IS インフィニット・ストラトス ~よくある転生のお話~ 作:ホワイト・フェザー
ウィリアムは社長室でシャルロットとリリウムといちゃつきながら仕事をしていた。そこに。
「おー、ここにいたかウィル! 探したぜ」
「失礼します」
主任とその秘書のキャロルが入ってきた。2人は両手でノートパソコンと書類を持っている。
「どうした主任?」
「色々と用があるんだがまずはこれ。先月の研究開発費の報告書」
「どれどれ………ブーッ!!!」
「にゃー!!」
報告書の金額を見てウィリアムは飲んでいたコーヒーを吹いた。そしてたまたま近くにいた
AMIDAにかかってしまった。シャルロットとリリウムも後ろから覗きこみ驚いていた。
「お兄ちゃんたら汚いよ…って何この金額!? 何を作ろうとしてるの、主任さん!」
「あり得ません…小さい国なら国家終了レベルですよ」
「わかったよ、今から説明するから。キャロりん」
「はい」
キャロルはノートパソコンを社長室にあるプロジェクターに繋いだ。主任がスクリーンを
降ろしてカーテンを閉めた。
「さてと、ウィル。我が社の兵器はほとんど、いや全てコジマ兵器だ。それは素晴らしい。
ただ、俺はずっと前から疑問に思っていたことがある」
「なんだ?」
ウィリアムの質問に主任は机を叩きながら叫んだ。
「何故トーラスには戦車や戦艦が無いんだ!!」
「「えっ」」
「……………」
シャルロットとリリウムはポカンとした。一方ウィリアムは無言。
「何で無いのか? いやこの際理由はどうでもいい。無いのであれば作ろうじゃないか。という
わけで作ったのがこちら、コジマキャノン戦車」
スクリーンにはコジマキャノンを放つ戦車の姿が。
「当たり前の話だがプライマルアーマー展開可能。アサルトアーマーも可能だ。それに…」
「あー主任。話の途中悪いんだが…」
いつもは人の話を最後まで聞くウィリアムが説明の途中で遮った。
「あのさ、有澤重工の『摩周』って戦車あるだろ?」※第35話参照
「ああ、あのキチガイ戦車ね。それが?」
「有澤重工とライセンス生産契約結んでこっちでも造ることになったんだ。さすがにコジマ
キャノンは乗ってないけど、155mmコジマ砲弾を使うことにしたんだ。だからこれは…」
「えー…わかったよ。じゃ次!」
スクリーンには巨大な戦艦の姿が。見たことがない巨大な砲を撃っている。
「こいつは戦艦…として作ろうとしたけど気が変わってアームズフォートになった。だって
主砲がコジマ荷電粒子砲だからねぇ」
「荷電粒子砲!? 理論上では可能だけど色々と問題がありまくるから使えないんじゃ…?」
シャルロットがまくしたてるのも無理は無い。莫大すぎる電力の確保、直進させることの難しさ、
十分な威力を持たせるために必要な「粒子加速器」の小型化、運用の問題などなど、解決しなけ
ればならない問題が山のようにあるのだ。
「そこはあれだ、コジマでね」
主任はニヤッと笑いながら説明を続けた。
「電力は超大型コジマジェネレーター12基でまかなう。最大出力は15
ない。粒子加速器はいつかウィルが作った超小型のシンクロトロンを搭載している。覚えて
いるだろ?」
「ああ、今思い出したよ…」
ウィリアムは過去に自分がチートをフル活用して作った超小型シンクロトロンの事を思い出した。
欧州原子核研究機構(CERN)の全周27kmの円形加速器、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の
設計データを元に作り、それを某青狸が持っていた小さくなる光を当てた。結果、基本性能は
そのままに、大きさが全周5mと非常にコンパクトになった。
(懐かしいな、あの頃は自分の力を試したくてやりたい放題だった気がする)
と、ウィリアムは過去を振り返っていた。ビー玉サイズのツァーリ・ボンバとか、鉛筆サイズの
LGM-118AピースキーパーICMBとか、手のひらサイズの…いや、思い出したらキリがない。
これらのチートMAX製品はトーラスの最重要機密区画…の外のガラクタだらけの倉庫に放置
してあった。
「威力としては、ギガベースが一撃で蒸発するレベルだ。十分だろ? この主砲は連装式で3基
ある。フランスの戦艦『リシュリュー』みたいに主砲は全て艦橋の前に設置している。これ
以外にも各種ミサイル、対空砲、魚雷、そして後部の格納庫には可変戦闘機12機が収まって
いる。どうよ?」
「サイズは? 有澤重工の『竜王』より大きいのか?」※第35話参照
「竜王ほどではないが900m。電磁推進方式で、やろうと思えばメガスティグロに勝てる速度を
出せるぞ。それにすごいのがこれだ!」
スクリーンには大型のミサイルが組み立てられて発射される様子が。
「あのー、これの何処が凄いのでしょうか?」
「至極当然の質問だな、リリウムちゃん。これはな、撃つ前に艦内でミサイルを組み立てて
撃つんだ。見てわかるかも知れないけど、これグングニルだからね。ただし威力と速度を
落として、代わりに追尾性能を極限まで上げてあるやつなんだな、これが」
「うわー…」
随分と変態な物を作ったな、とリリウムはドン引きしていた。が、主任は気にせず続ける。
「最後に…これは元々あるやつを改造したんだけどな」
スクリーンにはごく普通のアンサラーが。
「…アンサラーなのはわかるが、何処をどう改造したんだ? これに一番費用がかかっている
わけなんだが」
「武装は追加のソルディオス・オービットがいくつか。それと可変戦闘機用の格納庫を作った。
そしてなにより凄いのがこれだ!」
アンサラーの写真がズームアウトすると、後ろの方によく知っているものが映っていた。
「…地球!?」
「うそ!?」
「そう! ついに我らが企業連はアームズフォートを宇宙でも活動できるようになったのだ!」
「すげー!!」
これにはウィリアムも大喜び。思わず近くにいたシャルロットとリリウムを抱き寄せてほっぺに
キスをするほどであった。
「おおおおお兄ちゃんにきっききききすされたたった」
「ウィリアムお兄さまにキスされちゃいました…ぶしゅ~」
2人は機能不全になっていたが主任は続けた。
「これで俺達は宇宙に進出できる! 企業連の目的の1つである人類の宇宙進出が!」
「だろ? 俺凄いだろ?」
「もちろんだ! 主任とキャロル、今度のボーナスは5割増しだ! あと有給も1年分やる!」
「やっほーい!!」
喜ぶ主任とウィリアムをキャロルも微笑みながら見ていた。だが主任の一言で表情が固まった。
「いやぁ、これで企業連は大きく前進できるな。次は
「海とか作るか。いつか四国に撃ち込んだTF弾頭を巨大化すれば…」
「惑星をテラフォーミングとか夢のようだぜ!」
「あのー」
「「ん?」」
振り返った2人にキャロルは疑問をぶつけた。
「何故火星なのですか? 一番近い月を最初にやればいいのでは? 火星より小さいですし…」
地球から38万kmしか離れておらず、重力も地球の6分の1。こんないい場所を放置して先に火星に
行くなんて…キャロルはそう思ったのであった。
「あれ、言ってなかったっけ、キャロりんには?」
「なんだ言ってなかったのか」
ウィリアムと主任は笑顔で言った。
「「だってアライアンスは月の地下にあるんだぞ。つまり月は既に攻略済み」」
「「「えっ」」」
キャロルと、いつの間にか復活したシャルロットとリリウムが変な声を上げる。
「あれ、みんな知らなかった感じ?」
「知らないよ! あそこが月だなんて!」
「いつからあそこは月にあったんですか!?」
「かなり昔。アメリカ合衆国によるアポロ計画が終わった後、企業連は誰にも知られないよう
極秘裏に月に有人ロケットを送り込んでいたのさ」
主任はカーテンを開けて美しい景色を眺めた。
「毎年数十人ずつだったか? とにかく毎年人を送っては月の地下を掘りまくった。余った
土とかは地上に山積みにしたら『月に山ができた』なんてNASAが騒ぎ立てたから笑ったぜ。
で、アライアンスとして機能し始めたのは18年ぐらい前からだ。その頃にウィルが開発して
いた重力制御装置や生命維持管理装置で長期的かつ広大な広さを持つアライアンスの維持が
可能になったのさ」
企業連の本部であるアライアンス。国家解体戦争が始まる前、各国の情報機関がこぞって探して
いた。あの強大な企業連の中心部たるアライアンスを見つけ、そこに潜入し情報を得ることが
出来れば…と、どんなに馬鹿な国でも考えていた。しかし見つけることはできなかった。当然で
ある、地球上にないのだから。
「お兄ちゃんチートすぎ」
「そう言うと思ったよ」
クスっとウィリアムは笑った。
「それに月って地球から近いから何かしら弄るとすぐバレるんだよね。だからなかなか手を
つけにくいんだ。宇宙でも使えるアンサラーを公表した後に大規模なテラフォーミングを
する予定だから」
月は地球から最も近い、そして唯一の衛星なので研究者達は月のことをいつも見ている。
そんな月の表面を大規模にテラフォーミングしようものなら一発でバレる。子供が月を見て、
『ママー、月のうさぎさんがAMIDAになってるよー』
なんて言われた日にはたまったものではない。なので企業連は月の地下を長い年月をかけて
いじりまくっていたのであった。
月にあるアライアンスにどうやって行くのか。毎回ロケットで行くとすぐにバレるので、
ウィリアム&主任製の『あらゆる物を完全な形で転送できる量子ポータル』を、各企業の
本社地下に設置してある。莫大な電力を使用するため超大型コジマジェネレーターも設置
されている。
「アライアンスは難攻不落、って前にも教えたよな。エヴァンジェ率いるアライアンス戦術
部隊、無人化ハイエンドノーマル部隊、無人化アレサ部隊…」
「ちょっと待った!! 無人化アレサだって!? あんなバケモンが無人で!?」
シャルロットが大声を出す。それもそのはず、かつて彼女はアレサと戦ったことがあるのだ。
主任がアレサを完成させた時に戦ってみたそうな顔をしていたのでウィリアムが許可した。
結果―シャルロットの完敗に終わった。通常のネクストよりも強力なクイックブーストに
アサルトアーマー、どんなミサイルも明後日の方向に行くミサイルジャマー、大口径5連
ガトリング砲、コジマアサルトキャノン(連射可能なコジマキャノン)、インテリオルも
びっくりの威力のレーザーライフルの前には、トリガーハッピーのシャルロットも勝てな
かったのだ。
「キャロラインがやってくれてな。話を戻そう、あとは最新鋭可変戦闘機部隊、数種類の
無人化アームズフォート、そしてナインボール=セラフ。とまあこれだけでも無敵なん
だが…今回そこにアンサラーが加わる。例えアルマゲドンが月に落ちてきても迎撃できる」
「いや、さすがにそれは無理では…」
リリウムはじっくり考えながら話す。
「それができるんだな」
ウィリアムが手を振ると、机の上のホロプロジェクター(3次元映像投影機)が起動した。
そこにはアライアンスとその付随施設、そして間隔を空けて設置されている巨大な塔が
映しだされた。
「もし企業連が地球での権力を失い月に逃げ込んだ場合、月に攻め込んでくる敵勢力を、
そして地球そのものを攻撃するために開発されたのがこの超大型コジマキャノン、
『エーレンベルク』だ。しかし…」
ウィリアムは困った顔をした。
「実はこれ、地球に届くまでに威力がだいぶ落ちるという欠点があるんだ。だから
正直コイツで地球を攻撃するのはコジマ的にも良くない」
「何コジマ的って」
シャルロットの呟くをウィリアムは無視した。
「だから今追加で超大型のレールガンを建設中だ。名前はまだないけどな。威力としては
ナーデルホルン要塞が一撃で木っ端微塵になるくらいだったかな」
「「「……………」」」
もうこいつらどうしようもねぇ、とシャルロット、リリウム、キャロルは思うのであった。
その後。
「主任、これを」
「ん? 何この箱?」
社長室を後にした2人。部屋に戻った時キャロルが箱を渡した。
「今日は何の日かご存じないのですか?」
「今日…2月14日…ああ!!」
「そうです、今日は…」
「バレンタインデーじゃないか! さすがキャロりん、ありがとう! 惚れちまうぜ!」
(言えない…私はもうあなたに惚れているなんて…)
実は主任のことが大好きなキャロルであった。しかし箱を開けた主任は。
「ん? キャロりん、なんでチョコが入ってんの?」
「えっ?」
「だって今日はバレンタインデーだろ? イギリス製バレンタイン歩兵戦車の設計案がイギリス
陸軍省に提出された日じゃないか。だからてっきりバレンタイン歩兵戦車の模型が入っている
もんだと…」
「……………」
「あの戦車って信頼性高かったし、走行性能も良くて戦場でも高い評価だったんだよな。俺も
好きな戦車だ。でもあれの派生型はなぁ…アーチャー対戦車自走砲なんかなんで後ろ向きに
主砲が付いているんだか…」
「……………」
「あれ、キャロりんどしたの? そんな残念そうな顔して。心配するなって、派生型は残念だった
けど戦車そのものは優秀だったからソ連にたくさんレンドリースされたんだ。だから世界中で
活躍した素晴らしい戦車なんd」
この日、トーラス本社内で歩兵用パイルバンカーが使用された。1人が窓を突き破って15階から
地面に落ちたが命に別条はないとのこと。犯人は不明であるが女性の可能性が高いらしい。
そして。
シャルロットは家の浴室で裸になってウィリアムを待っていた。そして帰ってきたウィリアムの
前で体に溶かしたチョコを垂らして、
『チョコと一緒に僕も食べて♡』
と誘惑しようとした。が、チョコが意外と熱くて火傷しそうになり、家に帰ったウィリアムに水を
ぶっかけられ風邪を引いてベットでうなされる羽目になったとさ。
ちなみにリリウムは普通にチョコを渡してウィリアムにナデナデされた。
続く…