光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
時系列はジャグラーが地球に降りるほんの少し前の事です。
「んぅ〜、いいわねこの星!」
歓喜の声を上げるは、美術館の内装を思わせる部屋に装飾が煌めいた椅子に深々と座るその女性は傍らに置いてあるリンゴの形を象った宝石を大事そうに撫でていた。
女性は紫色のワンピースのような服装で、額に赤い宝石が嵌められたひたい飾りを身に着けている。首元にも指にも宝石やアクセサリーを装着したムルナウは、大きく展開されたディスプレイを愛おしそうに眺めていた。
そのディスプレイに映っているのは、
「こんな美しい星をそのままにしておくのはもったいないわ!私が永遠に宝石にしてあげましょう!このウルトラマンジュエリーのようにね!」
浮かび上がったのは2体のウルトラマンの宝石。いや、それは紛うことなきウルトラマンそのものだった。ただ、それは宝石にされているだけであって。
「うふふ…楽しみだわ!こんな美しい星を宝石にしたらさぞ―――」
『その必要はない』
この綺羅びやかな部屋にはムルナウ1人しかいない。だと言うのにこの場に他の声が聞こえてきたのだ。
かつて、この身にやってきたダークリングでカード化した部下の声でもなければ、普段からこの部屋の家事をやらせている者達のものでもない。
「誰!?」
『よかろう、名乗ってやろう。我の名は…ヒッポリト星人』
ヒッポリト星人―――数いる宇宙人の中でも別格の強さを持つ宇宙人。とある宇宙では、ウルトラ兄弟を相手にとって勝利したばかりかウルトラの父すら倒してみせた強豪宇宙人。
ムルナウの手元にもヒッポリト星人の部下はいる。だが、部下のヒッポリト星人にここまでドスの効いた声を出せるのかと問われれば間違いなくNOだとムルナウは答える。
つまり、この声は別のヒッポリト星人だと言う事。
『かつて我は、ウルトラマン共に負けた。ウルトラ8兄弟と呼ばれた、あのウルトラマン共に。しかし今度は違う!黒い影法師達によって蘇らせられ、再び復讐の機会を得た。』
「何よいきなりふざけた事言っちゃって!出てきなさいこの卑怯者っ!」
『貴様に用はない。用があるのはその手に持つ黒きリングのみ』
「なっ…!ダークリングが目的!?」
すると、部屋のありとあらゆる場所から黒い靄が部屋の中に充満し、ムルナウをも包み込む。
『いただくぞ、黒きリングを』
「や、やだ!?ダークリング!?私のダークリングがぁ!?」
黒い靄はやがて消えて、部屋に残るはムルナウのみだった。
ひたすら続く沈黙と無音、だがムルナウはある事を思い出す。
「そ、そういえば…最近宇宙のあらゆる場所に謎の銅像が建てられるっていう噂が…。もしかしてそれが奴…!?」
ムルナウ自身は聞いただけだが…宇宙に起こった事件。惑星を宝石に変えるムルナウとは違い、銅像が乱立する事件は耳に入っていた。
同業者かあるいは…とも思っていたがもしかするとそれが奴なのかもしれない。
「冗談じゃないわ!あんな陳腐な銅像より私の宝石の方が―――」
と言った所で、ムルナウの居る部屋は輝きに溢れる。
ハッ、とムルナウは思い出す。ダークリングが持ち主の力を増幅させる能力を持つ。ダークリングを失った今、その能力は失わられたという事で……。
「―――と、やっと解放されたぜ」
「ああ。だが…不味い事になったな」
2人のウルトラマンが宝石から蘇ったのだった。
「フッフッフッ…この黒きリングの力があれば、ウルトラマンだけではなく惑星や…果ては宇宙をも」
ヒッポリト星人は手に持ったダークリングを興味深く眺めていた。
計画は順調だ。
かつて、ウルトラマンのいない地球を狙って侵略をしたものの、そこでもウルトラマンに野望を阻まれこの身を滅ぼした。
復活させられた時は、欠けた力や調子を戻す為に幾つもの惑星でウォーミングアップをしていたがこれでようやく本調子に戻ったてきた。
すると、側に黒い影法師が小さな等身で何体も現れていた。
「ソウダ…チカラヲタクワエロ…モット…ツヨサヲ…」
「分かっている。貴様らの言う事は聞こう」
つくづく黒い影法師には縁がある。
かつて、地球を侵略した時にいた黒い影法師と今目の前にいる黒い影法師は
この黒い影法師はこの宇宙にいた存在だ。
その黒い影法師が何故、我を蘇らせたのか…それは黒い影法師もウルトラマン共に恨み憎しみを抱いていたからだ。
地球には、魔王獣と呼ばれる強き怪獣がいたと聞く。
黒い影法師は、その魔王獣の中でも特に力を持つ存在をより強くし、それを依り代にして邪神復活を試みていたそうだ。
が…計画はウルトラマンが魔王獣を倒した事で頓挫。復讐を誓い、長い時を重ねてわざわざ別宇宙の魂だけの我に肉体を与え復活させたのだ。
邪神復活……そんな事をして何をするのかは今はどうでもよかった。
要は、ウルトラマン共に復讐出来るという事こそが重要だった。
「さて、リングの力。存分に使わせて貰うぞ」
より力を付ける為、我は一度地球を離れる。
この黒きリングは持ち主の力を増幅させるだけでなく、対象をカード化してそれを応用できる力も持っている。
ならば強い怪獣、宇宙人を手下に置き改めてウルトラマン共に復讐してやる。
それまでは、仮初の平和を楽しむといい。
貴様達の絶望…是非この目で拝みたいものだ。