光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
遂に決着!
目の前に広がった火炎。
それは僕の体を全て飲み込み焼き尽くす。
声すら出せなかった。痛みを通り越してもう何かすら分からなくなっていた。ただ理解出来るのは自分が力尽きて倒れていく感覚だけ。
……ああ、僕は皆を守れなかった―――。
目は閉じかけ、力無くした体は後ろに倒れる―――筈だった。
「……っえ…?」
何故か、僕はもたれ掛かっていた。それに姿は本来の僕のままなのに、背中に何か当たった感触がある。背後には何も無かった筈なのに僕は
だけど
人、だったのだ。
その人は僕の背中をしっかりと支えて倒れないようにしてくれていた。
「誰……?」
ポソッと呟いたが、その人は何も反応しなかった。見上げても、何故か顔が影で覆われて表情が見えない。敵なのか味方のかまるで分からなった。
そしてその人は、口を動かした。
「よく頑張ったな」
はっきりと聞こえた。
見上げると、顔があったのだがそして僕には全く見えないし分からないのに……何故か顔が笑っているように見えた。
嘲笑の類ではない、僕を労うかのような優しい声。
フラフラで、もう立てない僕だけど支えてくれる力はガッシリとしていた。
「トーア、アユムを頼む」
そう言って、現れたもう1人の方に預けてその人は前に立った。
現れたもう1人の方も顔や姿は分からかったけと、その人も僕の事を優しく抱いてくれていた。
「あ、あの…」
「大丈夫、任せて」
感情が少しだけ乗ったその声は、澄んでいて安心する。
「ちょっとだけ見せてやる、しっかり見とけよ?」
何がなんだかよく分からない。………けれど。
その後ろ姿は、とても大きかった。
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「あ、アユム……?」
目の前の巨人………アユムが倒れようとしたその時だった。
その倒れかけた体は、まるで固定されたかのようにピタリと止まった。
見てくれはとても異常な光景だ。後ろに支えも無いのに、倒れるようで全く倒れる素振りが無い。
余りにも異質な光景に、ナーサは呆然とした声しか出せなかったのだ。
「アユム……!?アユム!!」
幾ら声を挙げても返事がなければ反応もしない。あの怪獣に何かされたのか体に異常があったのかは分からない。胸の水晶が赤く点滅したことで、何か良く無い事が起こっているのは分かっていたがどうする事も出来なかった。
ただ、声を挙げるぐらいしか私には出来なかった。
「 アユム……アユム…………!」
地に手を付いて、顔から涙が溢れる。
私には…私達には何も出来ない。ただアユムが傷ついて倒れていくのをただ見ているだけだった。
それが、それが何より悔しくて堪らなかった。
アユムが頑張っているのに、傷ついてるのに。
思わず顔を俯けてしまい、今のアユムを直視する事すら出来ずにいた。
そんな時だ。
点滅音が急に止まったのは。
「え…?」
見てみると、とても不可思議な光景だった。巨人となったアユムは倒れる筈だったのにその体は不自然に止まった。何かに支えられている訳でもなく、私達からすれば余程の足の力がなければ倒れるくらいには体が後ろに曲がっている。
すると、倒れかけていた巨人の体はゆっくりと起き上がる。
まるで再起動したかのように。
「ギギャァ……?」
「……フゥ」
いつの間にか胸の水晶は赤から青へと変わっていて、何故か体をほぐすように動かしていた。
けれど何故か……、あれはアユムじゃないと私は感じたのだ。
「ギギャァァァァ!!!」
「シェアァァッ!!!」
一瞬だった。
怪獣の叫びと共に、巨人の姿が消えたのは。
いや、消えたんじゃない。
「は、早……!?」
いつの間にか怪獣の側に近づいて殴っていた。
それだけじゃない、2発3発と拳を叩き込むと既に怪獣の背後に回っていた。
怪獣は抵抗しようと右手を振り上げた時には既にそんな状態だった。
驚いた怪獣は後ろに振り向いたが既にそこには巨人はいない。
何処に行ったのかと辺りを見回すが、巨人は既に空に浮いていて怪獣目掛けて一直線に降りてきた。
怪獣の頭部に落下してきた巨人が鈍い音と共に攻撃。
怪獣は地べたを這うだけだった。
「ギ、ギギャァァァァ…」
怪獣が起き上がり、反撃に出ようとするが巨人はすぐに右腕を掴む。そして巨人の右腕から棘が付いた光の輪っかが現れ、その形は輪っかから長方形の形に変形していく。
ギュルギュルと回転した音が鳴っているそれを、怪獣の右腕にぶつけた。
「ギギャァァァァァァァ!!??」
ブチブチと肉が裂ける嫌な音を出しながら、血飛沫を上げて切断される。怪獣の右腕は血をボトボト流しながら痛みに耐えるかのように片方の腕で抑えている。
「アユ……厶……?」
そんな光景をみて、私は驚きの余りに開いた口が閉じなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「す、すごい……」
圧倒的だった。
僕があんなにも苦戦して、手も足も出なかった怪獣は一瞬にして逆転していた。
僕のように殴る蹴るではなく、的確に隙を付いて攻撃をしている。
もしかして……もしかしてこの人が……。
「さ、やり方は見せたぞ。後はアユムがやるんだ」
その人は僕の方に振り向いたがやはり姿や顔は分からなかった。
差し出された手をマジマジと見ていると、その人は少し困っていた。
「ほら、早く立たないと―――」
その時、轟音がなる。
今正に、痛手を負っていた怪獣が翼を広げ大空に飛びって行った。その人は、怪獣が飛び立っていった空を少し見つめると再び僕の方に顔を向ける。
「ほら、早く立つ」
「あ…えと…」
僕の腕を掴んで強引に立たせる。
少しフラついたが、さっきみたいに疲労で立てない程ではなくまだ何とか動けるようだった。
「巨人様…あの…僕は……」
「………巨人様じゃない。俺はひそら―――いや、俺はウルトラマン。ウルトラマンフィフティだ」
「ウルトラマン……」
初めて、巨人様の名前を呼んだ。
ウルトラマン…って言うんだ。
「はい、さっさと怪獣を追うんだ」
「えと…僕で…いいんですか…?」
「うん?」
「だって、貴方が怪獣を―――」
「自分の大切な物くらい自分で守れ。じゃないと何も進まないぞ」
その言葉を聞いて、僕は胸のつっかえが取れたようにも思えた。
「………いいんですか?」
「おう、とことこんやって来い。やり方は……分かるよな?」
「…はいっ!!」
「よし、行って来い!」
その言葉と共に、僕の体は自由になった。
意識は巨人様の…ウルトラマンの姿に戻った。怪獣が飛び立った空を見上げる。目がいいからまだ遠くには行っていない。
憧れた空。
今僕はその先に行こうとしている。
「アユム!」
下から声がした。ナーサが…お母さんやお父さん、そして村の皆が心配そうに僕を見ている。だけどもう大丈夫。
だって僕には、守りたい物があるから。
「シェアッ!!」
空を飛ぶ。
今までのどんな速さよりも最高に速く飛ぶ。
空を突き抜け、星空を駆ける。
そこには、さっき逃げた怪獣がヨロヨロと飛んでいた。
追ってきた僕を見るや、その姿は怯えていた。
その姿は最早さっきまでの威圧感はなくただただ弱々しい。
『やり方は―――分かるよな?』
はい、分かってます。
頭に浮かんだイメージ通りに動く。
体を楽にして、両腕に力を流すように意識する。
バチバチ、と音が弾んで青く光る。
そして最後に十字を組んで―――。
「ギッ!!??」
青白い光と共に、怪獣は消え去った。
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気がつくと、僕は草原の上で寝転がっていた。
体を起こすと、遠くから村の皆が駆け寄ってきている事が分かる。
「アユムッ!アユムーッ!」
お母さんやお父さん、それにナーサ。村の皆が僕の周りに集まって来た。
そこには心配した顔、というよりは安堵の顔の方が多かった。
「大丈夫アユム!?怪我無い!?」
「アユムッ、アユム!」
ギュッと力強く抱きしめてくる両親は、それはとっても心地良かった。
「お母さん、お父さん。ただいま」
「うん、うん!」
「良かった…良かった本当に!」
そして。
「アユム……」
「ナーサ…」
「おかえりなさい」
「うん、ただいま」
涙を浮かべたナーサが、そこにいた。
本当にとんでもない3日間だった。
初めは、神様と呼んでいた怪獣と光。
光…ウルトラマンとして戦い。
そして最後はここに帰ってきた。
そして僕は顔を見上げる。そこには巨人様…ウルトラマンが僕達を見つめていた。
僕は立とうとし、それに気づいた両親は手伝うように肩を貸してくれた。
僕の姿をジッと見つめている。その顔に、どんな感情が乗っているのかは今の僕にはもう分からなかった。
だけど、だけどこれだけは伝えたい。
僕は―――。
「ありがとう!ウルトラマン!!」
僕に、守りたい物を守らせてくれてありがとう。
僕の体を治してくれてありがとう。
そして―――最後まで寄り添ってくれてありがとう。
大きく手を振ると、ウルトラマンは少しだけ頷いた。
その大きな体で立って、僕達に背を向ける。
光は遠い遠い銀河の果てへと飛び立った。
いつか貴方に辿り着きます。
僕はいつかこの大地から飛び立ち、貴方と共に空を飛びたい。それまで、僕がそこに辿り着くまでどうか待っていてください。
広がる星空に、拳を掲げた。
さて、アユムの夢は一体どうなったのか。それは当の本人しか分からない事です。
が………何やら、遠い遠い時間の先でカケルは馴染み深い人と再会したそうな。