IS インフィニット・ストラトス ~よくある転生のお話~   作:ホワイト・フェザー

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今回束と愉快な仲間たちは出ません。


第47話:一般人「お前ら変態」企業連「え?」

「遂にあの『パルヴァライザー』を発見しました」

 

そう話し始めたのは企業連の広報官だった。今この映像は世界中に流れている。

 

「南米で大暴れして我が企業連に牙を剥いたあの悪魔は、なんと南極大陸に潜んでいる

 ことが判明したのです。幸運にも南極近海でBFF第2艦隊とGA第4艦隊及びギガベース

 3隻が冬期演習をしていたので、これらの艦隊にパルヴァライザーの破壊命令を出し

 ました。そしてパルヴァライザーに逃げられないように、艦隊は2時間後に南極大陸を

 封鎖します。本格的な冬はまだ先ですし、天候も安定しているので、南極に多くいる

 研究者達はスムーズに避難中です」

 

そして背後のモニターには、パルヴァライザーの攻撃で家族を亡くした未亡人と子供の

映像が流れる。小さな女の子2人はお母さんにしがみついて大泣きしている。

 

「このような悲劇を2度と繰り返してはならないのです! こんなことをしでかした

 篠ノ之束を、我々企業連は決して許しません! 以上です」

 

 

 

 

 

この発表から2時間後、南極大陸は完全に包囲、封鎖された。

 

「ハックショイッ!! くそ、なんて寒さだ…」

 

BFF第2艦隊を指揮するポール・ニヴェット・フィッシャーは紅茶を飲みながら南極を見つめた。

彼はイギリス海軍の中将だったが、実はBFFから送り込まれた人間だった。国家解体戦争勃発

後、彼はまずヴァンガード級弾道ミサイル原子力潜水艦の位置情報をBFFに送った。これにより

戦争開始早々にイギリスは、運用している唯一の核戦力を全て失ったのだった。

 

 昔の話はさておき、このポールは名前からわかるように、あのフィッシャー提督の子孫で

ある。ジョン・アーバスノット・フィッシャーはイギリス海軍の歴史上、ネルソン提督に

次ぐ重要人物なのである…が、彼はかなり変態だった。「30cm砲」を搭載した潜水艦を

作ったり、「大型軽巡洋艦」という、何が何だかわからないものを作ったりなどなど…

どう見ても変態である。

 

 そんな変態提督の子孫たるポールもまた、変態であった―それも筋金入りの。今彼が

乗っているBFF第2艦隊旗艦、超巡洋戦艦「インコンパラブル」は、かつてフィッシャー

提督が作ろうとして中止になった艦である。ポールが当時の設計書を現代技術でさらに

強化して完成したのだ。気になる武装は、50.8cmコジマショックカノン3連装2基、50.8cm

実弾砲3連装1基、155mm3連装速射砲6基、30mmCIWS4基、533mm5連装魚雷発射管4基

20門、そしてグングニル巡航ミサイル4連装発射機2基。明らかに変態である。

 

 全長は304m、全幅は30m、喫水は10m、機関は新型コジマジェネレーター2基による電磁

推進方式なのでスクリューはない。最大速力は45ノット。そして問題だった装甲の薄さも

きちんと解決。舷側は650mm、甲板は450mm、主砲防盾は脅威の980mmという分厚い装甲で

守られている。しかもプライマルアーマーも展開可能。救いようがないくらい変態である。

 

 第2艦隊はこのモンスター巡洋戦艦の他に、ナイトソード級空母8隻、イージス巡洋艦

23隻、イージス駆逐艦41隻、軍事物資満載の大型総合補給艦5隻、インヴィジブル級潜水艦

(オーメル製アカディール級潜水艦をライセンス生産したもの)12隻で構成されている。

アームズフォートは無いが、それでも十分強力な艦隊なのだ。

 

「さてと、包囲も完了したし、あとは敵を待つだけだな…うぅ、やっぱ寒いから中にいよう」

 

ポールは艦橋に戻って紅茶を飲みつつ敵を待った。

 

 

 

 

 

 そこから南に50kmほどの海域に1隻の超大型タンカーがゆっくりと航行していた。名前は

「クリストル」。ヨーロッパで作られたこの船は石油を大量に積んで南米に向かっていた。

 

…というのは大嘘で実はこの船、所属はトーラス。石油なんか何処にも積んでおらず、

速射砲や魚雷発射管、挙句の果てにコジマキャノンまで搭載している。そして船内には

なんと大型の潜水艦が格納されていた。格納庫の周囲には巨大な浮力タンクがズラリと

並べてある。つまりこのクリストル号は、偽装した武装浮きドックなのだ。

 

 格納されている潜水艦はトーラス製モービー・ディック級潜水艦…よりも大型の、

アクチニウム級弾道ミサイル潜水艦である。全長198m、全幅28m、水中排水量は

68,000トンに達する世界最大の潜水艦となった。もちろんコジマ動力艦である。この

潜水艦が今後の作戦の要となる事を知っているのは、ウィリアムといつもの4人―

インテリオル、GA、オーメルグループの代表とラインアークの代表のみであった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

『おいウィル。戦局には全く関係ないことなんだが…』

 

「ん?」

 

イクリプスで移動中のウィリアムに、父親のジェイソン・ウォーカー・ロンバートが電話を

かけてきた。普段の連絡などは全てナノマシン通信を使うので不思議に思った。

 

『ついさっきの話なんだが、2週間前までGAアメリカの本社ビルが入ってたビッグボックスが

 大爆発を起こしたそうだ』

 

「は!? 何で? 敵の攻撃か?」

 

『いや、それがな…』

 

ジェイソンは半ば呆れ気味に説明した。GA本社の移転作業が終わり、館内では大掛かりな清掃

作業が行われていたそうだ。その際、清掃員の1人が洗剤で滑ってとあるパネルにぶつかって

しまった。そのパネルは、館内に敵が侵入した際の最後の手段として作られた”自爆装置”の

制御パネルだったのだ。

 

 ビッグボックスそのものが要塞都市となっているため、そんなものいらないはずなのだが、

GAグループ代表アーノルド・レヴィンソンの一言で設置されたのだ。その一言というのは、

 

「自爆は漢のロマンだ!!」

 

である。

 

『…ともあれ、その清掃員がパネルにぶつかったせいで、自爆シークエンスが開始されたんだ。

 清掃員達はそれはもう命がけでビッグボックスから逃げ出したって。で、ビッグボックスは

 上半分、つまりGA本社が入っていた階全部が木っ端微塵に吹き飛んだ』

 

「それはひどい」

 

「「変態さすがGA変態」」

 

いつの間にか隣にいたシャルロットとリリウムも呟く。

 

『だろぉ? 俺達トーラスもあそこまで変態じゃない』

 

「全くだ。本社ビルに自爆装置とか前時代的過ぎるだろ…あ、そうだ主任から伝言。なんか

 よくわからないコジマ爆弾ができたってさ」

 

『…ものすごく嫌な予感しかしないんだが、詳細は?』

 

「いや、本当にわけわかんないんだって。酔っ払ってた時に作っちゃったもんだから中に

 何入れたか覚えていないんだって。起爆させればわかるらしいんだが…」

 

『じゃあ派手にどかーんと…』

 

「ところがさ、調べたら保管してあったトリチウムがごっそりなくなってんだよね。ひょっと

 したら爆弾の中に…」

 

『……………』

 

ジェイソンが黙りこくるもの無理はない。トリチウム、日本語では三重水素と呼ばれている

この物質は、核融合爆弾、つまり水素爆弾の主なエネルギー源となる物質なのだ。そんな

シロモノをコジマ爆弾に放り込んだら…ウィリアムですら見当がつかないのである。

 

 なので、主任が酔って作ったこの爆弾は、最大出力が30キロトンくらいのごく普通のコジマ

爆弾なのか、それとも数メガトンの威力を持つこともある持続融合型コジマ爆弾なのか、全く

わからないのだ。

 

「どうする?」

 

『どうするって…答えはわかっているだろう、息子よ』

 

ジェイソンは目をキラキラさせながら叫んだ。

 

『起爆させるに決まってるだろ!』

 

「だよな! 実はもうノヴァヤゼムリャに置いてあるんだ。てなわけで…」

 

「「おいやめろ!」」

 

すぐさまシャルロットとリリウムがウィリアムを羽交い締めに。

 

「だぁー! 離せシャル、リリウム! これは漢としてやらねばならんことだ!」

 

『そうだぞ。これはいわば儀式みたいなものだ!』

 

「何処の世界に得体のしれないものを爆発させる儀式があるんですか!?」

 

「そうだよお兄ちゃん! とにかくそのスイッチを離して!」

 

「邪魔をするな、ってあぁっ!?」

 

持っていたスイッチが取っ組み合いの最中に地面に落ちてしまった。そして…

 

 

 

「「「「あ」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―たった今入ってきた情報によりますと、先程旧ロシア連邦ノヴァヤゼムリャ

 方面から不思議な光が一瞬見えた、とのことです。企業連製のコジマ兵器とは

 異なる青い色がパッと光った後、すぐに消えたそうです。観測機が向かった所、

 ノヴァヤゼムリャそのものが確認できませんでした。こちらがその映像です。

 ご覧の通り、かつてノヴァヤゼムリャが存在していた場所には海しかありません。

 企業連はこの摩訶不思議な現象の原因究明を続けると発表して――――』

 

 

 

 

 

「で、何か言うことはありますか?」

 

「酔って作ったので何も覚えていないから俺は悪くない」

 

「爆発が見たかったのに光って消えただけだったからつまらなかった」

 

「まさかノヴァヤゼムリャが全部プラズマ化(・・・・・)して消えちまう(・・・・・・・)なんて思わなかったよ」

 

「ちょっと…頭冷やそうか?」

 

「「「すみませんでした」」」

 

主任、ウィリアム、ジェイソンはキャロル・ドーリーにショットガンを突きつけられて

土下座した。そして半年間給料半減となった。めでたしめでたし。

 

 

 

 

 

続く…

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