もう少しで戦闘できるかな。ファンタジーと言ったら戦闘だし。
まぁ戦闘シーン書くの超苦手なんですけどね!
煌びやかな3人の少女。うち1人は、セルジアッドの孫娘であった。
さぞ大事にしているのだろう。目に入れても痛くないと言った具合に、目を細め愛おしそうに紹介する。
「孫娘なのだよ。レイネシアと言う。今年で15になった。」
それからセルジアッドは、貴族間のしきたりにより適齢期を迎えた淑女は舞踏会でデビューするのだと語る。この厳しい世界において武器や戦力を蓄えるのは確かに大事なことであるが、友人や家族という人との繋がりは、時にそれ以上に価値あるものなのだと。
「人と人との繋がり、絆ですね。」
「分かります。我々もギルドという集団を作り、仲間で支え合っている。それはいわば、家族のようなものです。時にはギルドの枠を越えて助け合うことだってある。それも円卓会議の使命であり、存在意義でもあります。」
ギルドをまとめる立場にあるクラスティとミチタカは、セルジアッドの言葉の真意がよく理解できると深く頷く。
綺麗事だと笑われるだろうか。だが、人との繋がりとは綺麗事という線で結びつき、深く浅く絡み合っているのかもしれない。
「流石はギルドの長だな。貴殿らの言う通りだとも。」
セルジアッドもまた、その言葉に我が意を得たりと微笑みを返す。
三人の娘が今まさにホールの中央に進み出たところだった。その手を壊れ物のように支えるのは、領地の騎士なのだろう。いずれも中々の伊達男である。それでもやはり、釣り合っているかと言われれば微妙なラインではあるが。
「皆さんお美しいですね。」
ミチタカが商人らしく姫君の容姿を褒める。在り来りな賛辞だったが、その言葉には微塵たりとも虚言や誇張はなかった。ミチタカとしても嘘をつく手間が省けて気が楽だったろう。今回に限ってはお世辞を言う必要が全く無いのだ。
「中央が我が孫娘、レイネシアだ。」
セルジアッドが目を向けたのは、15歳という年齢よりは幾分か華奢に見える美しい少女だった。彼女の蒼く輝く瞳には、少しの憂いと儚さが滲んでいるようで。それもまた美しさの一助となっていた。
それからセルジアッドは、不意に円卓一行に視線を向ける。
一行は不思議に思ったが、その視線を辿ると、どうやら1人の青年に注がれているようだった。なぜセルジアッドが彼を見つめていたのか疑問に思ったが、すぐに分かった。レイネシアと、とてもよく似ていたからだ。傍から見ればその瞳にはレイネシア同様、憂いを帯びているように見える。まるで雪解けのような儚さを携えていた。
「.....。」
ミルはレイネシアをじっと見つめていた為に、セルジアッドと円卓会議一行から見られていることに気づかなかった。
めっちゃ似てない?今の僕と似過ぎでない?兄妹って言われた方が納得するんだけど。目とか髪の色ちょっと変えればもう完璧でしょ、DNAの繋がり疑っちゃうよね。まぁ僕一人っ子だから妹いないんだけどさ。つかレイネシアって弟いたよね?ってことは僕、元の姿に戻ったら今度は弟くんと似てるってなりそう。もうここの子になっちゃおうかな。ミルセロス=コーウェン。外国人みたいでカッコイイよな。あり寄りのあり。
などと。憂いや儚さとはかけ離れた考えを抱いていたことは誰も知らない。
音楽が鳴り始める。3人の姫君はこのような舞台で踊る経験など無いはずだが、それを感じさせない華麗なステップを踏んでひらひらと舞う。とはいえ少々表情は硬いが。
円卓一行は流れる音楽に聞き覚えがあった。何百何千回と聞いたあのメロディ。パソコンでエルダー・テイルを立ち上げる度に耳にした、懐かしきオープニングテーマ。
目を閉じたら、いつの間にか自分の部屋の椅子に座っているのでは無いか。そんな思いに駆られるが、誰一人それを確かめようとは思わなかった。なぜならその行為は、既に現実逃避であるのだと分かっていたからだ。そんな無責任なことをやれる立場の人間は、今この場には居ない。
演奏が終わり、まばらに拍手が聞こえる。演者たちが次の曲のためにセットアップしている中、セルジアッドが口を開く。
「さて、二曲目だ。諸君らも踊ってくると良い。」
「は?」
ミチタカが何とも間抜けな表情でセルジアッドに問い返す。
「先ほども言っただろう? この舞踏会は会議の前の社交の場、ひと時の楽しい時間であると。周囲を見渡してみなさい。皆が君たちに興味津々だ。今わたしがこの場にいる大地人を代表して話しかけているのは、"冒険者"との付き合い方を誰もが分からずに警戒しているからだ。これでは情報交換もままならないのではないかね?」
自由都市同盟イースタルを代表する老領主は、威厳溢れる横顔に茶目っ気を覗かせる。
それを見ていたミルは、あぁやっぱりこっちが素なんだな、と妙に納得していた。悪戯好きというか茶番好きというか。本当に似ている。祖父にも、ミル自身にも。
「皆のものも客人のダンスを見たがっている。どうだねそこの、黒髪のお嬢さん。君は?」
突然セルジアッドに話を振られたアカツキは、過剰なまでにビクゥっと肩を弾かせ、一瞬でシロエの背中に隠れる。
「わ、わたしは主君の忍びっ。忍びは主君の影に潜み御身を守る者。こ、こ、このような公の場で姿を晒すなどとんでもないっ。」
次にセルジアッドと目が合ったのはミチタカだ。彼は引きつった表情で首を高速に左右に振る。
「いやいやいや、私はこういうのは不得手でしてな。謹んで身を引かせてもらう!」
生産が専門とは言え、流石レベル90の冒険者の身体だ。残像が出るほどの速度で首を振っているのが滑稽に映る。
まぁ、適任はクラスティさんだろうな、と心の中でミチタカを笑いながら、シロエはそう考えていた。見るからに王子様然とした雰囲気を漂わせている彼は、ダンスもさぞ上手なのだろう。そんなことを考えていると、クラスティが先手を打ってきた。
「ここはシロエ君の出番だな。」
クラスティに声を掛けようとしたシロエより先に、本人が重々しく口を開く。いやそんな冗談今は要らないですから、と言いかけたシロエだが、機先を制したクラスティは至極真面目な表情でシロエを見ていた。
「私はここでセルジアッド卿といま少し歓談していたく思う。シロエ君も円卓の一席を担う身だ。であれば、聞きなれた曲に合わせてダンスを踊る等、造作もないことだろう?」
喉から溢れ出そうになる否定の言葉や恨みつらみを必死に堪えているのだろうか。口がパクパクしている。シロエの肌はいつもより青白かった。
はぁ、どうしよう。今回は恥をかいてくるしかないかな。
シロエが諦めかけていると、クラスティの口から追撃がくる。もっとも、次のターゲットはシロエではなく。
「ミルセロス君はどうだい?君ほどの英雄ともなれば、社交界で踊る経験など沢山あるのだろう。ここはひとつその経験を活かして、円卓会議という組織の存在をアピールしてきてはくれないか。」
シロエは少しだけ期待した。もしミルの踊りが下手だったなら、恥をかくのは自分1人ではなくなる。2人であれば、後でこっそり傷を舐め合いお互いを励まし合うことも出来よう。逆にミルの踊りが上手かったら、自分の下手なダンスよりよっぽど視線を集めることだろう。なんてったって、こうしてただ佇むだけで多くの視線をひきつけているのだから。まぁ、ミルが踊ることを拒否しなければの話だが。
「まぁ、別に踊るくらいは構わないんだけど。というか、さっきから相手を探しているのに誰とも視線が合わない。顔を背けられる。何故だ。」
確かによく見てみれば、ミルはキョロキョロと顔を左右に振り視線を巡らせ、踊る相手を見つけようとしているようだ。こういう場で積極的に情報収集を行おうとする姿勢に皆が感心していた。だが悲しきかな、全く視線が合わない。どころか、合おうとした瞬間にバっと逸らされている。その理由はミル以外には理解出来たようだ。
「相手の性別を問わないのであれば、シロエと踊るのも一興かな。」
ミルの呟きが聞こえていたのだろう。セルジアッドが、特にその辺りは制限などないから好きに楽しんできなさいと気を使って言ってくれた。
それならばとシロエを振り返ったが、いつの間にやらヘンリエッタとホールの中心へ歩いていっていた。
軽くショックを受けたミル。別に踊りたいとは思っていないのだが、やる気を出した時にその尽くを裏切られるのはやるせない。
未練がましく辺りを見渡しながら、はぁ、とため息をつく。すると、自分と全く同じタイミングで同じようにため息をついた少女を見つけた。周りからは全く気づかれていないようだったが、ミルにはわかった。シンパシーらしきものを感じたのだ。
「お、めーが合った♪」
ニコりと微笑むと、あちらも微笑み返してくれる。何やらぎこちなく、少し驚いたような表情だったが、この際知ったことではない。
こつ、こつ、こつ。ゆっくりと足音を響かせながら、少女に歩み寄る。歩き出したミルに視線が集まる。誰を誘うのだろう、と言った具合に。
赤いカーペットのひかれた床に片膝をつき、少女の小さな左手を取り、こう囁く。
「私と1曲踊って頂けませんか、レイネシア姫。」
あちこちで黄色い声が上がる。彼女たちの目にはきっと、遠い場所から来た不思議な雰囲気を纏う王子様からの求婚にでも見えていたのだろう。ソウジロウのようなキラキラのエフェクトがミルの微笑みから沢山出ていたらしい。
その声を上げるのは問題ないのか淑女諸君と思いつつ、そんな心情をおくびにも出さずにレイネシアに笑いかける。ついでに首をコテンと少し傾けながら。
「…え、と。私と、ですか?」
「えぇ。レイネシア姫さえ宜しければ、是非。」
ミルはちょっとあざとかったかなーと思いつつレイネシアの目を見つめていると、小さく頷いてくれたのを確認してほっと一息。レイネシアの手を引いて、ホールの中心へと歩いていく。シロエとヘンリエッタはミルの近くへ位置取った。周りには、自分たちの4人だけ。
おじいちゃんに手を引かれてこの会場まで歩いてきて、その孫娘の手を引いてダンスを踊るなんて。なんか面白いな。
ミルがそんなことを思っていると、春を想像させる麗らかな曲が流れ始める。四重奏だ。ミルはレイネシアの腰に手を当てて、緩やかなメロディに合わせて導くようにステップを踏む。ライトステップ、ライトフォワード。ハーフターン。くるくると回りながら白碧の髪をなびかせるミル。実に堂々とした動きで、軽やかに楽しそうに舞っている。
対してレイネシアだが、始めは今回が社交界デビューであるのにもかかわらず冒険者と踊るのかという緊張でいっぱいだった。しかし曲が進むごとにだんだんと慣れてきたようで、表情が柔らかくなり、辺りの様子に気を配れる程になっていった。
近くにいる冒険者の2人が、自分たちの動きに合わせて踊ってくれていると解った。このダンスのメインは私とこの人なのだと踊りで知らせてくれている。すごい。大勢の人たちが、羨ましそうにこちらを見ている。それはそうだろう、こんなに綺麗な人と踊っているのだ。気にするなと言う方が難しい。えぇ、本当に。羨ましいくらい綺麗で。…きれ、い、、で?
「やっと僕を見てくれましたね。えぇ、皆同じことを思っていますよ。」
レイネシアは思わず声が出そうになった。だって、目の前のこの男性の顔が、自分にそっくりだったのだから。レイネシアは遠目でミルを視界に入れてはいたが、ミルの顔を認識している訳ではなかった。感じる雰囲気で漠然と綺麗な人だと思っていた。視界の端であまりにも白く輝いていたから、雪の妖精か何かなのだろうかとも思った。
レイネシアにとってこの場は、退屈で面倒というものだった。出来ることなら出席したくない。いつでもベッドの上でゴロゴロしていたい。それでも出なくてはならないから、適度に愛想よく笑って踊ってそれで終わりにしようとそう思っていた。
「僕が雪の妖精なら、貴女もそうなのかも。だって、よく似ているでしょう?」
心を読まれたっ!?冒険者の特殊能力か何かだろうかと少し警戒したレイネシアだった。
「いえ、心を読んだわけではなく、僕も貴方にそう思ったんですよ。雪の妖精みたいだな~って。もしかしたら、考え方まで似ているのかもしれませんね。社交界なんて面倒だな、なんて思ってません?」
今度こそレイネシアは驚いた。だって、本当にそう思っていたのだから。
「あ、貴方は何者なのですか…?なぜそのような。」
周りにバレないように小声で会話を続ける2人。レイネシアは少々ひきつった顔だが、ミルが上手く誘導してターンしたりジャンプすることでそれを隠す。ちなみちミルは常に笑顔だ。頭の中ではソウジロウの笑顔を思い浮かべている。あんな風に微笑んでおこう、みたいな。
「言ったでしょう、似ているって。僕もそう思っているんですよ。フカフカのベッドで横になりたいな~って。ただ、そう出来る立場でもないので。」
「だったら、何故私をお誘いになったのですか?放っておけば、貴方は踊らなくても済んだかもしれないのに。」
ミルはぱちぱちと瞬きした後、う~んと考えるような仕草をした。
「まぁ、いくつか理由はありますけれど。一番は、これがレイネシア姫と私にとって一番面倒臭くない選択肢だったから、ですかね。」
レイネシアは目の前の男性が言っていることを理解できなかった。一番面倒くさくない?社交界に出席するのだって億劫なのに、踊りは別だとでも言うのだろうか。
「社交界に出席するのは仕方がない。曲に合わせて踊るのも諦めがつく。ただ、踊り続けるのは嫌だと思いません?レイネシア姫は今回が社交界デビューだと聞きましたから、沢山の紳士の方々からお誘いを受けることになる。そうなってしまっては、初めて故に余計なストレスも溜まるし疲れてしまうでしょう。だから、無作法物の冒険者であり貴族の方々から遠巻きに見られている僕がお誘いしたんです。僕と一緒に踊っている少しの間くらいは、周りのことを気にせず楽しく過ごしてほしいなって思って。余計なお世話だったらすみません。」
お、大人だ…。初めて会った相手にそこまで気を使えるものなのでしょうか。興味本位でと言われた方がまだ納得も行くものです。これが、冒険者。いえ、そもそも貴方を無作法物だと思う者など居ないと思うのですが。どこかの貴族だと言われた方が余程…。
そんなレイネシアの思考を読んだかのように、ミルが先手を打つ。
「もちろん、自分と似ている貴女と話してみたかったというのもありますけれどね。因みに僕は貴族ではありませんよ。」
そろそろ音楽も終盤に差し掛かってきたころだろう。だんだんと曲のテンポが緩やかになっていく。その頃には、もうレイネシアには警戒心や懐疑心など無くなっていた。
この音楽が途切れたら、この人が離れてしまったら、別の人と踊ることになるのか。そうしたら、ずっと気を張っていなければならない。憂鬱だ。あぁ、願わくば。
「レイネシア姫。空を飛んだご経験はおありで?」
「はい?空、ですか?いいえ、ありませんが…。」
「そうですか、それでは少々失礼して。」
―半面の奥で、にやりと笑った。気がした。
あ、そういう所は猫っぽい。レイネシアがそう思った瞬間、握られいた手をぐいっと引かれ、腰にまわっていた手に力が入ったのが分かった。そして視界がぐるりとまわり。気がつけば、彼の顔がすぐ近くに。
今どういう状況なのだろうと、目を白黒させるレイネシア。音楽以外何も聞こえなかったホールのあちこちから、本日二度目の黄色い声が上がる。漸く理解した。私は今、彼に横抱きにされているのだ。
「従者召喚―
突如現れた純白の翼を持つ美しい馬にひと際優しく囁く彼。私を軽々と抱え、その馬に飛び乗った。そして。
「う、わぁ…。すごい、空をっ!」
飛んでいる。跳んでいるのではなく、美しい馬に乗った彼に横抱きにされて、天を羽ばたいているのだ。シャンデリアの光を反射する天馬の羽根と綺麗な毛並みが白銀色にも緋金色にも輝いている様に見えた。あんなに高かった天井に手が届きそう。
誰もが天を見上げていた。白銀の天馬に白い王子、銀の姫君。それはまるで、おとぎ話のワンシーンのような。呼吸を忘れてしまうほどの美しさ。天より舞い降りる純白の羽根。―雪の妖精。
「ようこそ、レイネシア姫。ペガサスの庭、中空へ。今は護衛の関係上、この会場内しか飛べませんが。機会があれば今度は月夜の空にでも、お散歩に行きましょうか。」
「っふふ、そうですね。その時は是非お誘いください。楽しみにしています。」
春の訪れ。雪解けを思わせるような、心からの笑顔が咲いた。
もっともその笑顔を見ることが出来たのは、ミルだけであったのだが。
「楽しめたようで何よりです。あ、そうそう。私の名前はミルセロスです。以後お見知り置きを、レイネシア姫。」
パチり、と最後にウインクをひとつ。ミルが頭にイメージしたのはセルジアッドだった。あんな風に茶目っ気出せないけどっ。
レイネシアにとって憂鬱であった筈のひと時が笑顔で終われたことは、ミルとしても何よりの報酬であったと言えるだろう。
レイネシア好き。可愛い。
レイネシアとアカツキの絡みも好き。
なんか小動物が戯れてるみたいで癒される感じ。わかります?
ちなみに舞ってしまったペガサスの羽根はちゃんと消えました。ペガサスの帰還と一緒に。