IS インフィニット・ストラトス ~よくある転生のお話~ 作:ホワイト・フェザー
~福音事件終結日の夜~
旅館から少し離れた森に大勢の男達がいた。彼らは第1海兵歩兵落下傘連隊の
隊員であり、全員真っ黒の戦闘服で身を固めていた。彼らの任務はトーラス社
社長ウィリアム・ロンバートの妹のシャルロット・ロンバートの捕獲である。
あんな女子生徒を何で誘拐せなあかんのや、と皆思っていたが命令なので仕方
なく遠路はるばる日本まで来たのであった。
夜になったのでさあ作戦を開始しようかと思った時、木に登ってスナイパー
ライフルを構えていた隊員が人影を見つけた。
『2時方向に女性1名。スーツ姿だ…崖の方に向かっているぞ』
『こんな時間にか? 何者だ?』
『顔がよく見えない…くそ、死角に入った』
『スーツの女だろ? 無視しておけ。そろそろ作戦が始まるんだから』
『わかった』
その『スーツの女』こと織斑千冬は崖の近くにいた親友、篠ノ之束と話を
していた。5分も話した頃に束は千冬の目を真っ直ぐ見た。
「ねえちーちゃん。いっくんじゃない男と女2人だけど、あのISは何なの?」
「は?」
ISの開発者がそんなことを聞いてくるとは思っていなかったので千冬は
変な声を出してしまった。
「だっておかしいでしょ、あんなに武器詰め放題でプライマルアーマーも
展開可能、おまけに理解不能な単一仕様能力。この束さんにもあれと同じ
ものを作るのは不可能だよ」
「なん…だと?」
「企業連の技術力は正直言って異常だよ。コジマ発電にしてもネクストや可変
戦闘機にしても、何世代も先のアイデアや技術を先取りしているんだもん」
世界が追いかけている天才科学者である束でさえ、あのISと同じものは作れない
という。それは千冬を心底驚かせた。
だが束の発言よりも驚かされることになった。
「そりゃお前には不可能だ。企業連を甘く見ないほうがいいぞ」
いきなり後ろから声をかけられた2人は慌てて振り返る。そこにいたのは他でも
ないウィリアムであった。いつものIS学園の制服ではなく、黒い戦闘服を着て
トーラス製TW3 ケースレスアサルトライフルを持っている。
「篠ノ之束、今日はあんたに忠告をしに来た」
「忠告?」
「よく企業連にハッキングをしては仕返しをされているそうだが、金輪際二度と
やらないでもらいたい。もしやったら…そうだな、君の大切な誰かさんが
大変な目に合うかもしれない」
つまり篠ノ之箒が危険な目に合う、ということである。妹のことを大切に思って
いる束は、ウィリアムを殺しそうなくらい睨んでから小さく頷いた。
「結構。素直な返事のお礼と言っちゃあなんだが、ちょっとしたことを教えて
やろう。お前ら2人とも、俺と初めて会ったのはいつどこでだったかな?」
ウィリアムの質問に2人はちょっと考えてから答えた。
「初めて会ったのは…入学前の試験だったな」
「…直接会ったのはこの臨海学校初日だよ。それが何?」
「ぶー、2人とも不正解でした!」
”大ハズレ”と書かれたプラカードを持ちながらウィリアムは笑みを浮かべる。
「正解は、今から…何年前だったっけ? とにかく日本海上空でした!」
「「日本海上空?」」
千冬と束は一瞬何のことかわからなかったが、すぐに思い出した。あの時千冬は
日本海上空でミサイルを撃ち落としていて、束は周辺国にハッキングをかけて
ミサイルを意図的に発射させたのだ。だがウィリアムと会った覚えは2人には
なかった。
「まだわからないのか? じゃあこれでどうだ?」
するとウィリアムはISを展開した。その姿はいつものトーラスマンではなく、
黒い機体に試作型VOBをつけている姿であった。
「Losers♪」
しかもウィリアムは右手で「L」の字を作っておでこに当てながら変な踊りを
してみせた。それを見た2人は全てを理解した。
「お、お前が…あの時の!?」
千冬はあの日ウィリアムに撃墜された時のことを思い出して体が震えていた。
そして右脇腹の傷を無意識のうちに触れていた。
「そうだ、俺があの黒い試作型ネクストに乗って、お前の右脇腹に傷を付けた
張本人ってわけだ。篠ノ之束、あんたの白騎士っていうおもちゃを壊した時
本当に楽しかったぜ?」
「お前がちーちゃんを傷つけたんだな!! 許さない!!」
束はISを起動してウィリアムに突撃したが空中で動きを止められてしまった。
「えっ!? 動けない!!」
「これは…AICか!」
「そゆこと。しかもドイツのよりも性能が良くなっているぜ」
ウィリアムはISを解除して2人にとびっきりの笑顔を見せた。
「今日はこれくらいにしておこうか。また戦いたくなったら遠慮無く言ってくれ。
我々企業連はいつでも全力でお相手してやるからよ。こんな風にな!」
次の瞬間ウィリアムは左に向かってTW3を連射した。銃声は全くしなかったが、
森の奥の方から男達の断末魔が聞こえた。木の上から何かが落ちる音もした。
「い、今誰を撃ったんだ!?」
「そんなことより宿にいる生徒を気にしたほうがいいんじゃないか? てことで
俺は先に行かせてもらう」
そう言い残して森の奥に消えたウィリアム。千冬と束は何が起きているのかわから
なかったが、頭の上を3機のISが宿に向かって行くのを見て大急ぎで走りはじめた。
それはいきなりだった。生徒達が部屋でのんびりしている時に突然黒い服を来て
武装した男達が宿になだれ込んできたのだ。教師達や専用機持ちはISで反撃しようと
したが、他の生徒達を人質に取られていたためやむなく降伏した―
〈あいつらフランス軍だよ。一体何をしに来たんだろう?〉
〈わかりませんが誰かを探しているみたいですね〉
―シャルとリリウムを除いては。2人は襲撃直後に天井裏に隠れて様子をうかがって
いたのであった。男達は2人のいる部屋を探しまわったが、いないと判断してすぐに
出ていった。その時男の1人が持っていた写真を見てシャルは驚いた。
〈あ! あれ僕の小さい頃の写真だ!〉
〈では連中の目的はシャルですか?〉
〈でも何でフランス軍が僕を追いかけてるの? わけがわから…な……〉
シャルの思考はそこで止まった。廊下から聞こえてきた無線を聞いたからだ。
『こちらペルル。目標は発見したか?』
『いえ、まだ見つかっておりません』
『早く見つけるんだ。あとデュノア社が増援として3機のISをそちらに派遣した
とのことだ。奴さん、絶対に見つけたいようだ』
『了解です、早急に発見致します』
〈…リリウム、どうやらデュノア社とフランスは手を組んだらしいね〉
〈らしいですね。でもデュノアってシャルの…〉
〈全く面倒な事になったなあ。お兄ちゃんは何処にいるんだろう?〉
その頃ウィリアムは有澤重工歩兵部隊と合流していた。重武装の兵士達は
既にフランス軍部隊がいる宿を完全に包囲していた。また有澤重工特殊部隊
『忍部隊』も配置に付いていた。
「よし、始めようか。全軍突撃!!」
『うぉぉぉぉぉぉ!!!!』
男達は雄叫びをあげながら宿に向かって走っていった。
『ペ、ペルル、聞こえるか!? 敵襲だ! 大勢の兵士がぎゃあああああ!!!』
『ポイント4より各隊へ! 完全に包囲されているぞ! このままだとガハッ!!』
『くそっ!! 周辺防御を固めろ! 急げ!』
『奴らの戦闘服が硬すぎる! 5.56mm弾がはじかれたぞ!?』
『狙撃班! アンチマテリアルライフルを撃て! 俺が許可する、構わん!』
『了解!…えっ?』
『どうした! 早く援護射撃を!』
『いや、撃ったんだが…忍者に弾を斬られた』
『は?』
『1発のグレネードで第3小隊が全滅した! 強すぎて歯がたたない!』
『おい、敵は有澤重工のマークをつけているぞ!!』
『なんてこった、企業連がやってきたのか!!』
『海軍コマンドの連中を早く呼べ! このままじゃ全滅だ!』
フランス軍のそんな無線を傍受しながらシャルとリリウムはほくそ笑んでいた。
〈お兄ちゃん、これを待っていたんだね?〉
〈そういうことだ。さて2人とも、そろそろ隠れ場所から出てお仕事の時間だぞ〉
〈わかりました〉
天井裏から飛び出た2人は、近くで驚いていた3人の兵士を一瞬であの世に送り、
そのまま宿内部の敵を排除していった。無論、後々のことを考えてなるべく生徒の
前では殺さないようにしてはいた。
「大丈夫かみんな!」
「ウィル!」
ウィリアムの場合は遠慮なく敵を撃ち殺しつつ生徒達を救出していった。ある
部屋に入ると鈴と掃除、ラウラ、そして一夏がいた。一夏は俺を見ると体を
震わせた。
「ウィル…その血は?」
「え? ああ、フランスのクソ野郎の血だな。全く汚いったらありゃしない」
「血が…血が…」
「一夏、しっかりして! 大丈夫よ!」
鈴が一夏を抱きしめながら落ち着かせていた。それを見てウィリアムは一夏の
トラウマのことを思い出した。が、そんなことは気にせずに、ウィリアムは
3人に待機状態のISを投げた。さっき殺したフランス兵が持っていたのだ。
「さあ戦いの時だ。フランスに死を、ってやつだ!」
「分かりました、兄上! でもフランスに死を、って聞くと何故かウキウキする
んですけど、なんででしょうね?」
「さあ?(ドイツだからじゃないか?)」
こうして専用機持ちも参戦した結果、フランス兵は浜辺に撤退を開始した。
そして宿の沖に静かに潜んでいたリュビ級原子力潜水艦『ペルル』もまた、
行動を開始した。乗り込んでいる海軍コマンドのコマンドー・ド・モンフォール
2個小隊が出撃準備を開始したのであった。『ペルル』はごくゆっくりと海面まで
浮上し、ゴムボートに乗った部隊が宿へと進撃を開始した。
しかしその時『ペルル』の発令所にいたソナー員が甲高い声で警告を発した。
「艦長!! 方位160から複数の高速スクリュー音!! 3基の魚雷です!!」
「なんだと!? 副長、
全速前進!
「ノイズメーカーとジャマー、アイ!」
「全速前進、アイ!」
「急速潜航、アイ!」
艦首が急に下がったので発令所にいた人は何かにしがみついた。深度250mまで
一気に潜った後、さらに蛇行機動を行い、魚雷を混乱させようとした。かなり
旧式の原子炉が限界まで稼働し、速力は28ktまで上がった。だが迫り来る魚雷の
速度は80ktなので到底逃げることはできない。
「敵魚雷、ノイズメーカーとジャマーの影響で混乱しています!」
「よしっ!!」
運が良かった、と『ペルル』の乗組員全員が思った。接近中の3基の魚雷は
ノイズメーカーとジャマーのせいで混乱し、あらぬ方向へと走り去った。
「ソナー、アクティヴで探索しろ。高周波でやれ!」
「アイアイ!」
艦首ソナーから耳をつんざくような高音が響いた。すぐに結果が出た。
「アクティヴのソナー・コンタクトあり! マスター・ワンと指定!」
「よし! 射撃指揮、発射解析値の計算を急げ!」
「アイアイ!」
「艦長、マスター・ワンの詳細な音紋データを入手しました! 分析の結果、
オーメル社製アカディール級潜水艦の近代改修型と断定!」
「オーメルだと!? 何で太平洋にいるんだ! あいつらの活動場所は地中海と
大西洋じゃないのか!?」
「副長、そんなことはどうでもいい! 今は敵を倒すことだけを考えろ!」
艦長はコンソールの情報を見ながら次々と命令を出す。
「射撃指揮、1番、2番、3番発射管をマスター・ワンに対して発射! それと
4番発射管のデコイをスタンバイしておけ」
「1番、2番、3番発射管発射! 魚雷は正常に航走しています!」
「す、水中に魚雷あり! 方位270! 数は1! 高速で接近中!」
「デコイを発射! 北に向かって全速力で走らせろ! それからノイズメーカーと
ジャマーをもっと撃て!
同時刻、『モガドール』もまた敵魚雷の対処に追われていた。
「魚雷接近中! 数は3! かなり近いです!」
「迎撃する。2番、4番、6番発射管を接近中の魚雷に向けて発射!」
6門ある発射管のうち、偶数番号の発射管から有澤重工製高性能爆薬魚雷が
海中に飛び出た。この魚雷の弾頭には1トンの高性能爆薬が搭載されている。
ちなみにアメリカ製Mk.48 ADCAPの弾頭は約300kgである。
「射撃指揮、うまくいきそうか?」
「神のみぞ知る、ってやつです」
『モガドール』は改修を受けたばかりなので、最新式ソナー・システム、
そして高性能スーパーコンピューターを搭載している。従って『モガドール』に
向けて発射された魚雷の通過点に、自艦の発射した魚雷を誘導して持っていく
ことは理論的には可能だ。また魚雷のコンピューターが、敵魚雷を認識して
弾頭を起爆することで敵魚雷を破壊することもまた、理論的には可能なこと
である。問題はそんなことを今まで誰もやったことがないし、仮に成功したと
しても、やってることはC4をしこたま積んだ自爆テロ用の車両2台を正面衝突
させることと同じようなものである。
「3、2、1、起爆!」
『モガドール』が発射した魚雷は敵魚雷とのインターセプトコースを進み、
見事敵魚雷を破壊した。その爆発の衝撃によって『モガドール』は大きく揺れ、
物が飛んだり皿が割れるなどの被害が発生した。艦長はそれらの報告を聞き
つつ、先ほど発射した有線誘導魚雷を『ペルル』に向けて誘導するように命じた。
爆発によりソナー環境が良くない中、射撃指揮員はジョイスティックを軽く
操作しながら敵に魚雷を走らせた。
「艦長、ノイズメーカーとジャマー、効果ありません! 有線誘導魚雷のようです!!」
再びノイズメーカーとジャマーを発射して静かに逃げ始めた『ペルル』。しかし
今度の魚雷は有線誘導魚雷だった。
「畜生…」
宿のフランス軍部隊は浜辺に押し戻されていた。彼らは全力で反撃しつつ、
早く増援の海軍コマンドの連中が来てくれ、と思っていた。ふと海を見た
隊員がその増援2個小隊を確認して歓声をあげようとした瞬間、いきなり
海が持ち上がった。『モガドール』が放ったコジマ弾頭魚雷が『ペルル』に
命中したのであった。コジマ弾頭の全エネルギーが海面を割り、白い水柱が
上がって猛烈な勢いで高さと横幅を増していった。コジマ色の閃光が辺り
一帯を照らした。閃光が収まった頃にはきのこ雲が誇らしげに空に浮かび、
海軍コマンドのボートの姿は何処にもなかった。
そんな酷い有様の戦場にやってきたのは、デュノア社が増援として送った
3機のラファール・リヴァイヴだった。彼女達は浜辺で傷だらけで呆然として
いるフランス軍兵士を見て、次に沖に浮かんでいるコジマ色のきのこ雲を見た。
それらを総合的に判断して彼女達が下した決断は、
「「「うん、これ無理。帰るわ」」」
と言いつつ回れ右をして撤退する、というものであった。だが世の中そううまく
いくものではない。ウィリアム、シャル、リリウム、ラウラ、セシリア、鈴、
そして一夏が3人を包囲した。
「「「えっ」」」
「安心しろ、殺しはしない。体に聞くこともある」
「お兄ちゃん、言い方がエロいよ」
「そう言うなって。それに俺がやるわけじゃないし」
「では誰が?」
リリウムの問いにウィリアムは意味深な表情を浮かべた。
「噂では女性の体の全てを知り尽くしているとか。そして最高記録が31股とか。
女好きで有名な有澤重工43代目社長有澤隆文…の息子の有澤則孝だ」
「「あー…」」
有澤則孝。31歳の日本男児である彼は仕事の次に女が好きな人物である。ロリは
だめ、ペドは死ねと日々部下に教えている。そんな彼であればどんな女性でも
メロメロにしてしまうであろう、とウィリアムは考えたのであった。
翌日、企業連はフランス軍とデュノア社の行った卑劣な行為の全てを世界に
知らせた。もちろんフランス政府とデュノア社は否定したが、証拠が有り余る
ほどある上、フランス政府の保有する3機のISを確保&操縦者の証言、永世中立
国であるスイス国内での軍事行動、原子力潜水艦で日本国の領海侵犯などなど、
様々なことを指摘されると即座に認めた。
これらの結果、フランスは国際連合安全保障理事会の常任理事国から退いた。
その代わりに日本が常任理事国入りすることとなった。そして国際IS委員会は
フランスがISを持つこと、そしてIS関連の開発をすることを今後一切禁ずる、
という処分内容を全会一致で決定した。これによりフランスは全てのISを取り
上げられた。
あとデュノア社だが、例によって倒産した。当たり前である。社長は逮捕され、
その後獄中で自殺した。社長夫人は隠し口座の資産を持ち逃げしようとしたが、
やはり逮捕された。
フランス国民は政府に対して怒りをあらわにした。何やってんだよ、と。
こんな政府に自分達の祖国を任せられるか、ということで政権交代が発生。
新政権は発足後会見にて、
『やっぱ時代はACでしょ!』
と親企業連路線を打ち出していった。もちろんこの新政権の面々は皆企業連の
息のかかった人々であることは言う前でもない。
こうしてフランスとデュノア社の企みは見事に失敗し、IS学園の生徒を守った
有澤重工、そして企業連を世界中の人々が賞賛したのであった。
続く…
~ウィリアムの部屋~
ISウィ「フランスとデュノア社オワタwww」
なのウィ「これでしまいか…話にもならんな」
作者「そう言うなって。次回もお楽しみに!」