域を支配する領主達の同盟だ。言うまでもなく、アキバの街はその区域に存在する街のひとつである。アキバの街の自治が確立した以上、自由都市同盟イースタルが連絡を取ってくることは至極当然の流れであった。

 

それを受け、即座に円卓会議が招集された。プレイヤー、つまりは冒険者にとって、このように大地人から招待を受けることは初めてであった。

 

円卓会議にはふたつの選択肢が存在していた。この招待を受けるか、受けないかだ。

 

これを受けた場合、円卓会議は自由都市同盟イースタル領主会議の一員として認められ、領主(この場合は円卓会議代表のクラスティが該当する)に何らかの貴族位を与えられるだろう。その上で今後は継続的に会議に参加を要請されることになると思われる。メリットとしては、大地人に対する大規模な情報収集、交渉のチャンネルを手に入れること。デメリットは大地人の政治に巻き込まれることだろうか。

 

では受けなかった場合は、受けることによって得られるメリットが無くなる。つまり貴族位は与えられず、勝つ貴重な大地人の情報源のひとつを失うこととなる。その代わりに大地人の政治には巻き込まれず、今まで通り冒険者らしく自由に暮らせるだろう。

 

そして紆余曲折を経て、円卓会議はこの招待を受けることを決めたのだった。

 

では次の問題として、誰が行くのか?という話になる。当然だ。そして現代日本で貴族の集まりや舞踏会を経験しているような人物は円卓会議には存在しないために、それはもう揉めに揉めた。

 

まず第一に、円卓会議の顔であり代表であるクラスティ。彼が行かないと始まらない。招待状は筆頭領主であるセルジアッド=コーウェン直筆であったことから、イースタルのトップである彼が出てくるのは想像にかたくない。相手側が代表を出してくる以上、こちらも代表を出さなければ礼に欠けるというものだ。

 

そして第二に、生産系ギルドからも1人選出すべきだろうという意見の元、厳選なるジャンケンによって選ばれたのがミチタカだった。余程悔しかったのだろう。一番若いカラシンに押し付けようとしていた。「もう決まったんだからグチグチ言うな、カッコ悪い。」というミルのセリフで全てが丸く収まった。ミチタカは撃沈した。

 

そして第三に。実務方面や情報関係の分析が出来る人材が欲しい、というクラスティの鶴の一声が発せられた。そして、メンバーの目が一斉にシロエに向けられた。

 

もちろん〈円卓会議〉を構成する11人の評議員はそれぞれアキバの街を代表するギルドの責任者という立場にある。情報収集も分析も当たり障りなく出来ると言えば出来るのだが、「専門か?」と言われれば首を横に振るしかない。

 

シロエとしては、同時期にマリエール主催で行われる新人のための夏季強化合宿も大変興味深かった。レベル40以下の冒険者が対象ということで、最近記録の地平線に入った双子、トウヤとミノリも参加することとなったのだ。加えて開催場所付近の情報収集も重要であると認識していたシロエとしては、どちらも捨て難いものであった。

 

この段階でまだ意気消沈していたミチタカを見てひとつため息をついたミルは、「シロエが行けば、空いた時間にミチタカの脳内構想を書き留めることが出来るね。筆写師だから。」とポソッっと零す。それによって復活したミチタカが、「お前も来い。俺だけ行ってお前が行かないのはずるい。我慢できない。そして俺が考案したアイテムの設計書を書いてくれ。」と熱弁した。

 

シロエは恨めしそうにミルを見やり、仕方がないとばかりに了承したのだった。

 

そうやって決まった舞踏会組と夏季遠征組。各々の身の振り方を決断し、そろそろ閉会かと思われた時。

 

「ミルはどっちに行くの?」

 

というシロエの素朴な疑問が室内に響いた。今日一静かになった瞬間でもある。

 

因みにシロエの護衛として、アカツキは舞踏会組に加わっていた。直継とにゃん太はその戦闘技術の高さから何かあっても新人たちを守れるだろうと夏季遠征組へ。4人が4人ともこちらについて来て欲しいと思っていたのだが。

 

「え、僕?普通にどっちも行くけど。基本は舞踏会組と一緒に行動しようかなって思ってるよ。ほら、僕従者と視界共有できるし。なんだったら、"キャスリング"も使えるし。」

 

キャスリングとは召喚術士専用の魔法であり、召喚した従者と自分の位置を入れ替える緊急回避呪文である。ミルは夏季遠征に従者を派遣させ経緯を見守り、舞踏会に飽きたり何かあればキャスリングを使って遠征組に合流しようと考えていたのだった。

 

召喚術士ならではの手であるために、召喚術士以外は真似することが出来ない手段であった。

 

「お前が一番ずるいじゃないかっ!」

 

ミチタカはビシッとミルを指さし盛大にツッコんだ。

 

そんな選考過程を経て、自由都市同盟イースタル領主会合へ派遣される代表団は決定された。代表は円卓会議 議長、クラスティ。第一副使として海洋機構のミチタカ。第二副使は記録の地平線、シロエ。その他、秘書や従者という形での同行者を含めて総勢十一名である。

 

 

&&&

 

 

ミルが大声で呼び止めた人物の頭上には、煌びやかな冠がのっていた。よく見れば、いやよく見なくともシロエでは無い。そして当然、ミチタカでもクラスティでもなかった。

 

「わたしはセルジアッド=コーウェンと言う者だ。貴殿の名を教えてはくれぬか。」

 

ミルの思考は停止していた。それはこの目の前の男が、今回の舞踏会の主催者である筆頭領主その人だったからと言うのももちろんある。だが、それだけではなかった。

 

(似てる。僕のおじいちゃんに、すっごく似てる。)

 

元の世界のミルの祖父と、目の前の彼が瓜二つと言って良い程に似ていたのだ。だがしかし、このまま何も応えない訳にはいかない。問われたことに応えなければ、失礼に当たってしまう。

 

「ご挨拶が遅れてしまい大変申し訳ございません、コーウェン殿。私はミルセロスと申します。ミルとお呼びください。以後お見知り置きを。」

 

恭しく丁寧にお辞儀をするミル。頭を下げたことによって、長い髪が肩口から前へ垂れてしまう。そんなミルの髪に吸い込まれるように視線を向けるセルジアッド。どこか眩しそうに目を細め、柔らかな笑みでミルに話しかける。

 

「ではミル殿、会場まで一緒にいかがかな?ここは広いだろうから、慣れてない者は皆迷ってしまうのだ。かく言う私も昔はよく迷子になってな。周囲の者たちを困らせたものだ。」

 

「お心遣い痛み入ります。是非、ご一緒させてください。お察しの通り、その。迷って、しまいまして...。」

 

セルジアッドは右手を差し伸べながらそう告げる。ミルは恥ずかしくて死にそうだった。白い肌が真っ赤に染っているのが分かる。初対面の、それも公爵様に迷子認定。あまつさえ手を握られるなど。そこまで幼くないと思いつつも、差し伸べられた手を無視するわけにもいかず、そのまま軽く引っ張られていく。迷子なのは事実であるために仕方ないのだが、辛すぎる。もう大学生だぞ。

 

「はっはっは。冒険者でも道に迷うことがあるのだなぁ。いやはや、貴殿のおかげで少し冒険者が身近に感じられたよ。ありがとう。」

 

「いいえ、そんなっ。とんでもないです。」

 

ミルはふっと息を吐き、心を静める。そして、今の状況を再確認する。舞踏会場へ着くまで、彼と2人。いや、恐らく周りに護衛は居るのだろうが。兎に角、今この場には自分とコーウェンだけ。ここで少しでも打ち解けておけば、今後の円卓会議としての話し合いで少しくらい良い方向へ流れるかもしれない。

 

そこまで考えたミルは、そう言えばと思い直した。情報収集よりもまず先に言うことがあったろう、と。

 

「コーウェン殿。此度は我ら円卓会議をご招待頂き、誠にありがとうございます。大地人の皆様と交流を深める機会を賜りましたこと、心より御礼申し上げます。」

 

「礼には及ばない。むしろ、此方こそ突然の召集に応じてくれた事には感謝せねばなるまい。私たちも普段冒険者と話す機会なぞ無いものでな、失礼があってはならないと、今も少し緊張している。...皆には内緒だぞ?」

 

パチりと片目を瞑りながら、若々しい笑顔を見せるセルジアッド。その姿を見たミルは、性格まで祖父と似ているのだなと思った。ゲーム時代のセルジアッド=コーウェンは、偉大な賢王といった印象だった。若い頃は騎士団に身を置き、心身を鍛え武勇を立てていた筈だ。その証拠に、武人としての現役を退いた身であっても、彼の肉体は戦士を彷彿とさせる筋肉を纏っていた。

 

しかしこうして話してみると、好々爺といった印象を持つ。恐らく言うほど彼は緊張などしていない。むしろ、こちらが緊張しているだろうと判断し、少しでもミルをリラックスさせるように言葉をかけてくれたと取った方が自然だ。

 

実際は全くの別人なのだが、もう会えないと思っていた祖父とまたこうして話しているという嬉しさと喜び、そして懐かしさから固まった表情筋が緩み、柔らかな笑みをセルジアッドに向けることができた。

 

「っふふ、同じですね。私もとても緊張しています。でもコーウェン殿とこうして話していると、懐かしい感じがして。少しだけ、気が紛れます。」

 

「ほぅ、それは奇遇だな。わたしも貴殿とは初めて会った気がせぬのだ。どこか懐かしい...孫と接しているような、不思議な心地だ。」

 

セルジアッドのおかげで肩の力が良い具合に抜けたミルは、見るものを魅了する自然な笑顔で接する。

 

それに対するセルジアッドも、過去に思いを馳せるような懐かしい微笑みを携えながら、ミルとの会話を楽しむ。

 

会場が近いのだろう。どこからか、綺麗な音色の演奏が聞こえてくる。この安らぎを覚える一時ももう終わりかと思うと、少しもの寂しく感じたのはどちらであったのだろうか。

 

なお、流石に会場の扉が見えた段階で「あの、そろそろ手を...。」とお願いした。セルジアッドは少し渋ったが、仕方ないとばかりに手を離した。「いつでも握ってよいぞ。」と茶目っけたっぷりに笑いながら。

 

 

&&&

 

 

円卓会議一行は、相手方に失礼があってはいけないと少し早めにダンスホールへ入場していた。しかし聞くところによれば、この手のパーティは少し遅れて到着するのが大地人の間では主流とのことだった。現在会場に来ている参加者の数は全体の半分ほど。位が高くなるにつれてその傾向は顕著になるらしい。

 

向こうの世界では、社会人として5分や10分前行動は当然だったのだが、今回は真逆らしかった。シロエたちは少し気恥しそうにして会場の隅で佇んでいた。

 

「へぇ、中々に壮観だな。これは緊張だ。」

 

ミチタカはジロジロと無遠慮に会場の壁や天井を見渡し、最後に貴族たちを遠目に観察する。

 

「周りが全部モンスターだと思えば落ち着くさ。」

 

「そいつァお前さんだけだろう。」

 

戦闘狂のような発言をしたのは、D.D.D率いる"狂戦士"クラスティだ。その二つ名のイメージから反した思慮深い美青年という面持ちで、見事にタキシードを着こなしている。

 

快活に笑って応えるミチタカのタキシード姿ももちろん似合っており、身体の大きさも相まって迫力は十分だ。少々窮屈そうにしているが、武闘家としての肉体美が服の上からでも分かるほどに強調されており、とても映えている。

 

線が細いよりは、多少骨太の体型の方が似合うタキシードである。戦士職の2人にはうってつけの晴れ着とも言えた。

 

そんな2人と自分の身体を見比べて、はぁとシロエはため息をつく。まぁ、魔法攻撃職の肉体なぞたかが知れているというもの。そうそうに諦め、早くミルも来ないかなと意識を飛ばしていた。

 

「主君...。」

 

そんな時、か細い声で自分呼ぶ声が聞こえてきた。声の位置は随分低い。

 

「どうしたの?アカツキ。」

 

「そ、の...私の格好、...変?」

 

シロエはアカツキが伝えたいことが分からなかった。今の彼女は、誰がどう見ても美しく可憐な美少女である。淡い真珠色のフリルがあしらわれたドレス。彼女の黒曜石を思わせる深い黒色の目と髪がよく映えている。控えめに言っても可愛い。

 

と、シロエがそんなことを思いながらどう返答しようか悩んでいたところ、これまたいつもとは趣の違う美しさを纏っているヘンリエッタがつかつかと詰め寄ってきた。

 

「変なんかじゃありませんわ。むしろ可愛いです。美しいです。テイクアウトしたいくらいにっ。いいえ、します。」

 

格好は違うが、彼女はいつも通りだった。

 

シロエがいくつかヘンリエッタとアカツキと言葉を交わしていると、小馬鹿にしたような様子でクラスティとミチタカがやり取りする。

 

「シロエくんは流石だね。こんな状況でも悠然としているよ。」

 

「まぁこいつくらいの英雄にもなれば、ぷっくく。これほどの大舞台だろうが、両手で花を愛でる程度の事は余裕でやって退けるらしい。」

 

当然近くにいるシロエたちにもその会話は聞こえているのだが、ツッコミを入れる前に自分も気になっていた話題となったため、結局発言を撤回させることが出来なくなってしまった。

 

「英雄と言えば、ミルセロス君はまだ来ないのかい?」

 

「さてな。用事があるから先に行けなんて言ってたが、本当に来るのかねぇ?逃げたんじゃねぇか。」

 

冗談なのだろうが、本当に逃げる手段を有している分タチが悪い。シロエが不安になっていると、ギィー...と会場の扉が開き2人の参加者が現れた。とても仲良さげに話している。

 

1人は冠をかぶり白銀のマントをたなびかせた壮年の男性。一目見ればわかる程に貴族然としたオーラを纏っている。しかし浮かべている笑みはとても柔らかく、さぞ話している相手と親しい仲なのだろうということが伺える。

 

そしてもう1人は不思議なことに、自分たちと同じ装いをしていた。キラキラと淡い碧色に輝く白い髪を先の方で括っている。きめ細かい肌も、大きな瞳も、長い睫毛も全てが白く美しかった。顔の半分は刻印が施された半面によって隠されている。それによってより一層神秘的な雰囲気を漂わせていた。

 

目を見開き動きを止める。それはシロエたちだけではなく、この場で会話を楽しんでいた貴族や楽器の演奏者たちでさえ、2人の煌びやかな雰囲気に魅入っていた。会話をやめてつい目を向けてしまうほど。そして目を向ければもう視線を逸らせなくなってしまうほど。

 

円卓会議一行に既視感がほとばしる。デジャブだ。どこかで見たことがあるような、いや、格好からして円卓の誰かなのであろうが、あんな人物は...そこまで考えて、まさかと思い至る。

 

円卓会議一行から見られていたことに気づいたのだろう、2人が側へとやってくる。

 

そして目の前で立ち止まった男が言葉を発した。その口調は彼の隣に立っている男と話していた時とは異なり、とてもでは無いが柔らかさなど感じ取れない荘厳な口調であった。

 

「此度はよくぞおいで下さった。」

 

「初めまして、お招き頂きありがとうございます。アキバの街を自治する円卓会議代表のクラスティと申します。」

 

「お初にお目にかかる。円卓会議より副使として召喚に応じた、ミチタカだ。」

 

「僕はシロエと言います。以後、お見知り置きを。」

 

威圧感さえ感じる様なオーラに全く臆することなく、クラスティが名を名乗る。わずかに微笑んでいるあたり、気後れしたようにも見えない。クラスティに続いてミチタカが挨拶する。こちらもいつも通りの快活さでスルりと挨拶を済ましていた。

 

シロエはその二人を見て、流石図太いなぁと感心していた。自分だったらあんなに堂々と挨拶できないと思った。だって本物の貴族なんだもの。たぶん、王様とか公爵をイメージしろと言われたら、今後は目の前のこの男性が脳内で連想されることだろう。それほどまでに、ぴったりだったのだ。むしろこれで一般人だったら反応に困る。あんたみたいな一般人が居てたまるかと叫んでしまいそうだ。

 

だがその他の円卓会議の面々にとっては、図太い”3人”なのであった。何故ならシロエの挨拶もシンプルながら淀みなく、緊張とは程遠いものだったから。

 

「わたしはセルジアッド=コーウェンだ。自由都市同盟イースタルの取りまとめを務めさせて貰っている。宜しく頼む。」

 

セルジアッドが名乗った後、その隣にいる人物、つまりはミルに視線が集まる。ミルは円卓会議一行に向かってパチりとウインクした。コーウェンは位置関係的に見えていなかったが。

 

(((やっぱりお前かーっ!!)))

 

円卓の心が一致し、盛大に胸内でツッコミを入れたことが感じ取れたミルは、笑いそうになるのを必死に堪え、セルジアッドに向き直る。

 

「それではコーウェン殿、私は立場上こちら側なので。楽しいひと時をありがとうございました。」

 

「あぁ。また後でゆるりと話そうではないか、ミル殿。貴殿との会話は心が安らぐ。話したいことはまだ沢山あるのだ。例えば、その半面の下をおがむために必要なことなどは特に。無粋か?」

 

「私の貌にご興味がおありなのですか?それは少々難しいですね。人は秘密を暴きたがる性分であるが故に、半面の秘密が無くなってしまえば、コーウェン殿は私に興味を抱いて下さらないでしょう?」

 

「貴殿の秘密はその貌以外にもいくつかあるようだが。」

 

「ふふ、さて。どうでしょう?」

 

ミルとセルジアッドが言葉を交わしている間、円卓会議一同は唖然としていた。これは本当にあのミルセロスなのか?あの会議の時とは偉く違い過ぎるというか、手慣れ過ぎていないだろうか。セルジアッドと楽し気にお喋りをして、自分に興味を誘うことで必然的に円卓会議にも興味を持たせている。高度な駆け引きをやっているっ!あの口悪の獣狂いが!

 

セルジアッドとの会話を切ったミルは、そのまま円卓会議一行の最後尾に位置取る。そして誰にも気づかれないように、ふぅ~っと細く深く息を吐いた。傍から見たらさぞ手慣れている様に見えただろうこのやりとり。実はミルにとっては何としてでも話を逸らさなければと必死に言及を逃れていたのだった。

 

何故ならミルの今の身体である高身長の青年と言った風貌は、この半面によって形作られていたからだ。この半面を取ったら、元の姿に戻ってしまう。子供だから迷っていたのか、それじゃ仕方がないなぁはっはっはっ、とセルジアッドにまた笑われる場面が目に浮かぶようだ。

 

外観再決定ポーション。その名の通り、自身の見た目を変更することが出来るアイテムである。変更できるのは見た目だけであり能力などは全く変わらないため、ゲーム時代では全くと言って良いほど需要が無かった。しかし大災害後、自分のゲームアバターを現実の世界とは違う性別で作っていた者が一定数以上居たために、このアイテムの需要が増えたのだ。しかし外観再決定ポーションはイベント限定アイテムであり、古参プレイヤーが1人1つ持っているかどうかといった稀少なアイテムだった。

 

アカツキも元々は身長の高い男性アバターでゲームをプレイしていたが、シロエがポーションを渡して事なきを得たのだった。

 

そんな中、ミルは自分も外観再決定ポーションを持っていたのだが、何とかこのアイテムが増やせないかと思考していた。そしてある時閃いた。別に既存のアイテムに拘る必要ないじゃん、新しく魔道具つくっちゃえ、と。

 

そうやって出来たのが、現在ミルが着用しているこの半面。名を”月夜の怪半面”と言う。ミルが一行より遅れたのは、この半面の完成に時間がかかったためだった。ついでに皆を驚かせてやろうといつもの悪戯心が沸き上がり、さぁ実行に移そうと思った時には周りに人の気配は無く。涙目になりながら、宮廷中を駆け回る羽目になったのだった。

 

ミルが回想にふけっていると、いつのまにかクラスティとセルジアッドの会談が行われていた。

 

「ふむ、ふむ…。あい判った。つまり、そのギルドなる組織がそれぞれ領地を持たぬ貴族のようなもので、有力なギルドが話し合い自治を行っているということだな?その在り方はイースタルを縮小したものと言える訳だ。」

 

「仰る通りです。」

 

「であれば、ふむ。代表とは言え、その中の特定の1人に貴族位を授けるというのは、亀裂を生むかもしれんのぅ。」

 

「そう考えます。できればその件に関しては辞退致したく存じます。」

 

「だがそれはそれでこちらとしてもだな。」

 

今の会話で話の内容を理解したミルは、円卓側として理想の選択肢を提案する。

 

「円卓会議の中から1人を選出し貴族位を賜るというのは、こちらとしてはあまりよろしくありません。どうでしょう、コーウェン殿。円卓会議という一組織そのものに貴族位を与えられては。先ほどコーウェン殿が仰られた通り、円卓会議とはアキバに住まう冒険者を代表する存在です。つまり大地人の皆様にとっては領主に当たる立ち位置と言えるでしょう。」

 

ミチタカも機転を利かせ、ミルの提案に補足する形で選択肢を広げる。

 

「貴族位でなくとも、円卓会議を貴族に類する位を持つ組織と”見做して”頂ければ、出席権は得られるでしょう。そうすれば、我々も皆さんと一緒にテーブルを囲むことが出来ます。」

 

「ふむ、一理あるな。」

 

―好感触。

―行けるか?

 

ミルとミチタカの意見に考えるそぶりを見せるセルジアッド。その反応を見た2人は後ろ手に組んでいた手で拳を作り、お互いの手にコツンと合わせる。ハイタッチの拳Ver.だ。相変わらず仲が良い。

 

それを見ていたシロエは、4人と一歩引いたところでまたも感心していた。

 

クラスティさんもミチタカさんも、自分とそんなに歳は離れていないはず。ミルなんて僕より年下なのに、こんなに貴族と渡り合えているなんてすごい。話の流れは全然問題ないようだし、下手に口出ししない方がよさそうだな。

 

そんなことを考えていたシロエにこっそりと耳打ちしてきたのは、ヘンリエッタだった。

 

「やはり随分と注目を浴びているようですわね。余程冒険者が珍しいのでしょうか。それともミルちゃんの...いえミル様と呼んだ方がいいのかしら?コホン、兎に角あまりの美しさにあてられた可能性もありますわね。」

 

辺りを見てみると、会場は既に大勢の参加者で賑わっていた。目算数百名程度。にもかかわらず、窮屈さを全く感じさせない広々とした空間。

 

ダンスをするために美しく装飾されたこの大きなホールのあちらこちらで談笑するグループ。そんな彼らは楽しそうに時間を過ごしながら、ちらちらとこちらに視線を向けていた。しかし、話しかけたり近づいてくる気配はない。興味はあるのだろうが。

 

美しいメロディが不意に途切れる。ざわめきがだんだんと収まっていき、人々の目が一点に集中していた。その視線の先から、輝くような一行が現れる。多くの好意と期待を集めながら登場したのは、3人の美しい少女とそのパートナーだった。

 

 




ミルくんは美しい。

そしてセルジアッド=コーウェン好きです!
かっこいい!

やっぱ白髪銀髪はロマンなんですよね〜。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。