光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
女の子の名前はグリージョと言った。
兄達の名前はロッソ、ブル。
ロッソとブル、と言う名前を聞いてピンと来た。スレの皆が言っていた俺の後輩に当たるウルトラマンロッソとウルトラマンブル。
つまり三兄弟で、あの輪っかに認められた戦士という事になる。
…………あれ?後輩の活躍は…?ネロンガとかカミソリデマーガとかと戦うんじゃないの?
要所しか聞いてない俺は、頭の中で困惑だらけだったがスレの皆ともまだ交信出来てないので今すぐ聞く手段が無かった。
そう言えば、かなり昔にこのグリージョって言う名前にも覚えがある。確かまだ俺がウルトラマンになって最初の頃だったか。
グリージョちゃんに聞いてみたが、怪獣にはなれてもウルトラマンにはなれないとの事。これがスレの皆が言っていた、選ばれてもウルトラマンにはなれない、という事なんだろう。
グリージョちゃんも、「ウルトラマンの力があれば、兄さん達を……」って言ってたから本人自身も気にしてる様子だった。
「あの輪っかクソか?」
「えっ、いや…その……」
「……そう言えば、君達もあのクソ輪っかに任務を言われてたんだよね?どんな内容なのか聞いてもいいかな?」
「……光の意思は、私達にルーゴサイトの討伐の任務を与えました。私達が戦っていた、あのガス状の生命体がそれです」
「あれがルーゴサイト…」
あのクソ輪っかがどういう意図をしてるのかは分からないが、あのルーゴサイトとかいう奴は明らかに強豪怪獣だろう。
光線をすり抜ける体や、まだ新人とはいえウルトラマン2人を押しのけるパワーは怪獣としては別格の存在だ。
詳しく聞いてみると、元々ルーゴサイトは宇宙を害する物に対して排除行動するどちらかと言えば善よりの怪獣だったが何らかの影響で暴走し、現在は生命反応があれば何でも攻撃し破壊していく存在となっている。
俺とかガイさんならともかく、まだウルトラマンに成り立ての兄弟達にそんな過酷な任務を与えるなんてバカなマネ……するなあのクソ輪っか。
しかし、そこで疑問を持った。
「グリージョちゃん達は、ルーゴサイトをどうやって攻撃するつもりだったの?君達の救援には間に合わなかったけど、俺はルーゴサイトに光線を当ててもすり抜けていったし…」
「私達の持つジャイロには、ルーゴサイトを固定させる力があるんです。けど、それを使うとその間はウルトラマンや怪獣に変身出来なくなってしまうんです。だから……」
「その間、ルーゴサイトが暴れているのを見ているだけって事になるよな」
成る程、それで合点がいった。
ようはあのクソ輪っかは人選自体は間違って無かったのだ。対抗手段があるウルトラマンに行かせるのは当然だと。
「あの輪っか潰した方がいいんじゃ?」
「えっ」
「冗談だよ冗談。3割くらいが冗談なだけで」
「それって7割は本当なんじゃ…?」
グリージョちゃんの顔が何故か引きつっていた。
「それは置いといて。グリージョちゃんはこれからどうするの?ルーゴサイトを追うなら…」
「…………分かってます。今の私じゃ、ルーゴサイトには勝てない」
冗談でも何でもなく、今のグリージョちゃんではルーゴサイトには太刀打ち出来ない。多分、今の俺でも苦戦は免れない。
正直な話、敵討ちをするなら俺に任せた方がいいかも知れないがそんなのはグリージョちゃんの心が晴れる訳でもない。
復讐するなら他人にやらせるより自分でやった方がいいからだ。
「……兄達の、力の欠片を探します。兄達が死んだ時、この大地にその力は溶けていったんです。その後は―――」
「それならグリージョちゃん、お兄ちゃん達の力を探すついでに1つ提案がある」
「提案…?」
「俺がグリージョちゃんをルーゴサイトを倒せるくらいにまでは鍛える。これでどう?」
「あなたに…?」
「そう、何にせよ力は必要だよ。自暴自棄になって死んじゃうのも嫌だし……それに、グリージョちゃんは1人じゃない。手数は多い方がいいから」
そう言うと、グリージョちゃんは少し考えていた。勿論、自分なりにやるならそれはそれで構わない。けど、大切な人が亡くなったからこそ覚えてて欲しい物がある。
決して1人じゃない事。
俺にとって透や…スレの皆が初めにいたように。グリージョちゃんも1人じゃないんだ。
「私は…強くなれますか?」
「絶対とは言い切れないけど……俺も出来る限りの事はする」
「……分かりました、あなたの提案を受け入れます。……えっと」
何か困惑した顔を浮かべていた。そして俺は自分の名前を名乗っていない事に気付き、改めて自己紹介をした途端グリージョちゃんの顔は驚愕の顔を浮かべていた。
「あなたが…あのウルトラマンフィフティ……?」
「え?もしかして俺の事話題になってる?いやー、自分では大した事してないつもりだけど噂になってるなんて―――」
「通った道には凄惨な場しか残らなくて、悪に容赦がなくて慈悲も血も涙もないって言われてる…?」
「待てや」
何だよその噂。まるで俺がジェノサイドウルトラマンのような噂じゃないか。血も涙もあるし慈悲もあるよ??出会った奴らがてんでカスみたいな宇宙人だっただけだから……。
「……兄達も、あなたの事を恐れていました。私達は裏稼業なんかをしてたから、もしあなたに出会ったら裁かれる…なんて」
「えぇ……えぇ……」
なんでや……。
「そ、それじゃ……やっぱやめとく…?」
「いえ、大丈夫です。話してて分かりました、あなたは決して非道残虐な人ではないと」
「非道残虐て……」
おかしい…。普通なら悪逆非道を繰り返す奴らが悪いのでは?それにほら、スペースビーストとかカスの極みみたいなもんだしそりゃ絶滅させた方がいいのでは…?
「これからよろしくお願いします、フィフティさん」
「あー……俺の事はカケルで―――」
言いかけた途端、俺のブレスレットから光が飛び出してきた。それは正に、あの輪っかからのミッションだった。
「何でこのタイミングなんだよ……」
しかも別宇宙に異次元のアナが開いて邪気が流れ込んでるから阻止しろなんて指令だ。
つまり、この地球から離れなければならない。
「ごめんグリージョちゃん、難しい話だとは思うけど一緒に―――」
「カケルさん、すみません。今は変身が…出来ないんです」
「え?何で…」
と、言いかけた所でグリージョちゃんから見せられたのは上から斜めに傷が入った変身アイテムだった。
ここまで酷い傷なら、変身能力を取り戻すのにもかなり時間がかかる。
けど輪っかが出した指令も、また無視出来ない物だ。
何より、ミッションを優先するとこの子を1人にしてしまう。それだけは何としても避けたかった。
どうしようかと考えた時、首に掛けていたペンダントが怪しく光りだした。
そして、ペンダントの形が変わり少女の姿へと変貌した。
「カケルはミッションに行って」
「トーア」
少女―――トーアがそう言った。
ペンダントから人に変わった事で驚いていたグリージョちゃんだったが、すぐに顔を俺の方に向ける。
「この子は私がつく。だから問題ない」
「うーん……うーん…………そうだな、それがいいかもな」
「え、えと……」
「あ、安心してグリージョちゃん。トーアは俺の仲間だよ」
「相棒」
隣でピースマーク作りながらトーアは言った。無表情なのに何処かドヤ顔に見えるのは何故なのだろうか?
「必ず戻って来る。それまで待っていて欲しい」
「……分かりました。あなたがそう言うなら」
「ありがとう」
そう言うと、トーアに「任せた」と一言だけは伝えて俺はウルトラマンに変身する。
宇宙に飛び立ち、スターゲートを通って別宇宙に移動しようと思った所で俺はふと思った。
輪っかに人の心とかないのか、と。
カケルが飛び立ち、残された私達は取り敢えず散らばってしまったグリージョちゃんのお兄さん達の力を集める事にした。
「これからよろしくね、グリージョちゃん」
「はい、これからよろしくお願いします。トーア…さん」
「トーアでいいよ。畏まらなくてもいいよ」
「それじゃなんだか…。えーと………トーア、姉さん……とか?」
「むっ!?」
姉…さん?
お姉…ちゃん?
私が?
何故か、姉さんと言う響きに心討たれた気がした。
「うん、任せて。お姉ちゃん頑張るから」
ふんす、ふんすと鼻息が荒くなったトーアを見て、グリージョはただ「は、はぁ…」としか言えなかった。