光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある   作:ウルトラネオン

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スレ81

 

オーブとフィフティが激戦を繰り広げる少し前の事―――

 

 

 

 

◇ジャグラー

 

あいつらが…カケルとガイがマガタノオロチに立ち向かっていった。勝算がある訳でもなく、ただ大切な何かを守る為。

 

そんな2人を尻目に…俺はただ座っているだけだった。

 

「まさか…ガイさんとカケル君がウルトラマンだったなんて…」

 

「僕もまだ夢を見てるんじゃないかと思います…」

 

ガイの周りをウロチョロしていた奴らは、あいつらがウルトラマンだという事実にただ驚いているばかりだ。

だがそれも当然の話。近くにいた存在が突然ウルトラマンとなって戦っている。

 

その事実がどれだけデカいなんて、簡単に想像できた。

 

かつて、戦士の頂の頂上で似たような事を経験しているからだ。所詮そんなもんだ、その事実と大きさに途方もないなにかを感じ、ただ何も出来なくなる。今の俺と似たようにな。

 

が、そんな俺の淡い思いは…。

 

「何言ってるのよ貴方達!今はそんな事に驚いている場合じゃないでしょ!」

 

そう言ったのは、ナオミだった。

 

「で、でもキャップ…」

 

「そうじゃないでしょ!?ガイさんに何を言われたのよ!?ただ驚くだけ?怪獣から逃げる為?違うでしょ!」

 

その顔は硬い決心がついているようにも見えた。

 

「私達の力を貸して欲しいって…そう言ってたでしょ!!なら、その期待に応えないと!」

 

するとどうだ。先程までオロオロしていた奴らは、顔に力が入ってナオミと同じ顔つきになる。

たった一言で、この場は変わったのだ。

 

「ジャグラー様…」

 

声がしたので振り向くと、ほぼ至近距離にビランキが横で座っていた。最早驚く事もしなかったが、悲しげな顔でビランキは優しく俺の手を握っていた。

 

「…そういや、お前も俺を繋ぎ止めようとしていたな」

 

「いえ、私はジャグラー様の側に居たいだけなんです」

 

思えば刑務所惑星の時、使えると思って救出した程度の存在だったのにいつの間にかこんな顔をするくらい成長したのか。

真剣な眼差しで俺を見てくる。まるで、まだ間に合うと…そう訴えるように。

 

その現状を見かねたのかナオミも俺の方へと近づいて、同じ目線になるように腰を低くした。

 

「こんな所でウジウジしたって駄目!アンタ、前に私と一緒に夜明けのコーヒー飲もうって言ってたけどさ今頑張らないと夜明けなんて来ないのよ!」

 

言葉に怒気を持ちながらナオミが訴える。俺の姿に呆れたりしているのか…それとも情けなく思えているのか。

 

「アンタとガイさん…カケル君の間に何があったかは私達には分からない。でもね、アンタがひいひいおばあちゃんを助けてくれなかったら私はここに生まれてこなかった」

 

「………」

 

その言葉に、どれだけの意味が込められているのか。それが分からない俺ではない…だが…。

何かを犠牲にした生き方をしてきた自分に今更何が出来るのだと言うのだろう?

自分の生き方に疑問を思った事も、それを止められないと思っていた自分に今更…。

 

「そう…ジャグラーさん…」

 

ナオミでもなければビランキでも…ましてや他の奴らとも違う声色。かつて自分が切り捨てようとし、カケルが守ろうとした物。

 

トーアと呼ばれた小娘は、少しばかりボロボロだったがゆっくりとこちらに近づいてくる。

 

「貴方はカケルやガイさんのように…誰かを守る優しさがある」

 

「……小娘」

 

「あの時、あの決断を…あの結末を強いたのは私が弱かったから。貴方に、カケルを殺させてしまったのは…私の責任」

 

俺は顔を上げた。小娘の口からそんな言葉が出てくるなど、微塵にも思っていなかったからだ。カケルを殺したのは俺だ、恨みを抱いていると思っていたが小娘の顔や声色を聞く限りそんな感情は一切見受けられなかった。

 

寧ろ、悲しみを抱いたような―――。

 

「貴方の気持ちは辛い程分かる。自分がやってきた事も、何もかもを」

 

「………っ」

 

「だから……決着をつけよう。あの日の事も、全部」

 

そう言って差し出された手。

俺はその手に―――吸い込まれるかのように―――

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

マガタノオロチが放とうとした最大の攻撃。

それはたった1つの斬撃によって防がれた。

 

2人のウルトラマンは斬撃の放たれた方に向く。そこには2人にとって先輩でもあれば相棒として。そして………共に戦う戦友とも呼ぶべき人がいた。

 

ジャグラーは無言で、ゆっくりと2人のウルトラマンの前に立つ。言葉を交わさなくとも、その背中が「行くぞ」と訴えている事が2人には伝わった。

 

膝をついていたオーブとフィフティは立ち上がる。2人のカラータイマーは点滅し、先の戦闘のお陰でボロボロだった。けれど、オーブとフィフティはこれまで以上に力が湧き上がってくる。

一度は修復が不可能なくらいに関係が崩れ、袂を分かってしまった3人は目の前の強敵に立ち向かう。

己の正義、己の願いを成し遂げる為に。

 

「……そういえば、この3人で戦うのは初めてなんじゃないです?」

 

「だな。俺もまさか、こんな風になるなんて思いもよらなかったからな」

 

「無駄口を叩くな。…来るぞ」

 

眼前の標的、マガタノオロチは再び吠える。向こうもまだまだ戦えるという意志がヒシヒシと伝わってくる。

3人の戦士は互いに構え、マガタノオロチは全身からマガ火球を、竜巻を、マガ冥闇を、触手を次々と展開していく。

 

「ジャグラーッ!!」

 

「フンッ!!」

 

降り注いでくるマガ火球を、オーブとジャグラーが斬撃を以て全てを切り裂く。マガタノオロチから放たれているマガ火球の数は数えるだけでも馬鹿らしくなるくらい多いが2人の完璧な連携によって全て撃ち落とされていた。

 

その2人の行動を止めようと、触手が地中から這い出てくる―――

 

「させるかっ!チェーンソーッ!光ッ輪!!」

 

超スピードで手の甲から伸ばされた光輪が触手を全て切り裂かれる。触手は性懲りもなく生え出てくるが、1、10…と出てきた所を片っ端から切り裂いていく。

 

中には、生え出て来る所を予想して湧き潰しすらしているがその超スピードで移動しているフィフティにマガタノ迅雷を放つマガタノオロチ。

 

完璧なタイミングで放ち、それは敵ながらも見事なタイミングで命中―――

 

「シェアッ!!」

 

「ハァッ!!」

 

することはなかった。

 

マガタノ迅雷が放たれた進行方向上にジャグラーとオーブが互いの剣で防いだ。

マガタノオロチも負けじと、マガタノ迅雷のパワーを更に上げて押し返すがそれを見たフィフティが即座にチェーンソー光輪を交差している2人の剣に合わせる。

 

「「「オオオオオォォォォ!!!」」」

 

「ガァァァァ!?」

 

結果、マガタノ迅雷は3人のパワーに打ち負け押し返され―――更にはそのマガタノ迅雷はマガタノオロチ自身に刃を向いた。膨大なエネルギーの塊は自身の口へと押し戻され、逆流によって巨大な爆発を起こす。

 

爆発の影響で体勢を崩し、後退してしまう。そしてその隙を逃す3人ではなかった。

 

「「「ハァッッ!!!」」」

 

3人の刃が同時に振り下ろされる。

刃が当たった衝撃で火花が散り、ドス黒い血が吹き出てくる。マガタノオロチが喰らった攻撃の中で、最も手痛い攻撃だったが攻撃の手はまだ緩まない。

 

振り上げ。

 

突き刺し。

 

横に切り。 

 

縦に切る。

 

全く同じタイミングで、3人はかつてない程のコンビネーションをマガタノオロチに叩き込んだ。マガタノオロチの体表は瞬く間に傷つき溢れ出る出血が止まらなくなっていた。

 

だが……そんな状態でもマガタノオロチは決して弱まる事はなかった。

 

「ガァァァァァァァァ!!!」

 

強引に体を捻らせ、尻尾で3人を大きく吹き飛ばす。無理な体勢で動作した分、威力は控えめだが今の3人の状態からしてそんな攻撃も馬鹿には出来ない。

 

吹き飛ばされながらも3人は再び立ち上がる。マガタノオロチのタフネスには最早呆れを通り越して尊敬すら思えてくる。

このままやった所で拉致が明かない―――そう思った時だった。

 

『オーブッ!フィフティッ!ジャグラーッ!!』

 

何処からか3人を呼ぶ声がする。声がした方向には街の放送が行えるスピーカーがあり、そこから声がしていた。

その声の主は、SSPの3人の1人の早見善太ことジェッタだった。

 

『マガタノオロチの倒し方が分かったんだぁー!』

 

その言葉に3人は耳を傾けたのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「行っちゃったね、あの人も」

 

「ええそうよ、アイツが頑張るんだから私達も頑張らないと!」

 

そう勇気付けたのはナオミだ。ある意味、ジャグラーに喝を入れた自分がこんな所で立ち止まっている訳にはいかないと自分にも皆にも言い聞かせるように奮い立たせる。

 

「よーし、なら僕も一肌脱いじゃいますよっ!」

 

「シンさんいつも脱いでるような…」

 

「細かい事はいいんですよジェッタ君。それよりもあの怪獣について分析を始めないと」

 

手に持っているタブレットを全力で操作するシン。その姿に、ナオミやジェッタに渋川は勿論の事、ビランキやトーアもまじまじと見ていた。

 

タブレットの画面には複数のグラフやマガタノオロチのニュートラル分析、太平風土記の断片のデータ。手元に太平風土記の原本も広げて検証、考察を徹底的に行った。

 

「そもそもマガタノオロチとはどういうものか、行動原理は…」

 

「はい、私知ってる」

 

 

名乗り上げたのはトーアだった。手をピシッと上げている姿に愛嬌があるものの、それ以上にSSPメンバーは疑問を浮かべていた。

 

「えーと、君は…?」

 

ずっこけるビランキとトーア。

そういえばビランキはまだしもトーアは自己紹介すら行わずここに現れた為、SSPメンバーからすれば誰だコイツ状態だった。

 

トーアは改めて自己紹介を行う。

 

「トーアです。カケルの………相棒?相棒です」

 

「色々疑問がありますがこの際それは後です。して、マガタノオロチの行動原理は?」

 

「食べる事。もっと言えば食べた時に現れる幸福感を楽しむ事」

 

「だとすれば、あの怪獣は際限なく食べまくる…と仮定して良さそうですね」

 

「そんな怪獣なんだアレ…」

 

ジェッタの言葉にトーアは頷く。それだけ奴がやばいと言う事以外、言葉がなかった。

 

「けれどもあの体積比からしてどう考えても星を食い尽くすなんて物理的に不可能。とすれば…あの怪獣は底なしの怪獣となりますね…」

 

「そうよ、あの超大魔王獣マガタノオロチは星々を食い尽くし宇宙を破滅させるという言い伝えがあるくらいよ」

 

「そんな言い伝えが…。ならばこの光を宿すというのが余計に分からなくなりました」

 

太平風土記の原本を見つめるシンは頭を抱える。混沌の光というのは恐らくオーブの事だろうとは彼は推測している。この光を宿す、という事が最も重要な部分だとシンは直感で感じていたのだ。

 

「うーん…底がないなら蓋をすればいいのにね」

 

とナオミが呟く。

 

「あのねナオミちゃん、底が抜けた瓶じゃないんだからさそんな簡単に行くわけないじゃないの。えぇ?」

 

「うーん…?」

 

ビランキが何やら思案を始めた。その姿にシンは疑問を浮かべていた。

 

「どうしたんですビランキさん?」

 

「あ…いやウルトラマン達は体を光にして体内に入り込んだり出来るのよ。けどそれが出来たからってなんなのよって話だけれども…」

 

「…………いえ、待って下さい!」

 

何やら興奮した様子でシンはタブレットを激しく操作する。そこにはマガタノオロチのデータ、具体的には体内のデータの解析が行われていた。

 

そして、映ったのはマガタノオロチの中心核にある一点の部分。

 

「やはりそうですか。これなら…」

 

「どういう事なのシン君?」

 

「つまりはこう言う事です。マガタノオロチの体積で星をも食い尽くす程の食欲、それは…この中心。この部分は恐らく食べた物を即座に自身のエネルギーとして変換する力があるんだと思います。だからガイさんの光線が食い尽くされたんです」

 

シンが指している一点、そここそがマガタノオロチの最大の強さだともシンは説明した。その説明にシンは続けて語る。

 

「光を宿す…つまりはマガタノオロチの体内に入り込みます。で、体内にてその中心核を塞ぎます。光線を吸収されないようにし…混沌の光、つまり外からありったけの光線をマガタノオロチに喰わせる事でマガタノオロチを倒せるんだと思います」

 

「でもシン君、光線を食べさしたら意味がないんじゃ…」

 

「ガイさんの戦闘を見る限り、生半可の光線じゃ体表で受け止められるだけです。そして、生物は外は強くても中は脆いものです」

 

「成程、一応は理にかなってるわね。けど…」

 

「どちらかの負担が大きい…」

 

そこで話が止まる。マガタノオロチに飛び込むという事は、ほぼ自殺行為にも等しい。どちらかのウルトラマンが激しい負担を背負い、最悪死に至る可能性もある。

 

「仕方ないわ、あのウルトラマン達に伝えるわよ」

 

「ちょ、ビランキ!?今の話聞いてた!?」

 

「聞いてたわよ。その上でその手しかないのも分かる。あの3人ならなんとかするわよ」

 

「そんな無責任な!」

 

「そうかも知れないわね。でも…あの3人ならきっと出来ると私は思うわ」

 

「何でそう思えるのよ…?」

 

「御生憎様、付き合いだけなら貴方達より私の方が上よ」

 

サラッとビランキはそう言った。そしてビランキはトーアに顔を向ける。ビランキの顔は苦虫を潰した顔を浮かべていたがトーアはそんなビランキを真っ直ぐ見つめる。

 

「大丈夫、例え何があろうと…私が助け出す」

 

「そう…。なら―――」

 

「待ってくれよ!」

 

止めたのはジェッタだった。その顔つきはいつにも増して真剣な顔つきだった。

 

「伝えるなら俺が伝える。ガイさんやカケル君に…そんな無茶な事やってくれって頼むんだ。なら、せめてこの星に住む人間が言わなくちゃ不義理だろ!?」

 

「…ちゃんと伝えられる?」

 

「俺達だってウルトラマン達が戦っている側にいたんだ!これくらいの事はしないと!渋川さん、街の放送スピーカーでどうにかして伝えられないかな!?」

 

「…上に頼めば行ける。少し時間がかかるかもしれないから待ってくれ」

 

戦況が、一歩前進した瞬間だった。

 

 

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