光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
「お前が黒幕かっ!」
オーブの言葉に、ヒッポリト星人はただ不気味に笑うだけだった。ヒッポリト星人の手が自身の鼻を撫で下ろす。その不気味な微笑みは、確かな余裕が感じられたのだ。
「お前の出した怪獣は俺達が倒したぜ。大人しく降参しろ!」
「甘いなウルトラマンギンガ。あの程度で勝った気になっては困る」
「だが、お前が持つ怪獣カードの中でも強力な奴だっただろ?諦めたらどうだ!」
オーブの問いにヒッポリト星人は答えなかった。ただニタニタと醜く笑っているだけ。
「悪いが、降参しないってんなら容赦しねえぞッ!」
「どうやら勝った事で調子づいて―――いるようだな?」
ヒッポリト星人が左手を翳すと、そこに刃が出現する。
いや、正確にはジャグラーが既に接近し、蛇心剣を振り下ろしたが防がれたのだ。
「…チッ!」
「中々手癖が悪い。貴様はウルトラマンではないようだな?」
「うるせえな黙ってろ、テメェの言葉には虫唾が走る」
「ジャグラー!」
振り下ろしている力を更に強めるジャグラーだが、その刃は精々ヒッポリト星人の手の平を傷付ける程度。肉体を切り裂こうにも力が強かったのだ。
通常の宇宙人ならば、蛇心剣で難なく切り捨てられるが目の前の宇宙人にはそれが出来ない。カラクリがあるとすれば―――。
「その力、ダークリングか」
「ほう、よく知っているな」
「影法師達をあらゆる場所に配置したのもテメェの仕業か」
「アレは我の支配下にはいない。勝手にやった事だが……好都合なのでな」
「
「どうかな?見た所、貴様にそれは不可能だ」
「ほざいてろ。―――フンッ!」
握られていた蛇心剣を強引に振り払って、再度攻撃する。
恐ろしい速度で蛇心剣を振るうが、その全てをヒッポリト星人は両腕で防ぐ。
縦に、横に、突き、それら全てが防がれる。ヒッポリト星人はそれをただ嘲笑うだけだったが、ジャグラーは瞬間的に闇の力を増幅。
刃の色が一気に赤へと変色し、強力な一撃がヒッポリト星人に叩き込まれる。
危険を感じ取ったのか、ヒッポリト星人はその攻撃を避けるが一歩遅かった。
僅かにだが切っ先がヒッポリト星人に触れた事で肉体の一部に一文字の傷がヒッポリト星人に刻まれたのだ。
「ぬ、ぅ……」
「真月斬波ァ!!」
間髪入れず、ジャグラーの秘奥義がヒッポリト星人に襲いかかる。しかし、その斬撃はヒッポリト星人が突然消えた事で空の彼方へと過ぎ去っていくのだった。
「何…ッ!?」
「遅い」
振り向いたのもつかの間、いつの間にか背後に居たヒッポリト星人が既に掌をジャグラーに向けていた。
手の平から、ヒッポリトミサイルが放たれる。至近距離だった為、ジャグラーに直撃して吹っ飛んでしまった。
「がっ…!?」
「このっ…!!」
見ていたオーブがすぐさま接近し、オーブカリバーを大きく振るうも白刃取りで受け止められる。上段から振り下ろした事で体重も乗っているのにも関わらず、オーブカリバーはビクともしない。
そうしている間にギンガとビクトリーがギンガスパークランスとシェパードンセイバーを携えて攻撃を仕掛けるも、ヒッポリト星人がまた消えた事でそれを躱された。
「大丈夫かジャグラー!?」
「チッ……奴め、テレポートを巧みに使いやがる」
忌々しそうに、煙を上げながらジャグラーはヒッポリト星人の移動方法の種を見抜く。
次にヒッポリト星人が何処から現れるか―――周囲を警戒するもヒッポリト星人は見当たらない。
一体何処に……?
「お前達には火炎地獄を与えよう」
ふいに、上から声がした。
声がした方に向いた時は既に遅く、ヒッポリト星人特有の鼻から火炎放射が放たれる。炎の範囲が凄まじく、四人の戦士を一気に覆い尽くす程のデカさだ。
3人のウルトラマンは急いでバリアーを張って火炎放射を防ぎきる。だがバリアーを張った所で、炎の勢いは増すばかり。
このままではジリ貧だった。
「今度は風地獄だ!」
ヒッポリト星人の鼻から放たれた火炎が止まったと同時に竜巻にも似た風が辺りを襲いかかる。
風の強さも火炎と同じく強大で、そこら中のビルや車等は舞い上がって酷く荒らされている。
同時に燃え盛っていた周囲は、強風によってさらなる炎へと進化し、炎の竜巻が起こった地獄とも言える現場になっていった。
その上、炎の勢いが止まるどころか更に大幅アップし、最早バリアーの内側以外は正しくヒッポリト星人の作った地獄そのものだった。
そしてウルトラマン達もその炎を身を防ぐのが精一杯で動けなかった。
「なんて力だ…!」
「これもダークリングの力の影響だってのか…!?」
「まずい……このままだとエネルギーが……!」
ギンガ、オーブ、ビクトリー共々のカラータイマーが赤に点滅し始める。これがどれだけ続くのか検討もつかないが…かと言ってバリアーを貼り続けなければ炎にやられるだけだ。
その時。
「どけぇぇぇぇっ!!」
3人の背後からジャグラーが飛び出す。
バリアーを突っ切り、自ら炎の中へと飛び込んだ。
「ジャグラー!?何しているんだ、やめろ!!」
「お前らに守られるくらいなら……こうしてやらぁぁぁぁ!!」
蛇心剣を握りしめ、エネルギーを纏わせる。
白く光っていた刃は赤黒く染まり、稲妻が迸る。
ジャグラーは自らのエネルギーを攻撃に転換。防御は全くせず、ただ目指すはこの炎を放ったヒッポリト星人のみ。
風のせいで威力や熱が上がった炎に身を焼かれながらも、それでもジャグラーはただ一点を目指してこの中を突っ切る。
―――こいつ等に守られるのは死んでもゴメンだ、なにより何も出来ない自分が許せねぇ。
たったそれだけの意思で、ジャグラーはヒッポリト星人の炎から抜け出した。
ヒッポリト星人もこれには予想外で隙を晒した。その僅かな隙をジャグラーは目掛けて一閃。
「蛇心剣・抜刀斬!!」
「がっ……!?」
空中に浮かんでいたヒッポリト星人の胴体が真っ二つに分かれ、落下していく。同時に、吹き荒れていた炎の嵐もも完全に収まって動けるようになったウルトラマン達はジャグラーの元に駆け寄り、焼かれたその体を支えていた。
「ハァ…ハァ……」
「ジャグラー!無茶し過ぎだ!」
「……………フン」
「お前って奴は本当に…!カケルが見たら何ていうか…」
「うるせえアイツを出すんじゃねえ」
「けれど、ジャグラーのお陰でヒッポリト星人を倒せたのも事実だぜオーブ。すまねえな、無茶させて」
「……フン、お前ら光の戦士がやわなだけだ。俺はこれくらい何ともね―――」
言いかけた時、俺がガイに突き飛ばされる。
突然の事で思考が回らず、八つ当たりか何かだと思った俺は即座に起き上がって怒鳴ろうとするも、目の前の光景は信じ難い事が起こっていた。
「油断大敵とはよく言ったものだ。だから貴様らは
先程切り捨てた筈のヒッポリト星人が目の前に現れていた。
それだけじゃない、奴の手の手の平から泥水のような液体がウルトラマン達に吹っ掛けられ、3人のウルトラマンは例外なくその液体を浴びた。
苦しむ様に藻掻いているウルトラマン達は、次第に足から固まっていく。いや、正確には…これはブロンズに―――
「ガイッ!!」
「貴様も死ねっ!」
「!?」
ヒッポリト星人の頭部の触覚から放たれたビームが俺を貫く。
苦しみと共に俺は巨人化が解けてしまい、そのまま地に倒れる。
意識外の攻撃はかなり効いた。変身も解け、辛うじて膝をつく程度には動けるくらいで全身にはダメージがかなりあった。そんな中、目の前でただウルトラマンが着々とブロンズ像になっていく光景を見ているだけだった。
だが、ギンガとビクトリーのカラータイマーから小さな光が放たれると俺の側に降り立ち、変身者である礼堂ヒカルとショウが地面に伏していた。
2人にもダメージはあって、ただ顔を上げるくらいしか力が残っていなかった。
「ガイ……ッ!」
完全な敗北。
俺達はヒッポリト星人が高笑いしているのをただ見ている他無かったのだった。
力尽き、目を閉じる寸前。誰かが駆け寄ってくるのを感じ、そこで意識は完全に途絶えたのだった。
ヒッポリト星人「ガハハ、勝った!劇場版ウルトラマンオーブ、完ッ!!」