IS インフィニット・ストラトス ~よくある転生のお話~   作:ホワイト・フェザー

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先週は更新できず、申し訳有りませんでした。


第39話:IS学園の終焉 その3

 鈴が父、聞生と共にヘリコプターで母親のいる場所に行った頃、降伏したロシア連邦の

ウラジオストクを、とあるアームズフォートが、文字通り”轢いて”いた。そのとある

アームズフォートとは、インテリオル・ユニオンの最新かつ最強のアームズフォート、

『メガスティグロ』である。名前を付けた奴は相当ネーミングセンスが無い、と言って

はいけない。このアームズフォートは、単純に通常の量産型スティグロを魔改造…では

なく強化しただけなのだから。

 

 スティグロの兵装は、前方に搭載した大型レーザーブレード、水平方向用レーザー

ブレード、そしてミサイルのみだが、このメガスティグロにはそれらの他に幾つかの

新兵装が搭載されている。まずは船体に埋め込まれた4基のソルディオス砲。真下と真上

以外であればどの方向にも撃てる。そしてメガスティグロの周囲を飛び回るソルディオス

オービット×8基。アクアビット社とトーラス社の技術提供があったのは言うまでもない。

ミサイルも高性能化・高威力化が図られている。エンジンとコジマジェネレーターも強化

されており、プライマルアーマーも展開が可能。そして格納型の3連装ロングレンジハイ

レーザー、『MFA73HL-GOMEISA』も2基搭載している。

 

 普通のスティグロと最も異なる点は、メガスティグロがエアクッション艇だということ

である。従って地面の上を走ることができる―最高速度2,000kmで。なので当然の事ながら、

メガスティグロに”轢かれた”ウラジオストクの街は更地になった。

 

 

 

 そんな脅威の(変態)兵器がIS学園めがけてすっ飛んできていることに、IS学園の人間は

もちろん、篠ノ之束も気付いていなかった。そしてウィリアム、シャル、リリウムの3人も

知らないことであった。キャロラインからその事を聞くとウィリアムは驚いた。

 

「何でメガスティグロがこっちに来るんだ? 増援を呼んだ覚えはないぞ?」

 

『僕も知らないよ。大体増援なんていらないしね』

 

『同感です。一体何をしに来るのでしょうか?』

 

その時、メガスティグロから通信が入る。モニターに映しだされたのは、アクアビット社

社長、エリック・ダールマンであった。

 

『やっほーウィリアム君!』

 

「エリック!? そんなとこで何してんだ?」

 

『いやぁ、ウィリアム君達がIS学園をけちょんけちょんにするって聞いてさ! ロシア

 辺りにいたこいつに飛び乗って援護に行こうと思ったんだ! あと1時間以内に着くから

 楽しみにしていてくれよ!』

 

『リリウム達には増援なんていらないんですけど…』

 

リリウムがぼそっと呟くとエリックはもっと笑顔になった。

 

『おやリリウムちゃん! 相変わらず胸が無いね、アッハッハッハ!』

 

『…ダールトン様、あとで射撃の練習に付き合ってくれませんか? もちろん的はあなたで』

 

『あ、あはは~…ごめんなさい』

 

 

 

そんな悪ふざけをしていたらキャロラインから悪いニュースが。

 

『ウィリアム様、無人戦闘機2機及び巡航ミサイルが破壊されました。直前にIS学園からピンク

 色のレーザー砲が発射された模様です』

 

「何だと!? くそっ、あの兎野郎か!」

 

ウィリアムがIS学園を見ると、アリーナに突き刺さっていた人参が上を向いてレーザーを

放っているのが見えた。篠ノ之束の人参はレーザーも撃てる事を知らなかったのだ。

 

『あっはっは! あんな”ブサイク”な戦闘機なんかお茶の子さいさいだよ!』

 

『さすが束さん!』

 

『やはり姉さんはすごいな!』

 

それを聞いたウィリアムはカチンときた。彼があの無人戦闘機をデザインしたのだ。

 

「言ってくれるじゃねえか…」

 

『やばい…お兄ちゃんが怒ってる…』

 

「キャロライン、もっと早く飛べ!」

 

『IS学園到着まであと10分です』

 

「5分で来い」

 

『…了解』

 

イクリプスによく似ているアームズフォートはさらに増速した。ピンク色のレーザーが

攻撃してくるが、全てプライマルアーマーで弾いている。

 

 

 

 その情報はIS学園地下司令部でも掴んでいた。学園に到達する前に敵アームズフォートを

撃墜できるかどうか、指揮をとっている山田真耶にはさだかでなかった。敵がどんな攻撃を

してくるかもさだかでなかった。学園に設置されている対空兵器―エリコンKD 35mm機関砲

GDF-007、03式中距離地対空誘導弾、NASAMS中高度防空ミサイル・システム、アベンジャー

防空システム―だけで敵の攻撃を防げるかどうかもさだかでなかった。敵アームズフォートを

撃墜した後にウィリアム達のISを撃破できるかどうかもさだかでなかった。

 

山田真耶は祈った。これ以上生徒達が犠牲にならないように、と…

 

 

 

しかし、現実はそう甘くなかった。

 

「先生! 更識さんが!!」

 

モニターにはネクストの手で首を絞められている更識楯無の姿が映っていた。

 

 

 

『あはは、捕まえたよ、姉さん?』

 

「ぐっ……」

 

既にミステリアス・レイディは破壊され、コアも粉砕された。楯無に抵抗する術はなかった。

簪は外部スピーカーを起動させて話していた。

 

『言ったでしょ? 私は姉さんを越えたって』

 

「…そうね。簪ちゃんは私よりも強くなった」

 

『やったぁ! 姉さんに褒められちゃった!!』

 

「それで…私よりも強いその力で、簪ちゃんは何をするの?」

 

『えっ?』

 

簪は気の抜けた返事をした。この力で何をするって?

 

『それはもちろん姉さんを…』

 

「私を倒した後はどうするの?」

 

『そ、それは…』

 

考えていなかったとは言えない簪であった。彼女は自分よりも優秀な姉を倒すことだけを考えて

いたので、その後の事など全く考えていなかったのだ。楯無は、口ごもる簪を見て悟った。

 

「考えていなかったみたいね。力だけ手に入れてそれを見せびらかして…まるで子供ね」

 

『う、うるさい…』

 

「だってそうじゃない。確かに力があるのとないのとでは大きく違う。でも力の使い方を

 わかっていないんじゃね…簪ちゃん、あなたには失望したわ」

 

楯無は簪をまるで汚物を見るような目で見ていた。それが簪にはとても嫌だった。

 

『黙れっ!!』

 

「いいえ、言わせてもらう。あなたはさっき私のことを『元姉さん』と呼んでいたけど、

 私こそあなたの姉でいるのは御免よ」

 

簪は無意識のうちに楯無の首を絞める力を徐々に強くしていた。楯無は苦しげに咳き込んだ後、

目に涙を浮かべながら何とか笑顔を作った。

 

「ゴホッゴホッ!!…昔みたいに…仲が良かった頃に戻りたいなぁ…でもそれももう無理

 だよね? だって簪ちゃんはもう私の妹じゃないんだもん」

 

 

 

 簪が気付いた時には楯無の首はちぎれていた。強く締めすぎたのだろう。胴体と首を

眼下の海に捨てた後、簪は歓喜の―他の人からしてみれば狂気の―声を上げた。

 

「死んだ!! 勝った!! 姉さんに私は勝った!! あはは、あはははははは!!!」

 

しかし、その声も次第に薄れていった。

 

「はははははは……はははっ…………ははっ……はっ……………こんな事なの?」

 

簪は血の付いたネクストの手を見つめながらブツブツと繰り返した。

 

「私が望んでいた事はこれ? こんな事なの? こんな事なのっ!?」

 

 

 

ズガンッ!!!

 

 

 

「ガハッ!!………えっ?」

 

その時、簪のネクストを1発の砲弾が直撃した。砲弾はプライマルアーマーとネクスト

本体、正確にはコクピットブロックの一部を貫通していた。コクピットの左半分に

大きな穴が空き、大量の破片が簪の左半身に突き刺さった。

 

「なん……で………?」

 

ネクストは制御を失い海に墜落した。

 

 

 

「命中! さすがだな、クラリッサ」

 

「いえ、新型兵装のお陰ですよ、隊長」

 

その砲弾を放ったクラリッサ・ハルフォーフは、専用機シュヴァルツェア・ツヴァイクの

新型兵装の出来に満足していた。元々ラウラの専用機、シュヴァルツェア・レーゲンにも

搭載されている大口径レールカノン。これをさらに強化した新型レールカノンの設計図を、

降服する前のドイツ軍IS研究所が完成させた。そしてIS学園に逃れた黒ウサギ部隊が、

学園の力を借りて完成させたのだった。

 

 さらにこのレールカノンは、対ISアーマー用特殊徹甲弾を改良した、対ネクスト用特殊

徹甲弾を放つことができる。故に、簪のネクストのプライマルアーマーと装甲を貫通する

ことができたのだ。

 

「残る敵はあのキチガイIS3機とアームズフォートですね」

 

「それが1番厄介なんだ…」

 

クラリッサとラウラはため息を吐いてから一夏達の援護に回った。

 

 

 

 

 

 海中に没したネクスト。冷たい海水がコクピットに空いた穴からどんどん入ってくる。

重症を負った簪は動けるはずもなく、血を流しながら溺れかけていた。喉に刺さっている

小さな金属片のせいで、簪は悲鳴すらあげることが出来なかった。ただ涙と血を流すだけ

だった。やがてネクストは海底に仰向けに着底し、完全にコクピットが浸水した。空気を

求めて簪は体を動かそうとしたが、それは無理な相談だった。

 

 穴の外に広がる海底を見た簪は、少し先にあった楯無の遺体を見つけた。まだ微かに

機能しているAMSを通じて、ネクストは遺体に向かってゆっくりと腕を伸ばした。

 

(…ねえ…さ……ん……………ご……め…………)

 

あと少し、というところで簪の肋骨が水圧で折れ、最後の息を吐きだした。伸ばした腕は

途中で止まっていた。簪は意識を失い、4分後脳死した。操縦者の死亡を確認したネクストの

メインコンピューターが、自爆装置を作動させた。ネクストは近くに沈んでいた楯無の遺体

ごと跡形もなく吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

ウィリアムは遠くで起きた水柱を見ていた。キャロラインもすぐに報告してくる。

 

『ネクストB-2の反応をロスト。自爆装置作動を確認しました』

 

「そうか」

 

更識楯無を倒す、それだけのためにウィリアムは簪をこちらに引き入れた。なので目的を

果たした今、簪が死んでも特に気にしていなかった。

 

(そんなことよりも大きな目的が企業連にはある。その為にも俺は…)

 

飛来してくるミサイルや砲弾を回避しつつ、ウィリアム達は一夏達と戦っていた。

とは言っても、ウィリアム達は本気で戦っていなかった。今すべきことは時間稼ぎ。

今回の任務はIS学園の破壊であって、専用機持ち全機撃墜ではない。

 

そしてその時は来た。

 

 

 

『アームズフォート、予定ポイントへ到達。攻撃準備を開始します』

 

キャロラインのその声を聞いて、ウィリアム達3人は勝利を確証した。IS学園の人間は絶望を

感じた。一夏達は真上を見上げる。そこにはイクリプスに似たアームズフォートが太陽を隠す

ように飛んでいるのが見えた。

 

「さて、おしまいにしよう」

 

 

 

 

 

続く…

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