光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
◇カケル
デルタランス全体に振動が響く。
立てない程ではないにしろ、宇宙船という点において振動というのは決まって嫌な事が起こっている。
何かにぶつかったとか、宇宙船が壊れたとか。
けれど、振動の原因はそのどれでもない。
『オソレヨ』
『オソレヨ』
『オソレヨ』
『オソレヨ』
黒い影法師達の声が聞こえてくる。それは俺がいる管制室だけではなくこの宇宙船全体に届いているらしく、トーアからの念話でそれが分かった。
「トーア、それで何が起こってるんだ!?」
「(捕えていた影法師達が突然霧散した。恐らく…この宇宙船そのものに溶け込んでいる)」
「マジかよ!?」
すると、管制室にありとあらゆる機械が突然作動しだした。モニターやコンフィグ、スイッチ等が点滅し始め、宇宙船が黒い影法師達によって乗っ取られてしまう。
『ワープ装置、起動します。行き先は地球、地球です。乗組員の皆様は是非、観光をお楽しみ下さい』
「はい?」
アナウンスが入ると、映し出されていたモニター越しにゲートが展開されるのを見た。つまる所、俺がやった事は無駄になったのだ。
………こうなればワープ装置を破壊してでも止めるしか方法が無くなった。
「ケーラ…さんでいいのかな?単刀直入に言うけど、今からこの宇宙船のワープ装置を破壊する。このままだとワープ先の星…地球に被害が及んでしまうんだ。だからごめん、この宇宙船を傷つける」
「構い…ません。……私達…は、操られた…とはいえ、罪を犯し…ました。許される事では…」
「分かってるよ。気にするな、とは言えない。でも安心して、絶対に悪いようにはしないから」
「貴方…は…」
そう言って、ヒッポリト星人のケーラは意識を失った。影法師達に操られていたせいで体力を消耗していたのだろう、すぐ近くのシートに寝かせておいた。
ワープ装置が何処に設置されているのか、操作盤を弄ってモニターに表示させる。
場所は、今いる管制室とは真逆…デルタランス外部の最上部にあった。ワープ装置以外を壊さないように装置の形を頭に叩き込む。
ブレスレットを掲げ、ウルトラマンへと変身した俺はすぐさまデルタランスの最上部に向かった。
「間に合え…!」
地球へ飛ぶゲートはもうすぐそこだった。超スピードで移動中、ゲートの方へ目を向けると、そこには地球があった。
そこからガイさんやジャグラーさんの反応を感じる辺り、あれは確実に今いる地球そのものだった。
ゲートを通ったら最後、デルタランスに備え付けられてる大量のレーザー砲は地球に降り注ぐ。
「これ以上、そんな事させるかよ」
囚われていた怪獣達の想い、シャプレー君の友達やケーラさんの言葉を聞く限り、宇宙を観光するという目的の為に使われていたこれは、影法師達の手によってその目的とは全く逆の使われ方をしていた。
惑星を攻撃し、怪獣達を攫う。
ケーラさんもかなり思い詰めていたんだと思う。善意で使われていた宇宙船で侵略紛いの事をさせられていたのだ。
しかも強引に。
苦しかったんだと思う。じゃないとあんな悲しい顔なんかしない。
「―――あった!あれがワープ装置だな!」
どうやらゲートを通り抜けるよりも先に俺の方が到着するのが早かった。すぐさまフィフティウムミラージュを展開、トレギアさんのトレラシウム光線をワープ装置に目掛けて放つ。
光線が命中し、ワープ装置は火花を飛び散らせて爆散。
開かれていたゲートは粒子となって消滅する。
デルタランスが地球に接近する事は無くなり、ホッとした。だけどまだ全て終わった訳ではなく、デルタランスに取り憑いた影法師達を引き剥がさなければならない。
ともかく、状況を整理しようとトーアに念話を飛ばそうとした瞬間だった。
『オソレヨ』
『オソレヨ』
『オソレヨ』
影法師の声が聞こえたかの思えば、デルタランスから闇の力がどんどん溢れてくる。その力は巨大な何かを形成していき、円状の物体を作り出した。
『ホロビヨ』
『ホロビヨ』
『ホロビヨ』
『ホロビヨ』
デルタランスが移動を始める。この状況…スレ民の皆は恐らく地球にワープしようとしていると推測している。俺も同感だった。
相手は、一度は別宇宙の地球に侵攻した奴らだ。ワープゲートを作り出す事くらいなら出来るだろう。
……最悪な状況だ。さっきはワープ装置さえ壊せば問題無かった。けど今はゲートを影法師達が作り出している以上、大元の影法師達を倒す他ないがそれもデルタランスに取り憑いてるせいで簡単にはいかなかった。
それにデルタランスにはまだ宇宙人達や、大地さんにエックスさん、トーアにシャプレー君もいる。そんな状態でデルタランスを攻撃するのは駄目だ。
『ハハ、ハハハ、ハハ』
鬱陶しい笑い声が聞こえてくる。嘲笑って、見下して、煽るような笑い声が。
「くそがっ…!」
怒りで拳を握りしめていたその時、トーアから念話が飛んでくる。
「(カケル、この宇宙船を壊そう)」
送られてきた内容は、とんでもないものだった。
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カケルがワープ装置を壊した直後―――
「ゲートが閉じた!」
『こちらからも確認した。どうやら完全に停止したらしい』
宇宙船の振動が止まり、窓から見えていた巨大なゲートは消え去った。だが喜ぶのはまだ早い、影法師達が残ってるのだから。
「後は影法師達だけ」
「そうだ、奴らが残っている。地球に向かう事は無くなってもまだこの宇宙船は―――!?」
大地が言い切る前に再びデルタランスに振動が響く。部屋全体が赤く点滅し始め、警告音が鳴る。
「この感じ…影法師達はまだ…」
「どういう事なんだトーアちゃん!?」
「大地さん、まだ影法師達は諦めてない。闇の力がどんどん膨れて……」
「見ろ、あれを!」
シャプレー星人が指差す方向……それは窓越しに映る巨大な闇のゲートだった。それを見た瞬間、ここにいる者達は全て察したのだ。あれは地球に繫がっていると。
「影法師達はあんな事も出来るのか!?」
『不味いぞ!アレを通ってしまえば地球に到達する!』
「させない…!」
マガタノゾーア状態のトーアは再び力を溜めてデルタランスそのものに干渉する。
全体的に満遍なく取り憑いた影法師達を取り除こうとするも、千切った場所から次々と再生し始めていたのだ。
集合体となっているのか、この闇の力を放出させている心臓部分も見当たらない。必死に取り除こうと手当たり次第、闇を引き裂いているがこちらが処理するよりもあちらの再生が早い。
「ぐ…ぐぅ……!」
「トーアちゃん大丈夫!?」
「体は、問題ない…。けど処理しきれない…!」
デルタランスに取り憑いた影法師の勢いは止まらない。どんなに干渉した所でジリ貧だった。
『ゼツボウシロ』
一言呟いた影法師達が部屋中に漂った闇を一点に集中させる。そして大地が囚われていたあの場所から少量の光が湧き出ると、闇へと吸い込まれる。
『あの光……私と同質の!?』
「俺の中にあったエックスの光を抽出していたのか…!?だとするとアレは…!」
大地の推測は当たっていた。
影法師達が何故エックスを―――大地を捕えたのか。
影法師達は徹底的な復讐を望んでいた。
自身の計画が邪魔され、二度と返り咲く事など出来なかった……だからこそウルトラマンを憎んだ。
ウルトラマンを徹底的に陥れる為、敢えてその光を用いて別の存在…闇の力を持ったウルトラマンを作り出す事"も"考えていた。
長い別宇宙の旅路の中、偶々出くわしたこのデルタランスを乗っ取り、戦力を整え、丁度デザストロ迎撃の為に出動していたエックスを発見すると人造ウルトラマンを作る事に着手した。
そして今―――その巨人が姿を現す。
「イィィィィッサァァァァァ!!!」
普段とは違い、野太い声が部屋中に響き渡る。
エックスを模した姿、だが闇の力を纏った事で、体色は全て黒に染まっていた。カラータイマーは赤いが、それ以外の色はない。
光を宿していた瞳すら黒で塗りつぶされていたのだ。
「エックス…!?」
『…私の光を用いて作った人造ウルトラマン。さしずめ、ニセウルトラマンエックスと言ったところか』
「…………フッ!」
現れた巨人を、トーアは自らの鋏で捕らえようとする。ここで暴れられては厄介だ、今すぐ抑えないと被害が大きい。
大きく開かれた鋏がニセエックスを捕らえた―――かに思われた。
「サァッ!」
「っ…!?こいつ…!」
開かれた鋏はニセエックスの両腕に阻まれる。
単純なパワーが違うのか、それとも闇の力が強いのかは分からない。だが防ぐ、という事はかなりの力を持っている。
すぐさま身体から触手を生み出して畳み掛けるが、それを予測していたのかニセエックスは後ろへ飛んで回避する。
「(全力で戦おうにも…この場所じゃ滅茶苦茶にしてしまう。どうしたら―――)」
どうすればこの場を切り抜けられるか……その時。
「エックスゥゥゥゥゥゥ!!!」
「イィィィィサァァァァ!!!」
光と共にまた巨人が現れる。
大地とエックスがユナイトし、ウルトラマンエックスとなってニセエックスと対峙する。
銀色の巨人と漆黒の巨人は互いに取っ組み合った。
『トーアちゃん!ここは俺とエックスで留める!』
「その隙に、皆を安全な所へ!」
「うん…!」
エックスがニセエックスに手刀を繰り出し、怯ませる。
気合いの入ったいつもの構えを取り、この先には行かせないと身体で現す。向き直ったニセエックスも雄叫びと共にエックスに向かって走り出していた。
ウルトラマンと人造ウルトラマンの戦い……その隙にトーアことマガタノゾーアは闇の瘴気を、薄く部屋全体に広める。
薄く広めた闇は出力も抑えてか、人に触れた所で問題はない。優しく包み込むように、意志のない宇宙人達や怪獣達を闇の瘴気で抱える。
戦闘の余波に晒されないようにこの部屋から出さそうとしたが……突然、部屋にノイズが響き渡った。
『聞こえ…ますか?ケーラで……す』
ノイズ混じりの声は、この部屋のスピーカーから発せられていた。ケーラはこのデルタランスの持ち主、何処が疲れているような声はトーア達だけではなくデルタランスにいる全ての宇宙人に向けて言っている。
『デルタ………ンスの大通路を……あけ……す。意識がある…人は……脱出………』
その声と共に、部屋全体が揺れたかと思えば、部屋の中心に大きな穴が出現する。
トーアが覗いて見る。この穴は下のフロアへと繋がっているようで、その下のフロアもこの部屋と同様の大通路が開いていて、大通路はデルタランス最下部へと繋がっているようだ。
魔王獣の視力だと、最下部まで見渡すことが出来るのだが、最下部には巨大な宇宙船が鎮座している事が分かった。
宇宙船の中に宇宙船、なんて不思議な事だがあれだけの大きさの船ならばこの宇宙船に乗っている宇宙人達を避難させる事が出来そうだ。
「大地さん、エックスさん!」
「任せろ!」
『このニセエックスは…俺達が止める!』
意図を察したエックスと大地はニセエックスを押し返す。未だに暴れ狂っているニセエックスだが、その身体はエックスによって完全に抑えられていた。
闇の瘴気でデルタランス中の宇宙人達全てを中にある宇宙船に移動させる。無論、管制室にいるケーラも一緒に。
「(カケル、この宇宙船を壊そう)」
1つの戦いが終わりに向かっていったのだった。