狩人様の英国魔法界観察録   作:黒雪空

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あれ、そう言えばレイブンクローってシンボル鷲ですよね…?映画だとカラスっぽくなってませんでしたっけ?
と首を傾げる今日この頃です。



その夜に

薄汚れては居るが、決してそれは血や煤ではないらしい帽子を被る。とん、と頭の上に乗る瞬間にちらりと頭上を仰ぎ見るが脳味噌も瞳も詰まっては居なかった。

もちろん精霊のような者が棲んでいる様子もない。

 

「ああ、先程の子と同族か」

 

聴覚は音を認識していない。直接脳に響く類のものだ。あまり好きではない。まあ、脳を吸いだされるよりは幾分マシ、と好奇心旺盛な部分が思考する。

 

「ウーム…これは困った…君には己の意思が全く見えない。重んじる物が何もない」

 

そんな事ないと思う。

わたし達の思考基準は父の望みを叶える事。細々とした小さな存在をよく観察する為の、虫メガネ。その為にここに居て、その為に与えられた個だ。必要なら、わたしだって狩人の真似事もするし、医療教会の蛮行も繰り返す。不要に成ればこの自我も捨てるのに躊躇いはない。

弟だって、それは同じ。こんなにも指針がはっきりしている。

 

「だがそれは君の考え方ではなく、君達が最初から持つ機能でしかない。生き物が心臓を動かし、呼吸をするのと同義だ。それは考える余地のない生命活動でしかないのだよ」

 

あら、それだって個性に成りえない?今の所、私と弟しかそういう生き物は居ないのだから、『そういう人』とカウントして欲しいのだけど。

それに、アルフレッドはちゃんと決まっているのだし。

 

既に着席し、上級生らしき男子に常のよう穏やかに礼儀正しく挨拶をしている。明確に敵と判断すれば、容赦ないが自分達の害に成らないモノには基本的に丁寧に接して居る。

 

「あの子はその性質の上で、自身の意思がはっきりとしていた。だが君にはそれがないのだ。君ではない別の思考に選択する事もなく従っているようにみえる」

 

凄いのね。『アリアナ』じゃない『わたし』が何を考えているかも分かるのね。知識欲旺盛な誰かが、純粋に興味を示し人の心を読む術に関心を持った。わたしもやりたい。

 

「分かるとも。四人のホグワーツ創設者達が死後、生徒の選別を行う為に彼らの脳と人格をコピーし与えられた私に君たちは、近いのだろう」

 

確かに近いのかもしれない。求められた機能や、外装は大分違うが。

 

それならわたしも全て纏めて『アリアナ・ハント』という個体ではいけない?あなたのように考え方を覗く人なんてそうそう居ないと思うの。境目が見えなければそれは無いのと同じでしょう?

あなたが四人の創設者の思考を模写して、組み分け帽子を名乗ってるのと同じじゃないかしら。

わたしはちょっと両極端だけれど、きっと振り分けられれば、選ばれた誰かの考え方が強くなると思うの。あなただって、与えられた四つの人格を基にしない事を話せと言われたら、困るでしょう?

 

「私はそれで問題ない。何故なら私に求められる事は、新入生を相応しい寮へ振り分ける事だからね。私自身を組み分けする必要は無いのだよ。だが君は入学許可証を受け取った新入生で、どこかの寮へ入らなければいけない。そうだろう?」

 

もう、人にばっかり難しい事を要求するのね。

おおらかで寛容な(または諦観のように大概の事を受け入れる)部分が、古ぼけたお年寄り帽子に『困った子』と言った思考を巡らせる。

 

目の前に居並ぶ在校生も、自分の番を待つ同級生たちも、怪訝そうな顔をしはじめる。既にスリザリンのテーブルに着いた弟の眉間の皺が酷いし、何故かハリーの顔色が悪い。

そんな光景を観察しながら、想う事をしない『アリアナ』は微笑みを浮かべたままじっと腰かけている。

 

「君はどこに行きたい…いや、どんな人間に成りたいかね?」

 

今の状態で言ってしまうなら、全てに資質なし。

複数の素質が有るのなら、一番に向いて居なくても適正さえあれば当人の希望を聞く事もできる。だが彼女には何もない。

当人の希望も無ければ、どこにも適正を持たない為、薦めるべき寮も無い。

これには千年誤りなく組み分けを行ってきた帽子も、頭を抱えて(自身が頭を覆う衣装の類で、腕など無いが)しまう。

それでも役割を与えられた、被創造物の意地でこの難題をこなすべく、空虚な人型に問いかける。

 

にこにこと人形のように美しい少女の笑みを浮かべたままに、全てが停止する。

行きたい所と言えば、好奇心旺盛で知りたがりな、知識欲いっぱいの誰かはレイブンクローが似合うだろうか。いつも穏やかに微笑み、人と着かず離れず諍いを起さず諦観の上に成り立つ、人に好かれる寛容さを示す部分は、ハッフルパフが良いと思う。そういう事は判断出来る。予測して、それらしく振舞える。

けれどアリアナ・ハントという、11年人間として生きた女の子単体の意見は?と問われれば帽子の言う通り、どんな要素も持ち合わせていない。

 

ああ、でも、そうだ。

人間を忘れてしまった父が、記憶の断片をかき集めて作った赤子にも成れない人モドキの自分が一つの意識を参照する。これも誰だか分からないし、こんな思考は初めて見つけた。

 

因果も業も悪夢も終わらせて、本物の夜明けが欲しかった。『あたし』は人に託して、背負わせてしまったけれど、もしどんな人間にでも成れるなら、全てを断ち切り夜明けをもたらしたい。

 

諦観を湛えた蠱惑的な甘い血の誰かは、何て青臭い事をと苦笑を示す。古い学び舎の師を仰ぎ星の兆しを探す誰かは、何て無意味な事をと渋い顔をする。

あんまりにも真っ当な『人間として正し過ぎる』誰かに首を傾げる。

 

「それが君の答えかね?」

 

一瞬だけ見つけた思考は、すぐに消えてなくなった。きっと本当は自分達には要らない要素だったのだろう。だからきっと、帽子にだってそれが『誰』の思考か読めなかったのだ。そうでなきゃ、こんな、人から上位者へ至った父の存在(や、新たな段階へ進む事を夢見てヤーナムの歴史を積み上げた者たち)の意思を全て無視した思考が出てくる理由が分からない。

 

「それが、人としての君の意思かね?」

 

相変わらず明確な意思を持たないアリアナの静寂を、帽子はどう判断したのかは分からない。ただ、人のふりをするにあたって何時も出張って来る誰かが、何かを考える前に組み分け帽子が宣言してしまう。

 

「グリフィンドール!」

 

それは最も『わたし』には向かないであろう行き先。あまりにも『アリアナ』から逸脱した感情。そんな事はあり得ない。アルフレッドの抱く不安は、このようなものなのだろうかと、初めて『不安』を実感する。

 

と、揺らいだ思考が一瞬で静かになった。

 

何も取り乱す事なんてない。アリアナ・ハントを作ったのは、父だ。不要な要素などなく、それについて不安を抱く必要もない。

父がこういう風に作ったのだから、これで何の問題もないのだ。

 

そう思った瞬間に、いつも通りに脳の中身が静寂に満たされた。

 

後は勝手に浮かぶ思考に任せて、人に上手く混じっていく。

遠目に弟が完全に頭を抱えて突っ伏して、隣の子が引きながらも慰められているのを見るに今の所は離れて居ても大丈夫そうだろうと安堵し、人当たりのいい笑みでグリフィンドールの上級生や、同級生と滞りなく会話をする。

 

酷く安堵したような、或いは精魂尽き果てたとでもいうような顔でふわふわと歩んで来たハリーもグリフィンドールに決まったようだ。

そしてアリアナを見て、ちらりと遠くのテーブルに着いたアルフレッドを見て、少し後ろめたそうに表情を曇らせる。

直接言った事はないけれど、彼はちょっと気を使い過ぎなのだと思う。

 

新入生が振り分けられる度に、各寮から歓声が上がり皆ちゃんと歓迎されながら恙無く組み分けが終了する。

どうやらハリーと仲良しらしい、赤毛の男の子に「君がアルフレッドの妹?」と頬を赤くしながら、眼球が飛び出しそうな程に、驚きに目を見開いて尋ねられたのに「姉よ」と答えた所で校長先生のありがたいお話。

でもありがちな長い物ではなく、本当にたった三語で終わり。新しい学友と交流を楽しみなさいという配慮なのかも知れないが、そんな真意はどちらでもいい。

知らない事は真摯に学ぶが、『わたし』が尊敬して居る先生は唯一人だけなのだし…誰だかは分からないけれど。

 

それから、お愛想の上手な誰かの当り障りのない返答を任せながら、久しぶりに人らしい食事をした。基本的に、動物の死体を焼いた物やそれを加工し燻した物。植物の栄養を溜め肥大した茎を蒸したもの、潰した物、揚げた物。別に嫌いでは無いが、好きでもない。焼いた生き物の味がする。

 

「イタッ」

 

弟の事は知っていたらしいロンくんや、彼のお兄さん(弟に似た頑固で融通聞かなそうな子)と、外側の年齢は同じ女の子達。

新入生の緊張も引っ込んで、楽しくお喋りして居る様子の中で急にハリーが額を押さえる。

 

「あら頭痛?中の子もお腹が空いたのかしら?」

 

苗床の中身やきらきらの子達みたいにはっきりくっきりはして居ないが、彼も何か飼っている。いつも静かで高次元へのアクセスを図る事もない、何も役に立たなそうなのに、今少しだけ動いた。

テーブルの向こうのハリーの黒髪を、今朝弟にしたようによしよしと撫でると、やっぱりアルフレッドのように恥ずかしがって顔を背ける。

 

「何も居ないよ…あのあそこでクィレル先生と話しているのはどなたですか?」

 

照れくさい気分を払うように、堅物そうなお兄さんに問いかける。示した先を一緒になって目で追えば、狩人さん達にも負けない位真っ黒な男の先生がいる。彼が言うには魔法薬学の先生なのだそうだ。

それはとても楽しそう、と学びたがりの部分がその顔をと名前を確り記憶する。

 

食後のデザートも終わり、テーブルの上に変化が無くなった頃に、生徒へ向けての連絡が入る。

お腹いっぱいで緊張も解けてしまった子供に、このタイミングで話して頭に入るだろうかとちょっと首を捻った。

アリアナはちゃんと、森に入ってはいけない事と廊下で魔法を使ってはいけない事を理解した。

それと、とても痛い死に方をしてもいい人しか四階右側の廊下に入れないという事も。

とても痛い死に方と言うのは抽象的で、少し判断基準に向かない。

 

そして為になる校歌(何も考えず、頭は空っぽのままに、形だけを真似ようとした愚かな学徒共に唱えさえればどれ程良かっただろう)を歌った…と言って良いのか微妙だが、少なくともアリアナは感銘を受けて居た。

 

もう既に、寮ごとでの行動なのだろう。監督生たちが一年生を引率し、動きだしている。もう今日はアルフレッドと話す機会は無さそうだ。

弟の心配はしながらも、そちらは見ずに促されるままにお城の中を進んでいく。

途中とっても騒々しい悪霊(ポルターガイストと言うそうだ)にも出会った。悪さをするのが分り切って居るなら、早々に駆除してしまえばいいのに。なんでだろう、といろいろな考えを巡らせながら甲高い笑い声を聞いて居た。

 

寮はそのままグリフィンドール塔に有るらしく、四階で此方に行けば天文塔、でも詳しい経路はまた後日と言われてそのまま八階まで登っていく。少し面倒だな、と思ってもナニカが徘徊して居る訳でもないから足場はずっといい。罠もないし。

生きてるような肖像画や、談話室、男子は女子寮に入れない事などの説明を受ける。

 

そう言えば、人間って細々とやらなければいけない事が沢山あったな、と深紅の天蓋付きベッドに腰掛けながら思い出す。暫く悪夢に入り浸って居て忘れていた。

 

ふわりと気配を感じそちらを見ると、ずるりと枕元から使者が這いだす。

灯りを点す場所にはこだわりがあるようだけど、手記はどこでだって預かってくれるらしい。

 

『よいゆめを』

 

「アルフレッドから?」

 

うんうんと、使者達は頷く。あの組み分け前に話したきり顔を合わせられなかった心配性の弟からのメッセージを持ってきてくれたようだ。

 

「ありがとう。でもこれ、余計な事をせずベッドに入れってことね」

 

「ねぇ、何か言った?」

 

四人部屋で同室になったラベンダー・ブラウンが、寝支度をしながら枕に話しかけているように見えるアリアナに尋ねる。何でもないわ、と返事をしながら愛らしい使者達を労う。今日のファッションは赤いリボンで、可愛い成分が多めだ。

 

『また明日』

 

とだけ書いた手記を使者に託した。

 

 

 

 

 

 

 

 

しん、とした中で寝息が三つ聞こえる。

ベッドに潜ってからもしばらく女の子のおしゃべりは続いて居たが、やはり半日の汽車に組み分けの緊張に、盛大な宴にで疲れてしまったのだろう。案外眠ってしまうのは早かった。

 

アリアナは音を立てないようにベッドから抜け出し、裸足のまま女子寮を出る。そのまま無人になった談話室抜け、意思を持った肖像画を起さないように寮から抜け出す。

 

眠れない事は無いのだろうけど、あまり必要性を感じず、ただ横になって居るのを勿体なく思ったのだ。ただここは実験棟とは違うので、ここ暫く勤しんでいたことの続きもできない。

では何をしようかと思った時に、星を見たくなった。

 

大広間の星は偽物だったし、その後の組み分けの儀式で過った不可解な思考が(父の意向には全幅の信頼を持っているけど)少しだけ引っ掛かっていた。だから、ずっと『アリアナ』を形成していた誰かが望む通りに、星を見ればすっきりする気がした。

天文塔なんて、素敵な場所があるなら尚更だ。

 

口に入れて気分の良い味ではないが、青い秘薬を瓶の半分程含む。人を模した11歳の体で全部入れると、多分不可逆的に脳が駄目になる。

ぐるぐると階段を上り下りするのは慣れている。四階まで駆け下りて、また駆け上がる。幸い誰の影も見かけなかった。秘薬の飲み損だ。

 

それにしても、『わたし』は何故こんなに星を見たがるんだろうと考えてみるが、叡智を求めるからでしょう?と間髪入れずに浮かんでくるから成る程そうだ、と頷くしかない。

でも高次元の存在になり小さな人間が見えなくなった父さんの為に居るのに、わたしまで父さんと同じ視点を持ってしまったら意味が無い気がする。

 

わたしの欲しい叡智ってなにかしら?と足音のしない裸足で冷たい八階の廊下を進むと、目前に扉がふって沸いた。まるで夢のように、急に出現した。

当然のように面白い、興味深いと判断し迷いなく入室する。一応、自衛くらいしてくださいと煩い弟の意見を取り入れ、片手にメスを握って。

結局メスは要らなかったけれど。

 

物置?とその雑然とした部屋を見渡す。適当に、触れる物を手に取り眺めては戻す。書籍などもぱらぱらと目を通し興味ある部分だけ記憶して元に戻す。

 

気の向くままに拾い上げた物をじっと観察する。髪飾りだろうか?人形がもっと小さな物だけど大事そうに持っているのを見た事がある。あれは小さく古かったけれど、手入れがされていた。今手に取ったものは酷く汚れて黒ずんでいる。辛うじて青色の宝石だけがきらりと光った。

鳥類を象って居るが、なんだろう、鷲?薄黒く濁っているせいで鴉に見える。

 

『計り知れぬ叡智こそ、われらが最大の宝なり』

 

何の種類の鳥だろうかと観察して居ると、そんな文言が刻まれているのに気付いた。

 

「ええ、本当にその通り」

 

本当は装飾品にも、人が人に与えられる程度の叡智にも興味は無かったけれど、何となくにその髪飾りを着けてみる。

ひょっとしたら飾れた大きな青い石が、きらきらと可愛らしい精霊に似て居たからかもしれない。

 

長い年月手入れのされなかった装飾品は、美しい少女の金色の髪の中で一層薄汚れて見えた。

 

姿が映る物は、見つからなかったが何となく似合っていない気がして、苦笑しながら外す。

きっと青よりもわたしは赤が似合う。グリフィンドールの深紅よりも、もっと深い臙脂の赤。

本当は星が見たかったのだが、少し気分が変わってしまった。アルフレッドの言う通り、今日はもうベッドに戻ろう。

 

外した髪飾りを元の場所に置こうとして…なんとなく夢と現の間に仕舞い込む。周りを見ると、ここは要らない物を適当に押し込めてある部屋みたいだし、きっとコレも忘れられてしまった物だ。

それでも髪飾りの分、空間が寂しくなったような気がして、持ち物の中を漁る。

 

あら。

 

とアリアナは首を傾げた。

こんな物、持っていたかな?

 

不思議なものや、気に成ったものを見つけると取り敢えず拾うけれど、これは本当に見たことがない。

まるで鴉が翼を広げた様な意匠の首飾り…?しまった記憶が、全くない。

 

そう言えば、先ほどの髪飾りも鴉に見えた。なんだか丁度いい。

何が丁度いいのかは分からないが、その飾り物を髪飾りの有った場所に置く。

 

そして今度こそ、その不思議な部屋を後にした。

星は見れなかったけれど、とてもすっきりと身体が軽くなった気がした。

 

 




流石に(ほぼ確定)血族でへその緒入手出来ちゃう女性と、ウィレームの傍に居た聖歌隊混ぜて『人間』はちょっと無理がある気がしたからちゃんとブレーキ着けといたよ!
by上位者ベイビーパパ

ありあなちゃん「パパー見た事ないのあってびっくりして置いてきちゃった」
ベイビーパパ「エッ!?それパパにとっても結構大事なブレーキ(人間性)なんだけど!?」

あるふれっどくん「品性の欠片もない頭悪い脳筋仕掛け武器が入ってる!!!!!何故!!!」
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