IS インフィニット・ストラトス ~よくある転生のお話~   作:ホワイト・フェザー

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第54話:極寒の地、南極にて 7

 そのペンギンの群れは氷の世界で餌を探して歩いていた。近くにある氷の割れ目から水中に

潜って魚を獲りたいところだが、彼らの天敵であるシャチが、

 

「やぁみんな。食っちまうぞ~」

 

と言わんばかりに顔を出していたので諦めた。そろそろご飯を食べないとマズイかもしれない。

 

 だが、真上を1機の黒いISがマッハ5という極超音速(ハイパーソニック)で通過していったので空腹の問題は消し

飛んだ。ソニックブームがペンギン達を襲い、吹き飛ばしていった。

 

 

 

「ん? 今なんかふっ飛ばしたような…気のせいだな。そんなことよりも急がないと!!」

 

 

 

 

 

 その頃南極点上空にいるアンサラーに乗っているリリウム、シャルロット、キャロルは、兄と

主任の戦いを見物していた。

 

「寒いですね…はくちゅ!!」

 

「リリウム、ちゃんと上着着ておかないと」

 

「そうですよ。はい、紅茶です」

 

3人はこたつに入り、みかんを食べながら見物していた。

 

「ていうかもう勝ちでしょこれは」

 

「同感です。あの連中が勝てるとは考えられません」

 

シャルロットとキャロルが話しているのを聞きつつ、リリウムは寒がっていた。

 

(うぅ…なんで急に寒くなったんでしょうか…さっきまで寒くなかったのに…)

 

そこでリリウムはアンサラーの現在の状況を確認しようと考えた。もしかしてどこかのハッチが

開きっぱなしになっているかもしれない。

 

(ん~と艦内電力供給状況、違う…兵器管制システム、これも違う…あ、これかな?)

 

空間モニターを弄りつつリリウムはデータを表示させた。だがそこには驚くべき情報が。

 

「こ、高度8,000m!? しかもまだ上昇中!?」

 

「「ええっ!?」」

 

当初アンサラーは高度1,000mにいたのだがいつの間にかこんな高度まで上昇していたのだ。

 

「艦長! 高度が上がりすぎてる! 早く降下して!」

 

「……………」

 

ところがシャルロットが艦長に警告しても艦長は答えない。他のモニターをガン見していた。

 

「艦長?」

 

「全艦に伝達。プランB発動に伴い作戦を開始する。フォーメーションKを取れ」

 

「了解!」

 

3人を無視して艦長以下乗組員は作業を開始した。何も聞かされていない3人は蚊帳の外状態。

 

「どういうことですか、艦長」

 

「プランBが既に発動しているからこちらも作戦を開始したのですが…ご存じないのですか?」

 

不思議そうに聞いてくる艦長。シャルロットは嫌な予感がした。

 

「全く聞いていないから説明してください。プランBとは?」

 

 

 

 

 

 プランB。パルヴァライザーを遠隔操作している篠ノ之箒の洗脳が解け、パルヴァライザーが

敵陣営に加わった場合、アクチニウム級弾道ミサイル潜水艦は搭載している全てのミサイルを

南極点に向けて発射する。アンサラー6機は超大型コジマ爆発から身を守るため、密集隊形を

とり、全艦のコジマジェネレーターを一斉にマックスパワーで起動、全艦を囲むような大型の

球形プライマルアーマーを展開する。

 

 同時にキャロラインによりパルヴァライザーの機能停止、篠ノ之箒が乗っているロス棚氷の

小型潜水艦の生命維持システムの停止、さらにロス海にいるBFF艦隊にハッキングを仕掛け、

グングニル巡航ミサイルをロス棚氷の篠ノ之箒に向けて発射する。

 

一般人には、

 

「篠ノ之箒操るパルヴァライザーは企業連との戦闘の結果、南極点で自爆。南極点で超大型

 コジマ爆発を観測した。さらに妹の死に絶望し、企業連に復讐せんと立ち上がった篠ノ之

 束をロス棚氷で撃破。その際彼女が保有していた大型コジマ爆弾が起爆し、棚氷中央部で

 大規模コジマ爆発が発生した」

 

と発表される。南極点に撃ったミサイルでパルヴァライザーとその他生存者を消滅させ、

棚氷に撃ったグングニルで小型潜水艦と篠ノ之箒、そして助けに行った篠ノ之束を殺害する。

 

 

 

 

 

場所を変えて会議室で艦長は3人に説明をした。

 

「…以上がプランBです。この事を知っているのはいつもの5人、主任、私、そしてあなた方

 だけです。中身が中身なだけに企業連内でも超極秘にしないといけないんです」

 

いつもの5人とは、ウィリアム、インテリオル、GA、オーメルグループ、ラインアークの

代表のことである。

 

「ちょっと待って。お兄ちゃんと主任さんはどうやって脱出するの?」

 

「ミサイル着弾前に離脱します。あの機体なら問題ないでしょう」

 

「ならいいや」

 

例え南極が消滅しようが、企業連が崩壊しようが、愛する兄が生きているばそれでいい。

それがシャルロットの考えであった。リリウムも同意見である。

 

「そういえば」

 

キャロルは何かを思い出した。

 

『この戦いが終わったら、キャロりんに大事な話があるんだよね。ま、期待して待ってて

 くれよ! アハハハハ!!』

 

「って主任が言ってたんですよね」

 

(((それ死亡フラグだから! めっちゃ死亡フラグだから!)))

 

艦長とシャルロット、リリウムは心のなかで絶叫したが、

 

(((でも主任だし…きっと主任ならなんとかしてくれる)))

 

と考えなおした。

 

 

 

 

 

同時刻南極点ではウィリアムと主任が残っていた敵との戦闘を終えようとしていた。

 

「残っているのは…私だけ、か」

 

スコール以外は皆ISを破壊され地面で倒れている。死んではいないがこの寒さでは凍死して

しまうだろう。

 

「諦めろ。お前らが勝つのは不可能だ」

 

「その通りだな。ギャハハハ!!」

 

顔を上げればビッグトーラスマンとエクスシア・ブラックバードがこちらに武器を向けていた。

 

「くそっ…」

 

(せめてマドカたちだけでも助けないと…でもどうやって…)

 

「では…ごきげんよ~う!!」

 

主任がパルスキャノンの砲門をスコールに向けた。そして引き金を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クラリッサぁああああああ!!!!』

 

「「っ!?」」

 

突然回線に割り込んできた声に、ウィリアムと主任は素早く反応した。

 

「どこからの声だ!?」

 

「わからん。レーダーには何も…」

 

次の瞬間、超音速で飛んできた砲弾が2人の頭上で爆発した。と、同時にエクスシアが

制御不能となって近くの氷山に墜落した。

 

「主任!? ってこれは…EMP!? まさか砲弾サイズまで小型化していたのか…」

 

ビッグトーラスマンも当然EMPの被害を受けた。何とか着地はできたものの、プライマル

アーマーの展開ができず、ジェネレーターの半数が機能停止、おまけに殆どの武器が使用

不可という状況だった。

 

「一体誰が…」

 

だがウィリアムには考える暇はなかった。再び飛んできた砲弾でビッグトーラスマンの右脚が

破壊されたからだ。結果、ビッグトーラスマンは仰向けに倒れた。

 

「くそっ!」

 

『クラリッサ! 無事か!』

 

そこでようやく襲撃者が明らかになった。

 

「お前は…ラウラか!!」

 

日本に壊れた千冬を送り届けたラウラは独自に行動を開始した。まず旧アメリカ合衆国

アラスカ州アンカレッジにあるエルメンドルフ空軍基地にどこぞの蛇よろしく潜入。保管

されていた試作兵器―EMP弾頭搭載のミサイルを奪取した。次にドイツに行き、生き残って

いた旧ドイツ軍研究者にEMPミサイルの小型化を依頼。ミサイルではなくレールカノン用の

砲弾に収めることに成功した。そしてパルヴァライザーのいる南極に単身乗り込んできた。

 

「クラリッサ、返事をしろ!」

 

「…あ……たい……ちょう…?」

 

「早く逃げるぞ! ここにミサイルが飛んでくる!!」

 

ラウラはクラリッサを抱え、くーちゃんとマドカ、スコールに近づいていった。ウィリアムは

何とか使える武器がないか探していた。

 

「私はいい! 早くこの子達を!!」

 

「スコール!?」

 

マドカとくーちゃんをラウラに押し付けて、スコールはこの地に残ると言い出した。

 

「最後くらい誰かを助けるのも悪く無いわね。さあ行って! 早く!」

 

「だ、だが…っ!?」

 

その時ラウラはスコールの足元を見て口を閉じた。足元には血が溜まっていたのだ。その血は

スコールの脇腹から流れ出していた。

 

「…すまん!」

 

「謝ることはないわ。あの子たちを必ず守ってあげて」

 

「…了解した」

 

ラウラはレールカノンを主任が埋まっている氷山に3発撃ち、最後の1発をウィリアムに放って

から武装をパージし、全力で離脱を開始した。

 

 

 

 ラウラ達を見送った後、スコールは仰向けに倒れた。寒いはずなのに感覚が鈍っているため

何も感じなかった。

 

(オータム…もうすぐそっちに行くわ…)

 

スコールは目を閉じようとしたが…ビッグトーラスマンがアザラシよろしく腕だけで這いずり

出したため、思わず怒号を上げた。

 

「うるさいわね!!」

 

 

 

 

 

「離してよ! ラウラ殺せない!!」

 

「どいてください!!」

 

その頃アンサラーではシャルロットとリリウムが武装警備員に取り押さえられていた。

 

「無理です! これはアライアンスからの命令でして…」

 

「「そんなの知ったことか!!」」

 

2人にとって、

 

アライアンス<<<<<越えられない壁<<<<<<ウィリアム

 

なので仕方ないのである。それを艦長も知っているが必死に止める。

 

「ですがまもなくミサイルが着弾します! もう間に合いません!!」

 

「そんな…」

 

「ウィリアムお兄様!!」

 

「主任!!」

 

 

 

 

 

ウィリアムは腕だけで何とか這って、主任の墜落現場まで行った。近づくと、主任が

元気な姿で現れた。

 

「ウィル! 無事か?」

 

「何とかな。そっちも無事で何よりだ。にしてもまさかEMPを使ってくるとはな」

 

「全くだ。さすがにEMP対策まではしてなかったからなあ」

 

ウィリアムも外に出て冷たい氷の上に座った。上を見ると小さくアンサラーが見えた。

 

「主任、まだ間に合う。脱出しろ」

 

「………は? いや、でもどうやって?」

 

「ビッグトーラスマンの脱出装置を使え。エクスシアのは使えんだろ?」

 

脱出装置は操縦席ごと装甲に守られつつ、安全な場所まで飛んでいくように設計されている。

 

「でもウィルはどうする?」

 

「なんとかするさ。早く行けよ。この後プロポーズするんだろ、キャロルに」

 

「…バレてたか」

 

珍しく主任が照れながら、ポケットから小さな箱を取り出した。純白の指輪ケースだった。

 

「お前は行きなければならん。今後のトーラスのためにも。だから行け!」

 

「…わかった。でもよウィル、1つだけ約束してくれ。お前も絶対生き残れよ?」

 

「俺が嘘ついたことあったか?」

 

「それもそうだな! じゃまた後で会おう!」

 

主任はビッグトーラスマンに乗って脱出装置を起動した。あっという間に空高く飛んでいき、

アンサラーに無事回収された。

 

「さてと…」

 

ウィリアムは座ったままノートパソコンを取り出し、もう1つの戦場を確認した。

 

「そろそろだな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこ!? どこなの箒ちゃん!?」

 

尋常ではないスピードで南極点からロス棚氷まですっ飛んできた束はすぐさま捜索を開始した。

レーザー砲で氷に穴を開けて海中に飛び込み、ハイパーセンサーで周囲を見渡す。すると

海底に小さな潜水艦が鎮座していた。

 

「見つけた!」

 

不思議なことに潜水艦の艦首近くの丸いハッチが空いたままになっていた。が、急ぐ束は

そこまで深く考えずにその中に入る。入る時ISを解除したので、束は即座に酸素ボンベを

使った。

 

 束が入るとハッチが閉まり、排水が始まった。きっちり水がなくなってから前の扉が開く。

そしてその先にケーブルやら機材やらが山ほど置かれていた。その真ん中に、寒さで凍えて

いる妹、篠ノ之箒がいた。

 

「箒ちゃん!!」

 

「…ね、姉さん?」

 

こっちに向かって走ってくる姉を見て箒は涙を流した。

 

「姉さん!!」

 

2人は手を伸ばして抱き合った。

 

「もう絶対に離れないよ、箒ちゃん…」

 

「姉さんこそもう何処にもいかないで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着弾まで5…4…3…2…1…ビンゴ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロス棚氷中心部のとある場所―箒と束がいる場所の真上―で起爆した35発のグングニル

巡航ミサイルは周囲に絶大なダメージを与えながらキノコ雲を空に向けて登らせていった。

通常のグングニルの弾頭出力は300ktだが、今回BFF艦隊が搭載していたのは、トーラスが

極秘裏に開発した弾頭で、弾頭出力は脅威の1.5Mtである。

 

 そして海中はもっとひどい目にあっていた。棚氷は非常に厚く、鋼鉄並みに頑丈なのだ。

その真上で1.5Mt×35=52.5Mtのコジマ爆発が起きると、棚氷はすぐには割れず、プレス版の

ように作用した。その下の動態的圧力は瞬間的なものになった。いかなる潜水艦だろうが

一瞬で押しつぶされるほど強力な動圧が発生したのであった。

 

 箒と束の乗っていた小型潜水艦は一瞬でグシャリと潰れた。姉と妹は抱き合ったまま

即死した。そして潜水艦はコジマ爆発を起こして消滅した。

 

 

 

 一方ロス棚氷は徐々に崩壊し始めた。が、そこに飛んできたのはいつか四国を砂に変えた

TF弾頭搭載のミサイルだった(第36話参照)。ひび割れた場所や大きなクレーターがある

場所まで飛んでいくと、上空で起爆した。するとなんということでしょう。崩壊寸前だった

棚氷が瞬く間に元通りに! ひびもなくなりクレーターも綺麗サッパリ消えた。

 

 

 

 

 

 同時刻南極点上空でアクチニウム級弾道ミサイル潜水艦が発射したSLBMが起爆した。

ミサイル1基には15発のコジマ弾頭が収まっており、1個の出力は500ktである。それが

2ダースなので、500kt×15×24=180,000kt、つまり180Mtになる。この爆発でまだ生きて

いたスコール、EMPでやられたエクスシア・ブラックバードとビッグトーラスマン、

そしてパルヴァライザーは蒸発した。爆発後、ここにもTF弾頭搭載のミサイルが飛んで

きて、ひび割れなどを修復した。

 

 ラウラとくーちゃん、マドカ、クラリッサは、爆発直後に大きな氷山の影に隠れたので

なんとか死なずに済んだ。アンサラー6機も強力なプライマルアーマーで守られていたため

乗っていた人々に怪我はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ…ウィリアムの姿は何処にもなかった…

 

 

 

 

 

続く…

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