光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
さて地球の方では一体何が…?
「よっしゃ、それじゃ俺達は街に何か変わりないかパトロールだな!」
元気良く喋ったのはヒカルだった。
カケルとトーア、そしてエックスが宇宙へと飛び立った頃、地球に残ったメンバーは各々独自の行動を取る事にした。
ジャグラーとビランキは、日本中から感じられる邪気を調査。
残ったメンバーは、異常がないかパトロールという事になった。
こちらの地球の季節は夏。
太陽が昇り、眩い日光を空から降り注いでいた。夏なので当然気温は高いので、パトロールに出ていたSSPの3人は既にヘトヘトの状態だった。
「あっつ〜…」
「ジェッタ君、暑いと思うから暑いのです。ここは涼しいと思えば」
「いやそれでもこの気温はやばいって…。もう32℃だよ?」
「確かに今は夏だけど……はっ!これは宇宙人の手による仕業!?」
「残念ながらキャップ、去年の夏の気温と変わらないので関係ないですね…」
手に持っているタブレットには過去10年の気温データが記載されており、それを見ると確かに気温に変化は見られなかった。
気が滅入ったのか、ナオミは側にあったベンチに腰を降ろしてぐったりとした。
「それにしても……あの2人は平気なんだな〜…」
「流石はウルトラマンといった所でしょうか…」
ジェッタが視線を向けているのは、ヒカルとショウの2人だった。この炎天下にも関わらず、2人は街の人に聞き込みや手に持った装置―――スマートシーバーを使って異常がないか調べたりしている。
余談だが、ヒカルとショウが持っているスマートシーバーを見たシンは、下心……もとい好奇心で装置の分解と解析を頼んだのだが、向こうの防衛隊の支給品なので却下されていた。
「やっぱり異常がないな。まだヒッポリト星人は来てないって事か……?ショウ、そっちは?」
「駄目だ、何も反応しない。俺の力でも異常がないか調べているが何もないな」
SSPの3人は知らない事だが、ショウは言わば地底人―――ビクトリアンと呼ばれる一族である。地上にいる人間達とは違い、ビクトリアンであるショウが感じられるものは幾許か違う部分もある。
ビクトリアンとしての力を使い、あらゆる面での調査も行ってはいるが中々成果がない。
地脈の変動、レイラインの異常、霊的な物まで範囲を調べているが何もない。
詰まる所、今は平和そのものだった。
「本当にヒッポリト星人が来るのかな…」
「何を言ってるのよジェッタ君、ムルナウって人が言ってたでしょ?ヒッポリト星人はウルトラマン達を恨んでるって」
「それは分かってるけどさ……にしてもなんの反応もないんじゃあねぇ…」
ジェッタの言うことにも一理あった。
そもそもの話、ムルナウがヒッポリト星人に襲われたのはSSPの拠点に来るよりも前の話。
ウルトラマンを恨んでいると言うなら、今この瞬間に襲ってきてもおかしくはないのだがその兆候は欠片も見当たらない。
襲撃の準備に時間を掛けていると言われたならそれまでだが、こうも平和が続くと防衛隊でもない、悪く言えばただの一般人に緊張を解くなと言うのも酷な話だった。
「うーん……おっかしいわねぇ〜…」
「ん〜……ん?ん!?」
「どうしたのシンさん?」
「大気圏から高熱原体が突如出現した……!?しかもそれが落下してきて……」
「え、なになに?怪獣でも現れた?」
「軌道計算して落下予測ポイントを立てると―――ここです皆さん早く逃げて!!」
シンが悲鳴にも似た絶叫をしたと同時に、空気が揺れるような振動が街一帯を襲った。
瓦礫が飛び、ビルの窓ガラスが割れては倒壊する。
巨大な砂煙を巻き起こし、中から異形の巨体の影が砂煙に映し出される。
そんな中、聞いただけで不愉快にも思える鳴き声が轟いた。
「ゴギャゴギャゴギャゴギャゴギャァァ!!」
両肩から砲塔と見紛うような特徴的なパーツが片方ずつに3本の計6本が飛び出し、左手は銃を模したような腕。
右腕に至っては最早腕の原型は残っておらず、照射装置のような物に3本の鉤爪が装着され、全身には幾つもの突起物がバラバラに生え出ていた。
既存の生物を機械改造したかのような姿―――奇機械怪獣デアボリックが突如として襲来したのだった。
デアボリックは咆哮を轟かせると共に、全身にある突起物とも思えるそれからビームやミサイルを無造作に撃ち出す。勿論、両腕の武器も肩の砲塔も発射していて、その姿は正に生きた要塞だった。
「なんだよあの怪獣…!」
「あれがヒッポリト星人の手先!?」
「分かりませんが可能性としては高いですよ!ともかく僕達は逃げましょう!怪獣相手じゃ僕達では太刀打ち出来ません!」
シンの言う通りだった。
なんの武器も持たない自分達じゃ逆立ちしたって怪獣には勝てない。だからこそ怪獣の相手にはそれ専門の相手が必要であり―――
「行くぜショウッ!!」
「ああッ!!」
その専門家はまさしく近くにいるのだから。
「ギンガァァァァァァ!!!」
「ビクトリィィィィィ!!!」
未来から来たウルトラマンと地底より現れたウルトラマン、その2人が光と共にやってきた。
2人のウルトラマンは走り出し、目の前で濃密な弾幕を繰り広げているデアボリックに突撃する。
デアボリックもそれに気付いたのか、弾幕をウルトラマン達に集中するがそれで怯むような2人ではなかった。
その弾幕をものともせず、デアボリックの頭部に2人の拳と蹴りが入る。ダメージを負ったデアボリックは、その痛みの強さに思わず弾幕を止めてしまった隙をギンガとビクトリーは見逃す事はない。
「オオオオオォォォォォ!」
懐に潜り込み、パンチのラッシュをお見舞いすると最後の1発はアッパーを繰り出す。
デアボリックの上半身が上に逸らされ、その視線の先には空から見下ろすビクトリーが、ビクトリウムスラッシュを放ってデアボリックに命中させる。
大きく吹き飛び倒れるデアボリック。しかし、攻撃を受けたとはいえ死んだ訳では無い。倒れたと同時にミサイルやビームを撒き散らし初めたのだ。
それはギンガとビクトリーを狙うだけではなく、街にも放たれる。
「ショウッ!」
「分かってるッ!ビクトリウムエスペシャリーッ!!」
ビクトリウムエスペシャリー―――ビクトリーの両腕両足、そして頭部にあるVの字のクリスタルから無数に放たれる光弾技。
その発射数は、ファイブキングの腹に存在する超コッヴから放たれる光弾を全て相殺できる程の弾幕量であり、デアボリックの弾幕をその技で全て落としていった。
が、街を守る行動に出るという事は敵からすれば隙のような物。元々狙われていた方のビームやミサイルがビクトリーに襲いかかる―――事はなかった。
「ショウラァッ!」
「コギャゴギャ!?」
ビクトリーに襲いかかってきたビームやミサイル、ついでにギンガの方にも来ていた物含めて、ウルトラマンギンガが銀河系を思わせる七色のバリアーで防ぎきっていた。
バリアーはデアボリックの攻撃ではビクともせず、ギンガがバリアーを展開したまま突撃。
デアボリックに触れる寸前、即座にバリアーを引っ込めて全身のクリスタルが赤く発光した事で放たれる技、ギンガファイアーボールが繰り出される。
「ギンガファイアーボールッ!」
「ゴギャギャギャギャ!?」
6発の火の玉が、デアボリックを大きく吹き飛ばした。
デアボリックの態勢が完全に崩れ、放たれていたビームやミサイルが収まる。
大きく倒れ込んだ事で瓦礫や煙が中を舞い、隙が生じる。
ギンガとビクトリー共々、デアボリックを仕留める為に得意の光線技のチャージを始める。
ビクトリーはエネルギー体のVの字を作り出し、ギンガは全身のクリスタルを輝かせる。
「ギンガクロス―――」
「ビクトリウム―――」
瞬間、ギンガに強い衝撃が走った。
「ぐあっ!?」
「!?ヒカルッ」
光線技を放とうとしていたギンガが突然倒れる。
何か硬い物にでも殴られたかのような倒れ方だ、焦ってビクトリーが背後に振り向いた時には既に遅かった。
眼前に無数の棘が生え出た棍棒にも似た物がビクトリーの顔にぶつけられ大きく倒れる。
とてつもなく強い衝撃。
流石のビクトリーと言えどもすぐには立ち上がれないくらいには痛いダメージだった。
両方のウルトラマンが顔を上げた時、そこにはいる筈のない怪獣が存在した。
「ザイゴーグ……だと!?」
「何でここに…!?」
かつてウルトラマンエックスのいた地球に現れた閻魔獣ザイゴーグ。
倒された筈の脅威がそこにいたのだった。