完全オリジナルストーリーなのでナイトメアモードの執筆レベルです。
つら。。。
生きとし生ける全ての者たちは、この世に生命を芽吹かせたその瞬間から、死ぬことが定められている。それは例えば、大地に強く根を張る植物であろうと、大海を優雅に泳ぐ魚であろうと、大空を気高く飛ぶ鳥であろうと変わらない。無論、人にだって死は訪れる。
これは酷く矛盾しているように感じる。終わりが決まっているのなら、始める意味などあるのだろうか。生き続ける意味など、あるのだろうか。
その答えは"分からない"。なぜなら、終わりがあるからこそ最大限努力し、工夫して成長したいと望む者もいれば、何の意味もなくただ無気力なまま一生を終えたいと望む者もまたいるからだ。
一概にこうであると断言出来るものでは無い。断言して良いものでもない。いや、そもそも生きることに意味など無いのかもしれない。死んで始めて生きた意味が生まれる可能性だってあるのだから。
だが冒険者は違う。冒険者は死なない。否、この言葉は正しくない。死ねば大神殿で生き返る。これだ。
この世界において最も道理から外れた存在は冒険者と言っても過言ではない。大地人からしてみれば、冒険者とは理解が及ばない存在であるだろう。戦えば戦うだけ強くなり、殺されても生き返る。知性があり、理性があり、善性があり、悪性がある。
ーなんともまぁ扱いずらいものだろうな。
ミルは1人ほくそ笑みながら、死というものについて思考していた。
元の世界において、肉体の死=精神の死でもあった。肉体が死ねば、思考することはできないからだ。しかしこちらの世界では、そのふたつの死は=ではない。決して結びつかない。肉体が死んでも、大神殿で蘇る。任意ではない。強制的に。つまりいくら冒険者が死にたいと望んでも死ねないのだ。
ではこの世界で冒険者が死ぬにはどうしたらいい?答えは簡単だ。肉体を殺せないのなら、精神を殺せば良いだけの話である。
例えば愛する者が亡くなったり、何か大きな挫折による絶望を受け入れたり、はたまた辛く厳しい状況に居続けたりすると、精神に死が訪れる。ことがある。
さてここで、なぜ今、齢18の少年が死についてこんなにも考えているのかという話になる。
それは彼の視線の先に死が立っていたからだ。ひっそりと、静かに、厳かに、確実に。2本の足でつっ立っている。
死は
見上げるほどの大きな身体を持ち、頭から黒いボロの外套をかぶっている。その頭上には布を突き破ってまで2本の角を生やしているのが少し滑稽に思えた。身体にはおそらく鎧を身につけているのだろう。身動ぎした時にガシャガシャと耳障りな音が響いていた。身の丈ほどの巨大な剣を地面に突き立て、その頭に両手を重ねて立っている。そしてその身体には肉が無い。
痩せている?細身である?いいや、違う。無いのだ。人から肉と言う肉を削ぎ落とせばこのような姿になるであろう骸骨。本来眼球があるはずのそこはただの空洞になっていて、蒼い光がぼぅと灯っていた。
それは広いフィールドの最奥、高い位置に居た。フィールド全体に、青白く生気のない光がふよふよと漂っており、敵の薄気味悪さを助長させている。足場は脆いようで、それがこちらに首を向けた際にがらごろと何かが崩れ落ちるような音がした。
それは人骨だった。動かないスケルトンと言ってもいい。とにかくたくさんの骨が山のように高く積み上げられており、死はその上に佇んでいた。
死には名前があった。死には音が、声があった。ミルには聞こえていた。ミルだけにしか聞こえてはいなかった。
"
レベル93
「―
ミルはその台詞に聞き覚えがある気がした。だが今、それを何処で聞いたのか思い出している暇は無い。一瞬たりとも。
「従者召喚―
唸り声を聞いた5人はハッとなり、たちまち戦闘態勢をとる。直継とソウジロウが最前線に立ち、にゃん太とナズナは遊撃として中盤に散開する。そして前にいる4人を全力でサポートするべく、マリエールが最後尾に位置取る。
本来ならミルは遊撃2人とマリエールの中間地点でパーティ全体のサポートをする役割を担っていた。
だがそれは一瞬で瓦解した。何故ならミルは他の5人が敵と相対していると言う事実を認識する前に、それを目の前にしたその瞬間から行動に移っていたからだ。
ミルは現在上空でペガサスにまたがり、戦闘フィールド全体に微少の継続回復魔法を展開している。本来であれば、ボス戦中盤から後半にかける段階でこの布陣へと移行する作戦であったのだが、ミルは自分の直感を信じて行動した。
その直感は正しかった。生存本能による第六感。ミルはこの感覚に既視感を覚えていた。ハサンと戦うようになって、この感覚を何度か感じていたのだ。
気付いた時には、否。気づかぬ内に、死はマリエールの前にその錆びた大剣を振り下ろしていた。
今、どうやって移動した?
ミルは上から敵の様子を見ていた筈だった。こんなにも死のオーラを漂わせている存在だ。例え暗殺者と言えども、その存在感は圧倒的と言わざるを得ない。にも関わらず見失った。目を離してなどいなかった。大きな身体が蒼い炎に包まれ、その直後に視界の端に現れていた。
死が振り下ろされたその場所は、つい先ほどまで自分が立っていた場所ではないだろうか。
「マリエールっ。避け…っ!」
敵の目の前で呆然と突っ立っていたマリエールに向かってミルは大声で叫んだ。だが、それは要らない心配だった。まただ。マリエールに気を取られていた一瞬で、今度は目の前に死が迫っていた。
「アンカー・ハウルっ!!そう簡単に大将はやらせねぇよ!」
直継の声が響く。ミルは素直に助かったと感じた。それから、直継のことを心からすごいと思った。直継がアンカー・ハウルを発動していなければ、あの一刀の下に倒れていたかもしれない。こんな状況であるにもかかわらず、直継は快活な笑顔を浮かべていたのだ。
ミルは先ほどから冷や汗が止まらなかった。ピンと張った糸を少しでも弛めてしまったら、手の震えがおさまらないだろうと簡単に予想できた。ミルはこの山の翁と言う敵に対して、尋常ではない恐怖を抱いていた。そして同時に、理由はわからないのだが、何か暖かな感情を抱いていることを自覚していた。
その強さに対する尊敬だろうか。その一刀に確固たる信念を感じるが故の畏敬だろうか。
「
先にお前からだとでも言うように、山の翁はその大剣を振り下ろす。恐ろしく速い斬撃、しかし直継はしっかりと盾でガードする。
直継が2人の名前を呼ぶ。その思いに応えるため、ソウジロウとにゃん太がスイッチし、挟み打つように獲物を振るう。2人の剣速も負けてはいない。
だがその攻撃は敵を捉えることは無かった。またも一瞬で移動した山の翁が直継の真後ろに現れ、大剣を軽々と薙ぐように振るう。ナズナが事前にかけておいた禊の障壁が砕け散り、直継の体が吹き飛ばされる。
上手く盾で防御し直撃は避けたようだが、それでもHPの減りは大きかった。マリエールが直継の元へ駆け寄り、回復魔法をかけている。少しの間動けないだろう。
「紫電一閃!」
「デュアルベット!」
ソウジロウとにゃん太が猛攻を仕掛ける。片や日本刀、片やレイピアで目にも止まらない連撃を叩き込む。流石は同じパーティで活動していただけの事はあり、その連携は一級品だ。
だが山の翁は例え1vs2であろうとも全く怯む様子はない。むしろこの2人の攻撃を余力を持って捌きつつ、ナズナの遊撃をも警戒している。だか、やはり最も意識を割いている相手は上空に居るのだろう。3人の連携の隙を突きミルへ攻撃を仕掛けようとしているのが分かった。
3人は唐突に、はかったかのように山の翁から距離を取る。訝しげに目の蒼い光を点滅させた山の翁だったが、好都合だとミルへの接近を試みる。だが遅い。
「聖なる願いは大地へと注がれる。これは天へ続く導きの光道。彼の者に癒しを与え、彼の者に降りかかる禍いを禊ぎ払わんことをここに。”
薄暗いフィールドにきらきらと光が瞬く。見る者を癒す星の輝きが天より降り注ぎ、聖なる光の塔を創り出した。
「
山の翁は大剣を盾代わりに頭上にかざし光を遮る。直後、そのがら空きの胴体に全方位から放たれた8つの雷撃が直撃した。
凄まじい音と衝撃が響き渡り、辺りに砂埃や煙が立ち込める。雷撃はミルの召喚した雷獣によるものだった。この戦闘において、初めてまともに当てることが出来た攻撃でもある。
「よっしゃぁ!やっと当たったぜっ。ナイス、ミル!」
復活した直継がぐっと親指を立てながらミルに向かって賞賛の声を上げる。
対してミルは雷獣を送還させつつ、冷静に次の手を考える。
どうやらこの敵には知性があるようだ。先ほどからずっと、何かを探すようにどこだどこだと繰り返している。それと、執拗に自分ばかりを狙うのは何か理由があるのだろうか。今後は自分が前に出て、直継と一緒に山の翁の攻撃を引き付けた方が良さそうだ。
ミルはパーティメンバーのステータスを確認しつつ、眼下に広がる戦場を見下ろす。すると、山の翁が立っていた骸骨の山が犇めき、ガタガタと動き出す。ミルは焦ったように声を落とす。
「まずいっ、スケルトンが動き出したっ!にゃん太とマリエールはスケルトン引き付けて!直継、理由は解らないけどヘイトが僕に溜まってるから、僕が前に出て攻撃担当する!ソウジロウ若干攻撃抑えてっ。そっちにヘイト行ったら修正めんどい!ナズナは全体のサポート!攻撃よりも防御と回復優先してっ!」
「「「「「了解!!」」」」」
前線で山の翁の攻撃を引き付けるためにペガサスから飛び降りようとしたミルだったが、ゾクりと嫌な予感がした直後、ガラスが割れるような音と共に、自らの意思とは関係なく地面に叩きつけられた。衝撃で肺の中にある空気が一気に吐き出される。
「かはっ...!」
「「ミル!!」」
晴れた煙の中にその姿はなかった。いつの間にかミルの背後へと飛んでいた山の翁は、無情にもその刃をミルの肩口へ振り下ろしたのだ。
一撃でHPの半分以上を削られたミル。ナズナが事前に使用していた禊の障壁が無ければ危なかっただろう。ペガサスの回復魔法で少しずつ回復しているが、それも微々たるものだ。
「くっそやば…!」
マリエールが慌てて駆け寄ろうとするが、ミルが来るなと叫ぶ。スケルトンの数だって尋常ではないのだ。ここでマリエールがミルの回復にあたったら、にゃん太一人でその全てを引き付けなければならなくなる。そうなれば、たちどころに圧倒的な数の差で戦況が飲み込まれてしまう。それではいけない。
ミルの頭上から剣戟の雨が降り注ぐ。先程とは立場が逆転していた。いち早くミルの元へ辿り着いた直継が山の翁の連撃を弾き、カウンターを決める。更に背後からソウジロウが連撃を叩き込む。
「従者召喚―
ウロボロス―破壊を司る黒龍と再生を司る白龍。直接的な攻撃手段を持たないが、回復やバフ・デバフを扱うサポート系の能力を持つ者の中でもトップクラスの召喚獣である。なお、サイズは自由に変えられる。
右腕に黒龍、左腕に白龍を巻きつけたミルは、直継とソウジロウの攻撃で怯んだ山の翁に向かって右手を向ける。腕に巻き付いた黒龍の目が怪しく光り、山の翁に”破壊”のバッドステータスがかかる。これにより武器や装備の破壊が可能となった。理論上はの話であるが、破壊の可能性が0%ではない以上少しの期待はできるだろう。
直ぐさま自身に左腕を向けたミル。白龍の目が輝き、ミルのHPが回復する。更にスケルトンの群れに向かって手を伸ばす。すると衝撃に吹き飛ばされたかのように、次々と骨が崩れていく。
「
上段からの大振り。分りやすい攻撃モーションだ。攻撃役の3人はそれぞれ回避を試みる。だが。
「あああぁぁっ!!」
「っぐぉおお!」
「うっ、くっ!」
「みんな!イクスペンスヒールっ!!」
斬撃と同時に発生した蒼い炎がミルと直継、にゃん太を飲み込む。ソウジロウは右に跳んで避けたためにギリギリ攻撃の範囲外であったのが幸いだった。だが被害は甚大である。特にミルと直継は全身を飲み込まれたため、残りのHPが極わずかとなってしまった。マリエールが全体に回復を掛け、3人のHPを必死に回復させる。
「…殺す。”倶利伽羅の太刀”!!」
蒼い炎に包まれ倒れ伏した3人を見たソウジロウが、殺気を込めた全力の一撃を叩きこむ。
「な、に…ッ。」
しかし山の翁は意にも返さない。左手でソウジロウの刀を掴み、赤い鎧で守られた胴体に錆びた刀身を突き刺し、払い捨てる。
「ソウジっ。しっかり、今回復をっ!」
大量のスケルトンを巻き込みながら吹き飛んだソウジロウ。ナズナが慌てて駆け寄りヒールを施す。その背中に死の気配が迫る。しかしナズナは気づかない。ソウジロウを死なせてなるものかと、腕に抱き上げ回復魔法を行使し続ける。
「ナズ、ナ。にげ、」
視界がおぼつかない。耳鳴りが酷く、ミルは自分が立っているのか寝ているのかもわからなかった。
気付けば誰も居なくなっていた。自分の身体なのに少しもいう事を聞いてくれない。鉛のように重たい。傍らには死が立っていた。にゃん太も、直継も、マリエールも、ソウジロウも、ナズナも。全員やられたのだろう。
「
一体何を探しているというのか。それだけの強さがありながら、得られないものなどあるのだろうか。
「な、にを。探して…いるの?」
「…!」
驚いている、と思う。やはり知性が、理性がある。スケルトンとは違う。呪腕のハサン同様、この
「首を出せ。汝の首がこの霊界を鎮めよう。その首、その魂をもって哀れなる脆弱な者共の鎮魂と成さん。許せ、清き者よ。」
「そ、う。いいよ、分かった。どの道僕は負けたんだ。今回は君の勝ちだから、その望みを叶えてあげる。でも次は僕が勝つから。その時は、僕のお願い聞いてよね。」
「…信託は下った。」
―聴くが良い。晩鐘は汝の名を指し示した。告死の羽、首を断つか。
その詠唱と共に、死の気配が色濃くなる。蒼黒いオーラとなってその巨体を、大剣を包み込む。
遠く、近く。鐘の音が寂しげに響いている。一歩一歩ゆっくりと近づいてくる死の足音を、その鐘の音が消してくれていた。
ミルは1歩たりとも歩けない。指先ひとつ動かすことさえできなかった。しかし決して、山の翁から目を反らさなかった。山の翁もまた、ミルの目を静かに見つめていた。眼球は無い筈なのだが、その2つの蒼い光から見られている事だけは理解できた。なぜだろう、嬉しく感じたのは。
「”
しんと静寂が満ちる。
男はたった今切り離した首を大事そうに両手で抱える。頭上に掲げた瞬間、シャボン状となって虚空へ消えた。天にフヨフヨと漂っていた霊魂が、ひとつ、またひとつと消えていく。全ての光が無くなったと同時に、うじゃうじゃと動いていたスケルトンたちがさらさらと砂状に散っていった。
外套を纏う大きな背中は、先ほどまでと異なる雰囲気を漂わせていた。ミルが見たら、きっと嬉しそうに笑うだろう。その背中に寂しさはなく、一縷の希望を見つけたと、どことなく嬉しそうに伸びていた。
シエルエトワールっ!(ちょっと気に入ってる)
ついに出ましたねキングじぃじ。。。
実は鐘の音は聞こえていたのです。14話の時点で。
こわわわ...。
いい感じのコメントが14話に来ていたので、読んだ時は思わずにやけました。
鳴ってるよー、鐘鳴っちゃってるよー( ・∀・) ニヤニヤ
ってな感じで。
もしかしたらコメント主さんは気づいていてそういうコメントを書いてくださったのかもしれません。
だとしたら素晴らしいの一言に尽きる。
ありがとう。