口悪召喚術士の異世界冒険譚   作:millseross

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昼休み投稿!(∩皿^∩)ニシシシシ


この世界では

ススキノから飛び立った後、笛の効果が切れるギリギリまでグリフォンに乗り空を翔け続けた。そして今、街から遠く離れた森に到着した一行は、ここで野営をする為の準備をしている最中である。

 

テントを張り、まきを集め火を起こす。準備に際してはシロエが意外と活躍していた。なんでも、リアルでキャンプの本を読んだことがあったらしい。人は見かけによらないのである。途中でにゃん太が見事に鹿を狩り、近くの河原で捌き始めた。

 

「今夜は鹿肉のバーベキューですにゃ。」

 

鼻歌を歌いながらテキパキと準備するにゃん太。それを手伝うセララも、とても嬉しそうに笑っている。

 

食事。シロエと直継、アカツキにとっては憂鬱とも言える時間である。なぜなら、素材アイテム以外の全ての料理には、およそ味と呼べるものが存在せず、食感もソボソボ、ベチャッとしたようなものだからだ。

 

元の世界でバーベキューと聞いたら、ピョンピョンとび跳ねるほどに嬉しくなっていただろうに。3人の表情は暗く、俯いたままだった。

 

にゃん太はそんな3人のことなぞ気にせずに、バーベキュー用に角切りにした鹿肉に鉄串を刺し、火にかけた網へ放ってゆく。

 

パチパチと火の粉が弾ける音が、静寂の夜森へこだまする。煙が上がり、辺りには心くすぐる匂いが立ち込める。

 

肉の焼ける匂いだ。

 

「「「ぐぅぅー。」」」

 

「おやおや。お腹を空かせたオオカミさんたちにひもじい想いをさせるのは忍びにゃいのにゃあ。そろそろ焼けますにゃ。」

 

「沢山食べてくださいねっ!」

 

3人の前に、鹿肉の串焼きが数本置かれる。ジュワジュワと玉のような肉汁が溢れ、弾ける。

 

3人は生唾をゴクりと飲み込み、意を決してかぶりついた。

 

()んだ肉を鉄串から引き抜き咀嚼する。無言で、自身の手がしっかりと掴んで離さない肉を一心に見つめ、モグモグ、モグモグと。

 

「「「ッッ!」」」

 

もはや言葉は要らぬとばかりに、噛んでは引き抜き、咀嚼し飲み込み、そしてまた。

 

「んぅううっまーーいぃっっ!!!」

 

「ぉ、お美味しいっ!!」

 

「主君っ!主君っ、これはなんと言うかっ。至福だっ!」

 

やっとの思いで出た言葉は、当然と言うべきか。喜びと嬉しさが心の底から湧き上がり、抑えきれない叫びとなって辺りに響き渡る。

 

ごく一般的な料理であるはずなのだが、それでも今までの食生活からは考えられないほどの充実感で満たされる。至って普通に焼き、黒胡椒をまぶしただけ。食材も調味料も特別なものは使ってない。ただの普通の料理というものがどれほど貴重で、かけがえのないものであったのか。3人はそれを自覚し、心から感謝の言葉を伝える。

 

「でも、なんで...?素材アイテム以外に味のする料理なんて。」

 

「料理人が作った料理には味がするよ、ちゃんと。」

 

いつの間にかどこかから戻ってきていたミルが空いていた椅子に座りながら、味のする料理のタネを明かす。

 

「僕らは自分の職業に関することしかできないんだよね。それはサブ職業も然り。料理人は料理を、筆写師は筆写を、追跡者は追跡を。レベルが高ければその道のプロになれるけど、割と不便なルールだと思わない?ん、美味しい。」

 

ミルはいただきますと手を合わせ、パクっと肉にかぶりつく。それを見た3人は、少し気まずそうにいそいそと手を合わせ、いただきますと小さくこぼす。にゃん太はその姿を見て更にご機嫌になった。

 

「みんな良い子なのですにゃー。」

 

「ゴホン。僕らが作ったものは味がしなかった。それはつまり、サブ職業が料理人じゃなかったから。」

 

「大事なのは、適したレベルの料理人がメニュー画面に頼らず、元の世界と同じように実際に調理することなのにゃ。ただ、サブ職業のレベルが低い料理人が難しい料理を作ろうとしても失敗してしまうのにゃあ。」

 

メニュー画面を開いてコマンドを操作し料理アイテムを作っても、味のないものが出来上がる。それを鑑みて、過去にシロエたちもメニュー画面に頼らずに実際に調理を試みたことがあった。結果は惨敗、ヘドロ状のダークマター的な謎アイテムを作り出してしまった。それからはもう、食事についてはどうしようもないと(未練タラタラではあったが)割り切っていた。

 

そんな彼らにここに来て明かされる新事実。サブ職業の存在。もちろんにゃん太はレベル90の料理人。今後彼らの食生活はにゃん太が責任をもって管理することとなる。

 

食べ始めた時の勢いもおさまり、暖かいお茶を飲んでホッと一息ついた頃。ミルとにゃん太がセララに自己紹介を促す。

 

「あっそうですよね!ご挨拶が遅れてすみません!はじめましてっ。この度は助けて頂いてありがとうございます、セララですっ。"森呪遣い"19レベル、サブ職業は"家政婦"です。まだひよっこ娘ですっ。よろしくお願いします!」

 

シャキッと直立し元気いっぱいに挨拶したセララに、暖かい視線が向けられる。初心者感満載の初々しい姿に、大人たちの心が癒される。

 

「うんうん。クラスで3番目に可愛いんだけど、実はラブレターの数が一番多いタイプだな!」

 

「ふぇぇっ!?」

 

「ごふぁっ!!?」

 

聞き取り方によっては失礼な言葉とも褒め言葉とも取れる直継の発言。アカツキは前者と捉えたようで、直継の顔面に膝蹴りをお見舞した。

 

「主君、この失礼な人に膝蹴りを入れておいた。」

 

「事後報告かよっ!?」

 

コントのようなやり取りに、耐えきれないとばかりにセララは笑う。直継をフォローすべくシロエが声を上げるが、それさえもアカツキが一刀両断する。

 

「あー、彼は直継。守護戦士。腕は立つよ、悪い人じゃないから。」

 

「でも下品でおバカ。気をつけろ、あまり近くに寄ると、おバカがうつってしまう。」

 

「うつるかっ!」

 

微笑んだセララは、直継がちゃんとした人であることは知っているから大丈夫と頷く。そして、先の戦闘に対し賞賛の言葉を漏らす。

 

「前線で敵を一身に引き付けてて、とても凄かったです。直継さんの背中を見てたら、安心できました。でも...私の拙いヒールでは全然回復が間に合わなくて、すみません。ミルセロスさんかいなかったら、きっと。」

 

セララは自分は役に立てなかった、どころか足を引っ張っていたとしきりに卑下している。それを持ち前の明るさと真っ直ぐな言葉で否定する直継。

 

「んなことねぇーって!十分ありがたかった祭り!班長だって、ミルだって、そう思ってるはずだぜ。」

 

その言葉ににゃん太も当然とばかりに頷き、セララににこりと微笑む。ミルはセララと視線を合わせ、ゆっくり言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

 

「あの場で力を尽くさなかった人は居ない。シロエの指示に従って、セララはにゃん太と直継に回復呪文をかけた。その回復があったから、僕が間に合って。結果勝利へと繋がった。仲間を信じて全力を出す。これって案外難しいことなんだよ?セララはそれをやり遂げたんだ。誇って良いさ。」

 

自身の頭を撫でるミルを呆然と見つめるセララ。1泊遅れてその言葉の意味を理解する。そうしたらもう、セララは目から溢れる涙を止めることは出来なかった。

 

嬉しい、良かった。こんな自分でも、役に立てていた。もっとまともな回復呪文を覚えていればと、今の今までずっと悔やんでいたセララにとって、ミルの言葉は救いであり、導きだった。そして、ミルの言葉に大きく頷いて同意してくれている4人が居て。セララの心は感謝と幸福で満ちていた。

 

えぐえぐと涙を零すセララを慰めた後。にゃん太がアカツキへ視線を流す。その視線に気づいたシロエが、こちらの番だとアカツキを紹介する。

 

「もう知ってると思うけど、彼女はアカツキ。暗殺者で追跡者だ。腕はかなり良い。」

 

隣合って座るにゃん太とミルをじっと見つめたアカツキは、丁寧な言葉遣いで名を名乗る。

 

「私はアカツキ、未熟な暗殺者です。今は恩あるシロエ殿を主君と仰ぎ、その身を守る忍びとして傍に控えている身です。お見知り置きを。老師、ミルセロス殿。」

 

「おいっ!俺の時と随分態度が違うだろっ。被告の説明を要求する祭り!」

 

「うるさいバカ継。」

 

先程の挨拶とは打って変わって、小学生のような言葉の応酬を繰り返す2人。これではいつまで経っても終わらないだろうと、ミルは無理やり声を挟んだ。ミルの声が耳に届いた瞬間、これ以上おバカに構っていられるかとばかりにアカツキはミルと視線を合わせる。そして、一瞬たりとも聞き逃してなるものかと、ミルの言葉に集中する。

 

「にゃん太はもう自己紹介したんだっけ?あ、そう。じゃあ僕が最後だね。ミルセロス。職業は召喚術士、レベルは90。宜しくね、アカツキ。」

 

こくりと頷いたアカツキは、ミルに賞賛の言葉を並べる。

 

「先の戦闘、実に見事だった。高レベルの従者を3体同時召喚する実力。加えて炎と風の合体魔法(ユニゾンレイド)。敬服する。」

 

「ありがと。君もすごいと思うよ。直継が敵を引き付けてる間、無音暗殺術(サイレントキリング)で結構な数減らしてたし。サブ職業の特技も並行使用した合理的な戦闘。本場の暗殺者って感じでかっこ良かった。」

 

自分の行動を正確に把握されていた事に、アカツキは驚愕した。今ミルが言った通り、あの時敵の目が直継に向けられている間、隠行術(スニーク)を使って無音のまま数人を葬ったのは事実である。ミルの登場がもう少し遅れていたならば、まだまだ殺せていた自信もあった。だがしかし、だからこそ分かるはずがない。なぜなら自分だって、レベル90の暗殺者兼追跡者なのだから。

 

「君の無音暗殺術は、身体的特徴を利用した三次元的な動きによって成立している。前後左右の動きにプラスして、地面を高く飛んで自分の身体を大きく見せたり、逆に姿勢を低くして本来よりも小さく見せたり。そういった繊細且つ高度な工夫が視線誘導(ミスディレクション)を誘発し、強制的に相手に隙を作らせる。そしてその一瞬の隙があれば、君なら充分対処出来る。」

 

凄い、と思った。自分の戦闘スタイルをこれ程まで詳細に分析されたのは、アカツキにとって初めての経験だった。そして自分が凄いと思った人物に褒められていると分かって、年甲斐もなく照れてしまう。今の自分の顔を見られたくない、特にシロエには。そう思ったアカツキは、強引に話を切り替える。

 

「ミルセロス殿、老師とセララと一緒に行動していなかった理由を聞かせて欲しい。」

 

「あぁ、それは僕も聞こうと思ってた。」

 

「そういや、遅れてきたっけか。まぁエンタテインメントって感じでテンション上がったけど、もう少し早くったって良かったよな〜。何してたんだ?」

 

「それについては吾輩も聞かされてにゃいのにゃ。ぜひ教えて欲しいのにゃ〜。」

 

シロエと直継、そしてにゃん太もアカツキの疑問に相乗りする。心なしかにゃん太の言葉から圧を感じる気がするが、ミルは何でもないとばかりに自分の行動を伝える。

 

「ススキノに屯するゴミ共はブリガンティアだけじゃないからねー。野良でPKとか大地人相手に窃盗する様な奴らもいるんだよ。そいつらに対する牽制と、警告。ススキノから離れるかもしれないって予想を立ててからは、ずっと街を徘徊して要所要所に刻んでた。」

 

「「「刻む?」」」

 

「僕のサブ職業、刻印術士(シジルマンサー)。地面とか、壁とか、路地とか街の門にも、適当に能力を付与した印を刻んでたんだよ。例えば強制転移魔法印を刻んだアイテムに触れれば、その対象は別の場所に転移させられる。そんな感じで、色んな能力の刻印を描いた紙とか宝石を大地人に売って儲かったり。使い方は使用するって念じるだけで良いから、いつでもどこでも誰でも使えて結構便利なんだ。色々制約はあるんだけど。」

 

ベテラン4人は、いったいこの目の前に座る小さな少年はどこまで先を見据えて行動しているのかと、今の話を聞いて戦慄を覚えた。アキバからやってきた3人は特に、サブ職業が重要だということをたった今知った立場にある。だから余計にその衝撃は大きかった。

 

シロエたちだって、決して情報収集を怠っていた訳では無い。むしろ、三日月同盟のギルマスであるマリエールを始めとした冒険者や街に住む大地人に聞き込みを行ったり、自分たちの目で確かめながら必要な情報を入手すべく、積極的に動いていたのだ。

 

だがミルは、この世界の不変的ルールをにゃん太と確認した後、自分には何ができるかを模索した。

 

刻印術士は、既存のアイテムに様々な能力を刻印することが可能である。だが生産職と違って、素材そのものを作り出せる訳では無い。加えて、付与することのできる能力は刻印術士レベルに依存し、刻印する際は自身のMPを使用する。付与術士のサブ職業Ver.と言ったものだ。

 

ミルにはゲーム時代に集めたアイテムが沢山あったため、刻印する物には困らなかった。そして街を実際に歩き周り確認した結果、この世界のフィールドや建物はおおよそ購入することが可能であると知った。購入するには膨大な費用が必要になるが。しかしどれだけ高価であろうとも購入できるということは、つまりそれらは全てアイテムと同じ扱いだろうと予想がつく。

 

そうしてミルは、持ち主のいないありとあらゆる場所に刻印を刻み、道すがら救けた大地人に刻印アイテムを渡したり売ったりしつつ、ススキノの街とその町に住まう人々を1部の冒険者の悪意から護っていた。なおかつ、戦う力のない大地人たちに自衛の手段を与えたのだ。

 

「ミルはすごい子なのにゃあ。でも今度からは、吾輩に一言声をかけて欲しいのにゃ。何かあれば心配しますにゃー。」

 

「りょーかいハンチョウ。」

 

優しく、しかし真剣な表情で語りかけるにゃん太。ミルは悪戯っぽく笑いながら、にゃん太に向けて敬礼する。にゃん太はそれでもじっとミルを見つめたが、やがて諦めたようにため息をつき、視線を逸らす。

 

ミルとしては、今回の行動については、はなからにゃん太にももちろんセララにも言うつもりはなかった。何故なら街中で刻印するという行為が戦闘行為に該当すると判断された場合、最悪は衛兵と戦うことになっていたかもしれないからだ。刻印はMPを消費するという観点から見れば魔法に該当する。街中での魔法行使。召喚魔法による従者召喚は戦闘行為に該当しなかったが、刻印魔法は分からなかった。ミルにとっては、その確認も含めて敢えてそれを行ったという狙いもあった。

 

衛兵と戦えばまず間違いなく負けるだろう。つまり死ぬ可能性があった。故に、そんな危険を孕む行為ににゃん太を巻き込みたくなかったのが本音であった。そして、ミルのその考えは今後も変わらない。先程の敬礼は、心のこもっていない見せかけだけの行為だった。にゃん太はそれに気づいた。そしてミルも、自分の考えが気づかれたことに気づいた。

 

突然、いつの間にかミルの背後にまわっていた直継がガバッと抱きつき、頭をワシャワシャと撫でまくる。傍から見れば、仲の良い兄弟のようでとても微笑ましい。

 

「ミルーっ!お前はほんっとに最高だっ。流石我らが自慢の末っ子祭りっ。よっ、パーフェクトオールラウンダー!召喚術士の頂点にして原点!獣狂いのミルセロスとはこいつのことだ!恐れ慄き祭りだぜ〜っ!!」

 

「ぅひゃあっ!ぐっ、こ、んのっ駄犬がぁっ!!」

 

「ぶべへぇっ!」

 

「っ、旧式一本背負い...!ミルセロス殿、体術までも。流石だな。」

 

「あはは、確かに。流石は茶会の末っ子だね。」

 

ミルの話を聞いて何かを考え込むように無言を貫いていたシロエも、直継とミルのやり取りに懐かしいと笑みを零した。

 

大地人と冒険者。それぞれの思惑が行き交うこの世界でも、当たり前に日は沈み、また昇る。例え冒険者(どうきょう)を殺したとしても。

 




ぶっちゃけ刻印術士がどんな役割りで何が出来るのか全く知らないです。(アニメに出てきてないから。)

だから、自分ならこうするかなーって感じで書きました。まぁ創作小説の主人公の名前って自分みたいなものだし。
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