口悪召喚術士の異世界冒険譚   作:millseross

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おはよう世界。
おやすみなさい、読者の皆様。


リベンジを知らせる鐘の音が鳴る

あれから少しして目を覚ましたミルは、にゃん太と直継、マリエールの3人から労いと喜び、そして沢山のお説教の言葉を頂戴した。助けてくれたことにお礼を言って、今は情報提供の時間である。まだ疲れているだろうからとのことで、布団の上で寛ぎながら情報を伝える。

 

「にゃん太に伝えた通り、ラグランダの社に彷徨くモンスターは前と変わらなかった。ただ行き止まりに施錠された扉があって、その扉がひとりでに空いたんだ。中に入ると全く別のフィールドになってた。ゾーン名は"ラグランダの霊界山脈"。」

 

ミルは扉の先に広がるフィールドの特徴を伝える。

 

「ラグランダの社と同じ、スケルトン系のモンスターばっかりだったよ。ただ平均レベルは83程度で結構高め。1番高くて85だったかな。戦闘フィールド自体は広くて余裕があったんだけど、とにかく数が多かった。アーチャーやソーサラーなんかの遠距離攻撃系も居たし、ネクロマンス・スケルトンも数体いることは確認できた。」

 

マリエールは顔を青くして、納得したように頷いた。

 

「はぁ~、ようそんなとこひとりで挑むなぁ姫ちゃんは。お姉さんはびっくりやで。でももうそんな危ない真似しちゃあかんよ?」

 

「マリエさん。」

 

そんなマリエールに対して、直継が待ったをかける。持ち前の明るさで緩みそうになった雰囲気だったが、マリエールは3人の様子をみて戸惑ったように顔色を伺う。

 

「ミルはその程度じゃ負けねぇよ、こいつは茶会でパーティ組んでた時間よりもソロで居た時間の方がずっと永いんだぜ。そんくらい、今までだってひとりで乗りこえて来てる。」

 

「ミルの身体を貫いていた沢山の武器は弓矢ではなく、全てナイフだったのにゃあ。つまりミルが負けた相手はそのスケルトンたちではないですにゃ。」

 

にゃん太があえて”負けた”と言う言葉を口にしたことにムッとした表情を見せたミルだったが、本当の事だったため何も反論しなかった。まだにゃん太はミルに対して少しの怒りを抱いているようだったから、ここで言葉を返したら藪蛇だとも思っての判断である。

 

「信頼されているようで何よりだよ。そ、別にそこは大して難易度高くなかった。闘技場みたいなフィールドで、遠距離攻撃系は確かに沢山居たけれど飛行能力を持った敵は居なかったから、ペガサスに乗って上空から範囲指定回復魔法を展開し続けたんだ。スケルトンがリポップしなくなるまで。幸い僕の家族(じゅうしゃ)には回復魔法が使える子達たちが何人か居るから。その後、フィールドがセーフティゾーンに変わったのを確認して先に進んだ。」

 

サラりと言いのけたミルを呆然と見やるマリエール。にゃん太と直継は真剣な表情でミルを見ているのだが、今の発言がおかしいとは思わなかったのだろうか。

 

目下に広がるフィールドに大勢蔓延るスケルトン軍団。それらの敵から繰り出される攻撃を躱しつつ、従者を召喚し回復魔法を展開し続ける?それは恐らく1時間やそこらではきかないだろう。たったひとり、だれからの救助もないそんな絶望的な状況で長時間戦い続けることができるだろうか。少なくとも、マリエール自身にはできそうになかった。

 

マリエールは24人規模で行う大型レイド戦闘の経験が無いためそう思ったが、長時間ぶっ通しで戦闘することはそうあり得ない話ではない。攻略に1か月かかるようなクエストだって存在するのだ。彼の伝説の放蕩者の茶会に所属していたミルであれば、その程度は軽く耐えられる。

 

だがそれは、エルダーテイルがゲームであった頃の常識に当てはめた場合の話である。マリエールが思ったのはそんなことではない。高レベルな大勢の敵から向けられる明確な殺意と攻撃に、例えレベル90であったとしてもまだ子どものミルが耐えられる?更にはそんな状況を”対して難易度は高くない”と評したのだ。そしてその発言に特に疑問を抱いた様子の無い元パーティメンバーの2人。

 

一体この子は、茶会とはどういうものなのか。理解の及ばない目の前の冒険者たちに対して、マリエールが少しの恐怖心を抱いた瞬間だった。また、そんな次元に居るミルをあそこまでズタボロに下した敵とはいったいどういうものなのかと考えると、ゾクりと鳥肌が立つ。

 

「進んだ先には入り組んだ道が続いてた。それまでは道中何も出なかったんだけど、セーフティゾーンを越えてからは広けた場所は無くて、荒れた道にスケルトンたちがポップする仕様だった。半日くらいずっと移動してて、2枚目の扉を見つけた。」

 

「その扉を潜った先にスケルトンは居なかった。代わりに”髑髏仮面の暗殺者(ハサン・サッバーハ)”って名前の敵が出てくるようになった。人型だけど全身の皮膚の色が真っ黒で、黒いボロの布を頭から被ってる。顔には白い髑髏の仮面を着けていた。」

 

「見たことも聞いたこともねぇモンスターだな。」

 

「きっとノウアスフィアの開墾で新しく追加されたモンスターなのですにゃあ。」

 

やはり誰も知らない敵のようだ。正真正銘、初見の敵。まぁ、だからと言ってミルは負けるつもりはなかったのだが。

 

コクりと頷いたミルは続きを話す。

 

「扉を開けた瞬間、1体目に襲われた。拘束魔法を使って動きを止めた後にユニコーンで踏みつぶした。その時に仮面を割れば消滅するってことに気づいたんだけと、すぐに2体目が来たんだ。1本道だし狭いし暗かったから、いっぱい来たら面倒だな~と思って開けた場所まで駆け抜けたんだ。そいつらのレベルは88だった。」

 

「88、高いな。一筋縄じゃ行かない祭り。」

 

「そいつがナイフ使うてきたん?」

 

「そう。少し進んだらまた開けた場所に出た。前回と違って障害物が多くて薄暗かったけど、暗殺にはおあつらえ向きのフィールドだ。そこで戦闘勃発。も~素早くて魔法当たんないし、敵は気配殺して物陰に潜みながらめっちゃナイフ投げてくるしいちいち攻撃が的確だしで最悪だよ。天井低かったからペガサスにも乗れないしっ。」

 

「そないなモンスターどうしたらええのん。打つ手なしやん。」

 

お姉さんならソッコー逃げるわ、と笑いながら相槌を打つマリエール。にゃん太と直継は黙ったまま先を促す。自分ならどう戦う、どう対処するかと考えているのだろう。まだ見ぬ強敵に対し、2人は頭の中でイメージを膨らませ、戦闘をシミュレートする。

 

「魔導書使って自分で闘り合ったよ。」

 

「えっ、従者召喚しなかったのか!?」

 

「天帝の軌跡ですかにゃ、久しく見てないですにゃあ。」

 

疑問符を頭に浮かべるマリエールに対し、ミルが自分の戦闘スタイルや使用した武器について軽く説明する。

 

「結構頑張ったんだよー?暗かった部屋を明るくして、飛んできたナイフを避けて風でいなしてカウンター。油断した相手の仮面をパキっとね。それまでろくに休んでなかったし、あのモンスターからはなんかよく分からないプレッシャーみたいな、気持ち悪いオーラみたいなの感じてたから。倒した時はやっと終わったぁ、と思ってほっと一息ついたんだ。そしたら、」

 

―串刺しにされた。

 

「後ろから肩に向かって1本。振り向いてそれを確認したところで今度は前から続けて3本。ナイフには毒と麻痺効果が付与されてて、力が抜けて倒れそうになったけど、4体の敵に囲まれて立て続けにナイフを投擲された。仁王立ちしたサボテン状態だよ。やっとの思いでキャスリング使って。後は皆が知っている通りだよ。」

 

「今思えば、2体目が出てきた時点でポップ数が未知数だってことをちゃんと考えておくべきだったんだ。あいつら何体出てくるんだろ、少なくとも6体は確実だよなー。」

 

しんと静まり返る室内。無表情で淡々と、事実確認を行うように言葉を発したミルに対し、3人は二の句を紡げなかった。

 

髑髏仮面の暗殺者という新たなモンスターの存在と能力。その情報だけでも大変価値あるものなのだが、攻略法は?それを考えると、どうしても口が重くなる。

 

そんな中、ミルは唐突に魔法を使用する。

 

「従者召喚―カーバンクル。」

 

ミルは光とともに現れた小さなけものをぎゅっと抱きしめる。

 

ゴメンね、怖かっただろう。僕が弱かったせいで。

 

そう言って悲痛な面持ちで謝り続けるミルの頬をぺろぺろと舐めて必死に慰めようとする優しい従者。ミルの胸に前足をのせて、後ろ足で立って目じりに溜まる水滴を流させまいと懸命に舌を動かす姿は、疲れたミルの心を最大限に癒してくれた。

 

そんな光景を見たマリエールは、堪らないとばかりに慰めの言葉を掛けながらミルに抱き着き頬ずりを繰り返す。にゃん太と直継も同じように、強く優しい少年を労わろうと頭を撫でる。いつもは嫌がるミルだったが、しばらくされるがままになっていた。

 

話し終わった後で、ミルはそういえばと付けていた耳飾りを外して魔力を流し込む。すると何やら映像と声が再生され始めた。白い馬に乗って薄暗い道を進んでいるようだ。

 

「これは...。」

 

「2枚目の扉をくぐる前、つまりハサンとの初戦の前なんだけど。この耳飾りを使って撮影してたんだった。僕の視点をそのまま映してあるから、敵とかフィールドの情報はこれで正確に共有できるね。後でシロエにも送っとこ。」

 

ミルはごめん忘れていた、とあっけらかんと応える。

 

見るの話を聞いて疑問に思ったマリエールが言葉をこぼす。

 

「それ無線機言うてなかった?ほら、円卓会議の時に。」

 

「よく覚えてるね、そうだよ。元々これには音声を転送する刻印を施してたんだ。それから改良して機能を増設した結果、今は声のやり取りと録音録画もできるようになってる。」

 

こんな事もあろうかとってやつだよと、してやったりと言うような顔でニヤりと笑ってみせるミル。

 

「ほぇぇ〜、ホンマ凄いなぁ。こんな事もできるんかぁ。」

 

マリエールは感心したようにミルに視線を向ける。

 

そんなやり取りの中、前衛職の2人は一言も喋らずにじっと流れる映像を見続けている。今はちょうどミルが魔導書の固有魔法を駆使してナイフを操っているシーンだ。

 

ミルが話した通りの展開だ。ハサンは迫り来るナイフを叩き落とした直後、仮面を割られ叫び声を上げて地面を転がる。そして消滅したことを確認したミルが目を閉じたのだろう、映像表示が黒くなり戸惑ったようなミルの声が響く。肩口からナイフの塚が伸びており、後ろを振り返ると新たなハサンの姿。前にも同様に3体の敵。そして。

 

ミルはそこで映像を停めて発言する。

 

「あぁ、やっぱり。あのダンジョンはソロ専用じゃないみたいだね。ほらここ見て。僕が入ってきた道の他に5つの道が続いてる。それと、奥に大きな扉も見える。たぶんここはボス部屋の直前のゾーンなんだ。6人が別々の道からあのフィールドに向かって進み、全員揃ってポップする敵を全部倒してあの場所をセーフティゾーンにする。その後万全を期してボスへと挑む。そういう流れなんじゃないかな。」

 

じゃなきゃ難易度おかしいし、と少し不貞腐れたように言うミルに対して、マリエールはあまり良い顔が出来なかった。

 

「また挑むつもりなん?絶対攻略せなあかん訳でもないやろ?今度は本当に死んでまうかもしれへんのやで。こんな、ボロボロにされたんやんか。もうええやん。」

 

「え、何言ってんの?ここで降りれる訳ないじゃん。」

 

何故また攻略に挑もうとするのか、マリエールには分からなかった。死んでしまう危険があるのに、自分から危ない目に飛び込んでゆく理由が。ひとりで戦って怖かったはずだ。ナイフで刺されて、毒に侵されて痛かったはず、辛かったはずなのに。

 

「だってここで降りたら、負けて逃げたってことになる。そんなの嫌だ、つまんないよ。クリアしてこそのダンジョンだ。やり遂げてこその冒険だろ。あのダンジョンを初めて踏破するのは僕だ。それはもう決めたことだから、何度負けたって構わない。勝つまでやる。絶対に勝利の景色を拝んでやる。」

 

白い瞳に闘志が燃ゆる。珍しくあつくなっているようだ。初めての敵、初めてのダンジョン。初めての冒険。まるで昔に戻ったみたいで、ミルは心の底からワクワクしていた。

 

そのセリフを聞いた直継とにゃん太は、鼓舞されたように頼もしく笑ってみせる。

 

「まずは人数集めなきゃあな。誰か心当たり探る祭りっ。」

 

「敵はアンデット系譜なのですから、回復職が2人ほど欲しいところですにゃあ。」

 

「最前線で直継が引き付けてにゃん太は遊撃。僕は全体をサポートするとして、残りは回復職2人と。理想は暗殺者か魔法攻撃職が欲しいところだね。さて、どうしよう。」

 

男3人で盛り上がっている所にマリエールが声を上げながら突撃する。

 

「ちょい待ちっ!回復職ならここにおるやろっ!?うちかてレベル90の施療神官やで!なんで話に入れてくれへんのっ。」

 

それを聞いた3人は意外そうにマリエールを見る。

 

「え、だってマリエさん、あんなにバカンスだって楽しみにしてたじゃねぇか。」

 

「攻略に否定的だったから誘っても断られるかなって思った。」

 

「それに、この夏季遠征の総責任者でもありますにゃ。流石にどれくらい時間がかかるか分からないダンジョン攻略にトップを連れていくのは不味いのですにゃあ。」

 

「1つ目のセーフティゾーンにはたどり着いてるから、もうあと少しだと思うんだよね。ただ、ボス部屋まで行ってないからあのフィールドでどれくらい時間食うかで変わってきそう。」

 

「いーやーやっ!うちも行くっ!」

 

ごちゃごちゃうるさいと言わんばかりに一括するマリエール。どうやら、ミルの言葉に感化されたらしい。バカンスはいつでも行けるが、初めての景色はそうでは無い。ここで引いたら、もう一生見れないかもしれないのだ。そう思うと、やはり自分も行きたいと思ってしまう。

 

「まぁ、来てくれるならありがたいけどさー。」

 

「となると、あとは回復職1人に後衛職1人ですかにゃ。」

 

「シロエが居れば心強いんだが、無理だよな〜。ちみっこならいけるかもだけど、本人的にはシロエの傍に居たいだろうし。」

 

頭を捻りメンバーを模索するが、中々思い浮かばない。例えメンバーが思いついたとしても、その相手がダンジョン攻略を了承してくれるとも限らないのだ。

 

そんな中、ボソリとミルが呟いた。

 

「ん〜、でもなぁ。それだと僕の負担が大きくなるし。バランス考えたら、1人くらいスピード特化の人材が...。それか魔法攻撃職。でも実力は折り紙付きだしなぁ〜。」

 

「ミルには誰か心当たりがあるみたいですにゃあ。どなたですかにゃ?」

 

「お、なんだよ思いついてんなら言えよ祭りっ。誰だだれだ?」

 

「うちらも知っとる人やろか。初めましてやと連携とか大変やもんなぁ。」

 

「うん、連携とかは大丈夫だし誘ったら喜んで参加しそうなんだけど。でもこのメンバーだと僕の負担が...。つらいよぉ。」

 

興味津々といった様子でミルからの答えを待つ3人に根負けし、ミルは徐に念話をかけ始める。数回のコール音の後、相手の嬉しそうな声が届いた。

 

「ちょっと、頼みがあるんだけど。聞いてくれる?」

 

答えは分かりきっているけどな、と思いながら常套句を口にするミルの顔は、此度の攻略は相当しんどくなりそうだと、憂いに満ちていた。

 

 




残る2人は誰だっ!?
分かっちゃってもシ━━━ッd((ˊ皿ˋ ;)

今回はまったり説明会のお話でした。
次回っ!ついに戦闘!!

頑張れミルくん!負けるなミルくんっ!
みんな応援してるぞー!
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