口悪召喚術士の異世界冒険譚   作:millseross

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本日2話目〜!書き終わった瞬間に出してます!
ストックなぞ無いわ!!


掌の上で踊るサル

上空から眼下に広がる戦場を見下ろしながら、ミルは跨っているペガサスの首を撫で、”ファンタズマ・ヒール”を使用する。ペガサスは心得たとばかりに一度頷き、純白に輝く翼を羽ばたかせる。舞い落ちる羽根は雪のようにひらひらと戦場へ降り注ぎ、パーティメンバーに登録した直継とにゃん太のHPを回復させる。

 

「主役は遅れて登場ってかーっ!遅すぎ祭りだっつの!!」

 

これでひとまず死ぬことは無いだろうと安心していると、威勢の良い声が耳に届く。視線を向けると、懐かしい顔ぶれがそろっていた。また会えたことに嬉しくなったミルだったが、直継の笑顔につられて笑いそうになる顔を引き締める。再開を喜ぶのは後で良い。

 

守護戦士(かべやく)が1人。盗剣士1人、暗殺者1人(ただし控え)の攻撃2人(ほぼ1と換算)。付与術士の補助(サポート)1人。森呪遣いの回復(ヒーラー)1人(ただしレベルが低いため雀の涙程度)。

 

ミルはこちらの戦力を瞬時に把握した。その戦力の中には当然、息を潜め敵の隙を虎視眈々と狙っているアカツキも含まれている。大勢の敵戦力に対し、こちらの人数は少ない。それも圧倒的に。

 

「ほぼ全面的に足りないじゃん。特に問題ないけど。」

 

ミルはそう呟くと、シロエとアイコンタクトを交わし頷き合う。現状何が足りないのか、どう動けば有利になるかを視線のみで確認し合う。茶会時代から培われた以心伝心ともいえるほどのコミュニケーションだ。

 

「従者召喚。”不死鳥(フェニックス)”・”八咫烏(ヤタガラス)”。」

 

フェニックス-炎属性の上位精霊である巨鳥型の召喚獣であり、深紅に輝く炎を操ることができる。フェニックスと契約するには召喚術士レベルが86以上でなければならず、扱うものは限られる。

 

ヤタガラス-風属性の上位精霊である鳥型の召喚獣であり、濃紫と漆黒が混ざったような、夜を彷彿とさせる色の羽根で覆われている。フェニックスほどの大きさは無いが、身体の周りに黒い旋風を纏っており飛行速度はフェニックスよりも速い。

 

ミルは相手戦力に召喚術士が居ないことを確認し、迷わずこの従者を召喚した。この布陣であれば、全ての行動を敵の攻撃が届かない遥か上空から行うことが可能であるからだ。唯一攻撃が届くとしたら、魔法攻撃職のロンダークを筆頭とした数名だろうが、それさえも躱すか防ぐ自信があった。

 

更に、大きな体躯の従者を召喚することで敵の視線を上空へ釘付けにし、隙を作らせるという目的もあった。この間に暗殺者であるアカツキが相手の頭を刈ってくれたら御の字、そうでない場合は-。

 

「っておいおい、君まで見ちゃったらダメでしょ。仕方ないなぁ…。」

 

シロエはセララを連れて大きく後退する。ほぼ同時に直継とにゃん太も同様に後ろへ下がった。これから何が起こるか分かっているかのようにタイミングはバッチリだった。唯一アカツキだけが遅れていたが、本能で危険を感じ取ったのだろう。直継とにゃん太の行動を見て、反射的にシロエたちの傍へ跳ぶ。

 

今、攻撃範囲内に居るのはブリガンティアのみ。

 

「んじゃ、やっちゃって良いよ。ふたりとも。」

 

その言葉を聞いた従者たちは、主人のためにと大きく羽ばたく。こちらを見て呆然としているたブリガンティアのメンバーは、何かがおかしいと感じたのだろう。あるものは防御の構えを取り、あるものは回避しようと腰を落とす。

 

そんなことはお構い無しとばかりに、空を旋回するフェニックスとヤタガラスは同時に魔法を使用する。

 

轟ッッ!!!!

 

フェニックスの炎のカーテンが大地へと降り注ぎ、大地が煌々と紅く染まる。そしてその炎を一点に閉じ込めるように、黒い疾風が旋廻する。一瞬で紅黒い竜巻に飲み込まれたブリガンティアに成す術などありはしない。仮に防御出来ていたとしても、それは正面のみ。荒れ狂う炎に指向性を持たせる風によって、攻撃範囲内の敵全てに全方位から爆風が襲い掛かる。

 

合体魔法(ユニゾンレイド)。2つ以上の魔法を掛け合わせることで、相乗的に威力を増大させる高等魔法。ゲーム時代は、魔法を使用するタイミングや相性によって成功率はまちまちで、狙って行えるプレイヤーは極小数であった。2つなら50%、3つ以上なら30%といった風に、掛け合わさる魔法の数が増えれば増えるほど成功率は下がっていく。成功した場合は不利な戦況をひっくり返すことも望める強力な技だ。しかし失敗すれば魔法は不発に終わり、且つその後1度のリキャストタイムが倍に延びるといったデメリットもある諸刃の剣とも言える魔法である。

 

数十秒後、炎嵐は何事も無かったかのように消滅した。そして焼け野原と化した戦場に残っているのはもとの半数程度だった。高レベル者であるデミクァスとロンダークは当然残っていたが、その他のメンバーは自分たちの黒ずんだ姿と辺りの状態を見渡し、戦意を喪失させた。十数人をものの数秒で焼き殺した相手と、さらに厄介な守護戦士、盗剣士が居るのだ。勝てる気がしない、そう思うのは当然とも言えた。

 

「ふたりとも、もう戻って良いよ。ありがと。」

 

フェニックスとヤタガラスを戻したミルは、もう終わりだと言わんばかりに、ペガサスとともにシロエたちの傍へ降り立った。

 

「お疲れ様、ミル。流石の戦闘掌握ぶりだね。合体魔法(ユニゾンレイド)なんて久々に見たよ。」

 

「ホントだぜっ!変わって無いようで何より祭り!」

 

「うん、2人ともお疲れ様。それと久しぶり。びっくりしたよ、まさかセララを助けに来てくれたのがシロエと直継だったなんて。」

 

「彼女も一緒にね。」

 

シロエの言葉に、ジッとミルを見つめていたアカツキはこくりと頷く。それに対して、ミルもペコりと会釈する。それからミルはペガサスの羽根で直継とにゃん太のHPを回復させる。

 

「ありがとうですにゃ、ミル。助かりましたにゃあ。」

 

「俺も助かった祭りっ。サンキューな!」

 

「別に良いよ、これくらい。さて、そろそろ「てめえぇぇぇかぁぁっっ!!召喚術士ぁぁぁ!!!」

 

ミルの言葉を遮るように、デミクァスが背中を向けているミルに向かって拳を振り上げる。今までさんざんススキノの街で自分たちの邪魔をしていた人物。更にいきなりこの場に現れて、圧倒的に有利だったはずのブリガンティアをものの数秒で壊滅せしめた。自分たちが掲げた”ブリガンティア”という栄誉ある看板に、泥を塗り続けた相手。それが今、目の前に居る。殺さねばならない。チャンスは相手が油断している今この時っ!

 

「「”アストラルバインド”。」」

 

気が付くと、デミクァスは淡く輝く糸に雁字搦めにされていた。どう足掻こうにも振り解けない。そこで漸く、嵌められたのだと理解した。自分は掌の上で踊らされていたのだ。

 

デミクァスが隙だと判断したこの状況は、ミルによってつくりだされた罠であった。わざとデミクァスに背を向けるように位置取りし、ペガサスから降りて仲良く仲間とお喋りしていたのは、自分の背後にデミクァスを誘い出すため。移動速度が速いことは職業から予想が出来ていた。逆に言うと、移動できなくしてしまえばこちらの勝ちであるということ。

 

そしてベテラン4人もまた、この状況を正確に理解していた。ゆえに和気藹々とした会話をしている間も、一瞬たりとも油断せずに視界の端でデミクァスの動きを捉えていた。

 

そしてまんまと罠に掛かったデミクァスに、シロエとミルが”アストラルバインド”を発動。これは対象を光の糸で拘束し、行動を阻害させる魔法である。

 

「クソっクソっクソがぁぁぁ!!この俺がっ!こんなもんでぇぇぇ!!」

 

充血させた目を見開き、シロエとミルを呪い殺さんと睨みつけるデミクァス。受け入れられない、受け入れたくない現状を、叫ぶことで逃避しようとしているようにしか見えなかった。

 

「クソはお前だゴミヤロー。みっともなく喚き散らしてんじゃねぇよカスが。自分より弱い人たちを痛ぶって小山の大将気取ってたサルに世界の広さを教えてやっただけだ。次また同じことしてみろ、二度とススキノに入れなくしてやんぞ。」

 

「っは、テメェで殺すことも出来ねぇようなガキがイキがってんじゃねぇよ!面ァ覚えたからなぁ!?生き返った端からぶち殺してやる!!嬲って痛めつけて犯した後でぇ!街ん中で晒してやるからかくごしっ!」

 

その言葉を言い切る前に光る茨が発生する。直後、直継の剣とアカツキの短刀、そしてにゃん太のレイピアが巻き付く茨ごとデミクァスを切り裂いた。

 

「聞くに堪えにゃいのにゃ。」

 

「いつまで喋ってるんですかね。」

 

「誰が言わせるかってんだ。」

 

「敗者は黙って戦場を去るべきだ。」

 

自分たちの仲間を、茶会の大事な末っ子を貶める言葉を聞きたくない。その一つの感情が4人を突き動かした。

 

「…、誰も殺さないなんて言ってないって言おうとしたんだケド。まぁいいや。ありがと、3人とも。アカツキだっけ?君も、ありがとうね。」

 

ミルは長い髪を耳にかけながら、少し照れたようにお礼を言う。それを見た3人は、一斉にミルの頭を撫でようとする…が、ミルは察知してそれを避けた。アカツキだけは何とか、ピクりと腕を動かしただけに留まった。恐らく自分がされた場合を考えて、理性で押し止めたのだろう。

 

「ミル…ミルセロス…っ!貴様っ、獣狂いか!?」

 

戦闘もひと段落ついたところで、ミルがセララに対しよく頑張ったと褒めていた時、ロンダークの声が響いた。

 

「獣狂い…って何?」

 

「とぼけるな!獣狂いのミルセロスっ!パーフェクトオールラウンダーだろう!」

 

召喚獣を使い分けることで、遠中近距離攻撃・補助・回復の全てをこなす。それがミルの戦闘スタイルだ。ミルは茶会時代、討伐対象モンスターや現在の戦況、討伐に参加しているパーティメンバーに応じて様々な従者を召喚し、戦法を変え、その時々でパーティの弱点を補う事で、召喚術師の理想形ともいえる戦闘スタイルを確立していた。

 

そのことからミルは”完全万能型(パーフェクトオールラウンダー)”と呼ばれるようになった(主に茶会メンバーから)。その呼び名がどんどんエルダー・テイルで広がっていった結果がこれである。因みに”獣狂い”は動物や自分の召喚獣が好きすぎるミルに対して誰かが呼び始めて定着した(獣狂いと言う二つ名をミルは知らない)。

 

「あぁ、そう言えばその完全万能型(パーフェクトオールラウンダー)って言葉、言い始めたの僕なんですよね。ミルの戦闘があまりに理不尽だったから。」

 

「因みに獣狂いは俺だっ!」

 

「ほら行くんだよ、ペガサス!ご主人様(ぼく)が貶されてるっ。直継に突撃だ!」

 

「なんでだよっ!?」

 

不届き者に制裁を与えるべく、ミルがペガサスに命令する。ペガサスは、え?いいの?ホントにやっちゃうよ?とでも言うように戸惑った様子でミルと直継の顔を交互に見ている。

 

途端に緩んだ空気に苛立ったロンダークの舌打ちが飛んでくる。

 

「引くぞ、お前たち。これ以上は無駄だ。」

 

この戦力差ではどうしようもないと判断したロンダークに従い、残ったブリガンティアのメンバーたちは戦線から離脱する。ある者は足を引きずり、ある者は腕を押えて。

 

シロエは止めと言わんばかりに、背を向けて歩いていくブリガンティアに大きく勝利を宣言する。

 

「僕たちは"パルムの深き場所"を越えてやって来ました。アキバの街とここは、もはや往来できないほどの距離ではありません。その方法も地図も手に入れ、既に報告しましたから。こんな騒ぎは、もうお終いです。」

 

少しの間、この場を沈黙が支配した。お互いを警戒するように、視線が交わる。

 

笛の音が空に響き渡る。空の彼方より現れた4匹の鷲獅子(グリフォン)に各々が飛び乗る。シロエはアカツキの手を引き、にゃん太はセララを抱えて。

 

「この場は僕らの勝利です!」

 

その言葉を合図に、4匹のグリフォンは翼を羽ばたかせ、空を翔ける。

 

振り返ると、ブリガンティアのメンバーが呆然と空を見上げていた。

 

(あれ?デジャブ?)

 

セララの救出が無事に終わったことを皆が喜んでいる中で、若干1名は余計なことを考えていた。

 




アカツキ好き!でも全然目立たせてあげられなかったごめんね!!

またまたオリジナル召喚獣の八咫烏。不死鳥の風バージョンと思っていただければ。炎と風の双鳥。良きかな。

下記用語は別作品より引用させてもらいました。
合体魔法(ユニゾンレイド)→FAIRYTAILを参照に、エルダー・テイルの世界観に落とし込んだ感じです。
完全万能型(パーフェクトオールラウンダー)→ワールドトリガーを参照。木崎レイジ好き!落ち着いた筋肉。それ人間か?の下りに爆笑しました。僕も筋肉欲しい!
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