IS インフィニット・ストラトス ~よくある転生のお話~   作:ホワイト・フェザー

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エピローグ ~一夏と鈴~

 一夏と鈴、そして鈴の両親は、旧日本で国家解体戦争が終わったのを見ていた。

テレビでは、南極から巨大なコジマ色のキノコ雲が2つ盛り上がっていく映像が

繰り返し流れていた。それを見た一夏は、極寒の地で戦っていたIS派の人々は

どうなったのだろうか、と一瞬考えた。だがすぐにその考えを頭から追い出した。

今は大切な彼女、鈴と一緒に戦いのない生活をしていこうと心に誓った。

 

「…というわけでだ。鈴! 俺と結婚してくれ!」

 

「何がというわけなのかさっぱりだけど…はい、喜んで!」

 

 1週間後、一夏と鈴は結婚式をあげた。式場は有澤重工が提供し、鈴の父親で

ある凰聞生(ファンブンセイ)の命の恩人であるサーダナとその妻シャミア、とても仲がいい

イルビス・オーンスタインや、その他多くの企業連関係者がが出席した。聞生が

アルゼブラでサーダナの専属料理人として働いていた頃、イルビスと知り合い意気

投合し、親友となった。また彼は、ネクストの操縦や整備などを聞生に教えた人

でもある。

 

 結婚式では、サーダナが長ったらしい挨拶をし始めたので、苛ついたシャミアが

(何故か持っていた)パイルバンカーで外の肥溜めにぶち込み、酔っ払った有澤

隆文が、息子である有澤則孝が開発した『どんな不感症の女性でも快楽の虜になる

夢の様な薬(副作用なし)』と、『どんなことをしても絶対に破れないコンドーム!

でもコジマだけは勘弁な』を一夏にプレゼントした。また、結婚式の横に生えていた

大きな木が、実はギリースーツを着たハイエンドノーマルで、中からタキシード姿の

リチャード・マクミランが出てきたり、いつの間にか結婚していたカラードランク9の

ホワイト・グリント(本名は相変わらず不明)とフィオナ・イェルネフェルトが、

2人の仲人でありラインアーク代表のブロック・セラノと一緒にやってきたり、例に

よってぐでんぐでんに酔っ払ったエイ=プールが、近くにいた”スマイリー”こと

メイ・グリンフィールドと一緒にミサイルについて熱く語り始めたり…まあとにかく

カオスだった。だが一夏と鈴にとって最高の結婚式だったのは言うまでもない。

 

 

 

 結婚から半年後、鈴の両親はかつてやっていた中華料理屋を再開した。有澤重工

東京本社とアルゼブラ東京支社に近い場所に店はある。昼時になると多くの企業連

関係者が安くて美味いランチを食べに来る。そして夜は豪華なコース料理を堪能

できるので、あっという間に有名店となった。各企業の社長も大好きな店であり、

変装したウィリアムとシャルロット、リリウムも食べに来た事があった。今度は

弁当でも作って昼時に企業へ配達するのもありだな、と聞生は考えていた。

 

 一夏は企業連に就職しようとしたが、どの企業に行くか非常に悩んだ。どの企業

からも熱烈なラブコールがあったからだ。悩んだ末に彼はGA傘下の非戦闘用ロボット

関連会社に就職した。自分の作ったロボットが人を殺したら、自分も人殺しと同じ

ではないか、と考えたからである。遺伝子組み換え人間である一夏はロボット関連の

知識をあっという間に覚え、1年後に介護用パワード・スーツを開発した。これが

かなりの売上を記録し、一夏は大金持ちになった。そのお金で彼は、中華料理屋の

隣の土地を買い、そこに剣道の道場を立てた。外観や内装は幼少期に通っていた

篠ノ之道場に若干似ていた。毎月日曜日に剣道教室を開き、近所の子供達に自ら

竹刀を持って指導している。

 

 

 

 そんなこんなで結婚から10年がたった。7年前に元気な女の子を出産した鈴は

立派な母親になっていた。一夏は会社で順調に出世し、家族の大黒柱として、

そして父親として生きている。週末は道場で朝から娘と一緒に剣道をし、練習の

後に鈴の両親の中華料理屋で昼食をとる。そんな生活を送っていた。

 

「ごちそうさまでした!!」

 

「よし、じゃあお片づけしような」

 

「うん!」

 

娘と一緒に食器を片付けていると、ナノマシン通信が起動した。企業連の一員と

なった一夏にもナノマシンが投与されていた。

 

(ん? 知らないIDだな…名前も顔写真も出ないし)

 

通常ナノマシンで通話をする時、受信する側には発信者の名前、ID、顔写真データが

送られる。昔の携帯電話の発信者番号通知サービスを向上させたものである。だが

この発信者はIDしか表示されていなかった。初めてのことに戸惑いながらも、一夏は

通話を開始した。

 

〈はい、織斑一夏です。失礼ですがどちら様でしょうか?〉

 

〈久しぶりだな、一夏。元気そうで何よりだ〉

 

〈うぃ、ウィル!?〉

 

その相手は他でもないウィリアムであった。

 

 

 

 

 

 数日後、一夏は月面都市に出張のため、スーツケースを引きずりながら家を出て

行った。鈴は一夏を見送った後、いつも通りに家事を始めた。だが鈴は気付くことが

できなかった。出かける一夏の表情がいつもより暗かったことを。

 

 一夏はまずGA東京支社まで電車で行き、そこで量子ポータルに乗って月面都市に

飛んだ。そして宇宙港へと行くとすぐに空港係員と重武装の警備員がやってきた。

 

「ミスターオリムラですね? どうぞこちらへ。お荷物をお持ちします」

 

「ああ、助かるよ」

 

荷物を持った係員に付いていく一夏。その周りを囲むように歩く4人の警備員。それを

見た周りの人々は『きっとあの人は超VIPな人なんだろうな』と考えていた。

 

(なんで俺こんなVIP待遇なんだよ!? 出世したとはいえ俺はまだそこまでの地位に

 いるわけじゃないんだぞ? これもウィルのせいか?)

 

数日前一夏にナノマシン通信をかけてきたウィリアム。彼は一夏にこう言った。

 

『久しぶりに会って話をしないか?』

 

と。一夏は悩んだ末に了承し、嘘の出張と称して月面に来たのであった。鈴に嘘を

付くのは嫌だったが、今回ばかりはその感情を心の奥に押し込んだ。

 

 

 

 歩くこと5分。宇宙港にあるVIP用会議室の1つに一夏は案内された。ノックをすると

聞き覚えのある声が返ってきた。

 

「入ってくれ、一夏」

 

中に入るとそこは第1月面宇宙港が見渡せる会議室だった。滑走路で宇宙船が離着陸をし、

奥の方にある貨物ターミナルでは大型の貨物船に月面の資源が次々と載せられていく。

さらに上を見ると、エクスプローラー級戦艦がゆっくりと月面軌道上の造船所に入って

いった。

 

 その光景に見とれていた一夏だったが、すぐに気を取り直して前にいる人間を見た。

そう、奥の椅子に座っている人物、ウィリアム・ロンバートを。

 

「直接会うのは何年ぶりだろうな? もう10年ぐらいか」

 

「ナーデルホルン要塞で会ったのが最後だろ。で、話ってなんだ?」

 

「ま、そんなに慌てる必要もあるまい。座って飲みながら話そう」

 

ウィルは会議室の隅にある冷蔵庫から冷えたウイスキーとグラスを取り出した。

 

 

 

2人は高価なウイスキーを胃の中に流し込みながらしばらく無言だった。

 

「一夏。いつかお前は俺に聞いたよな? なぜ戦争を始めたのか、と」

 

「…ああ、そういえば聞いたな。それが?」

 

「あの時俺は企業連が戦争を始めた理由を、既存の国家システムを全て破棄し、新たな

 統治体制、つまり企業連による世界の統治、そして人類の宇宙進出が目的である、って

 言ったんだが…実はもう1つ戦争をしなきゃならない理由があったんだ」

 

「なんだって?」

 

一夏は一気に酔いが冷めるのを感じた。ウィリアムはグラスを置き、テーブルのボタンを

押した。すると壁のモニターが地球を映しだした。

 

「白騎士と黒騎士事件、覚えているな? あれが起きるちょっと前に、企業連はコジマ

 発電技術を完成させた。これにより既存の発電所は全て骨董品と化した。発電量が

 半端無いし安定しているし汚染もないからな。人類のエネルギー問題の1つは無事に

 解決した」

 

「そういえばそうだったっけ…」

 

モニターには棒人間が喜ぶ映像が流れていた。何で棒人間なんだろう、と一夏は思ったが

何も言わないでおいた。

 

「だが1つしか(・・・・)解決していなかった」

 

一夏はウィリアムの言った意味を一瞬理解できなかったが、ちょっと考えればすぐに

分かることだった。

 

「この時点で、石油の採掘寿命は41年、石炭は115年、天然ガスは60年、ウランは65年

 だった。しかも技術の進歩により、採掘機械の高性能化が採掘寿命をさらに短くして

 いた。国家解体戦争が始まる直前に企業連が行った調査では、さっき言った4つの

 有限資源の採掘寿命はさらに縮まっていた。メタンハイドレートやシェールガスも

 使い始めたらいつかは無くなっちまう。じゃあどうするか」

 

ボタンを押すと、モニターには様々な戦争映像が流れた。それは第一次世界大戦や、

第二次世界大戦、パナマ侵攻、イラク戦争、そして国家解体戦争のものだった。

 

「その頃問題になっていた国家による統治問題もまとめて解決しようと思って、我々

 企業連は国家解体戦争を始めた。知っての通り結構な数の人間が死んだ。だが、

 言い方は悪いかもしれないが、有限資源を採掘する人間も死んだから採掘寿命が

 伸びたんだ。採掘現場が攻撃対象になったのもあるけど、あの戦争では殆どの国が

 国力を総動員して戦う形態の戦争、つまり総力戦体制になっていたからな」

 

「つまり…資源を使う人間を殺して資源の寿命を伸ばした、と?」

 

「それは付随的なものだ。戦争が終わり企業連が統治を始めてから、人類は本格的な

 宇宙進出を開始した。月や火星、グリーゼやケプラーに移住する人々も大勢いた。

 つまり地球からどんどん人が出ていったんだ。かつて地球上に存在する人間の数は

 70億を超えていた。今はなんと35億しかいない。残りは全部他の惑星に移住した。

 これからもっと出て行くだろう」

 

モニターの中の地球から宇宙船が次々と発進していく。

 

「他の惑星に移住できるようになっても、人類の故郷は地球なんだ。その地球の

 資源がすっからかんになるのは避けたかった。だから宇宙に進出し、地球にいる

 人間の数を減らす。そうすれば必然的に消費する資源の量も減る。はいめでたし

 めでたしってわけだ。でも肝心の宇宙進出が全く出来ていなかった。理由は単純。

 ISだ」

 

「ISが? 何でだ?」

 

「あれは元々宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツだ。

 しかし当時の国々はそれを軍事目的で利用していた。そんなことをしていたから

 人類の宇宙進出が遅れたんだ。それに気付かないクソッタレの国々は無駄に金を

 つぎ込みISの開発に力を入れた。だから潰したのさ。それに開発者の篠ノ之束は

 事あるごとに企業連にハッキングを仕掛けてきた。再三の警告を無視してな。

 だから本来の使われ方ではない上女尊男卑の原因だったISと、その生みの親の

 抹殺も、戦争を始める理由となった」

 

「束さんがそんな無謀なことまで…」

 

「中国と北朝鮮の軍事ネットワークにハッキングを仕掛けてミサイルを日本に

 撃つことはできても、企業連のネットワークにハッキングをするなんて、

 どんな人間にも不可能なんだよ」

 

中国と北朝鮮、ミサイル、日本。その単語を聞いて一夏はハッと思い出した。

 

「おいウィル、それってもしかして白騎士と黒騎士事件の事か?」

 

「あれ、知らなかったのか? あの事件は束とブリュンヒルデが起こしてテロだぞ?

 ISがどれだけ使えるかを世に知らしめようとしたんだ。ま、俺が介入したから

 おじゃんになったけどな。そうそう、あいつがナーデルホルン要塞から逃げた後、

 南米で何をしたか知ってるか? ”ボゴタの悲劇”だよ、知ってるか?」

 

「パルヴァライザーの! あれも束さんが!?」

 

一夏はパルヴァライザーに関する真実を全く知らないので、ウィリアムにとって

都合が良かった。

 

「あれに作ったのは束で、乗っていたのは篠ノ之箒だ。で、ボゴタで大暴れした結果、

 ハイエンドノーマル3個大隊に可変戦闘機4機が撃破され、大勢の民間人が死んだ。

 そういう奴らなんだよ」

 

「そんなことが…」

 

「ま、別にお前に許してもらおうとは思っていない。なんだかんだ言ってもお前の

 友人達が死んでしまった原因は我々企業連にあるのだから。だが真実は教えて

 おこうと思ったわけだ。だからお前を呼んだのさ」

 

「……………」

 

 

 

 その後2人は1時間ほど他愛ない話をした。一夏は、何故かわからないがIS学園にいた

時のようだな、と感じていた。今思い出すとあの頃が一番面白く、そして楽しかった。

 

「ウィル、最後に1つ教えてくれ」

 

「何だ?」

 

「…織斑千冬はどうなった? 死んだのか?」

 

一夏がそんなことを聞いてくるとは…ウィリアムは内心驚いていた。

 

「生きているぞ…多分」

 

「多分?」

 

「日本の何処かにいるはずだが…会いにでも行くのか?」

 

「いや、なんとなく聞いてみただけだよ。お、もうこんな時間か」

 

「ホテルまで送らせるよ」

 

そして2人は立ち上がって会議室を出ようとした。入口の前で一夏は足を止めた。

 

「ウィル」

 

扉を真っ直ぐ見ながら一夏は言った。

 

「俺はお前が昔やったことを許すことはできない。どんな理由があろうとも、だ。

 でも…真実を知ることができてよかったよ。ありがとう」

 

「礼を言われるほどのことでもないさ」

 

「いやマジでだよ。よく思い出したらさ、臨海学校の時俺撃墜されて宿にいただろ?

 目を覚ましたら箒がキスしようとしててさ。慌てて箒をどけたんだけど、その後も

 しつこく体を押し付けてきてさ…箒にしては珍しいと思っていたんだけど…よく

 考えたらあれって…」

 

「そりゃ…あれだろうな。束陣営にさらに引きこもうとするハニートラップじゃん」

 

「ないわー」

 

「だな」

 

2人は、やっぱ篠ノ之姉妹はクソだったんだと改めて認識した。

 

 

 

 ホテルで一晩過ごした一夏は家に電話をし、出張が予定より早く終わった、今から

帰る、と伝えて地球に戻った。家に帰ると鈴が抱きついてくる。

 

「おかえり! あれ一夏、なんかあったの?」

 

「え、なんで?」

 

「だって…なんかすっきりしたー! みたいな顔してるもん」

 

「ああ、それか」

 

一夏は行くときとは違って笑顔になっていた。

 

「偶然月で旧友と会ってね。久しぶりに色々なことを話してきたのさ」

 

「そっか。じゃあご飯食べよ!」

 

「ああ!」

 

 

 

…俺には両親がいなくて姉しかいなかった。家族っていうのはよくわからないまま

育った。でも今は愛する妻と子供がいて、義母さんと義父さんもいる。これが俺が

求めていた家族ってやつか。もう過去のことは忘れよう。そしてこの家族を守る

ために生きていこう。

 

一夏はそう心に誓った。




なんか微妙な気が…でもいっか! 一夏も単純(っていう今考えた設定)だし!
次回は山田真耶と愉快な仲間たちのエピローグです。

あと活動報告にも書いた通り、次回作で悩み中ですハイ。
試しに短編で投稿してみて、良かったら連載するみたいな感じも
ありですかね?

ではまた次回!
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