口悪召喚術士の異世界冒険譚   作:millseross

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カレーたべたい...。


ご飯の時間

円卓会議が設立されたのはついこの間のことだ。そして同時に、〈ハーメルン〉と言う中小ギルドが解散したのも。

 

円卓会議が行われていた同時刻、記録の地平線と三日月同盟の数名が、会議の裏で秘密裏に行動していた。アキバの街に住む初心者を拉致監禁しているギルド、ハーメルンを潰すために。シロエは会議の音頭を取りながら、ハーメルンの解体処理を同時並行でやり遂げたのだ。

 

シロエの考案した殲滅作戦を実際に遂行していたのは、記録の地平線のアカツキ、直継。そして三日月同盟の小竜を始めとした数名の少数精鋭部隊。

 

それぞれが己の役割りを全うし、監禁されていた新人の保護やハーメルンに所属するメンバーとの戦闘を行うことで、あっという間に一つのギルドが滅んでしまった。

 

あれだけの会議の最中、主催者兼司会進行役として会議を進め続けたシロエが、その一方で誰にも悟られないようにハーメルン壊滅作戦の総指揮を執っていたことを知る人物は少ない。

 

ハーメルンのギルドホームもギルド会館にあったため、シロエのブラックリストに登録されたメンバー全員がギルド会館及び自分たちのギルドホールを使用できなくなった。因みにハーメルンのギルドメンバーはアカツキが事前に調査し、顔と名前が割れていた。それによりブラックリストへの登録がスムーズに行われたのは流石としか言いようがない。

 

だが、事前調査から漏れていた人物が数名居た。その人物たちによって、シロエが助けたかった初心者の双子であるミノリとトウヤが危険に陥ってしまった。2人は奮闘したが、レベルの差が大きく数でも劣っていたために抵抗虚しく殺されかけた。

 

その時、颯爽とミノリとトウヤの前に現れ、2人を護ったのはアカツキとミルだった。アカツキは小柄な身体を利用して素早い動きで敵を翻弄し、無理やり作らせた隙をついて暗殺を行う。そしてミルは数匹の雷獣を召喚し、アカツキの動きに合わせながら敵の移動範囲を狭め、雷獣の固有魔法である雷撃を使用し、獲物を狩るように敵を仕留めた。

 

はて、ミルはその頃シロエとにゃん太と一緒に円卓会議へ出席していたはずではないか。

 

ミルは”双子座の精霊(ジェミニ)”と言う従者を召喚させ、そのジェミニにハーメルン殲滅作戦遂行のメンバーとして行動するように指示していた。

 

ジェミニは対象者の姿かたちを真似することが出来る上位精霊である。また真似するのは姿だけではない。真似た相手のスキル、魔法などの能力さえもそのままコピーすることが出来る珍しい精霊である。ジェミニは”黄道十二門の精霊”と呼ばれる存在で、星座の名を冠する12体の内のひとつに数えられる。黄道十二門の精霊はそれぞれエルダー・テイルの世界に1体ずつしか存在しない。つまり、ジェミニと契約を結んでいる召喚術士は世界中でミル1人のみである。

 

ジェミニのような黄道十二門の精霊や冠位の高い召喚獣は自分の意思を持ち、感情や思いを相手に伝えることが出来る。ミルは会議中、ずっとジェミニと自分の視界をリンクさせ、殲滅作戦の進行を見守りつつ、時にはジェミニを通して現場の指揮を執ったりもしていた。その活躍もあって、本来はもっとかかると思われた殲滅作戦は、当初の半分の時間で完了した。

 

シロエやにゃん太は、ミルがジェミニを召喚し作戦メンバーとして従えていることは知っていたが、まさか常に思考と視界をリンクさせていたとは知らなかったのだ。それ故に、ミルがボーっとしたりしばらく話さなくなる度に、慣れないことをさせて疲れたのだろうか、飽きたのだろうかと心配になったものだ。

 

後日、アカツキやミノリ、トウヤがミルを絶賛している姿を見てその事実を知った2人は当然呆れ果てた。そんなことをやっていたのか、だから集中していなかったのかと。最も呆れはしたが、怒りはしなかった。無理をするなという小言を言った後は、弟にするようにわしわしと頭を撫でてやった。因みににゃん太がミルの頭を撫でている間、ミルもにゃん太の頭や頬、顎の下に生えたふさふさとした猫毛を存分に堪能していた。流石は獣狂いの二つ名を持つ少年である。獣に狂っているのか、獣が狂わされるのかは定かではないが。何故ならにゃん太の尻尾の様子が…。

 

そして今日、シロエを始めとした記録の地平線の面々は、大々的にアキバの街の一角に居を構えようとしていた。

 

つい先日設立したギルド、記録の地平線(ログ・ホライズン)。現メンバー数、5名。

 

記録の地平線のギルドマスターであり、元茶会の参謀を務めた”腹黒”の異名を持つ付与術士 シロエ。

 

おぱんつを愛し、おぱんつに愛されない鉄壁の前衛、守護戦士 直継。

 

長く綺麗な黒髪を持つ見た目小学生の美少女兼ツッコミ担当。暗殺者 アカツキ。

 

メンバー皆の料理番にして相談役。美中年猫のいぶし銀。盗剣士 にゃん太。

 

そしてメンバー最年少。アカツキに負けず劣らずの身長を持つ”獣狂い”。完全万能型の召喚術士 ミルセロス。

 

ギルド構成メンバーの全員がレベル90以上であり、アカツキ以外の4人は元放蕩者の茶会のメンバーであった。数だけ見れば全く大したことのない小ギルドであるのだが、個人個人を見てみると決して無視はできない戦力であることは想像に難くない。

 

「ギルドを作ることにした。入ってくれないか。」

 

シロエが直継とアカツキに言った誘い文句だ。言った瞬間にシロエは後悔した。もっとマシな言い回しがあっただろうと。しかし2人は二つ返事で了承したのだった。

 

「なんだ、やっとその気になったのかよ。俺ぁこのままずっとタグ無しギルドとしておぱんつ教を布教していくのかと思ったぜ。」

 

「忍びとは主君の側に控える存在。どこであろうとついて行く。主君は主君らしく下知すればよいのだ。」

 

あぁ、本当に。この2人と一緒で良かった。心からそう思ったシロエは、気恥ずかしそうにお礼を言ったのだった。

 

シロエはまず最初に、にゃん太を誘って了承を得ていた。残るはミルだけだった。ただミルはすぐに返事を返さなかった。

 

「ごめんねシロエ、少し考えさせて。」

 

そう言って距離を取ったミルに悲しくなったシロエだったが、同時に納得もしていた。なぜならミルはシロエと同じだったからだ。一度もギルドへ所属したことが無く、ゲーム時代はほとんどソロで活動していた孤高のプレイヤー。茶会が解散した後もばらばらになって、音沙汰もなかったのだ。シロエはミルと仲が良かったために、もしかしたらミルも入ってくれるのではないかと期待していたのだが、甘かった。

 

だがその際にゃん太が「吾輩に任せてほしいのにゃ。」という言葉と共に、ミルをどこかへ連れて行ってしまった。そしてしばらく時間が経った後、2人は戻って来た。ミルはシロエに向かって、はっきりと「ギルドに入れてほしい。」と言った。シロエは諸手を挙げて喜んだ。その時は、何故にゃん太とミルは2人でどこかへ行ったのか、深くは考えなかった。はっきりとは判らなかったが、”そこ”へ踏み込んではいけないような気がした。

 

記録の地平線はこうして5人の仲間が集まり、アキバの街でささやかな船出を迎えたのだった。

 

「主君、ギルドの懐は大丈夫なのか?寒くなってはいないか。」

 

たった5人が寝泊まりするには広すぎるとしか言いようのないフロアの床を雑巾で拭きながら、アカツキは少し心配げにシロエに尋ねる。

 

通常、メンバーが一桁のギルドは本拠地などを用意することは無い。各々が宿で生活し、必要の際に集まれる場所を借り受けるといった形をとるのが一般的だ。人数が少ない分、ギルドとしての荷物や戦利品を補完するスペースも少なくて良い。

 

中小規模のギルドは、ギルド会館でギルドホールを借り、そこを本拠地とすることが多い。三日月同盟はまさにそれだった。

 

更に大規模のいわゆる大手ギルドになると、そのギルド会館のギルドホールでも手狭になり始める。ギルド会館において貸し出されるギルドホールの最大規模は31部屋。200名を越えるような大規模のギルドにとっては、それでさえも十分とは言えなくなってくる。

 

黒剣騎士団や西風の旅団などは街にある購入可能なビルの一棟を選択し、ゾーン丸ごと買い取ることでギルドの本拠地としている。

 

また5000名のギルドメンバーを誇る海洋機構などの生産系ギルドは、ギルド内部に職人の種別ごとの部門を置き、支部ごとにビルを所有しているほどである。こういった場合、ギルド全体では本拠地を複数所持していることになる。

 

このような本拠地はギルドハウスやギルドタワー、ギルドキャッスルなどと呼称される。

 

構成人員5名程度の記録の地平線はメンバーの平均レベルこそ90と高いが、人数はごくごく少数である。本来ならば、このような建物ひとつを所有するなど非効率も良いところであった。本拠地を構えるにしたところでギルド会館からホールを借りれば済むはずだ。アカツキが心配しているのは、その費用面のことなのだろう。

 

今回このビルゾーンを本拠地とすることになったのは、ミルが原因とも言えた。召喚術士であるミルは、当然多くの従者を従えている。そして本人が言うには、ときどき皆を外に出して気分転換させてあげたいとのことだった。カーバンクルや雷獣のような手ごろなサイズの従者であれば全く問題ないのだが、さすがにユニコーンやヤタガラス、フェニックスと言った大きな従者を召喚するには相応の場所が必要だ。召喚獣に気分転換が必要なのかは判らなかったが、末っ子の頼みでもある。何とか叶えてあげたい、と大人たちが考えた結果、このゾーンを購入するに至ったという訳なのである。

 

「費用面は全然大丈夫かな。ミルが稼いでくれているおかげで、出費よりも収入の方が多いくらいだから。」

 

デッキブラシでゴシゴシと壁を洗いながら、シロエは問題ないと答える。

 

シロエの言葉は事実である。刻印術士でもあるミルは、その能力を利用して様々な魔法道具を作っては売ってを繰り返し、多大な儲けを得ていたのだ。個人で販売する物(例えば映像記録の能力を刻印した疑似カメラなど)もあれば、生産系ギルドとの合作を販売し、その売り上げの何割を受け取るといったこともやっていた。更に、シロエの筆者師の能力と、にゃん太の料理人スキル、そしてミルの作成したカメラを用いて、”にゃん太特製家庭料理レシピ集”を販売したりもした。これは主にサブ職業が料理人の冒険者たちや大地人の主婦なんかを対象に大ヒットした。

 

これらのことから、ギルドの規模からは考えられない程の貯蓄を有しているとも言えた。かと言って無駄遣いは許さないのだが。

 

「流石はミル殿、稼ぎ頭なのだな。」

 

「あはは、本当…。情けないよなぁ。」

 

「うむ。我々も出来ることをやろう。頑張らねば。」

 

歓談しているにしてはすさまじいスピードで掃除を勧める2人。流石はレベル90の冒険者である。

 

もともと倉庫と大型店舗として利用されていたこの廃墟は、1階から6階まで巨木が貫通してしまっていた。フロア中心部の床には大きな穴があけられ、そこを樹齢何百年だか何千年だかわからないような苔むした幹が貫いていた。この巨木は全てのフロアの中心部を地下から天井に渡るまでまっすぐに貫通した上に、屋上で大きく枝を広げて適度に日光を遮っている。屋上は最高の昼寝スポットでもあった。

 

「このビル、こんなありさまだからだいぶ安かったんだ。階段もないし、使いづらいでしょ。こんなことなら、もう少し良い物件見繕えばよかったかも。」

 

「ふむ…。そうなのか。」

 

この規模のゾーンが格安販売中のまま放置され続けていたのは、街の中心部から少し離れていることと、この使い勝手の悪さが原因だと思われた。

 

「でもよー、いくら中心部から離れてるったってアキバなんて狭い街だし、優良物件じゃねぇか?階段なんて作れば良い話だろ。それに、ミルはここ気に入ってるし。」

 

「あぁ。”ここなら街の中も街周辺のゾーンも直ぐに行けて良い、マイナスイオンもたっぷりだし。”と言っていたな。」

 

「そーそー。」

 

「まぁ、それもそうだね。」

 

直継が言ったように、使い勝手が悪ければ改良すれば良い。事実、現段階では1階と2階だけではあるが、階段を設置している。ゾーンの購入よりもずっと安かったが、それでも即決するには大きすぎる金額であったのも事実である。

 

階段の設置と、当面の寝床になる2階フロアの床の張り直し、つまりはフローリング工事。その依頼を例によってミルの知り合いと言うことで、海洋機構の総支配人であるミチタカに相談した。ミルが可愛くお願いしたら引き受けてくれたからありがたかった(別にミルの可愛さに屈した訳ではない、階段を作るというアイディアが面白そうだっただけだと本人は言っていた)。

 

何度も内装工事の現場に自ら足を運んでいたミチタカに対して、直継が「そんなに面白いアイデアだったんなら、値段をまけてくれよ!」と声をかけると、本気で悩んでいるようなのがシロエには面白かった。

 

ミチタカは事あるごとに海洋機構に入れとミルを勧誘していたが、その尽くをメンバー総意で断っていた。ただ、ついにというべきか。あまりにしつこいミチタカに折れたミルが、知恵を貸すくらいなら構わないとうっかり口を滑らせてしまった。その後ギルド工事が終わった瞬間、ミチタカはミルを小脇に抱えてダッシュで帰っていった。瞬きの間に拉致を行われた記録の地平線は、暫しの間呆然としていた。

 

当のミルはと言うと、拉致られた数時間後に「晩御飯の時間ですにゃ~。」と現れたにゃん太によってミチタカの研究部屋から解放されたのだった。

 

それからと言うもの、アキバの街では白くて小さな子供を小脇に抱える海洋機構の総支配人(きんにくおやじ)をしばしば見かけるようになったとか。

 

もちろんその噂を聞き付けた他の生産系ギルドの2人や、ミルに憧れる少年を筆頭とした各戦闘系ギルドの面々もミルを勧誘するようになったらしい。

 

ミルは強かだった。金と時間次第ではどのような内容の誘いでも乗るようにしたのだ。モンスター討伐だろうが、対人戦闘訓練だろうが、着せ替え人形だろうが、モノづくりだろうが何でもござれ。流石は完全万能型である。なぜかアカツキからの尊敬度が上がった。

 

ガタり、と上の階から音がして、瞬時に振り返った3人。ミルの部屋から聞こえてきた。3人は警戒しつつ注視していると、そこから部屋の主が現れた。

 

「あれ、海洋機構に行ってたんじゃなかったの?」

 

「転移魔法で帰ってきたんだよ~、ただいま。今日は手伝いに行ってた訳じゃないからね。アイテム作成を依頼してきたんだ。それに、もうそろそろ夕飯だし。遅れたらにゃん太がうるさいから。」

 

シロエの質問に答えつつ、1階へ降りようとしたミルの背後からにゃん太が声を掛ける。

 

「ご飯はみんなで食べた方が美味しいのにゃ。おかえりですにゃあ、ミル。」

 

「うわ、居たの。にゃん太。え、ちょ、まって。やめてゴメンってば!」

 

失礼な発言を許した覚えはないにゃん太は、ミルが着ている黒いローブの襟首を上から引っ掴み、そのまま食堂へと移動する。

 

まるで子猫を口で咥えて移動する親猫みたいだと3人は思って、おかしくなって笑ってしまった。

 

3人もまた、掃除道具を片付けて食堂へと急ぐ。

 

ギルドホールには、スパイスの効いた良い匂いが立ち込めている。今夜は皆大好き、カレーライスらしい。

 

ミルを抱えるにゃん太の表情も柔らかいものだった。

 

なんだかんだ言いつつ、一度たりとも食事の時間に遅れたことはない。その事実を、にゃん太だけが理解していた。

 




これ双子座以外の黄道十二門出せる未来が見えないんですけどどどど。
出せたらいーなーv

あと、そろそろ本格的なキャラのクロスオーバーした〜い。誰をクロスさせるかはもう決めてるんですけど。
因みに今のところ本格クロスはそのヒトだけです。
変えるかもだけど!
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