光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
ヒッポリト星人の戦いから3日後。
夕日に照らされながら、俺は廃ビルの屋上にたたずんでいた。
屋上から見下ろす街の風景は、かなり歪になっていた。
崩落や、瓦礫の山だらけな所もあれば比較的被害が少ない所もある。家やマンションの原型を保っている所もあるししっかり機能している所もあるにはある。
けど、決して街の被害がゼロと言う訳ではない。
あれだけの激戦だったのだ、終盤に至っては街の被害どうこう言っている場合でもなかった。
けれども、あんな被害があったというのに、街の人達は復興に勤しんでいたのだ。
まだ3日しか経っていないから復興率も全体的に見れば微々たる物だが、それでも人々はめげずに頑張っていた。
本当なら俺も参加しようとは思ってはいるが、何分、建築の事など1つも分からない。なので俺が行った所でできるのが精々、差し入れの1つを入れるくらいなものだった。
防衛隊の人達もかなり動員しており、時間は掛かるがいつかは復興できるだろう。
そうそう、他のウルトラマンの先輩達は元いた所に帰っている。事件も終息し、いつまでも居るわけにはいかないとの事で傷が治った後はパッタリだ。
ヒカルさんとショウさんには、改めてトーアの事を紹介したが既にトーアに好印象だった。
リュミエールの時に色々あったらしく、魔王獣という事実をしっても態度は変わらなかった。
そればかりか、トーアに心配かけるなよと2人に釘刺されたくらいだ。どこまで意気投合したんだよ。
ゼロ先輩は、「また会う時を楽しみにしてる」と言われ、もし機会があれば光の国で歓迎するとも言ってくれた。
エックス先輩はというと、元居た地球でデザストロという怪獣の撃退任務があるらしく、ゼロ先輩のイージスを纏ってすぐ飛び立っていった。大地さんと録に会話出来なかったのでそこは残念だがまたいつか会えるだろう。
そしてガイさんなんだけど―――なんか居なくなってた。いや、本当に何処行ったんだよと、ある程度探したが全く見つからなかった。
スレの皆に聞こうとしたけど、またまた恒例のスレが消失したのかこっちから何度レスしても応答がない。
完全にお手上げという事で、ガイさんは取り敢えず後回しだ。
そういえば、ムルナウとサデス…だっけ?
あの2人は現在、拠点を変えたSSPの皆のお手伝いをしている。ムルナウはすごーく不満そうな顔をしていたが、元はと言えば向こうも発端の一部でもあるので俺とジャグラーさんでしっかり言いつけていった。
なんかサデスはノリノリだったけどなんでだ…?
そこんところはトーアも首を傾けていて、なんか「約束は大丈夫なの…?」と不思議がっていた。
まあ、嫌々やるより楽しくやったほうがいいか。
んで、俺がなんでこんな廃ビルの屋上にいるのかというと―――
「遅いですよ、ジャグラーさん」
「コイツが引っ付いて時間が掛かったんだ、察しろ」
「ジャグラー様♡」
ジャグラーさんを待っていたからだ。なんかビランキちゃんがベッタベタに引っ付いてるけど。
そう、わざわざこんな場所でジャグラーを待っていた理由はただ1つ。蛇心剣を返却するためだった。
ちょうど話したい事もあったし、SSPの皆の所で邪魔してもアレだからわざわざここに来てもらったのだ。
「しっかりやったようだな、カケル」
「はい。これもまあ…ジャグラーさんが力を貸してくれたお陰ですよ」
「フン、情けねえお前の姿がアホらしくてな。ついでに貸してやっただけだ」
「はい、やっぱり持つべきは良き先輩ですよ」
ツンツンな事を言ってるが、やはりジャグラーさんはジャグラーさんだ。
そして俺は、手に持っていた蛇心剣をジャグラーさんの前に差し出す。
少しだけ口角を上げたジャグラーさんは、改めて蛇心剣を手に取る。
……これが、横にビランキちゃんが引っ付いてなければ格好良かったのだが。
「お前さん、これからどうする?」
「これから…ですか。そうですね、取り敢えずは気ままに旅でもしようかと。しばらくぶりにギレルモに行ってブラックキングや皆に会いたいですし」
「なら、ミコットの所に寄るんだな。アイツ、かなり強くなってるぞ」
「ミコットさんが?はえ〜、ミコットさんが…」
俺が死んでる間にそんな事になってたのか。
ていうか、その言い方的に絶対先に会ってきたなジャグラーさん。誘ってくれればよかったのに。
「そういえば、ジャグラーさんはどうするんです?まさかビランキちゃんをそのままで?」
「当たり前よ!ジャグラー様と一緒に地の果て宇宙の果てへ―――」
「おいこら、勝手に決めるな」
ぺしっ、とビランキちゃんの頭をジャグラーさんが叩いた。
「痛っ」と小さな声を出していたが、自業自得である。
「俺は……まあ、風の向くまま気のままだな。しばらくはコイツの保護場所でも探すさ」
「嫌です!絶対にジャグラー様に付いていくもん!」
「やかましい、頭撫でたくらいで調子乗るな」
「もう…諦めた方がいいんじゃないんですかジャグラーさん…?」
「アホか、俺には俺の事情がある」
「んな事情なんて………あ、そっか。自分の行く旅だとビランキちゃんに危険が及ぶから、危ないから遠ざけ―――」
「それ以上言ったら切る」
「もう切られた事あるんで今更です」
「………その返しは卑怯だろ」
ふむ、やはりジャグラーさんはツンツンしてるが所々にデレがある。こう……普段はツンケンしてるけど面倒見良いところがこの人の良い所である。
俺の居た地球でも人気なのはきっとこういう所だろう。
トレギアさんもこれくらい素直なら良いのに。
「まあでも、いいんじゃないですか?ビランキちゃんならタフですしジャグラーさんの旅にも付いていけますよ、きっと」
「ナイスアシストよカケル」
「……ハァ」
ジャグラーさんが大きなため息をついた。
観念したのか、引っ付いてたビランキちゃんを優しく引き剥がす。そして、ビランキちゃんをジーッと見つめて改めて問いただす。
「危険があるかも知れないぞ?」
「知ってます!」
「自分の身は自分で守れるか?」
「大丈夫…です」
「そこははっきり言えよ」
「でも頑張ります!」
「……なら、少しの間だけな」
「やった!」
喜ぶビランキちゃん。ぴょんぴょん跳ねている所を見るに、大好きなジャグラーさんと旅できる事が何よりも嬉しいんだろう。
俺が死んでる間も、ビランキちゃんはジャグラーさんの事を心配していたし、その一途さにはある種の敬意もあった。
念願が叶ったビランキちゃんに、「良かったね」と少しの賛辞を送った。
「そういや、トーアはどうした?」
「あー、今はこのペンダントになって寝てますよ。…今回、随分頑張ってくれましたから」
トントン、と俺が首からかけてるペンダントを触った。
「そうか。……やはり連れていくのか?」
「まあ…聞いてみたら「付いていく」って即答されたんで、はい」
そう言うと、ジャグラーさんはニヤッとした。
「随分懐かれたもんだな」
「言うて、ジャグラーさんにも懐いていると思うんですけど」
「……ああ。ホント、お前といいトーアといいなんで俺なんかと繋がろうと思うんだか」
「ジャグラー様!私!私も!!」
「あぁ、お前もだな」
「それは前にも説明した筈ですよジャグラーさん。俺は」
「分ぁかってる、皆まで言うな」
互いに顔を合わせる。
ここにガイさんがいないのは残念だけど、前のような剣呑な雰囲気も今は無い。ただ、ここには戦士としての先輩と後輩が確かな物を感じていたのは事実だった。
ふと、空を見上げる。
「そろそろ、行きますか」
「ああ、ここでお別れだな」
「でも、前とは違ってまた会えるんで、さよならじゃなくて―――」
「ああ、またな」
「はい、また―――会いましょう、ジャグラーさん」
これにて劇場版ウルトラマンオーブ編は完結です。
原作の要素何処……?なんて思いながら描いてましたが何だかんだ上手く収まって良かったと思います。
さて、次は感想スレの次に新章です
何やらまたまた先輩に出会うそうですってよ奥さん!