光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
言わばイッチの過去話専用の列伝時空みたいなものです
ん……?
あれ……?なんだここ…?あれぇ〜…さっきまでメビウス先輩と戦ってたのになぁ…なんだここ?
え?俺の過去の話しろって?どして?聞いてもあまりおもしろくないけど?
まあ話してもいいけど…退屈しのぎ程度にでも聞いておいてね?
まあまず俺が生まれたときなんだけど―――
「おぎゃぁ!おぎゃぁ!」
泣き声が部屋中に響く。
部屋には複数の人間やベッドに横たわっていた女性と複数の機械と医療用器具で埋め尽くされていた。
青い衣服を着た医者が横たわっていた女性から生まれたばかりの赤ん坊を抱きかかえ女性にその赤ん坊を見せていた。
抱きかかえられていた赤ん坊は元気よく泣いている。その様子をとても嬉しそうに見ていた女性に医者はこう言った。
「見てください日空さん元気な男の子ですよ!おめでとうございます!」
女性は出産直後のせいか息遣いも荒々しく目も朦朧としているが生まれた赤ん坊だけはしっかりと見据えていた。
「私と…あの人の子供………」
女性は―――日空綾香は心から幸せそうに笑っていた。
それからというもの、出産を終えた綾香は医務室から一般人も入院している一般病棟に運ばれしばらく安静にしておくようにと病室のベッドに寝かされていた。
と言っても綾香は睡眠を取ることはなくただ病室の天井を見つめているだけだった。
少し目を窓に向けると、外は綺麗に晴れて心地いい風が病室に流れてくる。景色はというと住宅や公園が広がっているくらいで、小さな子供達が元気よく遊んでいるのだった。
それから少しすると病室の扉からコンコンと音がなると同時に開くと、1人の男性が現れた。
その男性は日本人特有の顔立ちをしているがその風貌や見た目は外国人と言っても刺し違えなかった。
身長は高く金髪のロングヘアに青い瞳、体格は程よく引き締まっていてシャツ1枚に黒色のジーパンといった物だった。
男性は綾香が寝ているベッドに近づくと近くに備え付けられていた椅子に座り綾香を見つめる。
「生まれた…んだな……」
「うん……生まれたよ、アラル」
「……………」
アラルと呼ばれた男性は静かに目を閉じる。
アラルは何か考え事をするとき決まって目を閉じる。これは神経を研ぎ澄まし集中して周りをよく見る為だと綾香はアラルから聞かされていた。
「…嬉しくない?」
「そんなことは…ない。ただ…」
「ただ?」
「この私が…子を持つ事など、考えたこともなかったからな…」
病室の窓から照らされた温かな太陽の光がまるで2人を祝福するかのように優しく包み込んでいた。
出産からしばらくして綾香の体調も戻り、赤ん坊も問題ないということで漸く退院が決まり退院手続きをする為病院の受付窓に来ていた綾香とアラル。
アラルの両腕には生まれた赤ん坊が抱きかかえられている。ここに来るまでの間でどちらが子供を持つかという両者ともに譲れない戦いを勃発した後、ジャンケンで決めるとなった結果アラルが抱きかかえるということになった。
どちらとも初めて子供を抱くのは自分だと言い張り、引かなかったので通りすがりの人や入院していた人達は少しばかり驚いていたのは綾香とアラル共々気づいてなかった。
「はい、これで手続きは終わりました。お疲れ様です綾香さん」
「ええ、ありがとう佐藤さん。今までありがとね、話し相手になってくれてたり」
受付係も兼任している佐藤は綾香が出産する前に入院してる時に出産の事についてやら身の周りの世間話やらで少しの間だったが大変世話になった人だ。
「けど綾香さんの夫さん本当に無口ね〜。いや、無口というより無表情かしら?」
「そんなことないわよ。これでもこの人結構喜んでいるわよ?」
「そ、そうなの…?」
綾香は知っている。アラルと出会ってもう3年以上は経つが初めの頃は佐藤と同じように無口で無表情だなと思っていたが、よく目を凝らしてみると目と口が微妙に釣り上がっている。
これは長く付き沿ってきた綾香だからこそ分かる事であった。
「そうそう。ね?」
「……………ああ」
「それならいいんだけどね…。
「…勿論だ」
そして綾香とアラルは病院を後にし、自分達の住む家に帰るために足を進めた。病院からは然程遠いわけでもないのでリハビリも兼ねて歩いて行こうと言ったのは綾香だった。
アラルも止めようとはせず、しかし綾香にピッチリ引っ付きながら歩いていた。
「あのぅ…少し歩き辛いのだけど。恥ずかしい」
「病み上がりにはこれくらいで丁度いい」
「いやあのね?」
「倒れたら私は困る」
「気を使ってくれるのは嬉しいんだけども…」
気を使ってくれるのは有り難いが、こうもピッチリ引っ付かれると周りの視線が…。
なら、さっき佐藤にアラルの話をしてたのは恥ずかしくないのかと言われればそれはそれ、これはこれである。見知った人に話すのは何とも思わないが見ず知らずの他人に見られると途端に恥ずかしく思うのが綾香だった。
アラルはそんな綾香をお構いなしにピッチリと歩く。アラルも綾香の恥ずかしい気持ちは分かってはいるが自分がそうしたいからそうしているだけなのだ。
少し歩き、とうとう諦めた綾香は「ねえ」とアラルに声をかける。
「ホントに良かったの?」
「何が」
「子供の名前よ」
「……ああ」
出産する前、生まれてくる子供の名前をアラルと綾香の決めた名前どちらにするか話をしていた時だ。最初はアラル自身が決めた名前にしたいと言っていたが、綾香が決めた名前を聞いた途端そっちの方がいいとアラルが言い始めたのだ。
あんなに名前を決めたがってたのに何故綾香が決めた名前にしたのか疑問に思っていた。
「お前が…綾香の想いが籠もった名前の方が良かったからだ」
「……そっか」
子供の名前。
その子が一生背負っていく物であり親が子に与える最初のプレゼント。
アラルと綾香の子供の名は―――
「
「…ありがと」
2人は家につくまでずっとピッタリとくっついていた。
で、俺が生まれたってわけよ?
え?なんで生まれた直後なのに詳しいのかって?父さんと母さんの惚気を聞きに来たんじゃないって?
うるせぇ!!ここはなんか知らないけどそういう空間らしいの!!!俺に言われたかって知らんわ!!
てか父さんと母さんの話なんて初めて知ったわ!!
もうなんだよこの空間………
ん?あれなんか吸い込まれ―――
※あくまで列伝時空のような物なので本編でこのような事は一切起きてません。