IS インフィニット・ストラトス ~よくある転生のお話~ 作:ホワイト・フェザー
ナレーター:石◯謙二郎
『世界の車窓から。今日はナーデルホルン要塞に到着します』
~トーラス、GAの提供でお送りします~
『午前10時、大陸横断鉄道”グレートウォール”はトーラスが誇る鉄壁の要塞、旧スイス連邦の
ナーデルホルン要塞に到着しました。香港から出発し、各国を旅行(という名の戦争)をして
きて今日で1ヶ月ほどになりました。普段はその勇姿を見せつけながら走るグレートウォール。
ですが今日は地下トンネルを走っています。旧スイス連邦にあるアルプス山脈を超えることが
出来ないグレートウォールのために、トーラスが地下トンネルを作ったのです。外の景色を見る
ことはかないませんが、時間の短縮にはなります。ここでグレートウォールは、様々な貨物や
人員を下ろし、今までの戦いで生じた被害箇所の修理をします。そして1週間後にはまた次の
戦場へと向かうのです』
♫Armored Core: for Answer OST - Great Wall by星◯康太
『明日はアクアビット本社に到着します』
『はしる~はしる~、おれ~バルダー!』
「「うわああああ!!!」」
主任が本気モードになっている頃、マドカとクラリッサはバルダーと鬼ごっこを続けていた。
「くそ! これでも喰らえ!」
クラリッサは大口径新型レールカノンを連射した。砲弾は装甲列車に全弾命中した。だが装甲
列車は止まらなかった。
「ネクストも破壊できるのになんで装甲列車を破壊できんのだ!?」
「硬さが異常なんだよ! きっと有澤重工製だ!」
その間にもマシンガンと速射砲の攻撃は続く。束に改造されたISなのでこれくらいの攻撃で
やられる可能性はゼロだが、シールドエネルギーはゆっくりと減っていった。
一体どうすればこのしつこい装甲列車から逃げれるのか…とクラリッサは考えていたのだが、
マドカの切羽詰まった叫びを聞いた。
「クラリッサ! 前だ、前!!」
「前?」
言われた通り前を向くと…
「「…道がねぇ!?」」
トンネルがふさがっていたのであった。演習場の底がエレベーターよろしく地上に上がっている
ため、当然のことながらトンネルも分断されるというわけである。
クラリッサとマドカは即座に反転、装甲列車の脇をすり抜けた。一方装甲列車はというと…
『あぶないよ れっしゃはきゅうに とまれない ~バルダー心の一句~』
そう言いながら壁に激突し、大爆発を起こした。
「………勝ったな」
「………ああ」
燃えている装甲列車を見ながら2人は気分を落ち着かせ、先ほどの格納庫に戻った。そして
輸送機に乗り込んでエンジンを起動させた。
「おい、あれって…」
「マジか…使えるな。行くぞ!」
2人はあるものを見つけ、これならなんとかなると思い、輸送機を離陸させた。
(楽しい! そして興味深いな…)
主任はエクスシア・ブラックバードで戦いながら思った。
(金色の奴―オータム―は恋人の仇を取るために戦ってんだっけ? ガチレズこわっ! んで、
黒いロリっ娘は織斑一夏を取り返すため、ブリュンヒルデも同様…ウサギ女は妹のため、か。
でもまあ、どれもこれも戦う理由にしては貧弱だよなぁ)
「くそっ! これでもだめか!」
「箒ちゃんを返せー!!」
「オータムの仇!!」
黒いロリっ娘呼ばわりされたラウラがレールカノンを連射した。が、全て避けられるか、赤い
プライマルアーマーで弾かれた。束はピンク色のレーザーを乱射しまくっている。IS学園に特攻
したプロトタイプ・イクリプスのプライマルアーマーを一撃で吹き飛ばすほどの威力を持って
いるレーザーでも、主任を傷つけることは出来なかった。スコールは主任の放つパルスキャノンの
嵐を避けつつも、両肩の
千冬は後ろの方から荷電粒子砲を撃っていた。近接特化の暮桜にはこれ以外の射撃武器はない。
あとはブレードのみである。しかし主任に近づくとアサルトアーマーで消し炭にされてしまうので
千冬は近づけなかった。
「くそ、私は無力だ…」
『その通り、あんたは無力だよ』
「っ!?」
「教官!!」
後ろから聞こえる声、ラウラの叫び。千冬は素早く振り返った。そこにはいつの間にか主任が
いた。ブレードを構える暇もなく、主任の蹴りが炸裂する。荷電粒子砲を盾にしたので被害は
そこまでひどくはなかったが、遠くまで吹き飛ばされ、コジマキャノン砲台の残骸に叩きつけ
られた。
「ガハッ!!」
『弱いな、弱すぎる。これが世界最強だと? 冗談もほどほどにしろってんだ』
「だが…それでも私は一夏をっ!!」
『一夏? ああ、今彼女と一緒に飛行機の中にいる彼ね。そうだ思い出した!』
主任は突然攻撃をやめた。
『俺とウィルで彼にプレゼントを送ったんだよ。プレゼント、気に入るといいけど』
「プレゼントだと? 何だそれは?」
『いやいや、彼が真実を知るためにちょっとお手伝いをね!』
「真実…?」
『聞くところによると彼、自分の両親の事な~んにもしらないそうじゃない。だから俺達が調べて
あげたのさ。その報告書を飛行機に乗る前に荷物に忍ばせておいたってわけ。今頃読み終えてる
頃かな』
それを聞いた瞬間、千冬は真っ青になった―ラウラが心配になるほど。
「な、なんてことを…」
「教官?」
そんな千冬を無視して主任は通信を開いた。相手はもちろん…
『あーあー、えーっと、織斑一夏君? 聞こえてるかな?』
『うえっ!? だ、誰だあんた!?』
「一夏!?」
『ああ、聞こえてるんだ。ちょっと挨拶しとこうかと思って。それに話もあってね。俺は
トーラスのコジマ兵器開発部の主任やってんだ。よろしくね』
『よ、よろしく…えっと主任さん?』
『さてと、手紙は読んでくれたかな?』
すると一夏は声を荒げた。
『あ、あんなの俺は信じないぞ!』
『うんうん、信じたくないよねそりゃ。だって―』
「やめろ!!」
千冬は絶叫したが、主任がやめるわけがなかった。
『―自分が人工的に遺伝子をいじられて生み出された人間で、それをやったのが織斑千冬の
両親で、挙句の果てに織斑千冬との間に血のつながりなんて全くなかった、なんて言われ
ればねぇ』
「な、なんだってー!?」
「ほ、ホントか嫁!?」
「嘘!?」
『まあ言葉だけじゃ信じてもらえないと思うからさ、映像付きで説明しよう! ウィル、あとは
頼んだぜ!』
『あいよー』
ここでウィリアムにバトンタッチ。6人のIS―千冬達4人とマドカとクラリッサ―と飛行機のメイン
モニターに映像が流れた。日本人夫婦と幼い少女の映像だった。
『まず織斑千冬の両親だが、とある組織の一員でした。その名は亡国機業。2人は超がつくほど
優秀な学者で、親父さんは遺伝子工学、お袋さんは分子生物学の権威だった。そんな2人に
組織のお偉いさんがある仕事を指示した。それが究極の兵士の創造だった』
「究極の…兵士?」
モニターには液体に浸かっている赤ん坊が映っていた。
『つまり安価に製造が可能であり、自我をもたずにどんな命令でも従い、簡単に死なないような
強靭な肉体と身体能力を併せ持つ、そんな兵士だ。で、2人はいろんなところからかき集めた
遺伝子を弄りまくって1人の赤ん坊を創りだした。お袋さんが、最初に作った個体であり夏に
生まれたから”一夏”と名付けた』
誰もが黙ってウィリアムの話を聞いていた。主任もエクスシアの翼をパタパタさせつつ近くの
倉庫から引っ張りだした出したソルディオス砲に座っていた。
『ただ一夏は…言い方は悪いが失敗作だった。組織の求める安価で大量生産が可能な究極の兵士の
兵士には不要の代物が山ほど付いていた。まず自我。あと生殖機能に他にも色々とね。だから
2人はもっと研究して2人目の赤ん坊を創りだした。それがマドカってわけだ。マドカの場合は
自分の子供である千冬の遺伝子を少し弄ったんだと。それでうまくいくと思ったらまた自我を
持っていた。その後の研究も全部失敗。で組織がキレて、2人は文字通り”ミンチ”にされて、
ドラム缶に詰められ、冷たい日本海に沈められちまったのさ。他の試験体も一夏とマドカ以外
皆処分された』
「酷いな…」
同じ試験管ベイビーであるラウラもびっくりしていた。
『残された千冬は組織の連中が「お前の両親借金ひどくて逃げたよ!」と言ったそうな。自分は
捨てられたとショックだった千冬はそれを信じ込んだんだろうな。で、組織の連中は一夏を
千冬に預けた。「この子はあんたの弟だよ」って言ってね。一方マドカは、一夏よりも身体
能力や知能レベルが高かったから組織が育てることになった』
「あのー…幹部の私ですらそんな事知らないんですけどー…」
『スコールが組織に入る前の話だから知らなくて当然だ。それでだ、一夏がISに乗れるのも
一夏が純粋な人間ではなく、遺伝子組み換え人間だからさ』
「なるほど、その発想はなかった」
束はウサ耳をピコピコさせながら聞いていた。
『でだ、一夏にもっと悪いニュースがある。ある亡国機業の幹部が千冬に手紙を出した。そこ
には今まで自分が知らなかった両親の事や、一夏とマドカの事が書かれていた。その幹部は
織斑夫妻の部下だった男で、実の娘には真実を伝えようと思ったんだろう。手紙には、いつか
一夏にも本当のことを話してやってくれ、と書かれていた。でも千冬は一夏に言わなかった。
理由は本人しか知らん』
「その幹部ってまさか…」
ある新聞の記事がモニターに出た。外国で日本人男性が銃で撃たれて死亡したという内容だ。
『そ。あんたが殺した男だよスコール。いつだったかそんな命令を受けただろ?』
「わ、私はただ彼が組織の金を横領しているから狙撃しろと…」
『それはどうでもいいとして…一夏、どう思う? お前が姉だと、唯一の家族だと思っていた
人間は、実は姉ではなく他人で、しかも自分の出生に関する事を知っていて黙っていたんだ。
ひっどい話だよな』
「……………」
「い、一夏…」
千冬のモニターには、鈴に支えられている一夏の姿が映っていた。そして一夏は顔を上げた。
「すまない…もっと早く伝えようと思ったんだ。でも私にはその覚悟がなかった…許してくれ」
「…いいんだ」
「一夏?」
「もういいんだよ、何もかも。俺はその事で責めたりしない。だって…」
一夏は決然とした、だが冷ややかな視線をモニター越しに送った。
「もうあんたは俺の姉ではないのだから。俺の家族ではないのだから。今から俺の家族は鈴と鈴の
両親だけだ!」
「あ…………」
千冬は愕然として跪いた。もはや戦う理由がなくなってしまったのだから。
「隙ありっ!!」
『ん?』
主任は上空から1機の輸送機が高速で飛んでくるのを見た。輸送機は主翼端の武装搭載用パイロン
にくっついていたコジマミサイル6発を一斉に発射した。即座に主任がパルスキャノンを乱射
したが、2発が主任の近くに命中し、大きなコジマ爆発を起こした。
その間にスコールと束、ラウラに抱かれた千冬が輸送機に向かって素早く飛んでいった。
マドカが輸送機の後部ランプのハッチを全開にしていたので、そこに飛び込んだ。
「クラリッサ!!」
「わかっている!!」
合図を受けてクラリッサは滞空型のECMポッドを幾つか射出した。そして速度を一気に上げて
雲の中に飛び込んだ。
「逃げたか…追撃はしなくていい。要塞の被害報告と復旧作業を始めろ」
ウィリアムは司令部を出ながら部下に命令を出していた。その後ろをシャルロットとリリウムが
付いていく。エレベーターに乗って到着したのは別の格納庫であり、そこには量産型イクリプスが
発進準備を整えていた。
「よし、行こうか。最終決戦の地へ」
「「はいっ!!」」
続く…