光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
「それじゃムルナウちゃん、案内して」
「ムルナウ様とお呼びこのちんちくりんっ!!」
かくして、私を含めた5人はムルナウちゃんの拠点でもある館型宇宙船に向かっていた。
なんでも、ヒッポリト星人の襲撃で宇宙航行が不能な状態になっているだけで館としては外観は壊れてないという話だ。
ならその館でゆっくりしてればいいのにと思ったんだけども、インフラ……電気とか水道とか生活に最低限必要な所も破壊されているらしく、とてもじゃないが住めないという事。
「だから私達の所に住み着いていたのねぇ…」
「私もまさかアンタ達地球人の世話になるとは思ってもいなかったわ。生涯の屈辱よっ!」
「ちょっと!そんな言い方しなくてもいいでしょ!?何よ、ちょっと前までしょんぼりしてた癖に!」
ムルナウちゃんの言った事は確かに酷かった。まだ数日とはいえお世話になってるんだからもう少し言い方が……と、思ったらビランキお姉ちゃんが制止を掛ける。
「いいじゃないナオミ、言わせておきなさい。自分じゃどうしようもないから私達に縋ってるプライドが高いおばさんよ?アンタが気にする程じゃないわ」
「な、何よ!」
「そうでしょ?実際、アンタはダークリングがないとただのイカサマする詐欺師なんだから何も間違ってない筈よ?」
「ぐぐっ……」
ムルナウちゃんが拳を握りしめながら歯ぎしりしてる辺り図星のようだった。
「ムルナウちゃん、どんまい」
「………なんでこのちんちくりんに慰められてるのかしらアタシ…」
「ちんちくりんじゃないよ。トーアだよ?」
「ハァ……」
ため息つかれた。うーん……他に違う言葉を掛けるべきだったかな?
「あのー……仲良く雑談してるのはいいんだけどそろそろ何処にあるかくらい教えてもらっても…」
「あらジェッタ、今の仲良く会話してたかしら?」
「どっちかっていうと、醜い争いというか…」
「シンさんは黙ってて!」
ジェッタ君の言う通り、館がある場所はムルナウちゃんしか知らない。SSPの家から半壊した街の中を歩いていているんだけどまだ着かない、というよりは今いる場所は街のど真ん中なので館らしきものなんて今のところ見当たらない。
今の街は瓦礫や倒壊寸前の建物が幾つもあって、とてもじゃないが人が住めるような場所じゃなくなってる。
火災とかは今のところ鎮火されてるけど、割れた地面から水が噴出していたり変な煙が出ていたりなんかしていた。
ジェッタ君達からすればこんな所にあるのかと思いたくなるのも同然だけど、私の場合はなんとなくだけど分かる。
今いる所から少し先の場所に透明なモヤモヤが見える。恐らくそこがムルナウちゃんの館なんだろう。
「ここよ」
「ここって…何もないじゃない?」
辿り着いた場所は本当に何も無いのだが、不自然だった。
周りは壊れた家や施設なんかが沢山あるけど―――ある一点だけ何もなかった。
シン君も機械を通して気付いたらしく、それを照らし合わせるようにジェッタ君とナオミちゃんに説明していた。
なんだか鼻息が荒いけど大丈夫かな?
「ほら、さっさと入るわよ。早くしないとジャグラー様が私を待ってるわ」
「あ、ちょ、ちょっと!?」
疑わしい感情を出していた3人を強引に押し出すビランキお姉ちゃん。それについて行くように私とムルナウちゃんも敷地内に入ると、やはりそこにはとても大きな館が存在していた。
これがムルナウちゃんの館……結構綺麗だね。
館に続く道には綺麗な庭園があって、こまめに清掃してるのか汚れは一切見られない。中央に存在する噴水なんか見事な水柱を立てていて、本当にこれが宇宙船にもなるのかと思ってみた。
「綺麗ですね〜」
「こんな状況じゃなきゃ普通に来たいぐらいだよ、ねぇキャップ?」
「そうね、私もいつかこんな館欲しいわ」
と、それぞれ館について褒める3人の言葉にムルナウちゃんは少しフフンと鼻を鳴らした。機嫌も少し良さそうだしよかった。
「まあ、庶民にはそう見えるわよね」
「何よビランキ、アンタだってこーんなに大きな館に住んでないじゃない。ムルナウの事が気に入らないからってそんなムキに―――」
「私、元は王女なんだけど?」
「……あー…」
そう言えばそうだった。カケルから聞いたことがあるけど、ビランキお姉ちゃんって昔は何処かの惑星の王女様だったとか。だからこの館を見ても大きな印象を持たないんだろうか?
「フン、その王女様も今や「元」だからね「元」!」
「だから付けたじゃない」
「ムルナウちゃん、私は凄いと思うよ?」
「ほら見なさい、こんなガキンチョでも私の館の良さが分かるのよ?あーやだやだ、王女ってのはこれだから価値観が違うのよ」
「トーア?アンタどっちの味方よ?」
「わー。ビランキお姉ちゃんこわーい」
「あ、こら待ちなさい!全然怖いと思ってないでしょ!?」
全く感情を込めずに言ったのがバレたか。
ゆっくりと逃げると、それを追っかけてくるビランキお姉ちゃんの顔は正に般若だった。
ビランキお姉ちゃんから逃げつつ、ムルナウちゃんの館に入っていき、それに吊られて他の皆も館に入っていった。ムルナウちゃんはなんか騒いでたけどどうしたのかな?
ビランキお姉ちゃんから逃走しつつ、私は館の中から微かに感じる光のエネルギーを探る。
恐らくこの光のエネルギーがリュミエールなのだろう、そこに近づきつつビランキお姉ちゃんからも逃げる。
…………そこまで本気で走ってないのに追いつかれる気配がない。もしかしてビランキお姉ちゃん運動が苦手なのかな?
私は余裕たっぷりに両手を大きく広げて走り、その姿は正しくナオミちゃん達の家で見たア◯レちゃんの走り方そのものなのだが、とうとうビランキお姉ちゃんがわーわー騒ぎだした。
「こんのっ!トーアっ!!待ちなさい!!」
「わー、こわいこわーい」
なんて言いつつリュミエールのある場所へと向かう。
他の皆も付いてきてるけど……あー……、とうとうビランキお姉ちゃんがナオミちゃん達に追い抜かれたよ。
ビランキお姉ちゃんはすっごい息が上がってるし、ジェッタ君が若干心配してるし。ムルナウちゃんはなんか哀れんでたけど。
そしてとうとうリュミエールのある場所……ムルナウちゃん曰く自慢の宝物庫の部屋に辿り着いた。
「辿り着いた」
「アンタ…ビランキに追いかけられながらここまでよく分かったわね…?」
「光の反応があったからなんとなく分かった」
「あ…アンタねぇ……ゲホッ、ゲホッ…」
「だ、大丈夫ビランキ?少し休む?」
「まさか、基本机に座ってる僕より体力が無いとは…」
「ビランキさん大丈夫…?」
「し、心配無用よ……ゲホッ」
「ビランキお姉ちゃん、ファイト」
「………アンタ、段々とカケルに似てきたわね」
―――後に、この話を聞いたカケルは「ビランキちゃんだからヨシ」とゲラゲラ笑ったらビランキに一発殴られ、ジャグラーはトーアをビランキのストッパーに出来ないかと一瞬だけ考えた。閑話休題。
「ムルナウちゃん、この扉開けていい?」
「待ちなさい、ここは私以外開けられない場所よ。私が開けるわ」
と言って、金色の縁で象られた豪華な両扉を開ける。
中には輝かしいくらいに、そしてありとあらゆる棚に宝石が陳列されていた。宝石を置いている棚もまたムルナウが厳選した物であり、宝石のインパクトに負けないくらいには丈夫で木目もきっちり整った豪華な物だった。
が…そんな綺羅びやかな部屋に1つの異物が。
「ん〜…?あぁ〜…ボスじゃないかぁ。今更ノコノコ帰ってきてどうしたのさ」
「あ、アンタ…サデス!?」
ポツンとあった椅子に、この上なくだらけきったガピヤ星人のサデスがすわっていたのだった。