光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
マガタノオロチ戦から半年近く立ってます。
◇シン
「いや〜あの戦いから随分経ちましたけど、なんだかんだ慣れる物ですねこの光景」
怪獣の出現も劇的に下がり、今日も研究とサイト更新をする日々。デスクにあるPCを動かしつつ、目の前に広がる光景を眺めていた。
「ちょ、トーアちゃん!?それ俺の残してたプリン!?」
「ごめんなさい、もう食べてる」
「食べてるじゃないよ!?」
ジェッタ君が残していたプリンを、それはそれはとても美味しそうに食べているトーアさん。
「カケル君…今月すっごい家賃がやばい…」
「知ってます……でも明日給料入るからなんとかなり…ません…?」
「私、もう一つバイト掛け持とうかな…」
「いや、俺が掛け持ちしますよ…」
などと、ちゃぶ台に突っ伏しているキャップとカケル君。あの戦いの傷が治り、ある程度動けるようになったカケル君ですが流石に申し訳ないとバイトを掛け持ってくれたようです。
キャップも一時期は「お金の事情が解決する!」とはしゃいでいましたが、人数が増えた事であまり変わらなかったようです。僕も一応は工事にアルバイトとして行ってる時もあるので多少はお金が入るのですがそれでも足らないとは…。
「相変わらず、貴方達は面白いわね」
「こちとら死活問題なのよ…」
「貸してあげようか?」
「え?いいの?」
「やめといた方がいいですよナオミさん…。後で倍以上にふっかけられるんで」
「あら?もう一度私の所で働きたいのカケル?いつでも歓迎するわよ?」
「二度ごめんだよ!!あれ色んな意味できっついんだよ!?」
カケル君は一度だけ、アルバイトという形でビランキさんが勤めている場所に行った事があった。なんでも、ビランキさんは美術品や古物の商売をしているらしい。しかも宇宙人相手に商売をしていると言うのだから、僕も少し興味はあった。
一度、僕やジェッタ君なんかも見学させて貰らいたいなと聞いてみたが、流石に危ないしお客さんの信用を失ったら不味いとのことから泣く泣く断念。
そんな興味溢れる仕事にカケル君は朝から晩にかけてまでフルタイムでやらされたらしいですが、帰ってきた時は疲労ですぐに倒れてしまったのです。
仕事内容は、普段ビランキさんがやっている事全てとの事ですが…ウルトラマンでも疲労するとは余程忙しい仕事なのか。ジェッタ君共々、少し震え上がった物です。
こんな、変わらない毎日が続くのはいい事はです。
さて、僕も新しい研究や開発をするとしましょうか!
手始めに、鉄の錆を即効で落とす新薬品の研究です!!
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◇ジェッタ
ある日の事。
今日も今日とてSSPはミステリーや不思議な現象の調査を行うべく、俺達SSPは新メンバーを加えた5人で静岡県にある富士山……の麓にある富士樹海に来ていた。
キャップ、シンさん、カケル君、トーアちゃん、そして俺。
撮影用カメラをトーアちゃんに任しつつ、サイトに上げる動画の撮影を俺達は行っていた。
「さぁ来ました富士樹海!今日来たのはある謎の解明です!」
カメラに視線を合わせつつ、ナレーションをこなしながら俺は富士樹海の謎を説明していく。
富士樹海―――一度入ってしまえば二度と出ることが叶わないと言われる程深い場所で、年々行方不明者や失踪者なんかが出ている。そんな危険な場所の更に奥深く、ある噂があったのだ。
「この富士樹海…衛星上でも観測出来ない場所があるとかないとか。その噂が真実なのかどうか、それを解明する為に我々は樹海の奥深くに進もうと思います!」
そう締めくくった俺は、トーアちゃんに撮影ストップの合図を送る。ここからは歩くだけの単純な物しか映らないのでカットし、目的の場所を目指すつもりだ。
「はぇ~、いつも思うけど手慣れてるねジェッタ君」
「でしょ?伊達に俺もクリエイターとしてやってるって事はあるっていうか」
ふふん、と鼻を少し擦る。褒められていい気分になるけれど、それはそれとして気を引き締めていかないと行けない。
何せ、ここは失踪者や行方不明者が多く報告されている場所だ。カケル君がいるとは言え、怪我をしたり…もしかすると本当に行方不明になるかも知れない。
初心を忘れない事、安全第一に行動する事が大事だ。
「それじゃ行くわよ!サムシングサーチピープルッ、出動!!」
「「「ラジャー!」」」
「おー」
トーアちゃんだけ何故か棒読みに近かったが、謎を解き明かす為にいざ出動!
まあ、結論から言うと。
「で?ここで地球人を攫っては標本にして人身売買だぁ?これはギルティ」
「ひ、ひぇぇぇぇぇ!?」
うん……酷い惨殺現場になってた。
今、目の前でカケル君は宇宙人のダダって奴の胸倉を掴んでいた。そして周りに広がっているのはそのダダの同胞だった者達。
樹海に入った俺達は、カケル君のサポートもありながらも順調に進んで行っていた。
シンさんが作ったって言う、反転計測器なんちゃらって言う装置で衛星でも発見出来ない場所を逆手に取って…ようは観測されない場所を特定して調査を行っていた。
その調査を行っている時、キャップが攫われた。
悲鳴と共に何処かに消え、俺とシンさんは焦っていたがカケル君とトーアちゃんは違った。
トーアちゃんが「あっち」と指を差すと、カケル君は俺とシンさんを雑に抱えて目にも止まらぬ速さで道を走っていった。
気がつけば、俺達はどう考えても宇宙人が作ったであろう見たこともない建造物の中にいた。地球の建物の内装とはかなりかけ離れており、美的観点から見ても異質だった。
まじまじと見ていると、背後から声がした。
「きゃぁぁぁ助けて……え!?なんでいるの!?」
キャップだった。
凄い顔面の宇宙人がキャップを担いで現れたんだ。いや、現れたというよりは建造物に入ってきたというべきか……ていうかカケル君これ先回りになってない?
「な、なんでお前らがここに!?」
「遅いから悪いんだよ。―――すぐにその人を離せ。じゃないと殺す」
「へっ!たった数人の地球人に何が出来るってんだ!おい野郎共!!」
この顔面宇宙人が号令をかけると、何処から湧いてきたのか同じ容姿をした宇宙人達がぞろぞろと俺達の周りを囲んだ。
薄気味悪い声で嘲笑ってくる。これは流石に不味い―――
「俺等はここいらで人間を攫っては標本にして金儲けしてるんだぜ?お前らもその仲間にしてや―――」
「フンッ!!!」
一瞬だった。
たった数秒。たったの数秒だ。
目の前に青い風が通り過ぎたかと思えば、気がつけば周りにいた宇宙人達は倒れていた。しかもその宇宙人達は何処かしらの体の一部が無くなっていて、血とか内蔵とか色々飛び出していた。
隣を見てみると、カケル君の頬にほんのちょっぴり血のような物が付着していたので恐らくこの惨殺現場はカケル君がやったのだろうと理解する。
これにはキャップを担いでる宇宙人も啞然としていた。力が抜けたのか担いでいたキャップを落とし、キャッと悲鳴が上がる。
そして時は冒頭に戻り、カケル君が宇宙人に近づき、胸倉を掴んだ。
「で?ここで地球人を攫っては標本にして人身売買だ?これはギルティ」
「ひ、ひぇぇぇぇぇぇ!?」
有無を言わせず、宇宙人ダダの胴体に腕を突き刺し、貫通させて絶命させる。前から思ってるんだけどちょっと…いやかなり過激じゃないかな?
ほら、キャップも割とビビってるっていうか……シンさんはなんで宇宙人の死体に興味持ってるの?この状況で?
「あのカケル君、前から思うんだけど何もそこまでやらなくも…」
「ジェッタ君、死ぬ事に変わりはないんだ。それにこいつ等は地球人攫って人身売買とかいう糞みたいな事してるんだよ?」
「そ、そうだよね…!そうですよね〜…」
これ以上は考えない事にした。
けれど…これはもう撮影どころじゃないなぁ…。こんな惨状じゃ動画サイトに上げたら即BANだよ…。トホホ…。
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◇ナオミ
ある日の事。
私はとある人物を誘って、街にある喫茶店に足を運んでいた。
そのとある人物というのも―――
「ナオミにしては洒落た喫茶店知ってるじゃない」
「ちょっと、私にしてはってどういう事よ」
喫茶店の屋外のテーブル席。
向かいの席には、ミルクティーが入ったグラスを持っているビランキがそこにいたのだ。
いつもみたいに少し小馬鹿にするような顔をしつつも、何故か礼儀正しく座っていた。
こういうタイプは乱雑に座ってそうなイメージなのだけれど……いいとこ育ちなのだろうか?
「それで?私を誘った理由は?」
「うん…あのね。聞きたい事があるの。ジャグラーやカケル君…それにガイさんの間に何があったのか」
「……それ、私の口から聞く?本人達に聞けばいいじゃない」
「本人って、カケル君しかいないし…。それにカケル君も余り話そうとしないからビランキが何か知ってるかな〜って」
「何で、知りたいのかしら?別に知らなくても良い事でしょ?」
さっきとは違い、小馬鹿にしていた顔は真剣な物になっていた。
コーヒーの入ったカップを持ち、少し啜りビランキの顔に向き直す。
「知りたいの。貴方達がどんな旅路をしてきたのか。どんな思いで戦って来たのか。近くにいながら、全然知らないから」
「……はぁ、まあいいわ。それじゃ、私がジャグラー様と出会った時の話からしましょうか」
「え、そこから?」
「当たり前よ、それより前は本人達に聞きなさいな」
そして、ビランキは話してくれた。
ここから遠い星…刑務所惑星という物騒な名前の惑星で起きた出来事。古代文明、イシュタールという場所で起きた事を。
そして、私が思った事と言えば。
「ジャグラーの事、美化し過ぎてない?」
「そんな訳ないじゃない。全て事実よ」
ホントかな?
ビランキの話を聞く限り、いかにも白馬の王子様みたいな活躍の仕方だし……それにガイさんやカケル君の話はイシュタールでの事くらいしか話さなかった。
イシュタールでの出来事はビランキにとっても特別な物だったらしく、話している時は何処か懐かしむような顔をしていた。
でも…そんな顔を見ているとビランキの話は本当の事のように思えてきた。
「そして私はジャグラー様を求めて、北へ南へ!それなりに楽しい旅であり…同時にジャグラー様を見つけられない悔しさを感じていたわ。あの時までわね」
「なんか…アンタの話を聞く限りジャグラーはいい奴そうだけどねぇ…私には嫌な思い出しかないのだけれど」
「どんな?」
「なんか、ねっとりした喋り方するし…肩に顎乗せてくるし。助けてあげようって助けてみたらすっごい煽ってくるし!ホント、嫌な奴よ!」
「 おいおい、随分嫌ってるな?」
背後からの男性の声。
その声は聞き覚えがあって、忘れたくても忘れられない声の主だった。
「ジャグラー様っ!」
「ほいっ」
ジャグラーを見たビランキは脇目も振らずに飛びかかるが、軽やかに避けるジャグラー。文字通り、アスファルトの床にダイビングしたビランキだったがすぐに起き上がって再び飛びかかる。
それもまた、華麗に避けるとビランキの首根っこを掴んだ。
「ったく、お前はいつになったら落ち着くんだ?」
「ジャグラー様がいる限り落ち着きません!」
「はぁ…」
なんか…ジャグラーの新しい面を見れた気がした。
もしかすると出会った時からこの調子なのかな?
「で、だ。ナオミ、ここいらで最近おかしな事は起きてないか?」
「おかしな事なら目の前で既に起きてますけど?」
「フンッ」
皮肉たっぷりに言ってやったが意にも介さなかった。
「真面目な話だ。最近、ここいらで宇宙人が降り立ったって噂があってな。知らないか?」
「いや…知らないけど」
「なんだよ知らねえのか」
「そっちこそ、また何か企んでいるんじゃないの?」
「…まあ、俺には俺の目的がある。カケルとガイはどうしてる?」
「ガイさんは…まだ帰ってきてない。カケル君は家でバイト疲れを癒やしてる所よ」
「…あいつここで何してんだ」
こめかみを抑えるジャグラー。
ビランキの話を聞いた感じだと、ジャグラーにとってもカケル君は無視できない存在であり、カケル君もまたジャグラーの事を大切な存在だと思ってる。
…ジャグラーって実は苦労人なのだろうか?
「まあいい、カケルと話をするから早く案内しろ」
「ちょっと、まだコーヒー飲んでるんですけど!」
「………奢ってやるから早く飲め、いいな?」
最近降り立った宇宙人…一体、何処の宝石魔女なんだ…?