光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある   作:ウルトラネオン

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これにてレッドマン編は完結です



赤いアイツの戦記

今でも瞼に浮かぶ。

 

あの光景が。

 

あの燃え盛る街が。

 

私がたった一度見落としただけで起きてしまった惨劇。

もう二度と起こさないように、戒めるように、今日も私は怪獣を殺す。

 

 

 

 

惑星生命体ソフィー。

 

宇宙の不可思議とも、奇跡が生んだ生命とも言われる直系13万kmの惑星そのものが生態となっている。

科学者や評論家が比喩する意味ではなく、しっかり生命反応が検知された希少な生命体は、宇宙空間をただユラリと遊泳するだけで他の惑星を襲ったり等は確認されておらず危険分子と認定はされなかった。

 

だが惑星生命体ソフィーにも、唯一と言ってもいい程危険な特徴がある。

 

それは()()()()()()()()()事だ。

 

ソフィーも一生命体。

長い年月を生きてはいるが、細胞が劣化し老廃物を生むことだってある。問題はそれだ。

 

かつてソフィーに訪れ、様々な要因でソフィーの皮膚とも言えるべき地上で死に至った他の生命体を取り込んでエネルギーとし、老廃物が排出される時何故かその生命体の姿を模して現れる。

 

ソフィーは惑星級のエネルギーを持ち、その老廃物もそれ相応のエネルギーを持って意思を生む。元はソフィーの皮膚なので宇宙空間を自由自在に動く事が出来る。

 

その意思を持った老廃物が他の星に……もっと言えば、文明のある惑星に降り立つと被害がでる。老廃物は降り立った惑星を新たな住処と捉え、自分の住みやすいように環境を整えていく。

 

当然、元々いた者達にはとばっちりもいいとこだ。

 

 

その被害を抑える為、故郷であるレッド星からの指令を受けて私は惑星ソフィーにやってきた。

今の時期がソフィーの活性期であり、老廃物が極端に増えるので実績が高い私が派遣されたという事だ。

 

無論、他の仲間達もバックアップについており、付近の惑星に配置しているが基本的にはソフィーでの対処は私一人で行うことになっている。

 

 

そして私は、来る日も来る日も戦ってきた。

 

何十体と老廃物を殺し、ソフィーから飛び立たないように常に気を張っていた。

 

だがある日の事。

それはミスだった。

 

連戦続きの疲れがあっただろうか、老廃物達を相手に戦っていたが一匹だけ逃がしてしまった。

普段ならばするはずがない失態に、私は焦りと同時に老廃物達の対処をしていた。

 

既に戦っていた老廃物達を即座に倒し、逃がした一匹を追って銀河を駆け巡った。近況にいる仲間達に連絡を入れたが、抵抗虚しく突破されてしまい、遂には文明のある惑星へ降り立ってしまった。

 

この老廃物も分かっていたのだろうか、付近の惑星ではなく仲間の手が及んでない遠くの惑星に降り立っていた。

既の所で私も駆けつける事ができ、そのまま老廃物と交戦した。

 

危険なアクシデントではあったが、老廃物の戦闘力は大したものではない。即座に倒し、急いでソフィーに帰還して任務に当たらなければならかった。

 

 

だからか、老廃物が()()()()()などという古典的な手段でやり過ごし、結果街の1つが滅んでしまったのだ。

 

ソフィーに帰還し、また新たな老廃物と戦っていたのだが仲間から連絡が入った時には全てが終わっていた後だった。

老廃物が死んだふりをし、やり過ごしたことで再び行動を開始した。

それに感づいた仲間も慌てて駆けつけた頃には街が滅んでいた。

 

 

何も言えなかった。

 

嘆きも、後悔も、今はただ老廃物を蹴散らす事以外には思考を逸らす事が出来なかった。

少しでも気を逸せばまた逃がす。

逃せば……また同じ事が起きる。

 

色んな感情は全て心の内にしまい、今はただ老廃物を倒すだけに専念していた。

 

 

 

そんな戦いに明け暮れて、気がつけばもうすぐ百年周期に入る所だった。ソフィーの老廃物の出現も、最初に比べれば格段に収まり、少しばかりの余裕があった。

 

そして余裕が出来た事で………犯した過ちを思い返す。

 

街が滅びたのは私の責任だ。

 

逃がしたのは私が気をつけていなかったから。

 

私が、私が、私が。

 

悔やんで悔やんでもやりきれない思いが溢れ出す。

街の平和を脅かしたのは私の責任だ。誰の責任でも…仲間の責任でもない。

もっと自分が、もっと私が、もっと気をつかえば防げた筈だった。

 

消えない罪。それを己の内に刻みつけ、新たに起こさないように決意を固めた所で―――また老廃物が現れる。

 

戦いの中で、老廃物はある一定の場所で出現するという事が分かった。

私がいるこの場所がまさにそうだ。

 

見た目は砂利と少しばかりの生えた木しかない殺風景な場所だが、こんな場所で老廃物は現れる。

私は身構え、戦闘態勢に入る。

 

そんな時だった―――彼に出会ったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鮮烈な青い光と共に、目の前の老廃物を一瞬にして吹き飛ばす。

否、吹き飛ばすだけでは無かった。

青い光は人の形を取り、右腕の拳が老廃物に叩き込まれる。

 

老廃物の肉体は膨張するかのように破裂し、続いて左腕に突如出現した光の刃が老廃物を一刀両断する。

 

両断するには少し時間がかかっているが、断面がズタズタになり、生物として形を取るには適してない姿と成り果てる。

 

「よ〜し、なんか違和感あったけど倒せたぞ〜!………ん?」

 

私に気づいたのか、目の前の()は怪訝そうな目でこちらを観察している。

 

「ウルトラマン…?じゃないな、いや誰だろ……」

 

何故か困り果てているようだ。

ともかく、相手をする筈だった老廃物を倒してくれた事に感謝し、こちらから自己紹介をしてみた。

 

「え!?貴方がレッドマン!?へぇ〜…はぇ〜…ほー……」

 

何故かジロジロと見られている。

そんなに私に変な所があるのだろうか?

そんな彼は、改めて私に向き直った。

 

「改めまして、初めまして。俺はひそら……ウルトラマンフィフティって言います。噂は聞いてます、会えて嬉しいですレッド先輩!」

 

そう、にこやかな顔で私の手を取りブンブンと振って握手した。

余りにも突然の事であり、処理が追いつかなったもののどうにか理解した。

 

―――彼、ウルトラマンフィフティは私と同じ志を持ち、宇宙の平和を守る為に戦っている。

「輪っか」という存在から指令を受けてソフィーに来たとの事。

 

まさかレッド星以外から同士が来るとは思わなかったので少し驚いたものの、私にとっては少し複雑だった。

ずっと1人で戦うものだと思っていたから、どう立ち回ったら良いのか見当がつかず、それでいて彼はフレンドリーである。

 

初対面にしてはかなりグイグイ来るのだと、そして接して行く内に段々と彼について理解が深まっていった。

 

「レッド先輩!こっちの怪獣達は任せて下さい!レッド先輩はそっちのを!!」

 

―――ああ、分かった。  

 

 

 

彼は、どうにも優しかった。

すごく小さな事だが、細かい事に少しばかり気が回る。

私の体調や疲れなど、定期的に確認をしてくる。

 

今にいたっては、5体いる老廃物を1人で4体も相手取っている。普段の私からすれば問題ないのだが彼なりの気遣いなのだろう、私は彼の提案を受け入れた。

 

ある日の事。

私と組手をしたいという事で始まった試合。

ここ3日は老廃物が現れなかったので、いい機会だと思って話に乗った。

 

実際、彼の実力は素晴らしいの一言である。かなりの修羅場をくぐってきたのだろう、一撃が重いのも頷ける。

だからこそ、私も全力で彼に応じる。

 

|私の得意とする技《レッドキック レッドチョップ レッドパンチ》で彼に攻撃し、最後にはレッドフォールで締めくくった。

 

ヨロヨロと、私の方に歩いてきた彼は、

 

「も、もう二度とあれだけはやめてくださいね…?」

 

と言われた。

何故なのだろうか。

 

 

 

 

彼の中には、小さくとも巨大な存在が住み着いている。

最初こそ、それが彼自身なのだろうと思っていたがよくよく見てみると(レッドチェック)彼とは違う生命がある。

 

この気配は知っている。モンスター銀河に生息するとされるマガオロチ。それの枝分かれとも言えるべき存在なのだが、不思議と本能と言った物は感じられない。

そして彼にそれを聞いた所、かなり深い話だった。

 

彼の中にいる生命―――トーアと呼ばれる少女はかつてマガオロチが生んだ闇の魔王獣の化身。

 

そして度重なる運命の中で起きた彼の死。

 

聞いた時は、余りにも衝撃だった。

死の淵から蘇るのは勿論の事、長い年月を経て2人は再会できた

のだ。余りにも運命的な話であり、私も一筋の涙が流れたものだ。

 

少女は彼の優しさで心を解かし、彼と共に行動するようになった。それは掛け替えのない繋がりなのだろう。

そう思うと、故郷にいる仲間やバックアップに周っている仲間達にも私は繋がれているのだろうかと頭によぎった。

 

そして気になる事がある。少女は私に対しては話しかけてくれない。

もしかすると、少女には何か不快にさせるような事をしてしまったのかと思っていたが、彼がそれを訂正する。

 

曰く、声を掛けてはいるらしい。だが私の耳には聞こえない。

それと同様、私の声も少女には聞こえないらしい。

端からみれば無言の相手に話しかけるというなんとも言えない構図になっているのだった。

決して悪い印象を持たれている訳ではないので安心して欲しいと言っていた。

 

だが私は少し悲しかった。

 

 

 

 

 

 

 

ソフィーの老廃物活性期が終盤を迎えていたある日、彼は時々だが妙にここあらぬようになる状態があった。

まるで何処か遠い場所を見つめているかのような……疲れが溜まっているのか聞いてみたが「全然そんなんじゃないですよ!」と言った。

嘘を言っている気配もない為、大丈夫なのだろうがどうしたのだろうか?

 

 

―――余談だが、ここあらぬ、と言うのはスレ民と交信している時の状態である。レッドマンはそれを知る由もないが、何故か感覚的に違和感を覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そして、彼との共闘最後の日。

私は彼の過去に何があったのかを、全て聞いた。彼の反応から察するに中にいる少女も初めて聞いた事なのだろう、彼も少し困っていた。

 

彼は一体どれほど過酷な道を歩んできたのだろう。家族を、友を失い、尚それでも立ち上がり挑み続けるその姿。

 

……私が同じ境遇に会えば、どうなるかは分からない。言葉では表せない程に彼の歩んできた道は茨だ。だがそれでも彼は、その過去があるから今があると言ってのけたのだ。

 

本当に、本当に強い。

力が、ではない。心の話だ。

 

だからこそ、彼はキセキの力(ウルトラマン)を手に取る事が出来たのだろうと分かった。本人は偶々だと言っているが、私が見る限り、その力は生半可な気持ちで得られるような物ではない。

 

そして彼の話にはまだ続きがあった。その話もしてくれると言うので聞き耳を立てていると―――。

 

「ガガガガガガガガガ」

 

最後の、老廃物が現れた。

 

 

暴君怪獣タイラント。その遺体を取り込み再現された老廃物。そして活性期であるソフィーが最後に排出する大きな物。

通常のタイラントよりも大きく、そしてどう見ても生物とは言えない皮膚を持っていた。

 

見た目は生々しいのに、まるで風船で出来ているかのようだ。

彼の話を聞きたかったが、現れた以上仕方ない。

 

デカいとは言え、所詮老廃物。今の私に負ける要素はないと、果敢に飛び込んだのが行けなかったのか。

 

「ガガガガガガ」

 

「!?」

 

老廃物の、その鉄球ごとき拳をまともに喰らってしまった。

あの巨体であれば、その動きも緩慢だとそう思ってしまい振り下ろされた鉄球は正に神速だった。

 

 

吹き飛ばされ、岩の壁にめり込む。

激しい激痛と朦朧とした意識が、私を立たせる力を奪っていた。

 

私は―――死ぬのか?

 

 

そう感じた時、老廃物の振り下ろされた鉄球は別の場所を叩いていた。何が起こったのか、朦朧とした意識の中では理解しきれなかった。

 

再び、その鉄球が振り下ろされたがそれは私にではなかった。

老廃物との距離が迫る中、私は確かに見た。

彼が、老廃物の拳を防いでいたのだと。

 

腕と足を変質させ、力を極限にまで高めた姿。少女との絆の証。

 

 

3度目に振り下ろされた拳は、とうとう彼を微動だに動かす事は出来なくなっていた。意識が戻り、激痛が少し引いた事でようやく理解した。

私は守られていたのだ。

先の一撃で沈められた私は、しかし彼によって救われていたのだ。

 

私にその鉄球を届かせないように。

私を危険から守るように。

 

―――寝ている場合ではない。

 

先輩、と慕ってくれている彼が頑張っているのだ。

ならば……先立つ者として、後から来る者達に在り方を示さなければならない。

 

「レッド先輩!!」

 

彼が呼んだ。ならば動かなくてどうする。

 

飛び上がり、敵に止めを刺すレッドナイフを真っ先に突き立てる。

老廃物はのけ反り、大きく後退した。

今がチャンスなのだ。

 

彼にレッドアローを託し、私は老廃物に隙を作る。

 

レッドキック。

 

レッドチョップ。

 

そして止めのレッドフォール。

 

―――さあ、やるんだ。

 

この心の声に反応したのかは分からないが、彼はレッドアローを老廃物に投げつける。少女の力を纏ったそれは、老廃物に当たるとその傷跡からあらゆる肉体の箇所に黒い触手のような物を体内から露出した。

 

やがて、老廃物は塵となって消え、残されたのは戦いが終わって静かになったこの場と私と彼らだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ〜……。あ、レッド先輩!」

 

そう言いながら笑顔で私の下へ来た彼。互いをねぎらった後、彼は私に問うた。

 

「―――これからどうするんです?」

 

どうするか、と言えば。私の故郷に帰る事だった。

任務を終えた報告に、仲間達との合流もしなければならない。

 

「そうですか。確かに報告とか合流って大事ですからね〜」

 

君の言う事は最もだ。―――だが、君はどうするんだ?このままではないのだろう?

 

「俺は…そうですね。輪っかからの指示も無いですし気ままに旅でもしようかと。旅がてらウルトラマンとして活動したり、その星の文化でも見てみようかと」

 

 

そうか…。なら、君とはここでお別れだな。

 

「はい、お別れです。けれど、また機会があれば会いましょう!土産話、沢山持ってくるんで!」

 

……ああ。縁があればまた会おう、身体に気をつけて。

 

「はい、レッド先輩もお元気で!」

 

「レッドさん、お世話になりました」

 

ふと、声が聞こえた。

気の所為ではない。もしかすると、彼の中にいる少女の声かもしれない。もっと話してみたくは思っていたが、最後の最後でこれとは私もまだまだだ。

 

やがて彼は飛び立った。

それは、青き流星かのように。

 

 

彼の旅路に祝福を。

私は、彼に親愛と敬意をもって(右手を上げて)彼が飛び立った空をしばしの間見続けていた。

 

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